全ての敵、シキ
「ん? お客さんかな……」
それは一切の過去も動機もなく、力も技も備えていない。
それは詞術(しじゅつ)も異能も、魔具の力すら持ち合わせていない。
それはただ一人の人間(ミニア)であって、ありとあらゆる現象の理由が存在しない。
とうに敗北した過去の残影に過ぎない。彼女は既に死亡している。
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アニメ版 |
それは一切の過去も動機もなく、力も技も備えていない。
それは詞術(しじゅつ)も異能も、魔具の力すら持ち合わせていない。
それはただ一人の人間であって、ありとあらゆる現象の理由が存在しない。
とうに敗北した過去の残影に過ぎない。彼女は既に死亡している―――。
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登場話
第一部
- 「全ての敵、シキ その1」
- 「全ての敵、シキ その2」
略歴
- 読み:すべてのてき、シキ
- 種族:人間
- クラス:魔王
CV - 楠木ともり
魔王。この世に生きる全ての者にとっての、敵。
西方北方王国領内で最初に確認され“最後の地”にて斃されるまで、地平の全てを恐怖させ続けた、実像定かならぬ謎の存在。
出現以前以降の魔王を悉く偽りの“魔王自称者”へと貶めた、“本物の魔王”。
あらすじから始まり小説本編を通して幾度となくその恐怖が描写されてきたが、第一部の最後にて満を持して登場。
全生命の希望、超絶の英雄であった“
最初の一行”を
戦いすらせず
、ただ対峙しただけで
壊滅させ、その異常性を読者に見せつけた。
しかしながら
六合上覧開始時点ですでに死亡していることが明記・確定している。
外見
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綺麗な声、黒く長い髪、真っ黒な瞳を持つ少女。 |
綺麗な声、白く美しい肌、黒く長い髪、真っ黒な瞳を持つ美少女。
アニメ版で見る限り、中学~高校に上がるかくらいの年代に思える外見・声質・仕草。
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黒地に白のラインの走ったセーラー服、胸元に目立つ赤いスカーフ、足元は黒いタイツに同じく黒いローファー。
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“最初の一行”と対峙した際は、上記服装で本を読んでいた。(第二部情報) |
“最初の一行”と対峙した際は、上記服装で本を読んでいた。
後の描写では凄惨極まる地獄に等しい状況に中にあって、彼女の髪は艶を保ち、肌には汚れの気配すらなく、制服にはほつれ一つなかったとされる。
その全ての光を吸い込むような漆黒の瞳で、こちらを見ている。
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能力
――恐ろしい。
綺麗な声だと思った。それは寝室の中で、ごく普通に椅子に座って、ごく普通の人間の学士がするように、小さな書を読んでいた。
さあ、と風が吹き込んだ。外の世界に吹くのと同じ……この絶大な恐怖のない世界と、同じ風であるはずだった。
黒く長い髪がさらさらと揺れて、そして真っ黒な瞳が彼らを見た。
彼女は微笑んだ。
恐るべき魔王。全てを蹂躙する荒廃の悪魔。
あるいは形持たぬ、破滅という現象そのもの。
どれでもなかった。
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ただの少女だった。 |
「私は、人間だよ」
「大丈夫。怖がったりしなくてもいいんだよ。楽にしていいから。……ね?」
描写の限り、彼女本人には人間の少女以上の身体能力はないと思われる。
彼女が“本物の魔王”たる所以はひとえに、対峙したものをことごとく発狂させる絶対的な恐怖である。
“魔王の恐怖”に触れた生命は、自身や他者を「殺したい」「殺さなくてはいけない」と考えるようになり、彼女と戦うことも逃げることもできずに狂気的に自滅し合う。
“魔王の恐怖”は技術や詞術、異能や魔具の類ではなく、他者を操作する血鬼のような力でも、ましてや幻術の類でもない。
またそこには理由も原理も、そして魔王自身の意思すら存在しない。
六合上覧開始時点で正体不明・対策なしという理不尽極まりない“現象”である。…本当に、だれが殺したんだよこいつ。
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そして――(第二部重大ネタバレ) |
第八試合にて彼女の死の真相が判明した段階に至ってもなお、その恐怖に直接対抗する手段は存在していない……。
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その他
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現状判明している本物の魔王に関する情報(二部以降・書籍版の重大ネタバレ有り) |
現状判明している本物の魔王に関する情報
- 客人であり人間。逆理のヒロトより後に彼方の国で生まれ、柳の剣のソウジロウが生まれる前にこちらの世界に来たと思われる。
- セーラー服を着ていたらしいが彼方にいた時点で相当ヤバかったようなので本当に学校に通っていたかは謎。
なおセーラー服自体には魔王の恐怖は残されていない。
- すでに死亡していることが明言されており、死体や衣服の一部が登場していることからも間違いないと考えられる。
しかしながら魔王の恐怖はいまだに残存しており、“最後の地”では発狂した生物たちが逃げることもできずに彷徨っている。 さらに、新たに“最後の地”に侵入した生物に関しても、多かれ少なかれ残存している恐怖に当てられて緩やかに発狂するらしいことが記述から読み取ることができる。
- 目的どころかどうやって生存していたのか(食料の調達とか、そもそも食事していたのかさえわからん)も不明。
本を読んでいる姿が描かれているが、趣味なのか、何の本なのか、そもそも本当に読んでいたのかも不明。
- 現状、柳の剣のソウジロウの見立てによれば本物の魔王(の腕)を殺す手段は「事故死しかねェ」らしい。
- 書籍版Ⅷ末尾のQ&Aにおいて、魔王の恐怖は世界逸脱の力ではないという不穏な情報が判明している。
もしこれが正しいと仮定したならば、一体彼女は何を理由として異修羅世界に飛ばされてきたのか?
魔王の恐怖
- オゾネズマが「腕」を直接接触させようとしたこと、“最初の一行”が扉を開けた時点で発狂したことなどから、“本物の魔王”の肉体に対峙、接触することで一気に発狂が進むものと考えられる。
- 勿論、姿を直接見なければ大丈夫というわけではない。少なくともイジックやメレは遠巻きに魔王のいる建物や魔王軍を目視しただけで異常を感じ、恐怖によって攻撃ができない状態に陥っている。
本物の魔王のいた時代は黄都のある大陸に関しては漫然とした恐怖が満ちていたような描写もある上、本物の魔王が倒されたことも漠然と認識できた(在りし日の恐怖が消えた)という描写もある。
- 書籍Ⅵ似て語られた本物の魔王がいた時代の状況例としては、
・避難民を全て魔王軍の方向へ誘導していた通信不備の話 ・市兵が自発的に市民を虐殺した事件 ――のような事例が無数にあったらしい。やばい時代である。
- 「あらゆる生命の敵」と描写されているがその恐怖の対象の範囲は不明。
色彩のイジックの知性を持たぬ屍魔や、恐怖の感情を持たないツーですら恐怖を感じたことから、知性や感情の有無関わらず心を持つ者すべてが対象と思われる。
- 現状、魔王の恐怖に耐性があるのは魔法のツーと移り気なオゾネズマのみである。
また、漂う羅針のオルクトの歌は狂った人間の心をいやすことができるようだ。 ――と思われていたが、恐怖の回路を持たぬツーであっても本物の魔王の恐怖には抗えなかった。また死体の腕ですら、慣れたと語ったオゾネズマを自覚のないまま狂わせていた。 まじでどうなってんの……。
- 客人の逸脱は「理由のない能力」であるがゆえか、外なるセテラの解呪も通用しない。ただし、物理法則以外の異能であれば効果があり、無効化可能であるらしいことが書籍Ⅵの描写にて判明している。
つまり、魔王の恐怖は鳥が空を飛ぶような、魚が水中を泳ぐような、何の異常でも無いただあたりまえの現象だったということか?
- 本物の魔王に挑もうとする英雄の荷袋に揮発する毒を仕込んで魔王の毒殺を試みた者は、毒を仕込もうとした時点で狂気に侵され自分で毒袋を開けた。遠隔操作であれ、本物の魔王を知覚しない状態であれ、本物の魔王を倒そうと行動を起こした時点でその者は自分自身の行為を恐れて狂う。
そのため直接対峙しない長距離からの攻撃はおろか、罠や策略で本物の魔王を倒そうとすることすら不可能である。
- 『本物の魔王=客人』が認知されることを哨のモリオが断固阻止しようとしていた理由は、客人自体が危険視され排斥の対象となる危惧以上に、客人及び彼方由来の知識・技術から来訪に関与しているとされている詞神及びその教義に至るまで、ありとあらゆる異修羅世界における価値観・宗教観・世界観・歴史の全てにおいてまで恐怖が普及することを恐れたためである。
魔王軍
- 恐怖で発狂した生物の群れ。
「どんな軍より、間違いなく弱かった」と言われる通りただの狂人の群れでしかなかったとみられる。お互いに勝手に自滅しあうので統制もなにもなかったのだろう。
- しかし、魔王軍自体が恐怖を周囲にまき散らし拡大しながら侵攻してくること、魔王軍自体を撃退しやり過ごしたとしても後遺症的に恐怖が蔓延していくこと、たとえ直接の接触がなくとも伝聞などの情報だけで緩やかに恐怖が広がっていくことから、まさに根本的な対処が困難な破滅をもたらす魔王の軍勢であったと思われる。
- 正気を失った狂人の集まりでしかないはずだが地平咆メレのいるサイン水郷には近寄らなかったようだ。
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恐怖。恐怖だけがある。
最終更新:2025年04月10日 01:50