自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

243 外伝44

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52 :外パラサイト:2009/12/23(水) 10:47:35 ID:GB.Z00rQ0
シホールアンル公国リズベク。
荒涼とした岩だらけの平原が広がり、村落はおろか野生動物の姿も無い乾いた大地。
ここにはシホールアンル軍の大規模な試験場が置かれている。
「うへ~参った参った」
エネーシャ・ライエ技術軍曹はハッチを押し上げて操縦席から上体を突き出すと、布製の
パットを貼り付けた鉄兜を脱いで額の汗を拭った。
「今ならシチューの具の気持ちがよくわかる」
『馬鹿を言うもんじゃない』
魔法通信機から渋い壮年の声が流れる。
「軟弱、それが当節の若い者のいかんところだ。よき兵士は欠乏状態を楽しみ、苦難を生
きがいとしなければならん」
そう通信を入れてきたのは彼女の直接の上司であるクイジェ・イースンス技術大尉である。
二人はここリズベクに設置された試作兵器実験評価センターで新規開発された対空型ゴー
レムの運用試験を行っていたのだった。
対空型ゴーレムはワイバーンによる制空がほぼ不可能となりつつある現在、陸軍が最も欲
している装備の一つである。
最初は既に実用化され充分に運用実績のあるのキリラルブスを改修し、対空用魔道銃を搭
載する予定だったのだが、試作の段階で全周旋回式の砲架と動力旋回装置をキリラルブス
に搭載するのは不可能であることが分かった。
そこで新たなコンセプトのもと、乗員一名で運用可能な軽対空型ゴーレムの試作が行われ
ることとなった。
このゴーレムは武装を胴体に固定し体全体で狙いを定めるため、操縦手と射手を一人で兼
ねることができる。
搭載火器は艦艇用のものを転用した魔道速射砲で、その威力は有効射程内なら航空機はも
ちろん、戦車を除くほとんど全ての車輌を撃破可能だった。
迅速な方向転換と大仰角を可能とする多関節構造の細長い二脚を採用したため非常に背が
高くなってしまったが、実戦では足を折畳んだまま歩行する匍匐前進モードと、脚を伸ば
して高速移動する突撃モードを使い分けることによって対応することとしている。
現在テストされているのは試作ナンバーⅣ型で、Ⅰ~Ⅲ型までは操縦席は装甲板で覆われ
捕獲した米軍戦車のものをコピーしたペリスコープを装備していたのだが、視界が制限さ
れ過ぎて歩行もおぼつかないという苦情が出たため、Ⅳ型では胴体上部にケルフェラクの
ものを流用した透明風防を突出させている。
操縦・走行関係の問題点はほぼ解消された軽対空型ゴーレムの、実用化に向けての最大の
ネックは武装の冷却問題だった。
軽対空型ゴーレムを操る操縦手は、胴体中央に装備された魔道速射砲に跨る恰好になるた
め、連射を続けるとどうしても操縦席に熱気が篭ってしまう。
放熱パイプを通して熱気を逃がしたり操縦席に換気装置を取り付けたりと試行錯誤を繰り
返してはいるのだが、未だに根本的な解決には至っていない。
「ハンガーに戻って飯にしよう。午後からは冷却器の触媒を七号規格のものに変えて再テ
ストだ」
「まだやるんすか?」
「弱音を吐いている暇はないぞエネーシャ、最前線では我が軍の精鋭が新兵器の到着を首
長竜になって待っているのだ」
「へーへー」
その後、軽対空型ゴーレムは操縦席の過熱問題が解決されないまま少数機が実戦投入され、
「乗員燻製機」という有難くない仇名を頂戴している。
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