自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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9月23日 午後10時40分 バーマント公国首都ファルグリン
バーマント公国の首都ファルグリンは、公国でも一番人口の多いところであるが、
同時に各種施設の総本部も多い。
その中には当然軍の司令部も含まれている。
陸、海軍の総司令部も、ファルグリンの中枢に集中している。
中方方面軍総司令部は、その中枢部からはやや離れた東部地区にある。
細長の2階建ての建物で、よく待ち合わせの目印にもなっている。
その2階の一室。中央方面軍司令官室で、クライスク・アーサー騎士元帥は窓の外の風景をじっと見据えていた。
町は静寂そのものである。9月始めに起きたアメリカ軍機の来襲以来、首都には厳重な灯火管制がしかれている。
その前までは、首都の建物はあちらこちらから明かりが灯っていたが、今では見事なまでに真っ暗になっている。
(現皇帝陛下の心情を表しているみたいだな)
アーサー元帥はそう思った。
その時、ドアの向こうからノックする音が聞こえた。
「入れ!」
彼はドアの向こうの気配にそう言う。
失礼します、と声がしてドアが開かれ、人が入ってくる。
彼の参謀長であるネオロ・ウラルーシ少将が入室してきた。
細長で痩せていて、黒い髪を短く刈り上げている。一目で見ると、どこぞの教師を思わせる風貌である。
「参謀長か。」
アーサーは振り返る。
「最終確認をしようか。まず、皇帝陛下はどうだ?」

「皇帝陛下は宮殿におられます。」
「内務大臣のネリレイギは?」
「内務省で残業を行っております。」
「宣伝長官のワンスバイルは?」
「自宅に帰りました。」
アーサーは、これから逮捕する予定の安否を確かめた。
バーマント公国には8つの省庁がある。
8つの省庁のうち、革命勢力に加わる大臣は軍需省のマルホルン大臣、警務庁のヘルレイズ長官の2名である。
この他にも、陸、海のトップや他の重要人物の安否がウラルーシ少将から確認された。
「ふむ。最後にだが、エリラ第4皇女は?」
「エリラ皇女は現在、西部のマリアナの視察から首都に戻られている途中で、間もなく首都に到達するとの事です。」
「・・・・エリラ。あの女は少々危険だな。逮捕したらカルリア監獄に放り込んでやろう。」
アーサー元帥は顎鬚を撫でながらそう呟いた。
「閣下。各部隊、準備は出来ております。」
「時間は・・・・・」
彼は時計を見た。10時54分。決行まであと6分である。
「そろそろ、カルリア監獄に現地の決起軍が突入する時刻ですな。」
「成功してくれる事を祈ろう。さあ、我らも行動を起こすぞ。」
アーサー元帥は意を決した表情で、ウラルーシ少将を伴って足早に司令官執務室から出て行った。

9月24日 午前11時8分 公国宮殿
ドンドンドン!
寝室のドアが激しく叩かれる。
眠っていたグルアロス・バーマント皇帝はドアから響くノックの音に目を覚ました。
(こんな時間になんだ?うっとおしい!!)
彼は苛立ちながら、毛布をはいでベッドから起き上がった。
「何事か!?」
「陛下、緊急事態でございます!!」
その声は、侍従長のベンティだ。何やらやけに慌てた口調だ。
「・・・・入ってまいれ。」
バーマント皇は横柄な口調でそう言うと、ドアが開かれ、禿頭のベンティ侍従長があたふたと入ってきた。
「貴様!今何時だと思っておるか!?」
「申し訳ありません。ご就寝の時に起こしてしまいまして。」
「緊急事態とは何か?報告せよ。」
「はい。実は、魔道師からこのような報告を受け取りました。」
ベンティ侍従長は懐から1枚の紙を取り出した。それをバーマント皇はひったくる。
「緊急、カルリア監獄司令官 カルリア監獄に1万規模の反乱軍が襲撃せり。」
「反乱軍だと!?」
バーマント皇は仰天した。カルリア監獄と言えば、投獄したグリフィンが収監されている。
(もしや、この反乱軍はあのグリフィンめを釈放させ、担ぎ上げるつもりなのだな。
それならば・・・・・・・)
バーマント皇はすぐに思い立った。そしてベンティに伝えた。
「魔道師にこの文を伝えよ。現地のカルリア監獄の魔道師に向けてだ。こう遅れ。
直ちに叛徒グリフィンを処刑せよ。以上だ!」

彼の言葉に、ベンティは驚いた。
「ほ、本当に」
「処刑だ!!つべこべ抜かさず、さっさと魔道師に送らせろ!!!」
彼は有無を言わさぬ口調で釘を刺した。ベンティは慌てて一礼すると、寝室から出て行った。
ベンティと入れ替わりに、今度は直属将官の1人であるベンデレル騎士中将が寝室に入ってきた。
「何用か!」
「報告に参りました!」
ベンデレル騎士中将の表情は真っ青である。
「言うてみよ。」
「ハッ。さきほど、首都周辺で中央方面軍の2個軍団が一斉に叛乱を起こしました!」
「叛乱だと!?」
バーマント皇は最初、その言葉が嘘のように聞こえた。
「ハッハッハッ!貴様、何を言うか。中央方面軍は我が公国主力部隊。その軍が」
「現に起こしているのです!」
いつもは小心な彼が珍しく、バーマント皇の言葉をさえぎった。
「貴様!わしの言葉をさえぎるとは何事か!?貴様も監獄に放り込まれたいのか?」
「私の処罰は後です。この寝室のベランダを開けてもらえば分かります!」
「ふむ・・・・では開けてみるか。」
バーマント皇は理解できなかった。なぜ中央方面軍が叛乱を?
彼らは他の部隊に比べて公国側に対する忠誠度が高い。
バーマント皇はとりあえず、寝室のベランダのドアを開けてみた。
ガチャッ、と、音が鳴り、鍵が開けられる。ついで、ドアが外側に開き、首都を一望できるベランダに出てみた。
首都の状況は・・・・・・革命軍が焚いたかがり火によって、既に3分の1が埋まっている。
彼は知らなかったが、決行5分前に革命軍の構成員が住民を叩き起こした。
官憲は当然その構成員を見つけ、怪しんだが、見張り役の別の構成員に気絶させられる。

そして各所で熱弁を交えた演説を行った。
話はわずか5,6分ほどの短いものであったが、首都の住民達は革命軍の話を理解した。
そして住民達も、それぞれの武器を取って革命軍と共に蜂起したのである。
最初、東側だけだったかがり火の集団が、ふと、ぽつりと西部にも現れ始めた。
それに触発されたかのように、次々とかがり火が増えていく。
「あああ・・・・・・・い・・・・・一体・・・・・一体・・・・いっ・・・たい」
余りにも突然の出来事にうまくしゃべれない。
かがり火の集団の中に、べつの火が現れた。それはやがて大きくなり、わずか2,3分で炎が建物全体を嘗め尽くした。
それは、内務省のある施設。別名、市民監視省の施設だった。
「一体、どういうことだ!?」
バーマント皇は凄い剣幕でベンデレル騎士中将を睨み据えた。ベンデレルはたちまち縮み上がってしまった。
「それは、小官にも理解しかねます・・・・と、とりあえず、時間が経てば、情報も入るかと。」
「何が、時間が経てば分かるだあ?馬鹿者!役立たず!貴様はこの宮殿から追放だ!!」
バーマント皇は顔を真っ赤にしてそう喚き散らした。
彼はベランダから離れ、寝室から出た。宮殿内が何か騒がしい。
(騒がしいな。)
彼はイラついた表情で周りを見回した。すると、階段から完全武装の宮殿警護軍の将兵がドッと津波のように現れた。
その先頭には、直属将官のアートル中将がいる。
「おお、アートル君か。」
バーマント皇はぶっきらぼうな口調でそう言う。
警護軍の将兵は、皇帝を見つけると、その足を止めた。いずれも、頑丈な甲冑を身につけ、手には小銃を携えている。
(外は革命軍がいっぱいだが、宮殿内には精兵ぞろいの宮殿警護軍がいる。

こやつらが時間を稼いでいる間に、わしは脱出できるだろう)
バーマント皇はそう思った。彼は知らなかったが、首都の各所では宮殿警護軍の第2親衛師団、
第9親衛師団が革命軍を辛うじて食い止めており、宮殿から直径300メートルの地域はまだ侵入を許していない。
しかし、数は革命軍のほうが上である。いずれ押し潰されるのは目に見えている。
その前に、隠れ通路から西部へ抜けて、革命軍が来る前に首都を抜け出さなければならない。
「革命軍はかなり多いようだな。それに対し、こちらは宮殿警護軍の2個師団しかおらん。
前線は兵力が少ない。そこで、この宮殿の警護兵も一部を残して、革命軍と戦わせたほうがいいと思うのだが、どう思うかね?」
「確かに。前線では兵力が少ない。いいでしょう。その案でいきます。皇帝陛下は我々が叛徒どもを食い止めている間に、
お逃げになってください。」
(私には、このように忠誠を尽くすものも残っている。)
バーマント皇はそう思うと、いくらか自信が戻ってきた。
「と、言いたいところですね。」
アートルはそう言って笑みを浮かべた。
「?????アートル君。意味が分からんのだが?」
「意味でありますか?陛下ともあろうお方が分からないとは。」
アートルはわざとらしい口調でそう言う。
「アートル!こんな時にふざけとる場合か!!」
「いえ、ふざけてなどいません。」
アートルはあごでしゃくった。その時、彼の後ろにいた2人の兵士がバーマント皇に飛び掛った。
あっという間にバーマント皇は両腕を後手に捻り上げられてしまった。
「な、何をするか!?わしは皇帝であるぞ!き、貴様ら、全員斬首に処すぞ!」
「皇帝陛下、理解できませんか?」
「な、何をだ?」
「今の状況を、ですよ。」
バーマント皇はしばらく黙った。そしてやっと理解できた。宮殿内の警護軍は・・・・・
自らの手を離れたのだ!
そう確信した瞬間、バーマント皇は愕然とした。
「な、なぜ。このような事ができたのだ?叛徒の貴様が、なぜ部下を率いる事が出来た?」
「そうならしめたのは・・・・・陛下。あなたですよ。」

実は、現皇帝の政策に不満を感じていたのは現地軍や市民だけではなかった。
この宮殿警護軍も、元々は国民の軍隊である。
その兵士達は、一般部隊以上に皇帝の忠誠心は厚かった。そのはずだった。
だが、バーマント皇の政策に疑問を抱くものも多かった。
それを、日々の仕事をこなす事で、警護軍の将兵は紛らわせてきた。
バーマントが勝ち戦を続けている間はなんら問題ではなかった。
しかし、突如現れたアメリカ軍が、彼らの本当の気持ちを呼び覚ましたのである。
そして、その気持ちが一気に爆発するきっかけとなったのが、
9月始めの空襲と、B-24が行ったビラ撒き作戦だった。
それでも、皇帝に中世を誓うものは多かったが、内心では皇帝をも限ったものもかなりの数に上った。
人の口には戸は立てられない。不満を持つものは、影でバーマント皇の政策を批判していた。
そこを、アートルが話しに加わり、革命軍に加わらせたのである。
30000の宮殿警護軍のうち、4000の将兵が革命軍に加わった。
そして決行の日まで、バーマント皇の忠実なる僕を演じていたのである。
その4000の兵は、革命が決行されると、すぐに皇帝の下に駆けつけた。
彼らが疑われる事はなく、難なく皇帝のお膝元に辿り着いたのである。
そして、この思わぬ伏兵によって、バーマント皇は革命側の手に落ちてしまったのである。

「あなたは、私達や国民全てが忠実なる僕である、と、以前おっしゃっておりましたね?」
アートル中将がバーマント皇を睨みつけながら、彼に問いかける。
バーマント皇はうなだれたまま、うんともスンとも言わない。

「確かに忠実なる僕も多くいました。しかし、あなたは目先の事ばかり気にして我々の気持ちを
全く知ろうとしなかった。」
アートルの言葉1つ1つが、バーマント皇に重くのしかかる。
「これは・・・・・起こるべくして起きた事態です。」
「起こる・・・・べくして・・・・・」
バーマント皇は喉から搾り出すような声音でそう呟いた。
「わ・・・・私は・・・・・私は・・・・・・・・・・国の事を思って・・・・
国民の事を思って・・・・一生懸命、努力した。」
グルアロスは、震えた声で、言葉を紡ぐ。
「わしの・・・・努力を・・・・貴様らが・・・・・貴様らが!!!」
顔を上げたバーマント皇はアートル、いや、その後ろの警護軍だった兵士達を睨みつける。
だが、それに対して返されるものは、それぞれの冷たい視線。
「貴様らが・・・・・・・」
バーマント皇、いや、皇帝だったその男はその言葉を言ったきり、押し黙った。
体が熱病にかかったかのように痙攣し、顔を腕の中にうずめ、泣き出してしまった。

9月24日 午前0時20分 首都ファルグリン
宮殿警護軍の守備地域は、圧倒的多数の革命軍と、蜂起した市民の攻勢を受けた。
最初はよく粘っていたが、午前0時35分に西地区の一部が突破されてしまった。
宮殿警護軍の司令官は直ちに全部隊を後方100メートルまで下げ、新たに防衛線を引いて革命軍に対抗した。
午後11時50分、宮殿内で、革命側に寝返った警護軍の部隊がバーマント皇を捕らえたとの情報が入った。

この報告が皇帝側の警護軍の士気をどん底まで叩き落してしまった。
午後11時52分、突如、警護軍が武器を捨てて革命軍に投降してきた。
さらに午前0時55分、東部地区のカルリアでも決起軍が監獄を制圧、
危うく処刑されそうになったグリフィン第3皇子を救出したとの情報が入った。
この情報は、革命軍と、蜂起した市民を大いに勇気付け、首都ファルグリンには
新生バーマント誕生万歳が、あちらこちらで歓呼された。

周りの兵士、市民が肩を抱き合って歌い合っている。
とある市民が歓喜の表情を浮かべ、アーサー元帥に握手を求めてくる。
「革命万歳!」
「国民を騙した皇帝は監獄に放り込みましょう!」
「これで無意味な拡大戦争が終わる!」
握手を交わしたもの達は口々にそう言ってきた。
「閣下、第18航空軍の司令官です。」
目の前の人ごみを掻き分けて、2人の人物が現れた。
1人は第18航空軍のギリアール中将、もう1人はアーサーの幕僚である。
「閣下、我々の空中騎士団も、革命軍に加わらせていただきます。」
「ありがとう。空中騎士団がいれば百人力だよ。」
第18航空軍は第23、第24、第25の空中騎士団から成っている。
駐屯地はファルグリンの東北東100キロで、2個空中騎士団が先日編成されたばかり、
1個空中騎士団が8月編成で、まだまだ新米の航空軍である。
それぞれが90機を保有しており、合計で270機の飛空挺を保有している。
革命決行の午前12時に、第18航空軍は突如革命宣言を発し、革命軍に加わると宣言した。
まだ技量未熟の部隊で、今では旧式化したBA-2しか配備されていないが、
万が一、公国側が軍を差し向けてもそれに対応できる。

「まだ西部や西北部に駐屯している軍が、革命宣言を出していないのが気がかりですな。」
右隣にいるウラルーシ少将が不安げな表情で言ってきた。
「う~む、確かにそうであるな。特に西北部は厄介だからな。それに海軍部隊の動向も気になるな。
彼女はちゃんと説得できただろうか?」
周りの市民は革命成功に沸き立っているが、まだ問題が残っている。
西北部は別の高級将官が説得に当たっているが、決行から1時間経っても蜂起したとの報告が入っていない。
「きっと大丈夫です。現皇帝、いや、前皇帝の不満は全体的にかなりくすぶっていました。
グルアロス帝が捕らえられたと聞けば、我々革命軍に同調するでしょう。」
幕僚の1人がそう言ってくる。
「そうだな。」
そう聞くと、アーサーも不安な気持ちが大分晴れた。革命は成功しつつある。
こうしている間にも、各地から次々と蜂起の報告が入ってきている。
国民はようやく、立ち上がりつつあった。

午前0時10分 エリオンドルフ
港が燃えていた。赤く赤く燃えていた。その炎は、暗闇を打ち消さんばかりに猛り狂っていた。
「く・・・そ。なんで、こんな事に。」
第4艦隊司令官、エルマスター大将は、横目で炎上している大小の艦船を眺めていた。
窓から移るその光景は断末魔の状況を挺している。
その炎上艦から離れた沖合いに、10隻以上の軍艦が遊弋している。
それは、第5、第6艦隊の艨艟達である。
「なんで、こんな事に、ですって?」
前から不敵な口調で言ってくる人物がいる。

それはゆっくりと、部屋の中を行き来している。
「あたしが、やれと命じたから。納得したかしら?」
エルマスター大将に顔を近づける。その表情は、明らかに彼を馬鹿にしていた。
「くっくっく。本当に人ってのは弱いものよねえ。」
懐から写真を取り出す。
「たかが、妻や子供のために、簡単に裏切ってしまうんだから。もっとも、本人は妻子の所へ召されちゃったけどね。」
ツインテールの戦闘服姿の女性、エリラ・バーマントはわざとらしく、悲しいふりをする。
「こんの、薄汚いメス犬が!!」
エルマスター大将の隣に立たされているレラ・アルファール中佐が、憎悪をむき出しにしてそう叫んだ。
「あらら、美しいレディが、なんて汚い言葉を。」
「あんたにならいくらでも言えるわよ!」
レラはそうはき捨てた。

午後11時 第4艦隊司令部でとある取り決めが行われていた。
「決起軍は蜂起した模様です。」
第4艦隊司令部がある陸の宿舎に、通信兵が慌しく入ってきた。
「長官、ご決断を!」
作戦副参謀であるレラは、未だに渋るエルマスター大将に決断を促した。既に、第4艦隊では革命軍に同調していた。
後はエルマスター大将の決断で全てが決まろうとしている。彼は両腕を組んで黙っていた。そして・・・・・
「分かった。これからは、新しい祖国に尽くすとしよう。」
彼の腹は決まった。

「既に艦隊は出動準備ができております。」
「よし。直ちに出動だ。魔道参謀、ファルグリンの革命軍司令部に送れ、第4艦隊は、
今より新しい祖国の指揮下に入る。」
全員が腹を決め、宿舎から出ようとしたとき。突然、軍港の沖合いに第5、第6艦隊が姿を現した。
最初、第4艦隊の将兵は、それらが革命側についたのだなと確信した。
だが、その確信は、午前11時15分に始まった突然の砲撃によって消し飛んでしまった。
まだ停船中であった第4艦隊の艦艇は滅多撃ちに合った。
第4艦隊には重武装戦列艦のウエンディール、シンファニー、ファンボルの3主力艦。
中型戦列艦のオールスレイグ級4隻、小型戦列艦のEA-21を始めとする7隻。
計14隻で編成されている。
これに対し、軍港に現れたのは第5艦隊、第6艦隊の8隻の重武装戦列艦を始めとする合計47隻の大艦隊である。
これらは停泊中の第4艦隊の艦船群に対して容赦ない射撃を加えた。
第4艦隊側も反撃し、小型戦列艦1隻を大破させ、重武装戦列艦ゲルオールを小破させた。
だが、第4艦隊の戦果はそれだけであり、砲戦開始から40分後、14隻全艦がたたきのめされてしまった。
そして、たたきのめされた艦船は、その不運を悔やんでいるかのように、高々と夜空に向かって炎を上げていた。
第4艦隊の駐屯地には、エリラ自らが率いた軍が突入し、第4艦隊側の抵抗を蹴散らし、次々と要所を占領した。
司令部に突入したのは午後11時55分ごろで、その際、8人いた参謀のうち6人が射殺されるか、斬殺されている。
残ったのは、腕を負傷したエルマスター大将と、レラのみである。
「まあ、あの砲術参謀さんはよくやってくれたわ。
あたしが皇帝なら、今頃勲章を授与してるわね。本当、勉強になったわ。」

エリラは薄笑いを浮かべながら、倒れている死体、砲術参謀の遺体に持っていた写真を置いた。
「貴様、革命軍を相手にして勝てるとでも思っているのか!?」
エルマスターはそう喚いた。
「もちろん、勝てる。魔法都市マリアナで召喚儀式を行えば、
今のような態勢はあっという間に無くなるわ。そして・・・・・私が大陸を統一するの。」
彼女は胸に右手をかざしてそう言う。
「父よりももっと手っ取り早く、そして確実な方法でね。」
「召喚儀式・・・・・まさか、エリラ、あなたは!」
「ん?気が付いたの?流石は名家の出のお嬢様、色々学んでいるのね。」
「もしかして・・・・・エンシェントドラゴンを召喚しようとしているのか!?」
エルマスターの顔がみるみる内に青くなっていく。
「ご名答。マリアナは既に私の一派が抑えているわ。今頃、決起軍はあちこちで包囲されている頃ね。」
エリラが笑みを浮かべながらそう言う。その美貌は恐ろしいまでに自身に満ち、目は悪魔的な輝きを放っている。
「1000年前の過ちを犯すつもりなの!?あれはやるべきじゃないわ!!」
「レラ、あなた馬鹿?魔法技術は1000年前と比べて遥かに進歩しているのよ?
たった2、3国潰して自爆するようなエンシェントドラゴンを召喚しようとしてる訳ではないのよ。
と言っても、今からやって2週間近くはかかるけどね。」
それを聞いた時、レラは絶句した。もう既に準備に取り掛かっている!!
「仕事の速くこなすことが、私の生きがいなのよ。さて、あなた方にはもう消えてもらうわ。」
そう言うと、彼女は後ろで待機していた兵士から小銃を受け取った。
その直後、エルマスターの胸に1発の銃弾を撃ち込んだ。エルマスター大将は心臓を撃ち抜かれて即死だった。
「ひ・・・・ひどい・・・・・そこまでして、あなたは国を統一したいの!?」
レラはそう喚いた。

「だからこうやって行動してるのよ。」
彼女はそっけなく返事した。銃口が縛られているレラに向けられる。
2人の部下の兵士が暴れないように両肩を掴む。
「じゃあね。」
そう言って引き金に指をかけた。
「く・・・・・バーマントの未来に・・・・・栄光あれ!!」
乾いた銃声が響いた。レラの胸の真ん中に穴が開き、背中から銃弾が突き抜け、血と肉片が飛び散った。

この日の午前0時40分 魔法都市マリアナでワイバーンロードを生贄に使用した、エンシェントドラゴン
の召喚儀式が始まった。
儀式が終わるまで、あと2週間近くはかかると見積もられていた。
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