クラウディア「ほ、ほっほぉ~う。なるほど、なるほどそうなのですか」
クラウディア「
ベアトリスさんに言われたときはそんな馬鹿なと思いましたが、これはなんとも、参りましたね」
ヴィルヘルム「何がだよ」
クラウディア「ですから、私と彼が仲良くしてるとごにょごにょ、みたいな」
クラウディア「つ、つまりですね。あなたはその、私を
そういう目で見ていると?
まさか、いやいやそんな、有り得ないでしょう。何を言ってるんですか駄目ったら駄目です!」
クラウディア「ああ、なんて罪深い人なんですかあなたはっ」
ヴィルヘルム「はあ……」
罪と呼ばれるものなら一通りやってきた身ではある。よって俺が罪深いのは確かだろうし、
そこについて説教されるのも有りとしよう。
が、こいつが思ってるようなことでは断じてないと……さっきも言ったように思うんだが、
いや、実のところどうなんだろうな。
ヴィルヘルム「のぼせあがんじゃねえぞ、阿呆。確かにてめえと野郎にはムカついているが、
そんなしょうもない理由なわけあるか」
クラウディア「しょうもないって、それはちょっと……さすがに酷い言い草じゃないでしょうか」
ヴィルヘルム「
俺にはその手の心がねえんだ」
一刀両断するように、俺はそう言い切っていた。
ヴィルヘルム「おまえに言わせりゃ、
俺だって半分だからな。
持っちゃいねえのさ。愛だの、恋だの、そういうもんは」
クラウディア「ヴィルヘルム……」
ヴィルヘルム「とにかく、つまんねえ勘繰りをしてんじゃねえよ」
吐き捨て、なぜだか目を逸らし、忌々しい気持ちが膨れあががってくるのを押し殺す。
そんなこちらの様子を眺め、クラウディアはそういう解釈をしたのか知らねえが、
また予想外なことを言い出した。
クラウディア「
それなら、私があなたにその心を贈りましょう」
ヴィルヘルム「はァん?」
咄嗟に意味が理解できず、思わず顔をあげた俺の前で馬鹿は淡く笑っていた。
まるで、ずっと探していた答えを見つけたように。
月光に銀の髪を透かしながら、冴える白い肌は微かだが上気して見える。
薔薇のようだと、このとき俺はそう思った。
クラウディア「私たちは共にノアの子。
半分しかない者同士……
ならば互いに、与え合うことで昇華できるはずでしょう」
クラウディア「
あなたは私に光を教え、私はあなたに恋を教える。その尊さ、素晴らしさを十全に」
クラウディア「ね、これで釣り合いが取れると思いません?」
ヴィルヘルム「……つまり、そりゃあなんだ」
こいつが俺を?惚れさせる?鼻で笑っちまう話だったし、実際その通りにしてやったよ。
クラウディア「おかしいですか?私では不足だと?」
ヴィルヘルム「つうか……おまえさっきは罪深いだの言ってただろうが」
クラウディア「ええ、ですが想われるぶんには有りかなとも考えました。結局のところ、私が応えなければいいだけなので」
ヴィルヘルム「この野郎……」
微かに弄うような口振りで、また随分と調子に乗ったことを言うから逆に毒気を抜かれちまったよ。
クラウディア「だから、
あなたの初恋になるというのも素敵だなと思いましたよ。
そういう恩の返し方も、あっていいんじゃないでしょうか?」