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DEVIL MAY CRY

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DEVIL MAY CRY  ◆AZWNjKqIBQ


ゆらり ゆらり かたかた ――ことん。


藤乃静留の心の中で揺れていた天秤。
暗い森の中で見つけた手練の男を死を賭して討つか、はたまた己の身を守るため引き下がるか。
ゆらりゆらりと揺れ僅かな逡巡はあったものの、しかしそれは容易く片方へと傾き――決断はなされた。

しばらくの後。
山の裾野の一角に、ざくざくと土を踏みしめそこを街のある方角へと下っていく静留の姿があった。
乱雑に樹木が立ち並ぶ暗がりの中をすり抜け、文字通り逃げるように進んでいる。
それはつまり、見つけた獲物は獲り難しと見送ったということに他ならない。


「(考えが甘い言うんはわかってる。……けど、一個しかない命。ただであげることもあらせえへん……)」

心の中の秤。その片方に載っていたのはなつきを守るために彼女の敵たる存在を討つという目的だ。
この殺し合いのゲームとやらが最後の一人以外は決して勝者と認めぬのなら、己も含めなつき以外は全て落とすべき存在である。
先ほど出合った眼帯の男が何時か敵となる可能性はゼロではない。
ましてやなつきと相対する可能性があるのならば、誰彼の区別無くここで討って落としてしまいたい……という考え。

そしてもう片方に載っていたのはなつきを守るために己が命もまた大事にするということ。
彼女を守るべく動いている人間が己一人と言うのならば、ゲーム半ばで無駄に命を散らすのは得策ではない。
あの眼帯の男の力量はどう見積もっても自分以上。
そしてまた彼はこちらが向かえばそれを討つのに躊躇いはしないだろうとも思える。
試しに打ちかかり、失敗したならば命乞いをすればいいなどというそんな無様な真似も決して通じはしないだろう。
ならば、一度は見逃してもらった命を無駄にすることはなく次の機会を待つというのも……一つの選択。
「(いらちのあの子が突っかかれへんかは心配やけど、十中に八九は問題あらへんはず……)」

天秤に載せていたのは己の命だけではない。
山を降りるもう一つの要因としては、彼が少なくとも今は積極的に人に襲い掛かるような人物ではないと考えられることもある。
事実、自分という危険だと判明している相手に対しても積極的ではなかったことがその証明だ。
それに加えて彼が口にしていた首輪を求めているという言。
想像してみるならば恐らくは主催者の縛より放れこの島よりの脱出を目論んでいるのだろう。
口振りからすればそこに思い当たる所があり、他を無視してそれを成そうとしているのではと思える。

「(せめて、なつきのことをよろしく言うとったほうがよかったやろうか……)」

それは虫のよすぎることかと静留は暗闇の中で一つ苦笑する。
無視してくれるだけでも上々なのだ。藪をつついて蛇が出てきたならば元も子もない。
この島から抜け出す手段があるというのならそれは一考の価値があるかも知れなかったが、しかし所詮はそこまでだ。
島から逃げ出すということが主催者より逃げ出すことと同義かというと決してそうとは思えない。
曖昧で保障もなく、都合のよい希望に惑うは愚の骨頂。
やはり、愛するなつきを生き残らせて優勝させる――それしか道はなかった。


ざく――と、もう一歩。決して早くはないが弱った身体に気で鞭を入れ静留はただただ山を降り続ける――


 ◆ ◆ ◆


山を降りはじめて小一時間ほど経ちそろそろ街に出ようかという頃。
静留の動きは先よりも目に見えて緩慢となり、揺れる髪は儚げに、足音は弱々しくなっていた。
一つ二つと気を張る山場を越え、さて街に下りれば一休みもできるだろうと考えたのが悪かったのだろうか。
それとも真っ暗で単調な木々の中を取りとめもなしに進んでいたのがいけなかったのか。
必死の思いで張っていた気が僅かに緩み、無視していた疲れと痛みが重く圧し掛かってきていた。

「ここはあんじょうきばらな……なぁ…………」

静留を蝕む数々の負傷が主張を強くし、彼女の足を強く引っ張っている。
肉を抉り取られ感覚の鈍い手首。血を流し錘が入ったかの様に重い脚。罅が入り呼吸を妨げる肋骨。
打身の数は数え切れず、後頭部の鈍痛は時が経つと共に重さを増してくる。
加えて、数時間ほど前に湖の中へ飛び込んだことにより全身はずぶ濡れで、夜風に熱を奪われた身体はまるで石の様。
この一日足らず、駆けずり回り戦い通しでろくに休まず、また喰うものも僅かだったが為に疲労の量を示す針は頂にまで達していた。

「…………えらい暗いわぁ」

往く先。目の前の景色はその先の運命を暗示するかのように暗く、静かで、寂しい。
失われた血の量が多すぎたのか、湖に飛び込んだせいで風邪でもひいたのか、目が霞む。
曖昧模糊な道行。
しかし彼女はただただ進む。
選んだ道は一つでそれ以外は無い。とするならば、進んでいる限りは間違いではないとまるでそう言うかのごとく。

撓み崩れそうになる身体を気迫の糸で縛り上げ、修羅は闇夜を一人往く。

そしてまた少しの時間が経ち、静留はついに山を抜け月光を全身に浴びれる所まで辿りついた。
それで身体が癒されるわけではないが、白い光の雨は鬱々とした暗闇の中にいるよりかははるかに清々しい。
一呼吸。軋む身体の悲鳴を無視し大きく透明な空気を取り込み、そして明るく輝く白い月を見上げる。

「――――あ」

そう、月を見上げ彼女はそれに気付く。気付いてしまう。
白い月の傍らに紅く輝く妖星――姫星。それが、いつもより大きくはっきりと禍々しく輝いていることに――
 ◆ ◆ ◆


「(今の今まで気付かへんかったいうんはおかしい……せやったら、涌いて出てきたいうんやろうか。……いや)」

一度二度と見直しても紅く輝く媛星は無くなりはしない。
無かったはずの――ここには無いと思っていた媛星は現実として見上げる夜天の中に存在していた。
それは何故か?

「(――現れたんやない。”見える”ようになったんやわ……今頃になって……)」

静留はこのゲームのルールを神崎が説明していた時のことを思い出す。
そこで彼はこう説明していた――力は制限されており、そしてその制限は時間の経過により解放されてゆくと――
つまりは媛星は急に現れたのではなく、実際にはその逆。
ついさっきまではHiMEの力を制限されていた静留の方が見えていなかっただけ……と、そういうことに違いなかった。

「せやいうことは――……」

HiMEには二つの力がある。
一つはHiMEに備わった高次物質化能力により虚空から武器を取り出す”エレメント”の力。
これには制限が掛けられておらず最初から問題なく使用できた。

もう一つは”チャイルド”と呼ばれる力。
触媒と呼ばれる愛する人への強い想いと媛星の力とが感応して呼び出される魔獣――想いの子。
これはゲームが開始された当初は使用できなかった。
HiMEの運命を束縛し、またHiMEたらせる媛星の存在がなかったのだからそれも当然と言えた。
そして現在。
彼女達に掛けられていた制限というものは緩み、空に浮かぶ媛星を見せている。
これはHiMEとしての力が十全に使えるようになっていることを示していると言えるだろう。


つまりは、”チャイルド”の召喚も今ならば可能だと――


 ◆ ◆ ◆


月光に照らされる蒼い草原の中で静留は神妙な面持ちで媛星を見上げ、そしてその視線を地へと下ろした。
目の前にはチャイルドを呼び出すに十分な広さをもった空間がある。
チャイルドが本当に召喚できるのかどうかを確かめるのならば、後は実際に試してみるだけでそれは容易い。


チャイルドを召喚するに必要な要素は先に述べたように2つある。
一つは今現在天上に浮かぶ媛星――正確にはそこから零れ出てくる星の力。これがチャイルドの原型となる。
そしてもう一つは触媒。そのHiMEが最も愛し想う者。その者への想いがそのままチャイルドとの契約となる。

静留にとっての触媒は彼女が愛してやまず、またこの殺し合いの中で守ろうと躍起になっている”久我なつき”である。
つまり逆から考えれば、チャイルドの召喚の成否が彼女の生死の判定にそのまま結びつくとそういう訳でもあった。


静かに息を吐き出すと静留は目の前の空間に集中し清姫を呼び出そうと試みる。
もし現れなかったら……と考えると身が竦んだが、しかしやはり事実を知りたいという気持ちの方が勝った。
どちらにせよ近くある放送で知らされるのならばそうは変わりはしない。ならば少しでも早く決心したい。
「――清姫、おいで」


その囁きに応じたのか、次の瞬間景色が歪み彼女の目の前へと巨大な影が浮かび上がる。
蜃気楼のように朧なその影は見る間に存在感を増してゆき、数秒と待たずに実体を持って顕現を果たした。

それぞれが人を丸呑みにできほどの巨大な顎を持った六つの蛇頭。
六体の蛇は根の部分で一つに繋がり、そこから伸びるのは更に二周りほど太くそして長大な尾。
鎌首を擡げればその高さは10メートルほどにはなり、その異形は”八岐大蛇”を連想させる。


透き通るような真白の月下にこの地において初のチャイルド――清姫が遂にその異形を現した。


◆ ◆ ◆


また少しの時間が経ち、静留は街中にある大聖堂へと辿りついていた。
なつきの生存が一応でも確認できたのなら、放送までの少しの時間を休息に使おうと考えたからだ。
一息つくためならば別にそこらの民家にでも入り込めばそれでことは足りたのだが、
しかし清姫の巨体も一緒に隠せるほどとなると近くにはそこしかなかったので彼女は少し足をのばした。

清姫にしても別に召喚したままでいる必要はない。
そうなのだが、しかしもし次に試みた時に召喚できなかったらと思うと……、
その時になつきの死を知ることになるかもと思うと、その恐怖に静留はチャイルドを消し去ることはできなかった。
結果、静留は清姫の蛇頭に腰を下ろして夜の街を進み、そして大聖堂へと行き当る。
「しかし、えらい散らかりようで……」

清姫を端の暗がりの中へと寄せると、静留は聖堂の中を振り返りその惨状に溜息と苦笑が半々の息を漏らした。
空から爆弾でも落とされたのか、一方の壁には大穴が空き天井も半ば失われそこから月を覗かせている。
明かりを必要としないのはありがたかったが、吹き込む風はひやりと冷たかった。

「……清姫は行儀ようしとるんよ」

一つ身震いすると、静留は着ている制服に手をかけそれを身体から滑り落としてゆく。
所々に血痕の残る破壊と死の舞台の上で露にされる裸体はやはり修羅のそれである。
染み一つなかった白い肌は今や見る影も無く、青と赤と黒が斑と――まるで鬼の彫り物かといった風に浮かんでいた。

なんら感慨はないのか、静留は鞄の中から一枚のシーツを取り出し羽織ると椅子を一つ起こしその上に蹲る。
想い人を守るために修羅と化すと決心したからには、泥をすすり石に噛り付いてでも生き延びなければならない。
味覚も麻痺したのか、灰の塊にしか思えないようなパンを齧り、静留は生にしがみつく。


修羅の姿。修羅の想い。修羅の眼差し――紅く浮かぶ妖星を瞳に映し、思考し、思いつめ、想いつめる――


◆ ◆ ◆


「(清姫は召喚できた。せやけど、それは――…………)」

暗がりの中でとぐろを巻く巨蛇の力は凄まじい。
チャイルドがいれば、ここから先の闘いは独りであった時と比べれば格段に楽となるであろう。
本来なら手が届かないような相手と相対しても、おめおめと逃げ出す必要も無くなるかも知れない。
同時に、なつきもチャイルドを召喚できるようになっているのだとしたら、それも安心できる一つの材料だ。
だが、しかし――
「(うちが負けたら、なつきが……死ぬ)」


――それ相応のデメリットもまた存在した。

チャイルドとは想い人の命を賭けて契約することで得られる力。
その契約が破綻――チャイルドが敗北し失われれば、当然の帰結として賭けていた想い人も失われることになる。
静留の場合、その想い人――チャイルドの触媒は久我なつき。
つまり、今彼女は久我なつきの命をその背に直接負っていると、そう変わらない状態であった。

また、逆の場合としてチャイルドより静留が先に死んだとしても、それは都合のいいことではなかった。
契約者であるHiMEを失ったチャイルドはただの暴走する力――オーファンと化し、触媒を喰らおうとする。
オーファンはこの島の中のどこかにいるはずのなつきを誰よりも上手に探し出し、襲うだろう。

「(もう、適当なところできりようあげるっていうんは無し、ていうわけやね……)」

死力を尽くし、あらかたの敵を蹴落とせば修羅として戦場に散る。散ってもいいとは考えていたがそれはもう叶わない。
これより先一切の敗北は許されなくなってしまった。
自らの死が愛する人の死に直結する――手に入れた力よりもそのリスクに静留の身体振るえ、竦む。

「(なつき…………)」

赤毛の少年。眼帯の男――チャイルドがいてなお勝てるかどうかわからない、そんな存在に心当たりがある。
そしてそんな人間は彼ら2人だけとは限らない。
それならば、清姫の存在は足枷にも近かった。守りたいが故にますます戦えなくなってしまう……。
修羅の道。
一本だけだったそれをただ邁進すればいいと考えていたのに、それは急速に狭くなり最早一本の糸のよう。
そしてここに来て戻ることも、道半ばで倒れることすらも許されなくなってしまった。
どれだけ心細く危うかろうとその一本の糸の上を渡らねばならぬのだ――流れる時もまた愛する人を奪うが故に。


放送までの間もない時間。静留は蒼くなった唇を噛んで震えを堪え、耐え忍ぶ。そして――


 ◆ ◆ ◆


 ”――私、極上生徒会書記の蘭堂りのです――”

それは唐突に始まり、放送の後に動こうと支度を進めていた静留をひどく驚かせた。
あらかたの荷物を纏め終わり、その中にあった一着の着物に袖を通していた彼女は一旦それを止め耳をすます。

 ”――みなさんに、伝えたいことがあります――”

しかしそれが音として聞こえてきているのではないことに気付く。
元々そういうことができる人間だったのか、それとも自分と同じように今になって力が開放されたのか、
ともかくとして静留はその声に耳を傾けてみた。

 ”――えと、なんて言おうかな……あの、もう、やめません……か?――”

ドクンと心臓が強く波打つ。
誰に向けての言葉か、何のための言葉か、もうこれだけで察することができてしまったから。
咄嗟に耳を塞ぐ……が、しかし心に直接伝わるその言葉は容赦なく静留の中へと入り込んでくる。
 ”――こんなことを続けても、みんなが悲しむだけだと思うんです。仕方ない、っていうのもあるんだろうけど――”

仕方ないのは百も承知。解っているのならば口を閉ざせと静留は声の主へと罵声を飛ばす。
だがしかし、彼女の言葉は向こうへとは伝わらない。ただ、向こうからの想いが伝わってくるだけ。

 ”――だからって、それじゃあ悲しみが続くだけだから。連鎖は、誰かが断ち切らなきゃダメだと思うから――”

どこかで聞いたようなことだと毒づき、そして静留は一人の少年のことを思い出す。
彼も哀しみの連鎖を断ち切ろうと訴えていた。死者として名前を読み上げられたことはないが今頃は何をしているのか。

 ”――子供っぽい、調子いいこと言ってるかもしれないけど、私は、みんなに笑って欲しいんです――”

子供っぽく、そしてやはり調子のよいことだと静留は失笑を漏らす。
そんなご都合が通じるならばここに修羅は立っていない。愛する者の為に心軋ませる鬼は存在しない。

 ”――みんなに、みんなにとっての、極上な日々を目指して欲しい。それだけが、私の望みです――”


……極上な日々?
その言葉に、静留は記憶の川を遡り、黄金に輝く日々に、極上の日々にへと――思いを馳せた――
 ◆ ◆ ◆


風華学園生徒会会長である藤乃静留と、学内随一の問題児である久我なつきの出会い。
それはお話として語るならば、陳腐なほどにありふれていて、また美しくも悲しいものであった。


最初の出会いはまだ新緑が目に眩しい頃。
学園の規範を守るべく活動する執行部に呼び出されたなつきを生徒会室で見たのが全ての始まりだった。
一度だけならば気にもとめなかっただろうが、それは二度三度と続き程なくして珍しい光景ではなくなる。

生徒会室の常連となり、毎回犬のように執行部へと噛み付くなつき。
静留が彼女へと声をかけたのは、最初はただのおせっかいだったのかもしれない。
会う度に、交わす口数が一言二言、三言四言と増えてゆき次第に打ち解けあうようになる。

静留が新鮮だったのは、なつきの誰に対しても物怖じしない態度であった。
良家のお嬢様であり誰に対しても丁寧を強要され、また他からもそうされ続けてきた人生。
そんな風に生きてきた静留にとって、なつきのぶっきらぼうで思ったままにぶつけてくる言葉はとても心地よいものだった。

ある日、執行部に捉まっていたなつきを機転を利かせて逃したことから二人の仲は進展を見せる。
その頃から二人は互いに名前で呼び合うようにもなっていた。

なつきには何やら重い事情があること、そのために危険を伴うことをしていることには気付いていたが、
しかしそれを打ち明けないのは、彼女がその優しさゆえに自分を巻き込まぬようにしているため。
そう理解していた故に静留はそれを黙認し、できうる限りの協力をした。

己が彼女に想う心もそっと伏せて、今の極上の日々を守るために――……
そして月日は経ち、静留はHiMEのことを知り、自身もHiMEとなる。
その時から彼女はなつきのために命を使うと決めている。
なつきも、なつきのチャイルドを討つこともできない。触媒が彼女である故に自らのチャイルドを捨てて権利を放棄することもできない。


最初から死ぬつもりだったのだ。


故に、藤乃静留に――HiMEという運命に捕らえられた彼女に、取り戻すべき”極上の日々”などというものは存在しない。


 ◆ ◆ ◆


静かな、夜風もなく月光だけが無音で差し込む静謐な聖堂の中に、美しい修羅が独り無音で立っていた。

絹織りの純白の――まるで死装束の様な振袖に身を包み、静留は粛と立ち時が過ぎるのを待つ。
その姿に先程までの疲弊した面影はない。身体の調子は変わらずとも決心が芯となり彼女を立たせたいた。
後、百も数えぬ内にこの島での丸一日は終わりを告げ、そして新しい一日が始まる。
その一日が始まれば、美しい鬼女は決して戻れぬ修羅の道へと足を下ろす。


守るべき久我なつきが何処にいるかは全くの不明。当てもない。
だが目の前の清姫を見れば生きているのだけは分かるし、静留にとってはそれで十分だった。後は決めたことをこなすだけ。

赤い血で手を汚した己に最早愛される資格はなし。ならば修羅に成りきればいい。
藤乃静留であることすらも忘れて、この夜に修羅の道を真っ当するまで。

失敗は許されない。最善はなつき以外を全て討って落とした上で自害し、清姫を彼女に討ってもらうこと。
そのための毒――シアン化カリウム入りカプセルも、都合よく手元にある。まるで宿命かのようにお膳立ては揃っている。

なつきは……悲しむだろう。優しい子だから、きっと絶望の淵にまで追い込んでしまうに違いない。
しかしそれも生きていればいつかは癒える。
例え消えない傷が残ろうとも、何かが破綻しようとも綺麗な死などという都合のいい夢は見ない。
愛する者は全力で生かす。生きていなければ所詮は全部嘘で、現つは現つで夢は夢。逃避はしない。

月が天上の最も高いところを超えたならば、そこからはもう唯の修羅。
戦うことに残された時間は少ない。なので一心に、他の全てを捨て唯一人の阿修羅姫に。


だから、それまでの内に終わらせておこう。
内に残った人としての最後の心。
それを涙と流しておこう。
流し尽くしておこう。



美しい阿修羅姫が独り。月下の中で白く白くただ静かに、ひっそりと悲恋を嘆き涙を流している――……





【E-3 大聖堂/一日目 真夜中(放送直前)】
【藤乃静留@舞-HiME運命の系統樹】
【装備】:殉逢(エレメント)、清姫(チャイルド)、真白な振袖
【所持品】:
 支給品一式×3、シアン化カリウム入りカプセル、愁厳の服、シーツ、首輪(刀子)
 古青江@現実、虎竹刀@Fate/staynight[RealtaNua]、包丁2本、コルト・ローマン(0/6)
 ビームライフル(残量0%)@リトルバスターズ!、ラジコンカー@リトルバスターズ!
 木彫りのヒトデ1/64@CLANNAD、玖我なつきの下着コレクション@舞-HiME運命の系統樹
【状態】:疲労(中)、全身(打身)、後頭部(打撲)、左太股(刺傷)、左脇腹肋骨(罅)、左手首(銃弾による擦過傷)
【思考・行動】
 基本:修羅となりて、自分も含めたなつき以外の参加者を皆殺しとする。
 0:放送を聞く
 1:人を探し出し、なつきでなければ殺害する。
 2:なつき以外の全員を殺害し終わったら自害する。
 3:清姫(=なつき)がやられることだけは絶対に回避。
 4:眼帯の男(九鬼耀鋼)、衛宮士郎など強者を警戒。
【備考】
 ※登場時期は”星詠の舞”が始まるより前です。
 ※チャイルド(清姫)を召喚できるようになりました。
 ※士郎より聖杯についての情報を得ました。

207:Is it justice? No, it is a cherry blossom 投下順 209:第四回放送―Reason To be ―
205:CROSS††POINT 時系列順 206:奈落の花
203:エージェント夜を往く 藤乃静留 219:relations


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