黒岩、死す!勝利のいちご牛乳(前編) ◆gry038wOvE



 涼村暁、桃園ラブ、石堀光彦の一行は、街を歩いている。
 ここへの集合を呼び掛けてはいるものの、人の気配はない。激戦の跡も街の至る所を汚しており、最悪の場合、建物を破壊している。そこにずっと前、誰かがいて、今はどこかへ消えてしまった──という事だろうか。
 街中にバラまかれた箸袋という名のゴミを少しは気に留める人もいたかもしれない。少しばかり生々しい血痕が残っているような場所もあるが、周囲も薄暗いので、三人の中の誰かが少し気にしただけだった。
 街は夜に包まれて、少し乾いた香りを発していた。昼間の激戦など遠い過去の話に変えてしまっているようだ。
 涼村暁は、ここに来てから何度眠ったか知れないし、この夜は逆に目が冴えていた。
 桃園ラブは、度重なる戦闘の疲れもあって、少し眠気を感じ始めていた。
 石堀光彦は、特に眠気を感じなかったが、まあ寝ない人間と思われるのも不自然だろうから、眠いフリだけはしておこうと思った。わざとらしい欠伸も、あまり不快には思われなかった。

 歩いて行く中で、また、今度はもっと大量の血液の痕が見つかった。致死量、かもしれない。誰かがそこで、おそらくは命の危険に晒されたであろう事がはっきりと見て取れる。
 その血痕には、今度は誰しもが気づいた。……それは、ある建物の中に続いていた。
 誰がその血痕について口にする事もなく、恐る恐る、誰もがその建物へと足を向けた。きっと、自分たちとは全く関係ない参加者の一人が、そこで、……まあ、少し足を休めて、治療して、それでまたどこかへ行って、何とか助かったのではないだろうか、とそう思っただろう。少なくとも、ラブはそう信じたかった。

「……せつな」

 ……だが、違った。
 その建物の中にあったのは、無二の親友・東せつなの遺体であった。誰かが気づいて、こうしてここまで運んでくれたのだろうか。彼女を殺害したのがモロトフである事は承知していたが、彼女をここまで運んでくれたのは誰なのか、まだ会っていなかった。
 友人の遺体を見る事になったのも、この一、二時間で二度目だった。だから、この余りあるショックを、ラブはどうにか隠しきる事ができた。
 それは、山吹祈里の原型を留めない凄惨な焼死体よりも遥かに安らかなものだったし、もしかすれば生きているかもしれないと──そう思ってしまうくらいに、綺麗な死に顔であった。
 ただ、そんなのはやはり喩えにしかならなかった。傷口は、そこに間違えようのない死を実感させる、そんな大きな穴になっていた。この穴がなければ、またラブは、それを遺体だと確信できなかったかもしれない。
 いわば、祈里より、ずっと「まし」だった事が、この場においてせめてもの救いであった。
 そうであった事が、ラブのショックを落ち着かせ、また逆に、動悸を早めさせていた。

「……」

 言葉が出ない。しかし、涙は、枯れないのか、頬を伝う。
 祈里もそうだったが、伝えたい事の数に比べて、いざ当人の遺体を前に出せる言葉は少ないのであった。
 その様子を見ている暁はまあ、今日日まで女同士の友情はそこまで信じていなかったと思う。だいたいの場合、腹では相手の事を良く思っていないんじゃないかと、そういうのが女の友情だと思っていたし、経験上、確かな感覚だった。しかし、ラブがせつなの手をただ握り、言葉もなく、立ち尽くした時、そこにある友情は本物だったのだろうと感じる事ができた。
 二人は、もしかしたら……姉妹のような存在だったのかもしれない。

「……」

 放送を受け、彼女たちを殺害した者と会い、そして、遂に彼女たちの遺体と遭遇した。二人の友人に対して、彼女は三段階のステップを踏んで、ようやくその死を胸の中で確かなものにしていった。
 また、祈るように、今度は両手でせつなの指先を握った。
 今度は心の中でお別れの言葉を告げているのだろうと思った。
 そして、最後にまた、ドーナツを一つ、彼女の遺体に添えた。

 石堀は、まあ、せいぜい黙祷をしただろうか。目をつぶって、何を考えているかはわからないが。
 暁は、死に顔に黙祷をする事はなかった。ただ、愕然としていただろう。
 こんなに可愛い子が、次々と誰かに殺されている。ラブやほむらのように──。






「中学校……」

 マップ上に書いてある施設のひとつ、「中学校」。どうやら、そこに辿り着いたらしい。
 外観はごく普通の中学校だ。ラブは元の世界、こういう場所にいた。
 いや、言ってみれば、昨日までは中学校に通っていた。どうしてこう、幸せというのを唐突に崩されてしまったのかはわからない。
 昨日までのラブは、翌日もまた普通に美希や祈里やせつなと普通に遊んでいると思っていたはずだし、まさかその再会が遺体との対面……という形になるなど、思っていなかったはずである。
 唯一、生きている美希もどこにいるかはわからなかった。ラブにとって、最後の日常生活の拠り所は美希である。
 ……ただ、ラブにとってわからないのは、果たしてこの殺し合いに参加していた「美希」や「祈里」や「せつな」が、元の世界にいるのかどうか──という事であった。
 パラレルワールドとか、時系列の矛盾とか、そういうのが正しく機能しているのなら、元の世界に帰れば、また祈里やせつな、えりかやゆりと会えるのか、それとも、ラブの世界の彼女たちもいないのか──それが気がかりだった。

「仕方がない……。誰もいないようだが、一応この施設も寄っておこう」

 石堀が提案する。
 マップ上に点在している施設。まあわざわざああして丁寧に施設の名前まで書いてくれているのだから、何かしら行ってみる価値はあるだろうと、石堀は踏んでいた。
 それに、学校というのは意外と何でも揃う場所でもある。総合的な学習のために、様々なルームが設けられている。特に行きたい場所があるというわけではないにせよ、石堀はそこで何か捜索してみようと思ったのだ。
 まあ、何人か集まっているかもしれないし、部屋を暗くしたまま、人気のないそぶりを見せて、この施設に息を潜めている可能性だってある。
 ……それが、都合のよい人間か、都合の悪い人間かは、石堀も知らないが。

「9時を回ったか……。どうする? もう警察署側に行く道は禁止エリアだぜ?」
「もう約束の時間から3時間も過ぎている。そこにもいるかどうか」
「3時間なんて遅刻のうちに入らねえっつーの」
「……いや、どう考えても3時間は相手が怒って帰るレベルの遅刻だろ」

 石堀は、やれやれと呆れた表情を見せた。暁は時間にもルーズらしい。6時の約束に9時に行くのも仕方がないとか。
 そして、ふと思い出す。その時刻、禁止エリアとやらに加えて、もうひとつ面白い情報があったではないか。
 確か、そう……制限の解除だとか何とか。

「そうだな、二人とも。一度、中学校をざっと見て、危険人物がいないようなら、一度、それぞれで別の階に分かれてみないか?」

 石堀が提案する。

「どうしてですか?」
「一人で行動すれば制限を解除するとか何とか、あの放送の怪人はそう言っていただろ。俺はどうか知らないが、二人の場合は思い当たる事もあるんじゃないか?」

 一応、石堀は一ナイトレイダーの隊員という事になっている。身体能力などに大きな制限とか、そんなのはかけられていないだろう──という事に、なっている。
 石堀にとって現状、最も厄介なのは、簡単に言えばダークザギの力を持っていない事だ。それを制限と呼ぶか否かはともかく、何らかの主催からの施しが頂ける可能性だって否めない。第一、凪の死によって石堀光彦は進路を失った。そこに何らかのフォローが必要となるのは確かである。
 石堀をどう使うか──主催陣営がそこを考えていれば、自然と「ダークザギの力を蘇らせる」という結論に至る事だろうと、自分自身も感じている。まあ、その後は主催陣営もろとも全て殺しつくし、壊しつくすまでだが。
 今のところ、幸いにも、主催陣が提唱した「条件」は、すべて、石堀にとっても都合が良い。一人きりで行動すれば、にもラブにも聞かれない自然な状況が出来上がるのである。それで充分だろう。

「……特に、思い当たる事は……」
「そもそも、俺なんかシャンゼリオンの力を使い始めてまだそんなに経ってないんだぜ。そんな事言われてもな……」
「だからこそ、まだ知られざる力があるかもしれないだろう」

 この様子だが、まあ、二人ともすぐに承諾した。
 要は、ゲーム上、シャンゼリオンの力やキュアピーチの力にまだ多段的な制限がかけられているかもしれない……という話をすれば、納得してもらえるだろうと思ったのである。
 中学校というのは広い。
 誰にも見られず、誰にも聞かれず──という状況を作るのは、この広い中学校を三人で独占すれば、さして難しい事ではないのだ。階ごとに分ければ、障害が生まれる事もない。





 最初は三人で中学校を数分程度見張りして、そこにおそらく誰もいない事を認識した。
 外側からライトをつけて各教室を照らしても、特に反応はない。入ってみても、人がいた形跡がある教室や水浸しの場所もあるが、人はいなかった。

「で、どうする?」
「あ、石堀。俺、ちょっと、図書室に用事あるんだけど」

 暁がいきなり、石堀の狙っていた場所を指定した。石堀も、パラレルワールドとやらに目をつけていたので、調べ物ができるそこを狙っていたのだが。
 暁の意外な提案である。石堀は自分が提案せずとも、確実に、図書室が自分の領域になるだろうと思っていたので、驚く。

「漫画なら、多分ないぞ? ……いや、手塚漫画や『はだしのゲン』はあるかもしれないが」
「漫画じゃねえ!」

 ……その暁の切り替えしで、石堀は少し悩んだ。そして、ラブの方をチラッと見て、暁にそっと耳打ちする。あまりラブの前で言える事じゃないのだ。

「エロ本か? もっと無いぞ」
「違う!」

 違ったらしい。漫画でもエロ本でもないとなれば、果たして暁が読むものはなんだろう。ラブは隣で頭にハテナを浮かべていた。
 絵本……? この状況で絵本は読まないだろう。漫画やエロ本を読むのもどうかと思うが、暁ならあり得る。しかし、絵本は似合わない。
 石堀は、真剣に悩んだ。

「……俺が勉強しちゃ悪いのか?」

 暁が半ばキレ気味にそう言っていた。
 今の一言を、石堀とラブは脳内でリピートした。

 ……暁、勉強。暁、勉強。暁、勉強。暁、勉強。暁、勉強。

 おそらくはこれまで、義務教育課程は勿論、高校受験も引き算ができれば受かるような高校に入って、探偵のライセンスを得る事さえ、たぶん代理のそっくりさんでも立ててやらせていたんだろうと考察していた彼らに、衝撃が走る。
 勉強はしていないだろうと踏んでいた。一生。
 いや、しかし当人はこう言っている。暁かな矛盾──そう、これは暁の行動や性格と矛盾しているのだ。

「」
「」
「言葉を失うな!」

 思わず、ラブも石堀も声を失っていた。口をあんぐりと開けて、暁の方をぼーっと見ている。そして、石堀が少しばかり深刻そうな顔で告げる。

「すまない、桃園さん。さっきの戦いで、たぶん……コイツは頭を打ったんだ。コイツはもう、俺たちの知っている涼村暁じゃない。本当にすまない……俺が至らないばかりに」
「石堀さんのせいじゃありません! ……私だって、あの時は……何も……何もできなかった!」

 ラブもまた、かなり深刻そうな顔でそう言った。俯き加減で、先ほどのダグバ戦の代償があまりに大きかった事を実感する。
 彼らは己の無力さを今、目の前の男が勉強を始めようと言い出した事で感じ取っていたのだ。
 そして、また暁と同じように人格を壊してしまう犠牲者が出ぬようにと、硬く心に誓う。

「……お前ら、本気で俺に喧嘩を売ってんのか?」

 どこまで本気でどこまでギャグなのかもわからない様子で、暁は突っ込んでいいやら、突っ込んじゃいけないやらの複雑な心境であった。
 そんな暁の様子を見ながら、石堀が暁の頭に手を当てる。

「だから熱もねえ!」

 とにかく、暁はそのまま怒って、すぐに図書室に消えていった。その後ろ姿を、石堀は悪役笑いで見届けた。随分と遊ばせてもらったが、全て冗談である。
 まあ、暁が行ってしまった以上、仕方がないので、石堀はそのまま一階の理科室あたりに入った。よく夜中の学校の理科室に入れるものだと、ラブは感心する。
 それから、ラブは三階まで行った。楽しい人たちと出会えた嬉しさの反面、まだ祈里やせつなの死に様に、胸が落ち着きを保てていないのを感じていた。階段のラスト一段を踏み外して転んだ時なんかは、特にそれを強く感じた。






 黒岩省吾は、この時、妙に落ち着いた気分で街に向かっていた。
 シャンゼリオンの進路はおおよそ調べがついている。おそらく、街に向かったに違いない。
 しかし、まあ、その途上、随分と面白い情報を得たものである。

 西条凪と、ン・ダグバ・ゼバが死んだ。
 ──もう、この世にいないという。
 ラームを吸っただけで死亡カウントがなされたのか、それとも肉体まで完全に殺されたのかはわからない。石堀光彦は激怒するだろう。
 どうやらダグバも、もう死んだというらしい。

「……ゴハット」

 黒岩はあまりはっきりとした面識はないが、闇生物の変わり者、ゴハットも主催側にいるらしい。黒岩は、そんな情報を一切得ていなかった。
 随分とはっちゃけていらっしゃるようだが、黒岩としては、それが不快だった。
 ダークザイドの人間たちにあれだけ売ってやった恩を、こうして仇で返される事となるとは……。
 そう、ダークザイドの人間界での生活を補助していたのは黒岩省吾その人だ。黒岩がいたから、本来籍も何もないダークザイドたちは職にありつけ、人間として人知れず静かに生活する事ができている。
 ゴハットだって同様だ。そのはずが、黒岩をこんなゲームに巻き込むなどとは。

「聞こえているか。……もし、この言葉を聞いている者がいるのなら、ゴハットや闇生物たちに伝えておけ。貴様らはダークザイドの恥さらし……この俺がすぐに処刑するとな!」

 恩を仇で返した事もそうだが、卑怯なこの殺し合いにおいて、自分たちダークザイドの人間がいるというのが、黒岩省吾には許せないのであった。
 自分の国の人間が他国で恥をさらす事を遺憾に思うような、そんな気分だろう。常に生まれた場所や国、立場をわきまえ、それに誇りを持って生きるのが騎士道であり、選ばれる民が持ち続けるべき意識だ。
 ゴハットのような下品・不潔・バカ・マゾヒストのオタク奴僕は、ハナからダークザイドの恥さらしに違いないが、黒岩はそのくらいは寛容に見ていた。それでもまあ、せいぜい個々人の趣味の範疇でふざけるくらいは許してやろうとは思っていたのだ。
 料理も、茶も、酒も、スーツも、政治も、黒岩にとっては趣味のようなものだ。趣味にも高尚とか低俗とかはあると思っていたが、まあそれでも趣味は自由だと思えるレベルではあった。

「……だいたい、制限だと? 笑わせる!! そんな物、かける必要がどこにもない……。そんな物がなくとも、勝ち残るのは俺かシャンゼリオンか……二つの一つだ! 全力全開の戦いも多いに結構。俺を見くびるなよ……?」

 たとえ負けた記憶があったとしても、黒岩はめげない。己の誇りだけは捨てない。
 ゴハットが、今ダークザイドの闇生物の名を借りて汚した誇りを、いずれ黒岩の勝利という形で返してやるしかないだろう。
 シャンゼリオンともいずれ決着をつけて、その首を叩き斬る。






 暁は、図書室の中でひとり、調べものをしていた。中学校の図書室ともなると、まあある程度は学習材料がそろっているもので、小学校の本棚の怪談本よりかはまだマシな本が揃っている。新書はない。その辺りがやはり、高校の本棚には行き届かないのである。
 しかしながら、暁にとっては充分難しい本であった。普段は本など読まない暁ではあるが、まあ時たま、読むときは読む。……漫画かエロ本を。

「んー……ふふーん……」

 鼻歌混じりに、図書室から適当な本を探る。
 まあ、声は出さない方がいいか。誰にも聞かれちゃならないのだから。
 とにかく、暁は図書室の本棚から、必要そうな本をざっと取り上げる。

「なるほど……そういう事か」

 暁としても、本などめくるのはいつ振りだろうか。教科書なら、わりと最近めくったが、それも小学生レベル。

「フムフム……。全然違うじゃねえか……」

 本を読みながら、まあななめ読みではあるが、暁は三十分の間に必要な知識を詰め込む。暁も関心のある材料の本だけ手に取って見ているから、まあ何とか、三十分のうちに多少は読んでいく事が出来た。
 パラレルワールド、とやらの本も、後で必要になりそうなので、暁はキープしておく。図書室から本をガメるくらいは問題ない。
 さて、三十分が経過する。

 すると……

「ん……?」

 暁の後ろに、人影が、現れた。その人影に気づき、暁は振り向く。
 自分には制限などないと思っていた暁だが、三十分ジャストで誰かが現れたらしい。
 ──そう、そこには意外な顔があった。






 石堀は、理科室で何という事もなく、三十分を過ごしていた。時刻は九時半を少し回る。
 何もせず、ただ色々と思索を巡らせているだけならば、随分と長い時間だ。戦闘ならば、何戦か終わるであろう時間を、ただぼーっと過ごすのもまあ、悪くはない。
 勿論、怖くも何ともない。明るいよりは暗い場所の方が落ち着くというものだ。

『……石堀光彦さんですね』

 石堀は、その声が聞こえたので、振り向いた。
 石堀は実に二十一時間ぶりに、その声を聞いた事になる。

「加頭、順……おまえ……」
『それでは、あなたにかけられた制限を簡潔に説明します。あなたにかけられていた制限は、……まあ、いくつかありますが、今回解除するのは二つ。あなたの記憶、そのものです』
「……記憶、だと?」

 加頭の目の焦点は石堀を向いているようには思えない。ホログラフィというよりは、まるでそう──録画映像が語り掛けているようだった。しかし、それは鮮明なホログラフィで、正真正銘、そこに広間のあの男がいるように見えた。
 果たして、加頭順。この男が、本当にこの世に存在しているのかさえ、石堀にはわからなかった。もしかしたら、あの広間にいたのもホログラフィで、データだけの存在かもしれない。
 イラストレーターもそういえば、こうしてホログラフィを使って自分たちの目の前に現れるという事を、石堀は思い出した。
 加頭は続ける。

『ええ。あなたには、我々の方から予知能力に関する記憶の制限をさせていただきました。あなたが持つ来訪者の力の中でも、『記憶操作』と『予知能力』はとりわけ厄介ですから、いっその事あなたの力を『記憶』ごと制限させていただく形にしていたのです』
「……そうか、なるほど」

 石堀の脳裏に、ふと色んな記憶が蘇ってくるのを感じた。
 山岡一を殺害した後、その体を乗っ取り、周囲の人間全体の記憶を操作──そうして『石堀光彦』は誕生し、この世に生まれた一つの人格として認められた。それ自体はよく覚えているが、『記憶を操作した事』が曖昧だった。
 西条凪が光を継ぐ未来を予知し、凪に長い年月をかけて憎しみを植え付けるために、光を強化した。しかし、『未来を予知した事』が曖昧だった。

 そう、たとえ、来訪者と同様の力を持っていても、記憶操作には引っかかる事がある。
 来訪者が山岡一のデータをいじれなかった事や、石堀光彦が新宿の災害の一件を知らず、ビーストについては覚えていても「デュナミスト」のデータの中に「真木舜一」の存在を記録していなかった事からも、それは明白だ。
 その記憶改竄を、石堀は受けていたわけである。
 ばかしているつもりが、逆にばかされていたという話だ。……まあいい、と石堀は思う。それもまあ、面白い話だ。

『既に『予知能力』だけはあなたに返還されています。これも一度使うと、二時間使用できないのですが、今後は自由にお使いください』

 来訪者やダークザギの予知能力は、もともと完全なものではない。来訪者やイラストレーターの予知は実際、ほとんど外れているし、運命を変えるだけの力が働けば、全て変わってしまう。ある世界で、ウルトラマンノアがダークザギを打ち破ったのもまた、同じ理由だろう。
 だから、主催陣はその返還には不利益がないと判断したに違いない。
 ただ、あくまでその予知の範囲も多少の制限があり、使うと二時間使用できないデメリットはあるが……。

「貴様ら、俺にこんな事をして、ただで済むと思うなよ……?」
『それからもう一つ。F-5エリアの山頂には、忘却の海・レーテを解放しておきました。これは光の力を奪う媒介として使用してください』

 そして、それだけ言い残すと加頭の姿がフェードアウトした。逃げるような形ではない。自分の優位を証明するかのような余裕に満ちた退場だった
 辛うじて、先ほど相槌が返ってきたので、会話は成立しているようだったが、終始、気味の悪い会話であった。会話というより、ただ機械的に物事をこなしているような男だ。
 まあ、平等な殺し合いのために、会話の内容は最低限にとどめられているのだろう。

「……フン。どちらにせよ、俺の力は戻らないか──」

 石堀は、躊躇なく、『予知』の力を使う。
 とにかく、一度でも使えるなら、まず調べたいものは一つ。
 ──そう、『ウルトラマンの力の継承者』だ。

「……そうか、あいつか」

 それが、既知の人物なのか、未知の人物なのかはわからない。
 ただ、石堀の中にはそのビジョンが見えたので、ニヤリと笑った。
 そう、その時が来るまで、石堀光彦は石堀光彦のまま行動する。この方針は変わらない。
 もし、その時が来たら──それは簡単。暁もラブも皆殺しにする。そして、あいつの闇に汚れた憎しみで、光を変換する。
 さて、これでダークザギの復活の準備は整った。……あとは、このおめでたい二人とバカ騒ぎしながら、「あいつ」の元へと向かい、まあ親しくしてやって、信頼とやらも深めて、何とか言いくるめてレーテのところへ向かうなりして、二人や「あいつ」の仲間を殺すか、殺害した事を打ち明ければいい。それで、憎しみで力を奪えばいいわけだ。

「……どうやら、“俺に制限なんてなかった”みたいだな。まあ当然か。さっさと二人の元へ向かおう」

 既に、ダークザギは、石堀光彦の思考に戻っていた。
 自分は石堀光彦であるとアピールするように、石堀の言葉で言い残し、彼はその場を去った。






 桃園ラブは、うとうとしながら一人で三階の教室の隅に体育座りしていた。
 夜の学校に一人。──というのは、心細い。
 電気をつけて存在を明かす事もできないし、下に二人がいるとはいえ、寂しかった。
 誰か、……本当に誰でもいいから、そばにいてほしいと、ラブだってそう思った。
 こうなると、勝手に涙が伝う。
 だから、膝でその涙を吸えるように、体育座りしていたのだろう。
 ラブは、膝を抱えて、顔を隠すようにして泣いていた。
 誰にも見られず、誰にも聞こえないという状況がいかに辛いものなのか、今をもって実感している。

「みきたん……」

 フレッシュプリキュアのメンバーで生きているのは蒼乃美希だけだ。
 ラブは悩む。元の世界に帰れば、また普通に彼女たちと会えるのだろうか。
 これは長い夢だったように、また普通の日々が待っている。
 どこかの世界では、また別のラブが悲しんでいるのかもしれない。──そう、思うとやるせない。人が死んだのは──そしてそれが、せつなであり、祈里である事は、確かだ。
 それはどんな世界でも変わらない。
 別の世界の少女、巴マミと心を通わせたように。
 別の世界の男性、一文字隼人が勇気づけてくれたように。
 どんな世界の人間でも、死んだら悲しい。誰かがきっと悲しむ。
 たとえ帰って、そこに祈里やせつながいたとしても……どこか晴れない心がラブを襲うだろう。

「つぼみちゃん、いつきちゃん……」

 他にもまだ生きているプリキュアはいる。
 彼女たちがこれからどうするのか、ラブも知りたかった。
 どうすればまた彼女に会えるのだろう。街にはいるのだろうか。
 こんな所にいて、いいのだろうか……。

「パラレル、ワールド……」

 パラレルワールド──その言葉は、かつても聞いた。
 ラビリンスが統治しようとした全パラレルワールド。それはおもちゃの国であったり、科学が異常に発展したラビリンスであったり、ラブたちが住む地球であったり、完全に性質の異なる物ばかりだった。
 石堀や暁、一文字やマミの世界もラビリンスのような世界なのだろうか。
 この果てしない話について、考え続ければ、三十分も短い物になるのではないかと、ラブは思った。
 時計の針はだんだんと過ぎていく。
 最初の一分は長かった。しかし、次の三分で眠ってしまった。それでもまた五分で起きて、その次の七分が長かった。九分間項垂れて、そのまま五分と少し待った。いつの間にか、三十分は、回想すれば短く感じるほどにあっという間に過ぎ去った。






 三人は時間になると、校庭に集合した。校舎の前、昇降口の外で石堀が合図のライトを照らす。
 暁とラブの三十分間は終わったらしい。そのライトの光を見たラブは、すぐに下に降りる事にした。
 彼女はすぐに下に降りていく。その最中に暁と合流し、二人で階段を下り、昇降口に出た。学校は上履きで入る場所だが、土足のまま中と外を行ったり来たり。上履きがないから仕方がない。

「……で、成果は?」

 集合すると、すぐに石堀が口を開く。自分に成果はなかったような顔で、相手に尋ねるようにそう訊いた。石堀も自分の成果など話せるわけがない。

「ありませんでした……」

 桃園ラブには成果はなかったらしい。
 ただ、一人寂しく教室に残させてしまった結果になるが、石堀としては実際、そんな事はどうでもよかった。
 ラブ自身の孤独に気付かなかったフリをして、石堀は暁の方を見る。

「俺はあったぜ」

 暁が言う。コイツはのんきだが、どうやらまだ何か強い力を隠しているらしい……と、石堀は少し勘ぐった。

「……で、お前の成果とやらはなんだ? そうだ、それからどうやって制限を解除してもらったのかを、教えてくれ」

 石堀のこの台詞を、主催者はどんな顔で聞いているのだろうか。
 そう思うと、自分が滑稽にも思えてくるが、まあそんな事は、今はどうでもいい。
 彼らを完全に騙しきる事ができれば、後はこっちのものだ。
 暁は、己の制限の解除について語った。






 先ほど。図書室で調べものをしていた暁の後ろに気配を感じ暁のところまで話は戻る。
 誰かがいる。──それを確信して、暁が振り向くと、そこにいたのは……

『シャンゼリオ~ン。やあ、やっと会えたね~』

 暁は、その姿を見ていきなりドロップキックをかました。
 本能が、その姿にドロップキックしろと告げていたのである。

『無駄無駄~。僕のこの姿はホログラフィだからねぇ。触れないよ。君が僕を倒すのは今度会ったト・キ♪』

 暁は、「うぉぉっ!」──地面に全身を打ち付けて、「いてぇぇっ!」──痛そうに転がっている。
 現れたのは、怪人。青く、両手が触手になっているこの怪物は、先ほど放送で見かけた闇生物ゴハットだった。

「てめえ! 何しに来た!」

 暁は、地面にぶつけた右肩を抑えつつ、ゴハットにそう叫んだ。

『だ~か~ら~。制限の解除でしょっ! おたく、本当に放送聞いてた?』
「……そんな事言ったって、俺に制限なんかないだろぉっ!? …………え、もしかして、あんの?」

 暁はこの時間ではシャンゼリオンになったばかり。制限も何も、力の使い方さえ殆ど手探りな彼に、なぜ制限なんかがかけられているのかはわからない。
 力も元の世界で使った時と対して違わないはずだ。

『チッチッチッ……あるんだなぁ、それが』
「ならすぐに教えろぉっ!」
『ハイ♪ コレを手に入れるのが君の制限。こっちとしてもさ~、おたくには、もっとカッコよくて熱いヒーローになって欲しいのよ~。だから出血大サービス』

 ゴハットは、ホログラフィの両手で何かを握っていた。どうやって掴んでいるのかはわからないが、おそらくドラ●もんのようにその辺を深く考えちゃいけないのだろう。
 その物体は、ちゃんと暁の手で触れる事ができた。暁は、そのままゴハットの手を掴もうとしたが、その前にゴハットは消えてしまう。
 暁は、訝しげな表情で、それを眺めた。






「……というわけで、俺はコレを手に入れました~♪ ……ってふざけんな!」

 暁がゴハットにプレゼントされた青い本を地面に叩き付ける。
 「スーパーヒーローマニュアルⅡ」と書かれた同人誌だ。「Ⅰ」がないのに「Ⅱ」とは、また謎である。まるで、Ⅰ世もⅡ世もいないのに、いきなりⅢ世が出てくる怪獣のようだ。
 暁が地面に叩き付けたその同人誌を、まあ石堀は手に取って、ぱらぱらとめくる。

「二十一世紀を生きる新しい時代のヒーローたち……初代スーパーヒーローマニュアルの時代には存在しなかった、新たな時代のヒーローの言葉や戦い方を君に贈ろう……なんだこれ」
「へぇ、なんか随分と本格的な本ですねぇ」
「ふざけてんだろ!? 見てみろよ、この恥ずかしいセリフの数々……」

 新しい時代のヒーローの名台詞、名言などがずらっと載っていたり、ヒーローが必殺技を使う時の仕草が細かく紹介されていたりする。

「『戦う事が罪なら、俺が背負ってやる』、『派手にいくぜ!』、『ヒーローってのはな、誰かを犠牲にして戦ったりしねぇんだよ!』、『本当の戦いはここからだぜ!』……って、もうバカかと。よくこんな恥ずかしい事が言えるよな。俺はそういうのじゃないの」
「『俺ってやっぱり決まりすぎだぜ』」
「うっ……」
「いいじゃないですか、決め台詞。かっこいいですよ! あたしだっていろいろあるんですから! わ、悪いの悪いのとんでいけ~……とか」

 石堀に痛いところを突かれたのか、暁は黙り、そこにラブがフォローしていた。例の台詞も相当恥ずかしいはずだが、半分無意識である。
 ラブも言っていて恥ずかしいところがあったが、これまた無意識に近いので仕方がない。

「……ま、とにかくこれは俺にはいらないの! その辺にでも捨てといてくれ。こっちのパラレルワールドがどうとかって本の方が、まだ使いようがあるぜ。こっちを読もう」

 暁はその辺の本を投げ捨てたり、勝手に図書室から本を持って来たり、色々とフリーダムだ。土足で学校に上がるのは仕方ないが、それにしても彼はとりわけ自由である。

「ちょっと待て。おい、この本、お前の事も載ってるぞ」
「ん……? なんで……?」
「シャンゼリオン、栄光の軌跡。……あー、そうだな。コレ、もしかしたらここに来なかった時のお前のその後が書いてあるのかもしれん」
「マジで!?」
「お前、シャンゼリオンの力を手に入れたばっかりだったよな。使い方のノウハウもよくわかってないんじゃないか?」

 シャンゼリオンの概略を見る。シャンゼリオンに割いてあるページはわずか一ページだけだ。暁はすぐさまそれを石堀の手から奪って見る。

『軟派な私立探偵・涼村暁が偶然、クリスタルパワーを浴びてしまった事から変身できるようになった超光戦士!』

 そういう煽りとともに、シャンゼリオンの全身像が書いてあった。

「……って、大した事書いてねえじゃねえか!」

 載っていたのは、シャンゼリオンがその後もダークザイドと戦っていた事だけ。
 詳細なデータを書き記す事はできないらしい。シャンゼリオンの写真が載っており、その腕やら足に線が引っ張られ、その能力や必殺技が書いてある。
 それは殆ど既知のものだった。

「……でも、これはどうだ? シャンゼリオンの腕で呼べる超光騎士」
「おい、ちょっと待て。そんな便利なものがあるなんて俺は聞いてねえぞ……」
「とにかく呼んでみたらどうですか?」

 仕方なく、暁はそれを試すために燦然する。
 その辺は、面倒なので省略する。変身は普通に考えればヒーローにとっては尊い物だが、暁の場合は仕方がない。
 今回は特にバンクとかを使う事もなく、次のシーンではシャンゼリオンに変身していた。

「……というわけで、人の迷惑顧みず、やってきましたシャンゼリオン!」
「いいからさっさと呼べよ。おら、あくしろよ」
「まあそう焦るなって♪」

 それだけ言って、シャンゼリオンは、顔に腕を近づけて、三体の超光騎士の名前を呼ぶ。

「リクシンキ! ホウジンキ! クウレツキ!」

 まあ、これまためんどくさいので結論だけ言えば、三体のメカはクリスタルステーションからシャンゼリオンのところに現れるわけもなく。
 シーン……と静寂だけが残った。

「…………ただし、現在クリスタルステーションはA-10エリアの海上に出現していますが、まだ電気が通っていませーん。高圧電流を流すと復旧するかもしれませーん……だって」

 ラブが、リクシンキ、クウレツキ、ホウジンキの説明部分の追記を読み上げた。
 クリスタルステーションは、21時よりその姿を現すらしい。それは既に条件を満たしているのだが、そこに高圧電流を流すというのが地味に辛い。

「高圧電流っ!? ふざけんなっ、そんな芸当できるか!!」
「そういえばエンジンメモリの効果の一つにエレクトリックが」
「それだ、石堀、それ使え!」
「無理だ。A-10が遠すぎる」

 ……どうやら、三体の超光騎士は呼び出すのが無理らしい。
 暁は、このまま最終回まで……じゃなかった、殺し合いが終わるまでにクリスタルステーションに辿り着くのは難しいだろうと思った。
 施設と施設を移動できる超便利な道具でもあれば別だが、まさかそんな物があるわけがない。もしそんな不思議な魔法陣があったら悪の組織が利用するに決まっているだろう。

「……まあいいや。燦然解除っと」

 ここまで何とかなってきたわけだし、これからも超光騎士なしで何とかなるだろう。
 そう思って、暁は変身を解除した。

「おい、ちょっと待て」

 石堀がそんな暁を制止する。
 暁が、石堀が指差す方を見ると、そこには闇に溶けて現れる黒岩省吾の姿があった。






 突如、中学校の校庭に現れた黒岩省吾。彼のスーツは、以前見た時よりも泥や土に塗れ、ボロボロに破けていた。
 しかしながら、表情は妙な余裕に満ちており、一歩一歩と暁に近づいていた。

「……久しぶりだな、シャンゼリオン! 時間にして、そう……およそ7時間半ぶりだ。一睡するのにはちょうど良い時間か。人間の場合、睡眠時間は6時間半~7時間半にした人間が最も長生きする」
「黒岩……っ! 二人とも下がれ……、こいつとは俺が一対一で勝負をつけるッ……!」

 彼を前に、涼村暁は身構える。彼が黒岩の前から庇ったのは、桃園ラブであった。
 ラブの前に立ち、手を広げている。
 黒岩は、そんな暁の姿を見て、鼻で笑う。

「……その様子では、貴様は貴様の美学を捨ててはいないようだな……確かに、ダークザイドよりマシな人間もいる、という事か」

 ゴハットを見て、そう確信した。人間にせよ、ダークザイドにせよ、愚かな者とまともな者がいる。別に、人間が生きていても、黒岩にとっては構わない。強ければ生き残っていい。ただし、弱ければ死ね。それが黒岩の望む世界だ。
 誇りを大切にしろ。強さを持て。それでいい。黒岩は食料である人間に対しても、ある程度の敬意くらいは持っている。

「……美学なんかねえ……。黒岩、てめえのせいで、凪が死んだ……っ! だから、俺はてめえを憎んでいるっ! それだけだ!」

 そしてまた、暁も黒岩省吾に対する憎しみや怒りが原動力となっていた。
 美学、そんなものと暁は無縁だ。まあ、探偵としてのロマンとか、「太く短く生きる!」とかそんな生き方が美学と呼ばれるのなら、それはアリかもしれない。

「折角会ったんだ。それだけ俺が憎いのなら……決着をつけるか、シャンゼリオン」
「ああ! だがな……その前にてめえに言っておく事がある!」

 暁は黒岩に強い口調で言い放った。
 暁の瞳は真剣そのものだった。

「お前は人の事を散々いい加減だとかバカだとか抜かしたが、それはお前の方だッ!」
「何……?」

 黒岩が、暁の言葉に興味を示した様子である。
 暁がまだ、これだけの憎しみを負いながらも、戦いよりも優先して黒岩に言いたい事があるらしい。
 それは、お互いいつ死ぬかわからないからの言葉だろう。

「前にお前は、日本のお茶の間に『冗談は顔だけにしろよ』と言う台詞が知れ渡ったのは、1982年に日本でテレビ放映されたアメリカの某ドラマを起源と言ったな!」
「それがどうした……?」
「それは嘘だ! 1975年の日本のテレビドラマ、松田優作・中村雅俊W主演、『俺たちの勲章』を一度見てみやがれっ! 第1話で思いっきり言っているからな!」
「何だと……っ!?」

 驚く黒岩の顔を見ても、まだ暁は満足しない。
 そう、暁の戦いは既に始まっているのだ。黒岩を力で倒す前に、黒岩に精神で勝つ。言葉で勝つ。
 何においても彼に勝つという事だ。
 そのために、暁は先ほど、図書室で勉強し、黒岩に勝る知識を得るべく、「テレビドラマ辞典」やら「昆虫採集辞典」やら何やら、色々と物色していたのである。

 暁は続ける。

「それからお前は、世界で最初のメタフィクションは1096年、イノーエット・シキが書いた『チャンゲリオン』という小説だと言ったな! あれはさっき俺が読んだ『使うとダサいしウザい加齢臭親父の大嘘大辞典』(※適当です)に書いてあったウソ知識だ! だいたい、イノーエット・シキとかチャンゲリオンとか嘘臭いだろ、気づけよ」
「なっ!」

 そんなものが実在していたのかはわからないが、暁は言った。たぶん、それは調べていないだろう。
 勿論、黒岩の知識は間違っている。誰かが適当に書いたものなのだから。暁の知識も適当だが、黒岩もどこかから得た冗談のような知識を本気にしているのだろう。

「更に! お前は、世界で最初の昆虫採集は紀元前600年の事例が何とか言ってたな! そんな事実はどこにもない! だいたい、昆虫採集なんて人類が始まって間もないころからやってるだろ」
「確かに……っ!」

 黒岩ははっとする。いま、自分は暁の知識を認めてしまった。
 いや、考えれば嘘だとわかるような知識をひけらかしてしまった己への……罪。

「要するに、お前の言っている事は嘘ばっかりだ! 口先だけのでまかせ野郎……ペテン師だ! だから俺たちはお前を信用すべきじゃなかった……! そこだけは、俺たちの負けかもしれない……だがしかし! 散々俺たちを騙してコケにし続けたお前を俺は許さない!」
「待て! 俺はちゃんと調べたっ! 確かに俺はお前たちを騙したが、俺の知識はでまかせじゃない! 正しいのは俺だ、俺が間違う事はないっ!」

 黒岩は、連日図書館でちゃんと調べものをして得た知識だ。人間界を掌握するために、人間界の知識が必要だと思って、毎日勉強した。
 そこから都知事となったというのに、それが嘘であるはずがない。

「いーや、お前は、子供たちに間違った知識を教える子供の教育上よろしくない猥褻野郎だ! 子供番組から出ていけ! テ●東の水曜夕方枠に、お前の顔は不適切なんだよ! 地方局で死亡回がお蔵入りになれ、アホたれ! お前のやっている事は全部まるっとお見通しだ、このインチキ手品師野郎!」
「お、お前にだけは言われたくない……!」

 暁は黒岩の悔しそうな顔で増長して、好き放題言っている。
 暁は既に勝ち誇った顔で、黒岩の言葉などに耳を貸さない様子である。

「だいたい騎士のくせに日本刀なんか持ちやがって! どこが暗黒騎士だよ、騎士らしい事してねえじゃねえか。だいたいあの頭の包丁はなんなんだよ。意味が全くわからん! お前のせいで毎回ビデオのパッケージが暗い! お子様が借りる気にならないだろ! 由緒正しきお子様向け番組枠にお前の顔を映すなんて許せねえ! テ●東のお偉いさんも、とってもご機嫌ナナメだぜ!」
「……い、異議あり」
「却下だ!」
「くっ……」

 反論ができない。いや、反論しようにも確証がない。一部が暁のハッタリだとも知らないし、なぜだか妙に真実味のある知識もべらべらと出てくるからだ。
 ヒーローによる精神攻撃により、悪の暗黒騎士のライフポイントが削られていく。
 黒岩は、ただただ愕然とし始めていた。

「さあ、これでまず、お前の一敗だ。お前の嘘が白日の下に晒され、お前の有罪は確定した! 罰として、俺にいちご牛乳を奢り、そして……死刑になれ!」

 要するに、暁としては黒岩を言い負かす事ができて気分が良い。これで心置きなく戦える。暁としては、そのままノリで戦闘の方も勝ちたいわけだ。
 しかし、黒岩としてはまだ負けるわけにはいかない。己の力を、もとい知識を振り絞って薀蓄を叩き付ける。

「……し、知っているか! 世界で初めての死刑は紀元前578年ローマのグラシナスという小さな村で……」
「それも全くのでたらめだ! 世界で初めての死刑が行われたのは、ローマではなく、古代バビロニアだ!」
「なにっ……!」

 だが、直後に暁が知識を反す。黒岩の精神にダメージがかかる。
 暁はふんぞり返る。遂に黒岩が薀蓄を言い始めても、BGMが変わらないレベルにまで来ていた。バックヤードにまで愛想を尽かされているらしい。いや、きっとBGM担当も愚かで、真偽もわからぬまま暁に乗せられているだけに違いない。──そう思いながら、黒岩は暁の目を見る。
 こいつが正しいはずがない。嘘に決まっている。
 黒岩も最後の意地のように、落ち着いたそぶりを見せながら、逆に暁を挑発しようとした。

「……ふ、フン……。信用できないのは貴様のその腐った知識の方だ。お前の言っている事こそ出鱈目だ。……フッ、だいたい……いちご牛乳だと? くだらんな……!」

 黒岩は、拳を握る。

「お前はいい年をした大人だろう? そんな子供の味に興味を持つなど……。まさか、お前は紅茶も知らんのか」

 黒岩は尚、暁の目を強く睨み、己の知識で暁へと精神攻撃をしようとしていた。
 いちご牛乳など、甘い物を求めるなど、脳が幼児そのままである証ではないか。
 大人ならば、紅茶の一つも飲めるはず。これを言われれば暁も立つ瀬はないだろう。
 黒岩は、そこから更に薀蓄で図に乗るコンボへとつなげようとした。

「知っているか! アールグレイという紅茶は中国の着香茶を気に入ったグレイ伯がそれを気に入って作らせ生まれたという……」

 すると、今度は石堀が、割って入るように言う。

「……おい、奇遇だな。俺も紅茶は好きなんだ。セント・バレンタインという銘柄のバニラ風味のブレンドティーがあってね。ピスタチオとココナッツを細かく刻んでいて、これがまた美味い。オススメの紅茶だったが、もう廃盤になってしまったらしい。何かバニラフレーバでオススメでもあれば、ここはひとつ黒岩センセイに聞きたいんだが?」

 石堀は妙に詳しい紅茶の知識を説明を開始した。
 黒岩も何を言っているのかさっぱりわからず、ポカンと口を開ける。挑発的な口調に、怒りを感じつつも、紅茶の話題では勝てそうにないので、話題をそらす事にした。

「そんな事よりコーヒーの話をしよう。コーヒーはブルーマウンテン4、ブラジル5、モカ1の混合豆を使ったものが一番美味い。これに匹敵するものは未来永劫生まれることはだろう」
「どう考えてもブラジル多すぎだ。本当にそんなコーヒー飲んでいるとしたらお前の舌がおかしい」
「俺の舌には合うんだ! 出せよ、出してみろよ、今すぐここに俺が言った最高のブレンドのコーヒーを出してみろ! この俺がすぐに飲み干してウマイと言ってやる!」

 黒岩が必死で自分の紅茶知識の浅さに話題を変えようとしてコーヒーの話題をしたものの、それも石堀に破られた瞬間に逆ギレし、無茶な要求を始めた。

「お、大人げない……^^;」

 ラブも黒岩に呆れ始めた。顔文字まで浮かべれば、彼女がどんな表情をしているかは察する事ができるだろう。

 だが、黒岩はかなり今ので精神的ダメージを負ったようである。紅茶知識を石堀に看破されてしまうとは……。この地味な男が紅茶好きだったとは知らなかった(実際紅茶が好きなのかはわからないが)。

「おい黒岩! 往生際が悪いぞ、誰がどう見ても、100対0でお前の負けだ! さあ、死刑執行の時だ。そしてお前に、冥土の土産に教えてやる! いちご牛乳はな、いちご5、牛乳5が、一番美味い……!」

 こっちのバカは放っとこう。しかし、残りの二人にこうまで言われたのは、黒岩としても地味にショックだ。確かに、比較的マシな人間だと思っていたが、黒岩が想像していた以上の難敵らしい。

「……」

 黒岩は、その時、周囲の人間の白い目を感じていた。憐れむように自分を見ている。周りに味方が誰もいない孤独と、己の誇りが打ち砕かれたのを感じた。

 しかし、黒岩は、辛うじて自分を保っていた。
 石堀の、ラブの、そして暁の白い目が痛い。突き刺さるようだ。血管がブチ切れそうなほどの怒りがわいてくるが、なんとか理性を保ち、心を落ち着かせる。
 今の彼の顔は、まるでド深夜に一時のテンションで書いたSSを後から見返すと酷すぎて目も当てられない事実に気づいた書き手のような、そんな顔だろう。
 だが、それでも大丈夫だ、怒るな……怒るな……。
 冷静に、クールになれ……。
 ……クール、そう冷静だ。
 冷静に……冷静に……










「……暁、貴様ァッ……!! とうとう俺を……本気で怒らせたなッッ! ただで済むと思うなッッ!! だいたい、さっきからいつ言おうか迷っていたが、俺は手品などしていない……ッ!!」










 ……しかし、どう堪えようとしても、黒岩は奮起せずにはいられなかった。
 己のプライドが傷つけられ、あろうことか涼村暁に己の知識を看破されるとは。
 それが許せず、黒岩の心の闇が増大する。ダークメフィストの闇は更に大きく膨らんでいく。

「貴様だけは……貴様だけは絶対に許さんッッ!! 死刑になるのは貴様の方だァッ!!」

 暁と黒岩がが近づき、対峙する。
 ここからは本当に、暁と黒岩ではなく、精神でも知識でもなく、力と力、命と命の殺し合いになるらしい。

「いちご牛乳と手品がそんなに気に入らないのか……!?」

 暁はそう思いながらも、燦然の構えを取った。
 同じく、黒岩も手を顔の前に翳している。
 二人はそれぞれ、変身ポーズを取る。

「ブラックアウトッッッ!」
「燦然!」

 両者の掛け声は同時だった。
 暁の体は再び超光戦士シャンゼリオンへ、黒岩の体は暗黒騎士ガウザーへと変身した。
 シャンゼリオンの手にシャイニングブレードが握られる。
 両者は、距離を取り、互いの剣で敵に斬りかかろうとした。そして、鍔迫り合いが始まる。
 ブレードが激突。両者の顔も近づき、殆どゼロ距離で怒鳴り合った。

「てめえ、にわか雑学知識を看破されて手品師扱いされたくらいでムキになりやがって! こっちは実質、お前に仲間を殺されてるんだぜっ! お前の数倍、俺はお前を憎んでいるんだよ!」
「いや、俺の方が貴様を憎んでいる! そもそも手品にはそこまで怒っていない!」
「いや、俺の方が憎んでいる! じゃあいちご牛乳か!?」
「いや、俺の方が憎んでいる! いちご牛乳も関係ないッ!」
「いや、俺の方が」
「いや、俺が」
「いや」
「い」
「i」

 小学生のような言い争いで、声を小さくしながら、シャンゼリオンとガウザーの力が相殺されて弾けていく。両者拮抗の鍔迫り合いが崩れた。
 ブレードは弾かれ、両者は距離を取り、じりじりと真横に歩く。

「お前が凪のラームを吸って、そこをダグバの野郎に襲撃された! ……あいつを殺したのは確かにダグバだがな、そこはお前も同じなんだよっ! お前のせいで凪は死んじまった!」
「フン……。それは貴様らが守り切れなかっただけの事……! もっと早く俺を殺せば、そうはならなかっただろうっ!?」
「ッ! てめえ……望み通りに殺してやる!!」

 シャイニングブレードを振るい、ガウザーに向けて剣圧を飛ばす。
 ガウザーもまた、日本刀を古い、剣圧でそこにぶつける。
 二つの風がぶつかり合い、弾ける。両者は互角だ。

「だいたい、お前は勘違いをしている……! 俺たちダークザイドは人間のラームが主食だ。お前が肉を食うのと何が違う!?」
「んなもん知らねえよ!」
「そうだな、貴様にこんな話をしても仕方がないか……! 俺が間違っていた……!」

 両者の剣はまたぶつかり合い、火花を散らす。右に、左に、相手がけしかけてくる剣技を全て交し合う。
 剣を防ぐ剣、剣を破ろうとする剣、二つはぶつかり合い、ラブと石堀はその様子をただ黙って見つめていた。

「もういい……っ! 何でもいいから、とにかくお前は気に入らねえっ! だから潰す、もうそれでいいんだ! 長々と喋りながら戦う殺し合いはロボットが出てくるアニメだけで充分だ! 実写の俺たちがやると寒いだけなんだよ! この台詞も長いけどな!」
「そうだな、俺とお前は宿命のライバル……戦士の定め、それだけが戦う理由だ。それで充分だろう」
「そういう宿命のライバルとかいうのが一番寒いんだっ……!」

 シャンゼリオンの一撃が、一閃、ガウザーの左肩を斬りつける。
 しかし、それと同時にガウザーもまた、シャンゼリオンの脇腹に一太刀浴びせる。

「くっ……!」
「ちっ……!」

 ガウザーの左肩が抉られ、シャンゼリオンの脇腹のクリスタルが割れる。
 どうやら、本格的にダメージを負いながらの戦いになるらしい。
 意地と意地のぶつかり合いのようなものだ。互いに相手への怒りが頂点に達しており、その程度の痛みでは戦いに支障はない。
 シャンゼリオンは、そんなさなかでも胸に手を当てた。

「……ガンレイザー!」

 シャンゼリオンはガンレイザーを取り出す。その瞬間、ガウザーは距離を取る。至近距離からでは、飛び道具は当たってしまう。
 ガンレイザーは、ガウザーのいる地点を狙い、ビームを発射する。
 ガウザーはそれを右に左に回転しながら避ける。関係ない場所にビームが命中して、校庭の砂を焼く。砂埃が舞い上がる。

「なっ!?」

 怪我の功名か、舞った砂埃はガウザーの目に入り、ガウザーは左手でその目を塞いだ。
 咄嗟の出来事に、視界がぼやける。シャンゼリオンの事だから、おそらく策はなく、ただ偶然の出来事だろう。

「シャイニングアタック!」

 そこにできた隙をシャンゼリオンが必殺の叫びで攻撃しようとする。
 シャイニングアタック──クリスタルの結晶がもう一人のシャンゼリオンを作り上げ、それがガウザーの体の方へと、ポーズを決めて飛んでいく。
 相手に隙ができた瞬間が使いどころの必殺技である。
 クリスタルのシャンゼリオンはガウザーの胸元へと近づいていく。これが発動すれば、本来ダークザイドの怪物たちは動きを縛られる──が。

「ふんッ!」

 しかし、ガウザーはそれにも屈しない。
 目に入った砂埃を振り払うと、片手の日本刀でクリスタルのシャンゼリオンを弾き返す。
 一刀両断、シャンゼリオンの幻影が真っ二つになり、崩れ去り、消えていく。

「マジかよ……! そんなのアリ……!?」

 シャンゼリオンも驚いた様子だ。
 シャイニングアタックは必中の必殺技だと確信していたが、そうではなかったのである。
 騎士の意地と怒りがシャイニングアタックの縛りを振り払い、あっさりとシャンゼリオンの攻撃を回避する。

「トドメの技はこのように使うのだッ!!」

 ガウザーはすばやく駆け出し、跳躍する。空中で膝を曲げ、忍者のように身軽に、シャンゼリオンの元に落ちていく。

「秘技! 皇帝暗黒剣ッ!」

 手に持った日本刀が、シャンゼリオンの前で横一閃、凪いでいく。
 ガウザーに原作中で必殺技も何もないが、この居合は刀を持つ戦士としては、まあオーソドックスな一撃であった。技の名前もおそらく適当に考えたに違いない。とにかくオーソドックスな技なら使いそうだし問題もないはずだ。

「クソッ……! なんで……っ!」

 シャンゼリオンは、ガウザーが横に刀を凪いだのは見ていたが、それは数メートル先で刀を振るったシーンであった気がした。
 それが赤い剣圧となって、シャンゼリオンの体をぶった斬っていたのだ。
 そして、降り立ったガウザーが叫ぶ。

「知らないのか!? 強敵に安易に使った必殺技は、必ず破られるッ! 早い段階での必殺技は敗北の兆しだ! そして、逆に俺の必殺技だけは、必ず成功するッ!」

 ガウザーが今の勝因を語る。
 なぜ、シャンゼリオンの攻撃が不発で、ガウザーが成功した理由がごくごく単純だった。

「くそ……なんか今日は一段と薀蓄祭りだな……あれ、各回ごとに一回じゃなかったのかよ……!」

 シャンゼリオンは腹部を抑えながら、それでも立ち上がる。
 ガウザーの場合、薀蓄も立派な精神攻撃だ。とにかくウザいので、相手がイライラする。たまに関心する人がいると、ガウザーの士気が上がる。
 要するに、薀蓄祭りという事は、それだけガウザーのパワーがアップしているという事だ。

「……でもな、今のもまた出鱈目だッ! お前は嘘しか言わないんだなっ!」
「何だと……?」

 シャンゼリオンの必殺技が不発だったのは仕方がない。
 タイミングを間違えたのだろう。しかし、黒岩の知識など、所詮は殆どの場合、どこかしら間違っているのだ。

「黒岩! お前の理屈で返すなら、どっちにしろ勝つのは主人公の俺なんだ、お前じゃない! そしてお前は今回のタイトル的に見て、間違いなく、今ここで死ぬ!」

 ※この台詞はあくまでイメージです。『主人公の俺』と書いてある部分には「この俺」、『今回のタイトル』と書いてある部分には「状況」というルビを振ってください。

「フン……その自信はどこから湧いて来るのか……見せてもらおう」
「見せてやるよっ! おらぁっ!」

 シャンゼリオンは、よろよろの体でシャイニングブレードを振るう。
 剣圧がまた、ガウザーの方へと殺到する。

「だから無駄だっ! この程度の攻撃……」

 ガウザーはそれを両断し、ガウザーの視覚を遮っていた剣圧が消える。
 そこにまた、一人の戦士の影が駆けてくるのが見える。
 ガウザーは、その戦士を無謀に思うが、彼は叫んだ。

「リクシンキ! ホウジンキ! クウレツキ!」
「何っ……! 卑怯な……っ!」

 確かこの三体はシャンゼリオンのサポートメカ。まさか、それを利用して攻撃しようとしている。シャンゼリオンは囮だったのでは──
 そう思い、ガウザーは空を見上げた。

「嘘だよバーカッ! 一対一っつたろ! 星空とともに死ねバカッ!! クローバーストッッ!!」

 そして、その隙にシャンゼリオンは既にガウザーの前、零距離まで場所を縮めていた。
 虚空を見上げ、サポートメカの登場を予測していたガウザーであったが、この時のシャンゼリオンはまだサポートメカなど所有しておらず、その呼び出し方を知る事はあっても、反応は来ない。つまり、ガウザーが見た空はただの星空。
 シャンゼリオンが呼べば必ず来る仕組みがゆえ、ブラフには使えないはずの代物だった。
 ──しかし、三体の超光騎士がいま、眠りについている。それがゆえ、再び呼び出される事はなかった。

「がっ……!」

 ガウザーの腹に、光線が発射され、彼の体は一瞬で吹き飛んだ。





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最終更新:2014年07月22日 15:51