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ある男がいた。
ある男がいた。
人がただ生きる為に殺すか殺されるかの、白と黒だけの時代。
炎を越えて、海の底から現れたその男は戦い抜いた。
その姿を生物の頂点たる『竜』に変えて。
白と黒の世界の民は、太陽を嫌い夜のみ闘うその漢を、目を輝かせ敬い讃え、『王』と呼んだ。
『王』は民を愛した。明日をも知れぬ儚い命で闘争心の灯を燃やし死を恐れず生きる『人』を。
愛した。
己のように、この手で己の望む形に世界を変えたいと輝く民たちを。
与えた。
殺し合い、数多の力を束ねた者に己の心の臓腑を抉る機会を。
欲した。
それでもなお、飽くことなく次は私だと押し寄せる人の波を。
そして失った。
挑んでくる者たちの悉くを賞賛し、殺し、殺し尽くした果てに、彼の愛した『民』の姿は非ず。
代わりに跋扈するは、あの輝ける闘争心を失った人の形をしただけの醜い生き物だけ。
代わりに跋扈するは、あの輝ける闘争心を失った人の形をしただけの醜い生き物だけ。
故にその全てを焼き尽くした。
己の力を得るに値する者を、灰色の世界で輝くかつての美しい人間を求めて。
2000年の時が流れた今でもなお、『彼』は座して待つ。
☆
放送が鳴り響くが、しかし戦場は止まらない。
その中で、誰からも標的にされず、戦場から一歩退いていた真島と結衣は放送に耳を傾けることが出来た。
「やはりあれが佐神なのか...!?」
放送で呼ばれた名前には、死んだと思われていた佐神善の名前は連ねられていなかった。
呼ばれた死者の中に恐らく嘘はないだろうというのは、益子薫・ミスティ・三島英吾の名が連ねられて呼ばれたことから確信できる。
そもそも。そんな嘘を紛れさせる必要はないというのが正しいだろうが。
呼ばれた死者の中に恐らく嘘はないだろうというのは、益子薫・ミスティ・三島英吾の名が連ねられて呼ばれたことから確信できる。
そもそも。そんな嘘を紛れさせる必要はないというのが正しいだろうが。
とにかく。真島からしてみれば、佐神善が生きているという事実は希望を齎した。
彼とは一言二言程度言葉を交わした程度の関係ではあるが、自分とまどかの危機を救い、堂島の暴走を止める最大の一因を担っている少年だ。
彼の生死如何でこれからの顛末が大きく変わっていく。
彼とは一言二言程度言葉を交わした程度の関係ではあるが、自分とまどかの危機を救い、堂島の暴走を止める最大の一因を担っている少年だ。
彼の生死如何でこれからの顛末が大きく変わっていく。
(荻原には酷なことだがな...)
真島は隣に佇む結衣を横目で見れば、やはり沈んだ面持ちをしていた。
気絶してしまった梨花の介抱は止めていないものの、普段の能天気さは微塵もうかがえない。
当然だ。
過程がどうあれ、堂島が善の仇を取る形で益子薫を殺したのは事実。
その善が実は生きていたとなれば、薫の死は無駄死に等しいものになる。
いくら結衣が底抜けに心優しい人間だとはいえ、それを受け入れられるかは別問題だ。
気絶してしまった梨花の介抱は止めていないものの、普段の能天気さは微塵もうかがえない。
当然だ。
過程がどうあれ、堂島が善の仇を取る形で益子薫を殺したのは事実。
その善が実は生きていたとなれば、薫の死は無駄死に等しいものになる。
いくら結衣が底抜けに心優しい人間だとはいえ、それを受け入れられるかは別問題だ。
だがそれでも。
あれだけ他者を護るために戦える佐神善が生きていることは、堂島正が味方でいることは、多くの参加者にとっての希望となる。
何もできない己の無力さを口惜しく思いつつ、彼はひたすらに祈ることしかできなかった。
あれだけ他者を護るために戦える佐神善が生きていることは、堂島正が味方でいることは、多くの参加者にとっての希望となる。
何もできない己の無力さを口惜しく思いつつ、彼はひたすらに祈ることしかできなかった。
☆
(佐神善の名前は呼ばれなかった―――ならば、やはりアレが彼ということ)
ジョルノは累の父の相手をドレミーとプロシュートに任せ、自身は放送に集中していた。
(ならばまだ彼を取り戻すチャンスはある。僕のゴールドエクスペリエンスの能力で生命エネルギーを流し込む。そこで自我を取り戻せればまだ希望の芽は残っているんだ)
ジョルノは今の善の状態を死に瀕するほどの極限状態による能力の暴走だと考えている。
ならば、自我を取り戻すことが出来れば能力を自制し戻ってこられる可能性は高い。
これはなにも、希望的観測による都合のいい考えではない。
彼は既にそれを上回る奇跡的な現象を識っているからだ。
ならば、自我を取り戻すことが出来れば能力を自制し戻ってこられる可能性は高い。
これはなにも、希望的観測による都合のいい考えではない。
彼は既にそれを上回る奇跡的な現象を識っているからだ。
ブローノ・ブチャラティ。本編ジョジョの奇妙な冒険五部『黄金の風』においてボスを裏切った本家のジョルノ・ジョバーナの仲間。
彼は道中で命を落としたが、しかし最終決戦まで精神的な意味ではなく最後までその命と身体を保ち立ち会った。
死んでいた筈の肉体が、ジョルノの与えた生命エネルギーを糧に数日の間だけ動くことを許したのだ。
これに比べれば、能力の暴走から自我を取り戻すなど比較にもならないほどの容易い奇跡だろう。
彼は道中で命を落としたが、しかし最終決戦まで精神的な意味ではなく最後までその命と身体を保ち立ち会った。
死んでいた筈の肉体が、ジョルノの与えた生命エネルギーを糧に数日の間だけ動くことを許したのだ。
これに比べれば、能力の暴走から自我を取り戻すなど比較にもならないほどの容易い奇跡だろう。
「グオッ...!」
「さ、流石に疲れますね...!」
「さ、流石に疲れますね...!」
父に吹き飛ばされたプロシュートとドレミーがジョルノの足元に転がり込む。
「感謝します、二人とも」
「放送はキッチリ聞いたんだろうな」
「はい。やはり鍵となるのは―――彼です」
「放送はキッチリ聞いたんだろうな」
「はい。やはり鍵となるのは―――彼です」
ジョルノは累の父の背後に聳える異形に向けて顎をしゃくる。
「佐神くんを取り戻すことができれば、僕らの敵は知る限りでは蜘蛛男とハイグレ変態女と向こうで堂島と組んでいる彼だけ。
そして僕のゴールドエクスペリエンスは『ソレ』ができる!!」
「ですが、それを為すには...」
「ええ。あの蜘蛛男を長時間拘束、あるいは倒す必要があります」
そして僕のゴールドエクスペリエンスは『ソレ』ができる!!」
「ですが、それを為すには...」
「ええ。あの蜘蛛男を長時間拘束、あるいは倒す必要があります」
ジョルノのゴールドエクスペリエンスが異形の巨体に触れたところで、生命エネルギーを有効な量を流しきるまでどれだけの時間が必要かわかったものじゃない。
そんな中で累の父を片手間で捌きつつ事を為すのは不可能だ。
然らば、どの道ここで決着を着ける他ないだろう。
そんな中で累の父を片手間で捌きつつ事を為すのは不可能だ。
然らば、どの道ここで決着を着ける他ないだろう。
「プロシュート!ドレミー!僕に力を貸してください!全ては勝利という『栄光』を勝ち取るため!いいですねッ!」
「正直、ここまで付き合う義理はありませんが...まあ、あの紛い物の鬼を排除できるなら手を貸しましょう。旅は道連れ世は情けともいいますし。ね、兄貴さん?」
「念押しするまでもねえ。アイツの面はもう見飽きてんだ...暗殺者の面目が潰れるくらいになぁ!」
「正直、ここまで付き合う義理はありませんが...まあ、あの紛い物の鬼を排除できるなら手を貸しましょう。旅は道連れ世は情けともいいますし。ね、兄貴さん?」
「念押しするまでもねえ。アイツの面はもう見飽きてんだ...暗殺者の面目が潰れるくらいになぁ!」
叫び、累の父へと先んじて駆け出すプロシュート。
その背後に着くようにドレミーが。
それに続きジョルノが駆け出していく。
その背後に着くようにドレミーが。
それに続きジョルノが駆け出していく。
「ウバッシャアアアアア!!」
迫りくるプロシュートへ大振りに拳を振るう累の父。
まともに受けるのは分が悪いとしゃがみ回避するプロシュート。
これまでに何度も繰り返されてきた光景だ。だが。
まともに受けるのは分が悪いとしゃがみ回避するプロシュート。
これまでに何度も繰り返されてきた光景だ。だが。
パッ
プロシュートの目が閃光が奔ったかのような錯覚を覚えると同時、鋭い痛みと共に顔面から夥しいほどの出血が噴き出す。
「な、に...!こ、コイツ...」
薄れゆく意識の中、プロシュートが見たのはボクサーのように拳を構えていた累の父の姿。
それは今までになかった累の父の新しいファイティング・スタイル。
それは今までになかった累の父の新しいファイティング・スタイル。
累の父は思考回路が乏しい。
家族を護る。その為に敵を排除する。息子の頼みを叶える。
主にこの三つだけが累の父を占めるものだ。
家族を護る。その為に敵を排除する。息子の頼みを叶える。
主にこの三つだけが累の父を占めるものだ。
獲物を食らいたいという願望を発する息子【善だったもの】の願いを邪魔しようとしてくる人間たち。
それを排除するのは容易かったはずなのに、ここまで仕留め切れず手間取ってしまった。
思考回路が乏しい中でも彼は考えた。
どうして自分は奴らを排除できないのか。どうして攻撃が当たらないのか。
それを、細かい理屈抜きで本能的に解決策を模索していた。
それを排除するのは容易かったはずなのに、ここまで仕留め切れず手間取ってしまった。
思考回路が乏しい中でも彼は考えた。
どうして自分は奴らを排除できないのか。どうして攻撃が当たらないのか。
それを、細かい理屈抜きで本能的に解決策を模索していた。
そんな中、彼の脳裏に過ったのは真島との殴り合いだった。
相手はあまりにも非力な人間。だが、奴の拳は面白いほどにあたり、逆に自分の拳は一度も当たらなかった。
自分と真島、いったいなにが違うのか。
相手はあまりにも非力な人間。だが、奴の拳は面白いほどにあたり、逆に自分の拳は一度も当たらなかった。
自分と真島、いったいなにが違うのか。
その答えがコレである。
見様見真似のボクシングスタイル。
確実に一撃で葬るのではなく、ダメージを蓄積させ、あるいは牽制のために放たれる、威力よりも手数と速さを求めた拳。
そもそも。累の父が拳を振るえば、全力でなくとも致命的なダメージを与えられるのだから、要は当たりさえすればいい。
故に放つのはボクシングにおけるフックやストレート、アッパーといったフィニッシュブローではなく、最速のジャブ。
見様見真似のボクシングスタイル。
確実に一撃で葬るのではなく、ダメージを蓄積させ、あるいは牽制のために放たれる、威力よりも手数と速さを求めた拳。
そもそも。累の父が拳を振るえば、全力でなくとも致命的なダメージを与えられるのだから、要は当たりさえすればいい。
故に放つのはボクシングにおけるフックやストレート、アッパーといったフィニッシュブローではなく、最速のジャブ。
「『成長』してやがる...!」
そんな子供でもわかるような当たり前な理屈でありながら、この場において最も驚異的な成長を成し遂げたのをその身で実感し、プロシュートの身体は地に崩れ落ちた。
「お役目ご苦労様でした」
その彼の背中より、ドレミーの弾幕が父へと迫る。
それに対し、父は拳を構えたまま、しかし撃ち落とすこともしない。
彼は学んでいた。
ドレミーの弾幕も。プロシュートの弾丸もスタンドによる攻撃も。ジョルノのゴールドエクスペリエンスのラッシュも。
全て自分を打ち倒すことは決してない。
ならば。敵の攻撃を全て受け、そのうえで反撃すればよいと。
それに対し、父は拳を構えたまま、しかし撃ち落とすこともしない。
彼は学んでいた。
ドレミーの弾幕も。プロシュートの弾丸もスタンドによる攻撃も。ジョルノのゴールドエクスペリエンスのラッシュも。
全て自分を打ち倒すことは決してない。
ならば。敵の攻撃を全て受け、そのうえで反撃すればよいと。
迫りくる小粒の弾幕をその身で受け止めんと構え―――
「『ゴールドエクスペリエンス』は、既に弾幕に触れている!!」
パチン、と指が鳴らされるのと同時、10の弾幕が瞬く間に姿を変え飛び立っていく。
生命を与えられた弾幕が姿を変えるは鳩。
父へと着弾する寸前に羽根を撒き散らし飛び立ち、累の父の視界を塞ぐ。
生命を与えられた弾幕が姿を変えるは鳩。
父へと着弾する寸前に羽根を撒き散らし飛び立ち、累の父の視界を塞ぐ。
「!?」
あまりにも突然な変貌に累の父の足は思わず戸惑い、反射的に腕を振るい鳩を蹴散らそうとする。
羽根の合間を掻い潜り、父へと肉薄するジョルノ。
父はジョルノの射程距離に入る寸前で彼の接近に気づき、プロシュート同様にジャブを放とうとする。
羽根の合間を掻い潜り、父へと肉薄するジョルノ。
父はジョルノの射程距離に入る寸前で彼の接近に気づき、プロシュート同様にジャブを放とうとする。
その身体が、ガクリと地面に沈みこんだ。
「『ザ・グレイトフル・デッド』...ハァ...ハァ...手痛いのは食らっちまったが...死んだふりで標的から外れるのは...都合がよかったな...!」
プロシュートは無様にも地に伏せ、その端正な顔を朱色に染めながらも、しかしその眼光だけは微塵も揺らいではいなかった。
地に伏せる瞬間、飛びかけていた意識を口の内側の肉を噛みきることで無理やり留めた彼が行ったのは、グレイトフル・デッドの能力の最大出力での発動。
父を拘束する時にも用いた、掌に限定した老化ガスの噴出を地面に向けた手段である。
地に伏せる瞬間、飛びかけていた意識を口の内側の肉を噛みきることで無理やり留めた彼が行ったのは、グレイトフル・デッドの能力の最大出力での発動。
父を拘束する時にも用いた、掌に限定した老化ガスの噴出を地面に向けた手段である。
「全力の直ざわりならよぉ...てめえの片足が沈むくらいには、地面を『老い』させることが出来るんだぜ...!」
それだけを言い残し、ガクリとプロシュートは首を垂れて沈黙する。
意識が消える寸前に無理やりスタンドパワーを全開まで引き出したのだ。
さしもの彼と言えど、失神を免れることはできなかった。
意識が消える寸前に無理やりスタンドパワーを全開まで引き出したのだ。
さしもの彼と言えど、失神を免れることはできなかった。
(感謝します。二人とも)
度重なる異常事態に困惑し隙を晒した父の懐へ、ジョルノが肉薄する。
そして一息に罪状を述べていく。
そして一息に罪状を述べていく。
「『貴方を身分詐称で訴えます!!理由はもちろんおわかりですね!!貴方の勘違いがこの状況を生み僕らは彼を救う好機を失いそうだからです!!!』」
放たれる拳の雨が父の腹部を襲う。
その一撃一撃を打ち込む度にジョルノの拳は悲鳴を挙げるが、構わず放ち続ける。
その一撃一撃を打ち込む度にジョルノの拳は悲鳴を挙げるが、構わず放ち続ける。
(ここで逃せば僕らに勝機はない!必ず、ここで奴を仕留める!!)
決死の覚悟で放たれるラッシュは、既に人間相手であれば、このロワの実質的な登場話における葡萄のようにボコボコになった顔の英吾が可愛く見えるほどの威力を蓄積している。
人間相手であれば既にオーバーキルを越えており、裁判所でこんな暴行を働けば情状酌量の余地すらなく暴行罪で捕まりワザップで騙した輩以上の犯罪者と扱われるレベルだ。
人間相手であれば既にオーバーキルを越えており、裁判所でこんな暴行を働けば情状酌量の余地すらなく暴行罪で捕まりワザップで騙した輩以上の犯罪者と扱われるレベルだ。
「『覚悟の準備をしておいて下さい!ちかいうちに訴えます!!裁判も起こします!!裁判所にも問答無用できてもらいます!!慰謝料の準備もしておいて下さい!貴方は犯罪者です!刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!いいですね!!』」
拳が限界を超え、最後のシメとなる一撃が放たれる。
「――――ヴァアアアアアアア!!!」
だが、そんな決死の覚悟も空しく。
放った最後の一撃は、交差した両腕のガードに阻まれ、父が叫ぶと同時、内から外にかけて弾くように振り抜けば、ジョルノの右腕は反動でへし折れ、身体はあっという間に遥か後方へと吹き飛ばされる。
放った最後の一撃は、交差した両腕のガードに阻まれ、父が叫ぶと同時、内から外にかけて弾くように振り抜けば、ジョルノの右腕は反動でへし折れ、身体はあっという間に遥か後方へと吹き飛ばされる。
「ブウ"ウ"ゥゥゥゥゥ」
あれだけの攻撃を受けてなお、父は未だに健在。
腹部に刻み込まれた拳の痕も、瞬く間に消えていく。
腹部に刻み込まれた拳の痕も、瞬く間に消えていく。
「あらあら。ヒドイ有様ですねぇ」
気絶しているプロシュートを回収しながら、ドレミーは吹き飛ばされたジョルノのもとへ降り立ち慰めとも煽りともいえぬ言葉をかける。
そんなドレミーを、ジョルノは息を荒げながらも、しかし微塵も揺らがぬ眼差しで見つめ返す。
そんなドレミーを、ジョルノは息を荒げながらも、しかし微塵も揺らがぬ眼差しで見つめ返す。
「代償は免れなかったが...しかし、僕らの『勝利』です」
確信の宣言と共に。
ボコリ。
「ギ」
累の父の腹部が盛り上がり、ここにきて、初めて彼の苦悶の声が漏れる。
「僕が生命エネルギーを流し込んだのは奴ではなく、その腹部に撃ち込まれた弾丸―――そしていま!ゴールドエクスペリエンスは発現する!!」
ジョルノの叫びと共に、父の腹部が異様に蠢き―――
ボコォ
「ギッ、アアアアアアアアア!!!!!!!」
悍ましいほどの父の雄叫びと共に、彼の腹を突き破ったソレが顔を見せる。
「僕がラッシュの時に与えた生命は『桜の木』だ。桜の木の下には死体が埋まっているという逸話よろしく、木は人体から栄養をすいとると言うが...なるほど、確かに図太くたくましく育ってくれたよ。
『いあいぎり』をして切った木の上に立って再開したセーブデータのようにな」
『いあいぎり』をして切った木の上に立って再開したセーブデータのようにな」
ジョルノは累の父の弱点である『頸』の切断を知らない。
故に選んだのは腹部から木を生やしての拘束。
目論見通り、彼の腹部から生えた木は父を地面に縫い付け、死に至らしめずとも動きを封じることができた。
故に選んだのは腹部から木を生やしての拘束。
目論見通り、彼の腹部から生えた木は父を地面に縫い付け、死に至らしめずとも動きを封じることができた。
「ガ...ガァッ...!」
鬼とて首を斬られなければ死なないだけで、どんな傷に対しても痛みが全くない訳ではない。
如何に外部からの刺激には強くとも、内臓から破壊されれば生物的な本能として苦悶の声を漏らさずにはいられない。
如何に外部からの刺激には強くとも、内臓から破壊されれば生物的な本能として苦悶の声を漏らさずにはいられない。
「ガヒュッ、ガヒュッ...」
激痛と共に逃れられない拘束の最中、累の父は必死に息子のもとへ向かおうとする二人の背中を掴まんと手を伸ばす。
だが、その掌はなにも掴めず虚空を切るだけ。
藻掻いたところで無駄だと諦め、父は沈黙する。
だが、その掌はなにも掴めず虚空を切るだけ。
藻掻いたところで無駄だと諦め、父は沈黙する。
【お前の役割は父親だ】
―――ドクン、と鼓動が波うち、与えられた『使命』が脳裏を過る。
【父は大黒柱として誰よりも強く、家族を、子供を護らなければならない。たとえその命が尽きようとも】
ソレは、ホワイトやミスティに与えられた急繕いの命令ではなく、もっと前から彼に埋め込まれた本物の『使命』。
誰もが知らない名もなき鬼が『父』であるためのアイデンティティ。
誰もが知らない名もなき鬼が『父』であるためのアイデンティティ。
【我が身など顧みるな。痛いからなんだ。敵わないからなんだ。親として全身全霊を以て家族を護れ】
一方的に流れる使命も、自我の乏しい彼からすれば唯一の拠り所だ。
親として。父として。使命に殉じる為に累の父の身体に力が漲っていく。
親として。父として。使命に殉じる為に累の父の身体に力が漲っていく。
「俺が...家族を...護ル...」
メキメキと音を立てて木が持ち上がっていく。
ブチブチと筋繊維が内臓と共に千切れていく。
それでもなお、彼は止まらない。
ブチブチと筋繊維が内臓と共に千切れていく。
それでもなお、彼は止まらない。
【役目を、果たせ】
「俺の家族に、手を出すなァァァァァァア"ア"ア"ア"ア"!!」
父としての役目を果たすため、『累の父』は死を選びたくなるほどの激痛をも吹き飛ばし、己の身体に刺さる巨木から身体を引き抜いた。
「なっ!?」
思わぬ復活にさしものジョルノとドレミーも動揺と共に硬直する。
その一瞬を突き。
累の父は腹から生えた木を丸太のように構え、一足飛びで距離を詰め、横なぎに振るう。
その一瞬を突き。
累の父は腹から生えた木を丸太のように構え、一足飛びで距離を詰め、横なぎに振るう。
スタンドを防御に回し、己とドレミーの盾にするも―――力及ばず。
まるで鉄球のような衝撃と共に、ドレミーとジョルノの身体が吹き飛ばされる。
まるで鉄球のような衝撃と共に、ドレミーとジョルノの身体が吹き飛ばされる。
「『木にめり込んだところで動けないわけではない』か...文面だけではわかりづらい細微な情報...勉強...させて...」
「ヴァアアアアアアアアア!!!」
「ヴァアアアアアアアアア!!!」
紅い月が輝く中、己から生えた木を丸太の如く担ぎ、咆哮をあげるあらゆる意味で『紛い物の鬼』。
その周囲に転がり沈黙する二人のスタンド使いと、そして自分。
まるで悪夢のような光景に、ドレミーは自嘲気味にクスリと笑みを零して呟いた。
その周囲に転がり沈黙する二人のスタンド使いと、そして自分。
まるで悪夢のような光景に、ドレミーは自嘲気味にクスリと笑みを零して呟いた。
「ゲームオーバーですね」
☆
「悲しいな。俺が救うことなく旅立ってしまった命があんなにもあるなんて」
「......」
「......」
異形の相手の片手間に、流れる放送へと耳を傾ける。
それが出来る余裕があるほどに、童磨と堂島は異形相手に有利に立ち回っていた。
それが出来る余裕があるほどに、童磨と堂島は異形相手に有利に立ち回っていた。
(佐神くんが呼ばれなかったということは、やはりコレは彼そのものなんだろう)
自分たちを食らわんと殺意を振りまく怪物。
コレが生きている限り、『佐神善』は生きており、コレが死ねば『佐神善』は死ぬのだろう。
コレが生きている限り、『佐神善』は生きており、コレが死ねば『佐神善』は死ぬのだろう。
(だが、戻す手段など思いつかない。このまま放っておけば私たちの手に負える範疇を越えるのも時間の問題だ)
もしもこのまま戦い続けて成長しきり、この場の参加者をみんな殺せば一番後悔するのは誰だ。
他でもない善本人だ。
だからこそ斬る。
彼を苦しめないためにも、この手であの異形を断つ。
他でもない善本人だ。
だからこそ斬る。
彼を苦しめないためにも、この手であの異形を断つ。
『いつもと変わらないじゃないですか。人を斬るしかできない人殺し』
纏わりつく死者の声を振り払い、迫る異形の腕々を切り伏せる。
その度に実感する。『彼』は成長していると同時に、消耗し死に近づいていると。
堂島は異形のもとへと駆け、再び頭頂から振り下ろす。
(斬る!このまま―――)
振り下ろされる正義の剣。
それを狙っていたかのように、異形の頭が自ら左右二つに割れ斬撃を回避。
それを狙っていたかのように、異形の頭が自ら左右二つに割れ斬撃を回避。
「なにっ!?」
驚愕する堂島の隙を突き、異形はその巨大な掌で掴もうと腕を伸ばす。
―――血鬼術 霧氷・睡蓮菩薩
その腕を巨大な氷像の腕が掴み止め、腕を凍らせ破壊する。
「ゴアアアアアアアッ!」
「勢いはいいけどちょっと焦りすぎだよ」
「勢いはいいけどちょっと焦りすぎだよ」
氷像の菩薩の肩に乗った童磨は堂島にケラケラと笑いかける。
「とはいえ、そろそろ彼も限界が近づいてきたようだね。ごらんよ」
童磨が扇での指示に従い堂島は異形へと目をやる。
「俺の敬服するあの御方でもあるまいし、再生能力が無限だなんてことはありえないんだよ。
使い続ければ、死なないにしても再生できなくなってしまう。さすがの彼も、強くなっているとはいえ削られ続ければ消耗の方が激しいようだ」
使い続ければ、死なないにしても再生できなくなってしまう。さすがの彼も、強くなっているとはいえ削られ続ければ消耗の方が激しいようだ」
童磨の指摘通り、異形の崩壊速度は先ほどまでの比ではなかった。
強靭で巨大な身体は見る見るうちに崩れ、先ほどまでの強大さは鳴りを潜めつつある。
尻尾も崩れていき、残された中で驚異的なのは闘争心と殺意の牙のみといえよう。
強靭で巨大な身体は見る見るうちに崩れ、先ほどまでの強大さは鳴りを潜めつつある。
尻尾も崩れていき、残された中で驚異的なのは闘争心と殺意の牙のみといえよう。
「...佐神くん」
もう一度、剣を握りしめ直し構える。
彼は死ぬ。それは最初から危惧していたことであり、実際そうなってしまった。
それが今であっただけだ。だから躊躇うつもりはない。
彼は死ぬ。それは最初から危惧していたことであり、実際そうなってしまった。
それが今であっただけだ。だから躊躇うつもりはない。
「きみを斬るよ」
堂島が、何度目かわからない宣言をするのと同時に。
「ガアアアアアアア!!!!」
異形は吼え、残された腕で氷の菩薩を殴りつける。
(無駄だよ。そんな苦し紛れな拳で俺の睡蓮菩薩は―――)
ガシャア、と派手な音を立てて睡蓮菩薩の胸部に風穴が空く。
「あれぇ?」
思わぬ衝撃を受けた童磨の身体が菩薩から落ち地上に落下する。
童磨の思考は常に合理的だ。
生物である以上、限界を超えた身体は動いてはくれないし、火事場の馬鹿力とやらで全力以上の力を引き出すなんてことは、所詮は想定できる範囲でしかない。
故に、異形の死に瀕した一撃の威力を見誤り、己の能力を過信してしまった。それが彼の一つの失態だ。
童磨の思考は常に合理的だ。
生物である以上、限界を超えた身体は動いてはくれないし、火事場の馬鹿力とやらで全力以上の力を引き出すなんてことは、所詮は想定できる範囲でしかない。
故に、異形の死に瀕した一撃の威力を見誤り、己の能力を過信してしまった。それが彼の一つの失態だ。
(まあいいけど)
童磨は扇を繰り、菩薩に指示を出す。
内容は複雑なものではない。単純に、そのまま倒れこめというものだ。
菩薩はそれに従い、ぐらりと前のめりに倒れ込み、異形を地に押し倒す。
ズンッ、と派手な音を響かせれば、菩薩はその身をたちまちに氷に変えて異形の全身を凍りで包み込む。
内容は複雑なものではない。単純に、そのまま倒れこめというものだ。
菩薩はそれに従い、ぐらりと前のめりに倒れ込み、異形を地に押し倒す。
ズンッ、と派手な音を響かせれば、菩薩はその身をたちまちに氷に変えて異形の全身を凍りで包み込む。
氷で固められた部位が、バキリと割れれば、異形の頭部から下は全て氷に覆われ分断される。
如何に高い再生能力を誇ろうとも、ああして氷点下の氷で凍らせられれば生命として成り立たなくなる。
残るは左上半身と首まわりと頭部のみ。
如何に高い再生能力を誇ろうとも、ああして氷点下の氷で凍らせられれば生命として成り立たなくなる。
残るは左上半身と首まわりと頭部のみ。
(終わったね)
勝利を確信した童磨は、着地後、堂島よりも先んじて異形へと向かう。
本来ならただ放っておくだけでも異形の崩壊を見届けられた。勝利するだけならばそれでいいだろう。
だが、今まで見たことのないこの異様なナニかを食えばどうなるかを確かめずにはいられなかった。
童磨は女好きであるものの、それ以上に鬼として強くなるために人の中でも栄養値の高い女性を大勢食らっている。
そんな彼が、眼前の極上の獲物に興味を抱かないはずがなかった。
本来ならただ放っておくだけでも異形の崩壊を見届けられた。勝利するだけならばそれでいいだろう。
だが、今まで見たことのないこの異様なナニかを食えばどうなるかを確かめずにはいられなかった。
童磨は女好きであるものの、それ以上に鬼として強くなるために人の中でも栄養値の高い女性を大勢食らっている。
そんな彼が、眼前の極上の獲物に興味を抱かないはずがなかった。
(あそこから想定できる彼の攻撃方法は噛みつきか左腕のみ。それなら一度いなせばそれで食えるかな)
果たして、童磨の予測は当たり、異形の迫りくる左腕を躱し、次いで迫りくる頭部へと向き合う。
(想定通りだ。このまま血鬼術で―――)
ドンッ
突然の背後からの衝撃に童磨の身体は前方へと突き飛ばされる。
「えっ?」
童磨のもう一つの失態。それは堂島正に僅かでも背中を向けてしまったこと。
警戒していないわけではなかった。異形さえどうにかしてしまえば今すぐにでも救済してあげたかった。
警戒していないわけではなかった。異形さえどうにかしてしまえば今すぐにでも救済してあげたかった。
だが誰が想像できようか。
共通の悩みの種だった異形の始末。
それを目的に組んだ相手が、今まさにトドメを刺そうとしたその時に。
放っておいても勝利が確定しているこの瞬間に。
その背中を蹴り飛ばし、こちらを食おうとしている牙に生贄の如く差し出してくるなどと。
共通の悩みの種だった異形の始末。
それを目的に組んだ相手が、今まさにトドメを刺そうとしたその時に。
放っておいても勝利が確定しているこの瞬間に。
その背中を蹴り飛ばし、こちらを食おうとしている牙に生贄の如く差し出してくるなどと。
「うわぁ、そうくるかぁ」
迎え撃とうとしていた血鬼術の発動は間に合わず、視界に広がるは、迫りくる口腔の中を蠢く無数の腕。
死を直感せざるをえないこの光景においてもなお、彼の思考は合理的で冷静だった。
死を直感せざるをえないこの光景においてもなお、彼の思考は合理的で冷静だった。
ガッ バクン
腹部に牙が突き立てられれば、装甲を持たない童磨の身体はあっさりと齧り取られる。
上半身が丸ごと削り取られた下半身がべちゃりと地に落ち、ぴくぴくと痙攣しつつ、血だまりを作っていく。
上半身が丸ごと削り取られた下半身がべちゃりと地に落ち、ぴくぴくと痙攣しつつ、血だまりを作っていく。
童磨という餌に気をとられた異形は、その背後からやってきた堂島への対処が遅れてしまう。
カッ。
剣が肩口から袈裟懸けに振るわれ身体が割れる。
それが再生するよりも速く、幾重も剣は振るわれた。
それが再生するよりも速く、幾重も剣は振るわれた。
(斬る。このまま)
手ごたえを通じ、異形の生命が弱まっていくのを実感する。
(彼をこの手で)
再生する力が無くなったのか、斬り落とした腕はもう戻らない。
限界なのだ。もう。
あと一撃。これを振り下ろせば全てが終わる。
これまでとこれからの彼との戦いも、全て。
「さらばだ。佐神君」
そして、正義の剣は悪を断つべく振り下ろされ
―――先生
なかった。
もしも。
もしも彼が、ほんの数時間後の、佐神善を見捨てた後の時間から連れてこられていれば。
もしも佐神善が復帰し共闘した時の喜びを足割っていなければ。
もしも佐神善を喪った時の感情を一度も経験していなければ。
もしも放送で微かにでも善が生きていると仄めかせられなければ。
いずれか一つでも満たしていれば、その剣を振り下ろすことができただろう。
けれど。
愛する息子の喪失に納得が出来ず。
正義が辱められ悪がのうのうと生き残る世界に憎悪し剣を振るってきた彼が。
脳裏に彼の、幼いころからずっと見てきた××の顔が過れば。
躊躇なくその剣を振り下ろすことなど、できるはずもなかった。
その一瞬を突き。
異形は正真正銘最期の力を振り絞るように肩口から腕を生やし堂島を捉える。
開かれる口腔の中、無数に並ぶ腕が伸ばされる。
『死ね』
その一本一本が死を望むように堂島の身体に纏わりついていく。
『死ね』
『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
浴びせられる憎悪の声に怒ることすらできない。
死者だけではなく、彼にすらそう願われては。
死者だけではなく、彼にすらそう願われては。
(私は...死ぬべきなのか...?)
掲げた正義の為に人を殺し、絶望に抗おうとする少女を刺し。
護りたいと思った者すら守れず、感情任せに無罪の少女を斬り捨てた。
護りたいと思った者すら守れず、感情任せに無罪の少女を斬り捨てた。
愚物。
堂島が目を背け続けてきたその二文字を突きつけるように、腕は
【斬り殺してきたヤクザたちのものに見えた】【善の仲間の吸血鬼に見えた】【益子薫のものに見えた】
そして
『何も為せずに、早く死ね』
肩に手を置き、嘲笑うように『彼女』が囁いてきた。
その憎悪と怨嗟の声に、抗うことも屈することもできず。
堂島正はただ迫る牙を受け入れることしかできなかった。
☆
この殺し合いの首輪には如何な参加者をも死に至らしめる能力がある。
大勢の生身の人間や、身体の損傷で死に至る人外等であれば爆発一つで事足りるだろう。
だが例外はある。
弱点部位が心臓部であるドミノ・サザーランドを筆頭とする吸血鬼、出自が特殊中の特殊である佐神善、童磨と累の父、沼の鬼ら頸が弱点とはいえ日光に携わるモノが無ければ死なない鬼、ワザップジョルノ等がいい例だ。
彼らは首輪が爆発した程度では本来ならば死なない。傷は負うものの、時間が経てば再生してしまう。
特にワザップジョルノなどは特異中の特異だ。
なんせ身体のない、どころかそもそも『命』というものが存在しないネットミーム。
それをジョルノ・ジョバーナに酷似した形で出力しているだけに過ぎない存在だ。
特にワザップジョルノなどは特異中の特異だ。
なんせ身体のない、どころかそもそも『命』というものが存在しないネットミーム。
それをジョルノ・ジョバーナに酷似した形で出力しているだけに過ぎない存在だ。
そんな彼らのような例外を死に至らしめる為の紋章である。
紋章は首輪の爆発をスイッチとして発動する『存在』つまりは『魂』を消し飛ばす代物である。
紋章は首輪の爆発をスイッチとして発動する『存在』つまりは『魂』を消し飛ばす代物である。
この紋章は魂を弄る能力を有する蘆屋道満とメフィスとフェレスの合作であり、彼らの技術の髄を凝らした代物である。
彼らだからこそできる魂の直接破壊。故に、身体の頑強さに関わらず如何な参加者をも死に至らしめることができる。
ネットミームであるワザップジョルノもまた、彼もしくは彼女の書き込みという存在(データ)を破壊すれば死に至らしめられるのだ。
彼らだからこそできる魂の直接破壊。故に、身体の頑強さに関わらず如何な参加者をも死に至らしめることができる。
ネットミームであるワザップジョルノもまた、彼もしくは彼女の書き込みという存在(データ)を破壊すれば死に至らしめられるのだ。
佐神善が首輪の爆発で死に至ったのは、正確にはこの紋章の力によるところが大きい。
だが、即死せずこうして暴れまわっているのは一つのカラクリがあった。
主催側が参加者として連れてきた『佐神善』は正確には『佐神善を真似た超越者』である。
長年の間真似をし続けてきた所為でその記憶も魂も大半は『佐神善』にはなったが、残る超越者としての部分は消しきれなかった。
いわば、『佐神善』と『超越者』の融合体がいまの彼と言えよう。
主催側が参加者として連れてきた『佐神善』は正確には『佐神善を真似た超越者』である。
長年の間真似をし続けてきた所為でその記憶も魂も大半は『佐神善』にはなったが、残る超越者としての部分は消しきれなかった。
いわば、『佐神善』と『超越者』の融合体がいまの彼と言えよう。
故に、紋章で『佐神善』の部分は消滅させることができても、残る超越者の部分は消せず。
しかし、再生能力があるとはいえ、存在の大半を消された生物が無事でいられるはずもなく。
しかし、再生能力があるとはいえ、存在の大半を消された生物が無事でいられるはずもなく。
満身創痍の身でありながらも漏れ出しどうにか形どったのが今の異形の存在である。
故に、真祖にも匹敵し得るポテンシャルを持ちながらも、既に余命いくばくもない瀕死の手負いの獣。
堂島と童磨が終始有利に立ち回れたのも、彼の消耗が既に大きすぎたのからだ。
故に、真祖にも匹敵し得るポテンシャルを持ちながらも、既に余命いくばくもない瀕死の手負いの獣。
堂島と童磨が終始有利に立ち回れたのも、彼の消耗が既に大きすぎたのからだ。
そんな彼が己の復活の為に欲したのが、純粋に吸血鬼以上に再生能力の高い童磨と堂島正のD・ナイトである蘇生。
特に、後者の遺灰物ですら治してしまう能力を模倣し完成させれば身体の崩壊すら戻せた可能性が高い。
それらの、崩れてゆく身体を一時的に埋めることが出来るモノがあれば、例え『佐神善』の部分が削がれようとも、極上の餌である真祖を食らうことで完全な復活を遂げられる可能性が生まれてくる。
特に、後者の遺灰物ですら治してしまう能力を模倣し完成させれば身体の崩壊すら戻せた可能性が高い。
それらの、崩れてゆく身体を一時的に埋めることが出来るモノがあれば、例え『佐神善』の部分が削がれようとも、極上の餌である真祖を食らうことで完全な復活を遂げられる可能性が生まれてくる。
故に、彼は食らう為に戦った。
復活を果たすために。輝ける『闘争心』を取り戻すために。
復活を果たすために。輝ける『闘争心』を取り戻すために。
そして、今。
本命の餌のための前菜としてようやく手にしたソレを喰らうために向けられた牙は。
届くことなく背後から貫かれてその役目を果たすことなく終えた。
☆
『佐神善が生きている』
この情報を聞いた時、彼女は思った。
これは罠だと。
これは罠だと。
彼女は既に似たようなケースを知っている。
魔女と化した親友の美樹さやか。
消耗と絶望の限界値までソウルジェムの穢れを溜めきってしまい魔女となった彼女は生きてはいた。
しかし、それはあくまでも魔女が生きているだけであり、『美樹さやか』を戻す方法などどこにもなかった。
だから同じく友達である暁美ほむらは手を下さざるを得なかった。
不本意ながらも、それでもこれ以上さやかに犠牲を重ねさせないためにも。
消耗と絶望の限界値までソウルジェムの穢れを溜めきってしまい魔女となった彼女は生きてはいた。
しかし、それはあくまでも魔女が生きているだけであり、『美樹さやか』を戻す方法などどこにもなかった。
だから同じく友達である暁美ほむらは手を下さざるを得なかった。
不本意ながらも、それでもこれ以上さやかに犠牲を重ねさせないためにも。
今回も同じだ。
喰われかけて思い知らされたが、アレはもう『佐神善』ではない。
素性は知らないが、魔女となったさやかに近しいモノを感じた。
素性は知らないが、魔女となったさやかに近しいモノを感じた。
それでも彼女は思った。
アレが怪物と化しても『佐神善』であるならば。
殺し合いに乗るのを止め、死んだときには感情を収められなかった彼に。
まるで親友か息子のように大切にしていたであろう堂島正に、アレを殺させてはいけない、と。
アレが怪物と化しても『佐神善』であるならば。
殺し合いに乗るのを止め、死んだときには感情を収められなかった彼に。
まるで親友か息子のように大切にしていたであろう堂島正に、アレを殺させてはいけない、と。
だから彼女は残る魔力を集中させ、矢を放った。
堂島に手を汚させないために。善に人殺しをさせないために。
その果てに堂島からの刃が待っていようとも。
堂島に手を汚させないために。善に人殺しをさせないために。
その果てに堂島からの刃が待っていようとも。
私は、あの人たちを救いたいと。
放たれた弓矢は、生物の頂点の残滓を貫き―――破壊した。
再び灰と化していく彼の身体の向こうから、息を呑み目を見開く堂島の視線を受け止め。
呆気にとられる真島と結衣の方へと振り返ると。
鹿目まどかの頬を伝う涙は止まらず。
ぴしり、と心が壊れるような音が聞こえた、気がした。
☆
王は待っていた。
王の愛した『輝く人』以外に繋がれた存在に気が付いてから。
誰よりも己に等しい存在との邂逅を待ちわびていた。
会いに行きたい衝動を抑え、約束に従い座して待っていた。
「......」
けれど。
一度繋がってしまったからだろうか。
なんとなくわかってしまった。感じ取ってしまった。
どこか遠くで、果ててしまったような、そんな奇妙な感覚を。
もう、二度と彼とは会えないのだろう。
その遠方の地の友人を喪ったような感覚を少し寂しく思うけれど、それでも彼は変わらない。
例え、退屈そうにしていると思われる眼差しでも。
灰の世界で輝くものを、かつての美しい人間を求めて。
いまもなお、王は王らしく。座して『彼ら』を待ち続ける。