ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

哀しみと真実と

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哀しみと真実と ◆UcWYhusQhw



唯、全てが哀しかった。
ほんの少しの間の出来事でしかないというのに。

何もない。
元通りに戻ればいい。

哀しむ必要も。
嘆く必要も。

そんなのもの必要が無い。

必要などない。


私――深優・グリーア――はアリッサ様の為に。

血塗れる事も。
全てを捨てる事も。

決意をしたはず。

なのに。

なのにどうしてこんなにも迷い哀しむのだろうか。


二人の人間。
どちらもほんの僅かの邂逅だった。

なのに。
なのに。

こんなにも心に残る。


全てを救おうとした如月双七。
如月さんを失い憎悪に支配された九鬼耀鋼。
それでも彼は最後に自らの弟子と同じ行いをした。

そして二人とも逝った。

私にとってアリッサ様に比べればとても小さい存在。

それなのに。

それなのにこんなにも哀しいのだ。

何故でしょうか?
どうしてでしょうか?

そんな言葉が反芻し、消えていく。

ああ。

私は唯、アリッサ様のだけでいいのに。
なのに、なのにどうしてこんなに哀しいというのか。


私は……

私は何をしたいというのだろうか。

解らない。
解らない。

アリッサ様の為にというのは解っているのに。

この哀しみが。
このどうしようもない想いが。
あの二人との邂逅が。

私を苦しめる。

何故。
何故。

こんなにも迷うのだろうか。

一体何が……




――――ああ。


今。

理解できました。

それは私に生まれてばかりのもの。

それはとても不思議なもの。

暖かいようで冷たくもあり。
小さいようでとても大きい。

言葉で現すのがとてもとても難しい。
私が知りゆる全ての言葉をもってしてでも表せない。

とても。

とても不思議。


そうそれは『感情』といわれるもの。


この想いが、感情が苦しめる。

私はアリッサ様だけでいいというのに。
私はアリッサ様の為だけのものなのに。

何故、何故それ以上のことを考えてしまうのでしょう。


色々な感情が織り合い鬩ぎあって。

私は苦しめる。


私はどうしてこんなにも迷うのでしょう。

こんなに。
こんなになるというなら。


―――――『感情』などいらなかった。


私はアリッサ様だけでいいというのに。

アリッサ様しかいらないというのに。


ああ。


こんなにも。

感情は。

重くて複雑ものなのでしょうか。



それなら。
それなら私は。


ふっと力が抜けていく。

身体が。
心が。

限界だった。

身体がいう事を聞かない。
次第に意識もあやふやになっていった。


そして

私を絡み付けてる鎖ごと川に落ち流されていく。

哀しみに心が押しつぶされる前に。
自分がわからなくなる前に。

私は自分を手放した。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「さてと……どーすんの?」

赤毛の妙齢の女性――杉浦碧――がコンクリートに座りながら二人の仲間――アル・アジフ羽藤桂――に尋ねる。
碧の視線は一つの小屋に。
そこに眠る二人の人物――深優・グリーアと吾妻玲二――の事を。

碧と桂がアルから折檻を受けている時、橋の方から聞こえた爆音。
その音に導かれ橋を訪れた時三人は唖然とした。
橋の中央部が崩れていたのだから。
兎も角生存者をと探していた時に偶然にも岸に辿り着いていた気絶していた深優たちがいて。
そして助け出し近くの小屋のベットに休ませ現在に至る。

だが、碧達は知っていた。
深優と玲二が危険人物である事を。
正直助ける事すら戸惑っていた。
だが桂が助けると譲らなかった故にとりあえず最低限の救助を。
しかしこれからどうするかと。
殺し合いに乗っているのならば拘束、この場から退避しなければ自分たちの危険であるのだから。

「とりあえず話し合ってみようよ。何が起きたか分からないんだし」

そう真っ先に応えるは桂。
そもそも殺し合いに乗っている以前にあの橋での惨状。
普通の人間ができる事ではない。
だから、まずは現状把握をすべきと。

「……しかし、未だ生き残りの中にそのような事ができるものが……」

アルが疑問を言う。
もし、参加者の自力で橋を壊せるというのならそれは間違いなく力のアル参加者であるという事。
殺し合いも一日が終わりもう残り20人近く。
もしそれが敵ならば……脅威であると。

「んーーー。もしや……でも深優ちゃんはHiMEじゃないし……」

碧が考えるのはチャイルドの仕業。
橋を壊す。
そんな事ができるのは碧が知る限りではチャイルドでしかない。
しかし、HiMEとしてこの場に呼ばれたのは碧となつきのみ。
同じ知り合いである深優が橋の近くにいたのだが可能性はあるといえばあるのだがそれでもないと踏んでいた。


疑問が深まる中、それは起きた。

「アリ……ッサ様……じゃない……私は……なん……の為に」

小屋から出てくる深優。
しかしその目は虚ろで。
ヨタヨタと全く自分の意志を感じない足取りで。
幽鬼の如く佇んで。

そして。

「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


咆哮。

世界を隔絶するが如く。
全てを排除するが如く。


唯。

咆哮が響いていた。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





ふと、私は目を醒ます。
辺りを見回すと簡素な小屋の中に私はいて。
私はベットで寝ていて。
隣のベットには玲二が寝ていた。
彼も無事だったらしい。
どうやら私は助けられたらしい。

それでも。

未だ私は哀しかった。

何処か空虚で。

とても。
とても。

哀しかった。

私は何をしたいんだろう。


解らなかった。

アリッサ様の為に。

何かを考えないければいけないのに。
全く考えられなかった。

心が哀しくて。



終わる事のない哀しみが私を襲い続けているようで。


私は……


「ん……?」


そんな時、私は今まで存在していないはずがプログラムが記録されている事に気付く。
今までそんなもの認識していなかったはずなのに。
なんだろうか?
凄く気になり始めていた。

私は疑問に思いつつもそれを調べてみる。


入り込んでくる情報。

しかし
「え……?」


最初に入り込んできた情報に唯、絶句するしかなかった。
そして一旦情報をアクセスする事を止める。


それはアリッサ様の事。


いえ、違う。


それは『アリッサ・シアーズ』であり『アリッサ・シアーズ』ではないもの。


そう、博物館の時、調べてた紅い目をしたアリッサ・シアーズの事。
そのアリッサ・シアーズが主催陣営としてこの殺し合いの場所にいるという事。
そして、私が見せられたアリッサ・シアーズはこのアリッサ・シアーズである事。

つまり……
つまり……


私が助けようとしていたアリッサ様は。


既に

ああ

既に
死んでいたままであった事。


私は


私は


騙されたという事。



あ……


あああ。


「アリッサ様……ではなかった。偽者だった……私は……騙されていた!」

私はたまらずおきて歩き出す。
何処に向かうか分からないまま。

私は。

私は道化だった。


じゃあ私は何をしてきた?

アインを襲い
ウィンフィールドを殺し
鉄乙女を外道に落とし
蘭堂りのを撃ち
玖我なつきを騙し
山辺美希を警戒し
吾妻玲二を利用し
ユメイが死ぬを黙って見ようとして

九鬼耀鋼を苦しめそして私のせいで死なせ
如月双七を哀しませ彼を死なせそれでも自分のエゴを貫き通した。

でもそれは全てアリッサ様のためだった。

アリッサ様を救う為。
アリッサ様の為に。

どんな手を汚す事もためらわなかった。
なのに。
それなのに。


アリッサ様はもう存在していなかった。

私は憐れな道化でしかなかった。

私はただ、命令にしたがままの機械だった。


私は


愚者でしかなかった。



そしてアリッサ様がいない。

私の存在理由であるアリッサ様がいない。


もう何処にもいない。


私は何の為に生きている?

私は何の為に

何の為に

ナンノタメニ?


「アリ……ッサ様……じゃない……私は……なん……の為に」


ああ。

哀しい。

なんでしょう。

この気持ちは

感情が。

溢れて。
溢れて。

私は。

私は。

ああ

あああ。



何を。


今まで。


分からない。


ああああ。


想いが。

想いが溢れて


ああああ。


私……は。


私は……


ああああああ


アリ……ッサ様。




「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


吼えた。

何がよく分からないまま。

ただ、感情のまま。

そして天使の羽の顕現。

カマエルの光臨。

存在意義を失った私。


そして私は

感情のまま。


力を発現させた。

舞い降りる雷。

それは唯

私の感情が如く。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




声。

俺を呼ぶ声が聞こえていた。

それはとても愛しい人の。
大切な、大切な人の。

声が。

「……玲二」

玲二と。
優しい声で。

その声の持ち主を忘れるわけが無い。
大切な人。
キャル。

キャルの声が聞こえる。


そうか。
俺は死んだのか……?

無理もない。
うたれて川に落ちたのだから。
死ぬ可能性の方が大きいだろう。


そうか……

俺は
「馬鹿か?……玲二」


は?

キャル?


「くたばれるのか?……あいつらに何もしないまま」


……いや。

まだだ。

まだ。


くたばれない。

主催者に何もしないまま。

俺はくたばれない。

くたばってはいけない。


「なら……未だ来るな……向こうでお前の助けが必要な人がいる」

キャルは笑って言う。
……いるのか?

……ああ。
あいつか。
必要なのかは知らない。
でもそれ以前にここで立ち止まるわけには行かない。


「玲二……ファントムのツヴァイとして任務を」

キャルは言う。
しっかりと俺を見つめて。
凛として。


「主催者を撃ち殺せ。弄んだ奴らに鉛玉を。慈悲もなく。撃ち込んでやれ」

キャルが告げる。

吾妻玲二がファントムのツヴァイとして生きる理由を。
俺らを弄んだ奴らに反逆の牙を。
復讐の為に。


「了解した……俺の最も大切な人」

そして俺は任務を受ける。
ここからはもう二度と立ち止まる事は許されない。

奴らを殺すまでには。

もう二度と地に伏せる事は許されない。

それが俺の役目。
キャルにできる事だから。


「幸運を……最も大切な人」

キャルが手を振るのを見る。


ああ受け持った。

だから、もう少し待っていろ。


俺は……。


必ず!


そして意識を覚醒させた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「……チャ……チャイルド!……深優ちゃんがまさか」
「くっ……桂! 止めるぞ!」
「う……うん!」

唸る雷。
舞う光の羽。

碧達は唯、唖然、そして驚愕していた。
突如舞い降りた想いによって紡がれた雷の天使。
そして、深優の手に顕現された天使の羽。

それが一斉に暴れだし明るくなってきた空をさらに光で染める。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

しかしその力には殺意はこめられていなくて。
篭められいてるのは『感情』
あふれ出して止まらない哀しみが。

唯、空を舞っていた。

殺意が篭められていない証拠に光は決して碧達を狙うわけでもなくて。
ただ、子供のように空に放つだけ。
それはどこにも当たる訳でも唯真っ直ぐに空に向かうだけ。

ただ、剥き出しの『感情』

行き場の無い『感情』

その哀しみを。



深優は顕現させていた。


「……でもアルちゃん……あんなのどうやってとめるの?」
「……どうやってではない! どうしても止めるのだ! 殺意が無くても危険なものだ!」

桂の不安にアルが応える。
正直な話、アルにも止められるかどうか解らなかった。
この力が制限されている中でのマギウスによる戦闘。
九郎が居ない今、桂と協力するしない。
だが、桂はいまだに戦闘経験不足。
その上であの天使勝てるかはきついものであった。

しかし、諦めるわけには行かない。
アレをとめない限り自分たちに勝利が訪れ無いのだから。


(……顎天王!……どうして!……わたしは……)

その傍で碧は唯、無力を感じていた。
深優が出現させたチャイルド。
チャイルドが出現できる環境になったのであろう。
その筈なのに自分のチャイルドである顎天王は出現させる事ができない。

自分に何が足りないのか。
自分は力が足りないのか。

そう碧は想い……唯、無力を感じていた。

もっと

もっと

力をと。



そしてアルと桂が戦いに備えようとした瞬間、それは響いた。



「深優・グリーア!」


一発の銃声。

それは深優を呼び戻す声と共に。


空に放った銃弾。


深優は攻撃を止め哀しみにくれたまま顔を放った持ち主に向ける。


「……玲二」


そう、放ったものは幻影。

ファントム、吾妻玲二。

ボロボロになった身体を引きずりながらも尚もここまでやってきた。
全ては深優を止める為に。

玲二にそんな義理もない。

だがそうだとしても。

自分と同じように存在意義を失った自分と似た者を放って置くわけには行かなかった。


「深優・グリーア。暴れるのがお前の意志か?……それがお前の答えか?……ならこの場で殺す」

玲二は告げる。
もう、何度告げるか分からないこの言葉を。
もし、深優がアリッサの為に暴れるという事。
それしか出来ない人形であるなら。

殺すと。

だが玲二は思う。
それでいいのかと。
深優はそれでもアリッサの為に。
それなのに今は我を失い暴れるだけ。

それを

「本物のアリッサはそれで報われるのか?」
「……アリッサ様が?」

本物のアリッサを望むのだろうか。
深優が愛したアリッサ・シアーズはそれで救われるのだろうかと。

応えはノーだ。

そして玲二は深優の事を想う。

思い出すのはほんの前のこと。
大切な人を失った時の事。
あの時、自分は迷った。

その自分と深優は……そう。

「深優……俺とお前は似ている」
「……え?」
「目的と存在意義を失い……迷う」

あの時、自分は自分を失った。
どうすればいいか。
少しの間でも迷った。
キャルの為にやって来たこと。
それが否定をされた気がして。
どうすればいいのかと。

だがしかし。

それでも、玲二は。

吾妻玲二の存在意義はあくまで

「だが……それでも俺の存在意義は『キャル』という大切な人の為だ」

キャルという大切な人である事は変わりないのだから。
たとえ、それがどうであろうとも。
吾妻玲二は変わる事はない。

この殺し合いでも。
どんな時でも。

一生迷うことは無い。

そして、深優に問う。

似ている者に。

「深優、お前は違うのか?」
「私は……それでもアリッサの為」

例え、アリッサが偽者だったとしても。
それでも、今までやってきたことはアリッサの為である事は間違いないのだから。

例えそれが道を外れた行為だとしても。

深優・グリーアはどんな時でもアリッサ・シアーズの事を思い続けて居たのだから。


それは、アンドロイドではなく『ヒトとして』

深優は変わらなかったのだから。


ならば。


「ならば深優。『アリッサ』の為に。お前が信じる『アリッサ』を侮辱されない為にも。お前の最も大切な人に。
 お前が出来るものは何だ? お前の意志は何だ、深優・グリーア? 例え今までのことがアリッサのことにならなかったとしても
 今、『アリッサ』の為に自分の意志で、できる事は何だ?」
「私の……意志」

例え今までの事がアリッサの為にならなかったとしても。

今、この瞬間から。

深優・グリーアがアリッサ・シアーズの為に。

改めてできる事を。

玲二は問う。

深優の意志を。

深優のアリッサに対してできる事を。


似た者同士として。

深優・グリーアが掴み取る道を。

聞く必要があった。

聞かなければならなかったから。

だから玲二は答えを待つ。

深優の意志を。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





228:a visit to O's grave 投下順 229:反逆の狼煙、そして受け継がれる遺志
227:この大地を残酷に、美しく照らす 時系列順
深優・グリーア
吾妻玲二
222:幻視行/Rasing Heart 杉浦碧
羽藤桂
アル・アジフ

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