ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

FO(U)R(Ⅳ)

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FO(U)R(Ⅳ) ◆LxH6hCs9JU



 ◇ ◇ ◇


「とりあえずの処遇が、レーダーを預けて見張り番とはね……信頼されてるんだかされてないんだか」

 十字架が指し示すのは、白い雲が流れゆく様。屋根の上から窺える晴天は、不穏とは無縁の暖かさ。
 陽だまりの素晴らしさを肌で感じつつ、那岐は遥か頭上に聳える巨大隕石を睨みつける。
 白い雲を突き抜け、青い空を越えた先、広大な宇宙の入り口あたりまで、媛星は迫っているのだろう。

 ――媛星落下は、絶対に阻止しなくてはならない。

 この地にはいない姉の想いを、胸に抱いて。弥生時代から続く伝統の儀を歪めんとする悪に、鉄槌を与える。
 決意したら、あとは強かった。鬼道に縛られていたこの身は、今では自由を謳歌すること容易い。
 かつての一番地ならいざ知らず、今の一番地に那岐を再度封じ込める力などありはしないだろう。
 問題は、黒幕たるナイアの出方。今のところは味方とも敵とも言えない彼女が、どの立ち位置につくかですべてが決まる。

 那岐や参加者たちの敵か、味方か。
 神崎黎人や一番地の味方か、敵か。
 それとも、『ゲームマスター』としての単独行動に躍り出るか。

 攻め手が予測できないというのが正直なところで、不安を覚えないと言えば嘘になる。
 教会裏、二階建ての寄宿舎。那岐はその屋根の上から、厳しい顔つきで周囲一帯とレーダーの様子を確認していた。

「てけり・り」
「おっと、ごめんごめん。一人ってわけじゃなかったね。『僕に対して』の優秀な見張り番もいるんだった」

 傍らには、未だ信頼足らずの那岐を監視する役目として、ダンセイニがついていた。
 透き通った黄色の軟体に、備えた一つ目の眼光はいつもより鋭い。

「ひょっとして、筋肉チョッキ壊しちゃったこと根に持ってる……? ごめんってば」
「てけり・り」

 つーん、とそっぽを向くダンセイニ。どうやら、随分と嫌われてしまったようだ。
 那岐はとほほ、とうな垂れた。その背後、

「おや……お風呂はいいのかい? 君くらい性能のいいアンドロイドなら、入浴したって問題ないだろう?」
「必要ありません。それよりも、この機会にあなたに訊いておきたいことがあります」

 那岐もよく知る風華学園の制服に身を包んだ女子生徒――深優・グリーアが、固い表情で立っていた。
 主催側の組織、シアーズ財団に所属していた彼女は、このゲームにおけるイレギュラーケースとしてこの場に存在する。
 与えられた使命、参加者の殺害と殺戮の扇動を言い渡され、しかし今は自らの意思で、反逆を決意しここにいる。
 言ってみれば、那岐と立場を同じくする存在。那岐は一番地の、深優はシアーズの、裏切り者なのである。

「……アリッサちゃんのこと、かな」
「ええ。どのような回答が返ってきたとしても、私の方針は変わらないと前置きしておきます。
 ――神崎黎人が人質に取っているアリッサ・シアーズは、はたして本物でしょうか?」

 問う深優の顔は、常と変わらぬ無表情。那岐の眼では、その微細な変化に気づけるはずもなかった。
 ただ、なんとなく、といった根拠のみで思う。彼女は問う以前に、おおよその回答を得ているのだろう、と。

「あいにく、シアーズ側の情報には疎くてね。一番地に隠れてコソコソやってる、くらいのことしか知らない。
 けど、あのアリッサちゃんは……間違いなく、偽者だよ。君にとってのアリッサ・シアーズは、ただ一人なんだから」

 深優は反応も淡白に、毅然と返した。

「そのとおりです。アリッサ様は、このゲームが始まる以前に、私の目の前で息を引き取りました。これは、覆されることのない事実です」
「神崎黎人を殺す、っていったね。プログラムの束縛から逃れた君なら……ニセアリッサちゃんを盾にされても、平気ってわけかな?」

 深優の回答には、逡巡もない。

「殺します。アリッサ様の死を冒涜した神崎黎人を……必ず、この手で」

 命題どおりにしか動けぬアンドロイドではない。
 アヴェンジャー――立派に自立を遂げた、復讐者の姿がそこにあった。

「――喜怒哀楽に乏しい汝が言うと、味方とはいえ些か物騒だな。桂あたりに笑顔の講義でも受けるといいぞ」

 殺意すら滲み出てきた深優の背後、子供と見紛うほどの小柄な女性が、屋根の上を歩いてきた。
 身形は小さいが、態度は人一倍大きい。年齢も弥生時代から生き永らえる那岐に匹敵する少女の名は、アル・アジフ

「君もお風呂はパス? 魔導書の化身ってやつは、ひょっとして水に濡れるのが怖かったりするのかな」
「なにを戯けたことを。妾も深優と同様、汝に訊いておきたいことがあったのでな。そちらを優先したまでだ」

 狭い歩幅でせかせかと距離を詰め、寄ってくるダンセイニと戯れつつアルは問う。

「訊きたいことというのは他でもない。神崎黎人の背後に立つという黒幕……ナイアについてだ」

 問われた那岐は、顔を顰めた。ナイアという存在についてはまだまだ謎が多い。
 黒幕という言葉を用いてはいるが、実際には技術協力者やスポンサーといった立ち位置にいるのが彼女だ。
 媛星を落とすなどという馬鹿げた目的も、どこまでが本気でどこまでが冗談なのかわからない。
 神崎黎人や一番地に与する理由、那岐を泳がせておく理由、参加者に干渉する理由……考えれば考えるほど、泥沼に嵌っていくようだった。
 那岐の反応が鈍いと見て取るや、アルはさらに言葉を続けた。

「パートナーである九郎は彼奴と面識があると言っていたが、妾はナイアなどという名に覚えがない」
「まさかアルちゃんまで、ファルちゃんみたいな記憶喪失になっちゃったなんて言うんじゃないだろうね?」
「それこそまさか、だ。覚えがない、というのは少々語弊があるな……上手く言い表せんのだが、『忘れている予感』がするのだ」

 顔を顰めるのは、アルも同じだった。
 彼女自身、ナイアという存在についての考えがまとまっていないのか、言葉の歯切れも悪い。

「桂と行動を共にし始めた頃から、小さな違和感を覚えてならなかった。
 妾は初めから、このような悪趣味極まりない催しを企てる輩に心当たりがあったような気がするのだ。
 気がするだけで、名前までは出てこぬのだがな。喉の奥で引っかかっているというかなんというか……。
 まるで記憶をごっそり奪われているような、人間でいうところの、健忘症に近い違和感を味わっているのが現状だ」

 アルの語る不鮮明な違和感とやらに、那岐は頭を悩ませた。
 魔導書『ネクロノミコン』の化身であるアル・アジフ。彼女の保有する知識量は膨大だ。
 そんな彼女が、違和感を覚える、忘れているような気がする、など……はたしてありうるのだろうか。

「……ごめん、アルちゃん。君の違和感を解消できるような情報は、僕も持っていないと思う。
 そもそもナイアという存在についても、僕は一度顔を合わせて、声を聞いたくらいだ。
 その存在自体、裏切りの直前まで隠されていてね。敵なのか味方なのかも、イマイチハッキリしないんだ。
 もし君の違和感が本物で、ナイアという存在を忘れているだけなのだとしたら……早急に思い出す必要がある」

 警戒すべきは、一番地やシアーズ財団よりもまず、ナイアである。
 一度相対したことのある那岐だからこそ、あの女怪の得体の知れなさが一番の危難となる、と判断した。

「早急に、か。なかなか難しいことを言ってくれる。ファルのように、鈍器で殴ってショック療法というわけにもいくまい」
「ならば、電気ショックという手もありますが?」
「……深優。汝が言うと冗談に聞こえん」

 大十字九郎がその存在を知っていたのだ。アルともなんらかの繋がりがあると見て間違いないだろう。
 どちらにせよ、いずれナイアとはまた顔を合わせることになる。
 その場に九郎とアルがいれば、この謎や違和感の正体も判明するはずだ。

「まあ、ナイアたち主催陣営の心配をするのは……残る最後の障害を除去して、かな?」

 未だ反応の見られないレーダーを翳しながら、那岐は梯子を伝って屋根に上ってくる少年に語りかけた。
 屋根の下から、真剣な形相を覗かせてくるのは、一見して女の子のようにも思える様相。
 カウボーイスタイルの全姿を見ても、男らしい、という感慨は微塵も湧いてこない。
 彼が藤乃静留との対立の後、どうしてこんな格好に着替えたのかは、那岐も知らぬところである。

「君もなにか、僕にご質問かな……クリス・ヴェルティンくん?」

 ウエスタンブーツを履いた足でつかつかと歩み寄り、クリスは那岐に問うた。

「ユイコは……ここに来るかな」
「どうだろう。ユイコちゃんは君に会いたくないみたいだし、君がここにいることは知っているだろうし。
 かといって、各地を周旋し続けるというわけにもいかない。なんせ、唯湖ちゃん以外の参加者は、みんなここにいるんだから」

 最後のゲーム賛同者にして、ここにはいないただ一人の生存参加者、クリスと最も縁の深い――来ヶ谷唯湖
 彼女はクリスのために、今も殺し合いを肯定している。
 残るを十三人を敵に回したとしても、クリスを生かすために最後まで戦い抜くだろう。
 那岐の裏切りを知った主催側の動向も不穏だが、唯湖の存在も決して軽んじてはならない。
 那岐がここでこうして見張りを務めているのも、万が一の事態、来ヶ谷唯湖の襲撃に備えるためだった。

「……ユイコは、僕が説得してみせる」

 那岐の隣に腰を下ろし、クリスは重々しげに呟いた。

「哀しみの連鎖は、止めなければならないんだ。ユイコが殺し合いを続けるというんなら……僕が止めてみせる」

 クリスの確固たる眼差しが、レーダーに情熱を注ぐ。那岐の見張り番につき合う、という意思の表れだった。
 彼の世界では、今もまだ雨が降っているのだろう。それでも俯かず、正面から来ヶ谷唯湖に向き合おうとしている。
 当初の印象からはかけ離れ、クリス・ヴェルティンは来ヶ谷唯湖や玖我なつきに触れ合い、大きく成長した。
 排除――という方法以外で来ヶ谷唯湖を止められる者がいるとすれば、それは彼をおいて他にいないだろう。

(唯湖ちゃんが、クリスくんのことをどれだけ想っているかは――)

 クリスは、唯湖が殺戮に励む真の理由を知っているのだろうか。知らずとも、悟っている気配が彼にはある。
 ならば、監視者としての視点を持っていた那岐がそれを語るのも野暮というもの。
 これは彼と彼女が解決しなければならない、ある意味では男と女の問題なのだと、那岐は出掛かっていた言葉を押し戻す。

「……ならば、妾もつき合うとするかの。来ヶ谷唯湖が魔術礼装でも用いれば、レーダーなどよりも察知は早い」
「私も警戒に回りましょう。衛宮士郎を破ったのが彼女だとするなら、どのような奇襲を企てるかわかりません」
「てけり・り」

 アルと深優がクリスに同調し、見張り番は一人と一体から、四人と一体に増加した。
 なんだかんだで仲間は得られたんだな――と那岐は心中で苦笑し、再びレーダーに目をやった。
 やはり、反応はまだない。

 時刻を確認してみれば、放送がもう間もなく。
 日はまだ高く、夜の訪れはまだまだ遠い。

(さて、美希ちゃんご所望のお昼ご飯を取る時間はあるかな? 唯湖ちゃんと元マスターしだいってところかな)

 教会に集った参加者十四名、意思を持った支給品二名、一番地の裏切り者一名。
 計十七名のメンバーが、第六回放送を迎える。


【B-1 教会裏の寄宿舎・屋根の上/二日目 昼(放送直前)】


【深優・グリーア@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:遠坂家十年分の魔力入り宝石、グロック19@現実(8/7+1/予備38)、
【所持品1】:支給品一式5×(食料-2)、拡声器 、天の鎖(エルキドゥ)@Fate/staynight[RealtaNua]
【所持品2】:クサナギ@舞-HiME 運命の系統樹、双身螺旋刀@あやかしびと -幻妖異聞録-、首輪(リセ)、刹那の制服と下着、
       ファルの首飾り@シンフォニック=レイン、良月@アカイイト 、日本酒数本、首輪(宮沢謙吾
【状態】:体力消費(中)、肩に銃創(治療済み)、刀傷(治療済み)、右足から出血、全身打撲、ところどころ裂傷、全参加者の顔と名前は記憶済み
【思考・行動】
 基本方針:アリッサの生き様を侮辱した神崎黎人を殺す。そして如月双七の意志を継ぐ。
 0:神崎黎人……殺す。
 1:見張り番。来ヶ谷唯湖の襲撃を警戒。
 2:神崎黎人を殺す。
 3:如月双七の意志の下、玲二、アル達と協力。
 4:玲二の戦闘技術を盗む。
【備考】
 ※参加時期は深優ルート中盤、アリッサ死亡以降。
 ※HiME能力が覚醒しました。自分の意思でチャイルドを呼ぶ事はできません(小さな切っ掛けが必要?)。

【アル・アジフ@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式、ランダムアイテム×1、アサシンの腕、業務日誌最終ページのコピー、情報の書かれた紙
【状態】:大十字九郎と契約、魔力消耗(大)、理解出来ない不快感
 0:ナイア……いったい何者なのだ?
 1:見張り番。来ヶ谷唯湖の襲撃を警戒。
 2:ナイアの正体を暴く。
【備考】
 ※アルからはナイアルラトホテップに関する記述が削除されています。アルは削除されていることも気がついていません。
 ※クリスの幻覚は何かの呪いと判断。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、「メモリーズオフ~T-wave~」の本文参照。

【クリス・ヴェルティン@シンフォニック=レイン】
【装備】:カウガール(真)@THEIDOLM@STER
【所持品】:
 支給品一式、ロイガー&ツァール@機神咆哮デモンベイン、アルのページ断片(ニトクリスの鏡)@機神咆哮デモンベイン
 フォルテール(リセ)@シンフォニック=レイン、ピオーヴァ音楽学院の制服(ワイシャツ以外)@シンフォニック=レイン
 刀子の巫女服@あやかしびと-幻妖異聞録-、防弾チョッキ、和服、情報の書かれた紙、アリエッタの手紙@シンフォニック=レイン
【状態】:Piovaゲージ:50%、疲労(弱)
【思考・行動】
 基本:哀しみの連鎖を止める――だけどクリスができる力で。目の前の哀しみを。仲間とともに。
 基本:なつきとずっと一緒に、そして彼女と幸せになる。
 0:ユイコはきっと、ここに来る……。
 1:唯湖の説得。殺し合いをやめさせる。
 2:皆と協力し、殺し合いが終わるよう努力する。
 3:落ち着いたら、ファルとじっくり話しがしたい。
【備考】
 ※原作よりの登場時期は、リセルート-12/12後からになります。
 ※西洋風の街をピオーヴァに酷似していると思ってます
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、「MightyHeart、BrokenHeart」の本文参照。
 ※ユイコの為の”クリス君”である事を止めました。
 ※なつきと強く結ばれました。

【那岐@舞-HiME運命の系統樹】
【思考・行動】
 基本:星詠みの舞の完遂。媛星の回避。此度の星詠みの舞を破壊し、元の世界でオリジナルの星詠みの舞をやり直す。
 1:見張り番。来ヶ谷唯湖の襲撃を警戒。
 2:参加者たちと協力し、神崎やナイアへ反抗する。
【所持品】:首輪探知レーダー(残りX時間)、単三電池袋詰め(数十本)

【ダンセイニ@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:なし
【状態】:普通
【思考・行動】
 0:てけり・り(筋肉スーツ壊れちゃった……)
 1:皆のリーダー役であろうという使命感に満ちています。
【備考】
アル・アジフのペット兼ベッド。柔軟に変形できる、ショゴスという種族。
言葉は「てけり・り」しか口にしないが毎回声が違う。
持ち主から、極端に離れることはないようです。
筋肉チョッキを壊されたせいか、那岐のことがちょっぴり嫌いです。


243:FO(U)R(Ⅲ) 投下順 244:Song for friends
時系列順
高槻やよい >第二幕へ続く
アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ
ドクター・ウェスト
ファルシータ・フォーセット
山辺美希
クリス・ヴェルティン
玖我なつき
大十字九郎
羽藤柚明
羽藤桂
アル・アジフ
杉浦碧
深優・グリーア
吾妻玲二(ツヴァイ)
那岐


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