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願い ◆LuuKRM2PEg



 相羽シンヤは兄をひたすら待ち続けていた。
 とても大切で、とても天才で、とても強くて、とても憎くて、とても疎ましくて、とても一緒にいたくて、とても勝ちたくて、とても乗り越えたくて、とても大好きな双子の兄――相羽タカヤを。
 だけど今は、そんなタカヤに追いつこうとして無理なブラスター化をした結果、まともに動くことも出来なくなった。今だって、死んでしまいそうなくらいの激痛が全身を襲っている。
 けれどもシンヤはそれを乗り越えることが出来た。相羽タカヤと戦うという、たった一つの夢がある限り。

(ごめんよケンゴ兄さん……でも俺には、これしか無いんだ)

 不意に、シンヤは月面のラダム母艦で眠りについているであろうテッカマンオメガこと相羽家の長男――相羽ケンゴに謝った。
 ケンゴが自分のことを心配して、ブラスター化を許さなかったのはシンヤ自身理解している。それは次々とテッカマンが失って戦力ががた落ちするというラダムの意志でなく、相羽家の家族を失いたくないと言うケンゴ自身の優しさから来ているのだと。
 でもタカヤとの決着を付けないまま、タカヤが死ぬなんて事はあってはならなかった。そうなっては、シンヤは一生後悔してしまう。
 ケンゴ兄さんの事は好きで、その意志を尊重したい気持ちはある。でも、こればっかりは誰にも譲れなかった。だからフォン・リーの手によってブラスターテッカマンとなった代償で命を失おうとも、悔いはない。

(俺の身体は……あとどれだけ持つのかな)

 しかしシンヤにとって、たった一つだけ不安がある。もしもタカヤと出会える前にどちらかが死んでしまったら? 考えたくもないが、この世に絶対なんて有り得ない。
 タカヤの事だからきっとこの殺し合いに巻き込まれた地球人どもを救おうと動いているのだろう。だが、そんなタカヤの気持ちを利用してタカヤを殺そうとする愚か者もいるかもしれない。タカヤがそれで殺されるなんて無様な最後を迎えるわけがないが、少しだけ不安になる。
 またそうでなくとも、自分自身の寿命も後どれくらい保つのかがまるでわからなかった。この冴島邸に放り込まれてから四時間は経過するまで、何とか生きているがあまり呑気に構えていられない。この身体ではいつ突然死をしても何らおかしくなかった。
 幸運にも出会えたモロトフをメッセンジャーにしたが、奴自身がタカヤと出会えるかもわからない。万が一、テッカマンを上回るような参加者と遭遇してはタカヤと出会う前に殺される可能性だってある。
 最悪、自分自身がここから移動してタカヤを探す必要だってあるのだ。

「……タカヤ兄さん、無事でいてくれるよね?」

 長年会っていない恋人を待ち焦がれるかのように、シンヤは兄の名前を呼ぶ。
 そんな彼の手には、ある物が握られていた。モロトフに渡した拡声器と、元々シンヤが持っていたスタッグとバットのメモリとバットショット以外にもう一つだけ持っていた、最後の支給品。
 付属した説明書を見てその効果は知っていたが、本当なのかはどうにも信じ難かった。しかしスタッグとバットのガジェットの効果は本当だったのだから、試す価値はあるかもしれない。
 シンヤは残された力を振り絞りながら、最後の支給品を投げつけた。全ては愛しき双子の兄、タカヤの為に。





『兄さん、タカヤ兄さん……僕だよ、シンヤだよ』

 蒼乃美希の手元に握られているのは、一台の古ぼけたマイクロレコーダーだった。
 孤門一輝と合流した彼女は自分のことを出来るだけ話した後、市街地を目指すために灯台から離れる。
 その間、デイバッグに入っていたそれが気になった彼女は不意にスイッチを押すと、子供の声が流れてきた。

『これを聞いている兄さんはもう大人なんだね。なんだかそれって不思議だな。兄さんも僕もどこで何をやっているのかな?』
「孤門さん、シンヤとタカヤってまさか……?」
「多分、相羽タカヤと相羽シンヤのことかもしれない。苗字が同じだったから、やっぱり家族だったのか……」

 名簿に書かれてあったタカヤとシンヤとミユキは、みんな『相羽』という同じ苗字を持っていた。これが意味することは、三人は家族であること。
 つまり、加頭順は友達や仲間だけでなく家族同士にもこんなふざけた殺し合いを強要していた。

『仲良くしてるよね? まさか、喧嘩なんかしてないよね? だってケンゴ兄さんったら意地悪言うんだもん。大人っていうのは難しいから変わっちゃうかもしれないよって……』

 美希が順に対する憤りを抱く暇もなく、マイクロレコーダーからシンヤの声が流れていく。

『そんなことないよね? 僕らがいくつになったって絶対変わんないよ。僕が兄さんが好きだってことは……だって、僕達一緒に生まれた双子だもん。僕達、元々一人だったんだもん』
「「……ッ!」」

 その瞬間、マイクロレコーダーの声を聞く二人は絶句した。タカヤとシンヤがどんな人物なのかはわからないが、深い絆で結ばれた双子の兄弟である。
 そんな彼らが今、互いが互いを殺しあうように強制されている。それがどれだけ辛いことなのか……とても言葉で言い表すことなんて出来ない。

『僕はずーっと兄さんが大好きだよ。ケンゴ兄さんよりも、ミユキよりも、ずっと……ずっと!』

 希望に満ちたようなシンヤの言葉は、そうやって終わりを告げた。まるで時が止まったかのように、美希も一輝も何も言えなかった。
 順は実の兄妹達にこんな馬鹿げた殺し合いを強制させた挙句、彼らにとって大事な代物であるレコーダーをわざわざ盗んでいる。それは美希には到底許せる事ではなかった。

「何なのよ……」

 冷たい風が静かに流れる中、美希は口を零した。

「あいつらはなんで、実の兄妹にこんなことを……!」
「美希ちゃん」

 そんな彼女を慰めるかのように、孤門はゆっくりと肩に手を乗せる。

「行こう、一刻も早くこんな殺し合いを止める為にも」
「……はい」

 だから美希もそんな彼の意図を察して、弱音を吐いたりなどはしなかった。
 自分はプリキュアなんだから、みんなを助けるまでは倒れることは出来ない。そしてタカヤとシンヤとミユキに出会って、これを渡さなければならなかった。
 その決意を胸に秘めた彼女の瞳に、迷いは無かった。

(兄弟か……一樹、ごめんなさい。あたし、ちょっと帰りが遅くなるかも。もしママになにかあったら、その時はよろしくね)




(双子の兄弟……だとしたら、タカヤとシンヤはあの二人のことか)

 孤門一輝は加頭順より全ての説明を受けたあのホールで、同じ顔の青年が二人もいたことを思い出す。恐らく、彼らが相羽タカヤと相羽シンヤなのかもしれない。
 この戦いに放り込まれて、一体彼らはどんな思いでいるのか……考えるまでもない、普通の人間ならば辛いに決まっている。そんな彼らを救う事こそが、ナイトレイダーに入隊した自分の使命だ。

(それにしても、パラレルワールドか)

 蒼乃美希という少女と出会ってから、彼女からディバイトランチャーやナイトレイダーの服装について問いただされる。本来なら黙秘しなければならないが、この状況で不振を抱かせるわけにはいかない。だから後で厳重処罰を受ける覚悟で、美希に全てを話した。
 彼女はナイトレイダーやスペースビースト、更にはウルトラマンという存在に対して最初は驚愕したが、すぐにそれを信じている。
 その理由は美希自身も、たった14歳という若さで幾度となく修羅場を潜り抜けているからだった。彼女の正体はプリキュアという名の戦士らしく、全ての平行世界を侵略しようと企むラビリンスという連中と戦っていたらしい。だからウルトラマンやビーストにそこまで驚くことはなかったようだ。
 美希の話が真実だとしたら、この島にいる66人は別世界から集められたことになる。彼女の世界ではプリキュア達は秘密裏になっておらず、一般に周知されている存在だからだ。自分達の世界だったら、それらに関する記憶はメモリーポリスによってとっくに消されている。

(だとしたら、姫矢さんもまだウルトラマンの光を持っていた世界から連れてこられたのか?)

 何故、この場にいるのはウルトラマンの光を引き継がれた千樹憐ではなく姫矢准なのか? 一輝はそう疑問を抱いていたものの、まだ彼がウルトラマンであった頃の世界から連れてこられた可能性が強い。もしくは、憐に引き継がれないままウルトラマンとして戦い続けた世界もあるかもしれないが、その辺りは准だけにしか知らないことだ。
 同じように溝呂木眞也も、まだダークメフィストとして人々を苦しめていた世界から来たのが妥当だろう。もしもまた戦いになったら、何としてでも止めなければならない。
 最悪、美希の力を借りなければならないかもしれないのが、情けなかった。

(……とにかく、僕の力でやれることはしっかりやらないと。そうしなければ、誰も救うことは出来ない)

 相羽兄妹や美希と同じプリキュア、そして異世界から連れてこられた大勢の人達を救うためにも自分がしっかりしなければならない。そうしなければ、同じナイトレイダーである西条凪と石堀光彦に顔向けが出来ないからだ。




「……ナケワメーケか、こいつは凄いな」

 相羽シンヤは目の前に立つ怪物を見て、思わずそう呟く。
 彼のデイバッグに入っていた最後の支給品。それは管理国家ラビリンスが人々の不幸を集めるために生み出した怪物、ナケワメーケの元となるシンボルだった。
適当な物に投げつければナケワメーケになると書かれており、半信半疑で椅子に当ててみればみれば、何とラダム獣のような魔物へと一瞬で変わる。しかもどうやら、自分の意のままに動くらしい。
シンヤにとってナケワメーケは何よりも有り難かった。もしもモロトフがタカヤと出会えないまま殺されたりしたら、タカヤに自分の居場所を伝えることができなくなる。それに残された寿命を考えると、本当ならここでジッと待っているのも嫌だった。
 最悪の可能性をいくつも想定していたシンヤにとって、最高の当たりとも呼べる。最初はモロトフでその効果が本当かを実験しようとも思ったが、操り人形を目の届かない場所に行かせても成功の可能性は低い上に、何よりも避けられる可能性が高かった。
 もっとも、頼れる用心棒を得たからといって下手に外へ向かうわけにもいかない。いくらナケワメーケが戦えるといっても、この島にはテッカマンに及ばないにせよ強い戦闘力を誇る存在がいるかもしれなかった。そんな連中が大量にいる場所をうろついても、自殺するだけ。
 だから、ナケワメーケに乗って移動するのは最終手段と考えなければならない。モロトフが死ぬか、タカヤの到着が遅いか、何らかの事情で冴島邸に留まれなくなったときだけだ。

「兄さん……大丈夫だからね。いざとなったら俺がそっちに行くから……それまでには生きていてくれよ」

 それでもシンヤは喜んでいる。この動くことが困難な肉体の代わりに、移動するための手段を得たことを。
 傍らで佇む巨大なナケワメーケにそっと手を触れながら、最愛の兄をひたすら思い続ける。

「とっても強く生きている兄さんを、この手で殺すこと……これが、俺の求めている願いだからさ」

 実の兄である相羽タカヤをこの手で殺すという、一切のブレがない願いが叶うのを信じながら。




 キュアムーンライトに変身した月影ゆりの瞳は、どこまでも空虚だった。長きに渡って共に戦ってきた仲間であり、親友である来海ももかの妹である来海えりかをこの手で殺したから。
 この戦いに勝ち残って最後に全てを取り戻すと誓ったのだから、その為に全てを踏み台にする覚悟でいる。しかしそれでも、罪悪感は消えなかった。
 せめてもの償いとしてえりかの遺体を埋葬した後、キュアムーンライトはその事実から逃げるように急いで灯台へと辿り着く。プリキュアの身体能力をフル活用すれば、この程度は造作もない。
 しかしそこをくまなく探して、特別な物は何も存在しなかった。屋上からもう一度灯台の周りを探すが、やはり誰もいない。

「……入れ違いになったかしら。それとも――?」

 ここから地面に着地しようとした瞬間、彼女は見た。ここから数キロメートル離れた道に、二つの人影が歩くのを。夜の闇に紛れているので詳しい姿は見えないが、変身したことで強化された視力は確かにそれを捉えている。
 キュアムーンライトは知らない。市街地に向かって動く存在が、本来ならそう遠くない未来で共に戦っていたプリキュアの一人であることを。そして今の彼女にとっては、倒すべき障害の一つでしかなかった。

(……あの二人を追うべきかしら?)

 しかしキュアムーンライトはまだ行動に移せずにいる。
ここから全速力で向かえば市街地に向かう二人に追いつけるかもしれない。しかしそれでは当初の目的地であるホテルと村を諦めてしまう上に、下手に突っ込んでは森の中から不意打ちを受ける可能性もある。何よりも、市街地は人が大勢訪れて戦いが激しくなるかもしれないので、無暗に向かっては自滅するかもしれなかった。
 だからあの二人はここはあえて見逃し、殺し合いに乗った奴らと潰し合わせる方法もある。しかしそれはあくまでも楽観的な願いでしかないし、一歩間違えればえりかを始めとした殺し合いを打倒しようとする者達と結託される可能性もあった。


 そしてキュアムーンライトの動きを縛る理由がもう一つ。来海えりかを殺したという事実が、無意識のうちに彼女の行動を阻害していた。いくら覚悟を決めたとはいえ、17歳でしかない彼女にとって殺人という行為は何よりも重かった。結局、無理をしているに過ぎない。
 しかしキュアムーンライトはまだ、それに気付かなかった。何故なら、彼女の眼はただ願いしか映していないのだから。


【1日目・早朝】
【C-9/道路】

【蒼乃美希@フレッシュプリキュア!】
[状態]:健康
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード、ランダム支給品1~2
[思考]
基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。
1:今は孤門と行動し、みんなを捜す。
2:プリキュアのみんなが心配(特にラブが)
3:ノーザには気を付ける。
4:相羽タカヤ、相羽シンヤ、相羽ミユキと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
[備考]
※本編後半以降(少なくともノーザの事は知っている時期)からの参戦です。
※ハートキャッチプリキュア!からの参加者について知っているかどうかは、後続の書き手さんにお任せします。


【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康、ナイトレイダーの制服を着ている
[装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:美希ちゃんを何としてでも保護し、この島から脱出する。
2:姫矢さん、副隊長、石堀さん、美希ちゃんの友達と一刻も早く合流したい。
3:溝呂木眞也が殺し合いに乗っていたのなら、何としてでも止める。
4:相羽タカヤ、相羽シンヤ、相羽ミユキと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
[備考]
※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。
※パラレルワールドの存在を聞いたことで、溝呂木がまだダークメフィストであった頃の世界から来ていると推測しています。


【一日目・早朝】
【E-5/冴島邸】

【相羽シンヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:ブラスター化の副作用による肉体崩壊
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、バットショット&バットメモリ@仮面ライダーW、スタッグフォン&スタッグメモリ@仮面ライダーW、椅子型のナケワメーケ@フレッシュプリキュア!
[思考]
基本:タカヤ(ブレード)と決着を着ける。
1:冴島邸に留まり、バットショットで周囲の様子を探りつつタカヤに呼びかけ続けタカヤが来るのを待つ。
2:タカヤと戦う時以外は出来るだけ戦いを避ける。
3:もしもタカヤの到着が遅かったり、何らかの事情で冴島邸に留まれなくなった場合はナケワメーケを使って自分からタカヤを探しに行く。
[備考]
※参戦時期はブラスター化完了後~ブレードとの決戦前(第47話)です。
※ブラスター化の副作用により肉体限界が近いです。戦い続ければ命に関わります。
※参加者の時間軸が異なる可能性に気付きました。
※最後の支給品はナケワメーケのシンボル@フレッシュプリキュア! です。


【1日目・早朝】 
【B-10/灯台・屋上】

【月影ゆり@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、無自覚の迷い、キュアムーンライトに変身中
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式×2、プリキュアの種&ココロポット、プリキュアの種&ココロパフューム、ランダム支給品0~2、えりかのランダム支給品1~3、破邪の剣@牙浪―GARO―
[思考]
基本:殺し合いに優勝して、月影博士とダークプリキュアとコロンとで母の下に帰る。
1:あの二人(青乃美希と孤門一輝)を追跡するか? ここからホテルを経由して村へ向かうか?
[備考]
※ハートキャッチプリキュア!48話のサバーク博士死亡直後からの参戦です。


【支給品解説】

【ナケワメーケのシンボル@フレッシュプリキュア!】
フレッシュプリキュア! 第1話『もぎたてフレッシュ! キュアピーチ誕生!!』より登場したラビリンスが使役する怪物の元。
これを投げつけられた物は巨大怪物・ナケワメーケに変貌して埋め込んだ者の意のままに動きます。

【シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード】
宇宙の騎士テッカマンブレード 第46話『時の止まった家』に登場した、相羽家の庭に埋まっているタイムカプセルの中に入っていたマイクロレコーダー。
10歳のシンヤが大人になったタカヤに向けて、僕達の絆はいつまでも変わらないというメッセージが録音されています。


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最終更新:2014年05月20日 21:33