※投稿者は作者とは別人です
98 :小ネタ書き:2009/05/03(日) 07:30:42 ID:S66P2VFg0
1484年7月23日
またあの夢を見てしまった。
絶え間なく続く銃声と爆発音の中、部下や同僚たちが物言わぬ物体と化していく。
敵の攻撃をやり過ごすために防壁に隠れたその時、私の体を凄まじい衝撃が襲った。
気が付いたのは野戦病院の中だった。
そこは軍医や衛生兵の怒号と負傷者たちのうめき声、そして薬品と腐臭が入り混じった異様な匂いで溢れかえっていた。
私の体は両の腕と足を失い、酷い傷が全身に刻まれていた。
私は瞬時に悟った。もう、子供たちを抱きしめることは出来ないのだと。
廃兵となり、故郷に戻った私を待ち受けていたのは戦場よりも凄惨な地獄だった。
心が壊れ、夥しい涎と言葉にならない声を垂れ流す私を見て怯え、泣き叫ぶ子供たち。
私の世話をめぐって毎日のように口論を繰り返す夫と義理の母、そして私の両親。
私はたまらなく不安な気持ちに襲われる。私があの悪夢のような変わり果てた姿になってしまったとしても-
あの子達は私を「ママ」と呼んでくれるだろうか?
いつものように、私に目一杯甘えてくれるだろうか?
ミスリアル軍第1親衛機動師団所属 リセリンド・ラ・エルーラン大尉の日誌より
-この日誌は彼女が戦死した7月26日の翌日に遺品の中から発見され、後日遺族に返還された。
自分の遺体を子供たちに見せたくないという彼女の遺志により、棺にはミスリアル王国の国花が納められていたという
98 :小ネタ書き:2009/05/03(日) 07:30:42 ID:S66P2VFg0
1484年7月23日
またあの夢を見てしまった。
絶え間なく続く銃声と爆発音の中、部下や同僚たちが物言わぬ物体と化していく。
敵の攻撃をやり過ごすために防壁に隠れたその時、私の体を凄まじい衝撃が襲った。
気が付いたのは野戦病院の中だった。
そこは軍医や衛生兵の怒号と負傷者たちのうめき声、そして薬品と腐臭が入り混じった異様な匂いで溢れかえっていた。
私の体は両の腕と足を失い、酷い傷が全身に刻まれていた。
私は瞬時に悟った。もう、子供たちを抱きしめることは出来ないのだと。
廃兵となり、故郷に戻った私を待ち受けていたのは戦場よりも凄惨な地獄だった。
心が壊れ、夥しい涎と言葉にならない声を垂れ流す私を見て怯え、泣き叫ぶ子供たち。
私の世話をめぐって毎日のように口論を繰り返す夫と義理の母、そして私の両親。
私はたまらなく不安な気持ちに襲われる。私があの悪夢のような変わり果てた姿になってしまったとしても-
あの子達は私を「ママ」と呼んでくれるだろうか?
いつものように、私に目一杯甘えてくれるだろうか?
ミスリアル軍第1親衛機動師団所属 リセリンド・ラ・エルーラン大尉の日誌より
-この日誌は彼女が戦死した7月26日の翌日に遺品の中から発見され、後日遺族に返還された。
自分の遺体を子供たちに見せたくないという彼女の遺志により、棺にはミスリアル王国の国花が納められていたという