自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

72 外伝04

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
10月3日 午前7時 ラグナ岬沖北230マイル
空母ヨークタウンⅡの飛行長であるジョン・ピーターズ中佐は、格納甲板に降りてきた。
格納甲板に降りると、翼を折りたたまれた艦載機が駐機され、整備兵が機体を点検している。
彼を見かけた兵が敬礼し、彼は素っ気無い動作で答礼をする。
やがて、左舷中央部のハンガーに辿り着いた。
ハンガーの開口部には10人以上の兵が話し合っているが、どこか諦めたような表情である。
その兵達のリーダーらしき人物が彼を認めると、全員に直立不動の態勢を命じる。

「いい、休め。」

ピーターズ中佐は手を振ってそう言う。
彼は、背後のハンガーを見てみた。
30日のギルガメル諸島沖海戦で、ヨークタウンはこの箇所をバーマント機に突入され、損傷した。
その際、格納甲板にあったアベンジャー2機とヘルキャット1機が破壊され、ヘルダイバー3機が傷ついた。
しかし、被害は艦載機のみならず、開口部のハンガーと、下げられていた舷側エレベーターにも及んでいた。
ここにいる12人の将兵は、ダメージコントロール班のメンバーである。
彼らは被弾直後から、この損傷箇所の修理にあたっている。
しかし、彼らの表情からして、満足の行く成果は収められていないらしい。

「破孔は大分塞がっているな。」

ピーターズ中佐はダメージコントロール班の班長、ロイス・スフィスト少佐に向かって言う。

「ええ。とは言っても、開口部の右側にしか亀裂は入っていなかったので、後は大した損傷ではありませんでした。
その為、ここからここまでを溶接して、なんとか修理できました。」

彼は誇らしげに言う。だが、次の言葉を言う直前になって、表情を曇らせる。

「ですが、問題なのはハンガーと、あのエレベーターですよ。」
「難しいか?」
「難しいも何も・・・・・・・」

彼は移動してとある箇所を指差す。そこは舷側エレベーターの駆動レールであるが、レールが歪められ、寸断されている。

「これでは、自分達の手の施しようがありません。壊れ方が少しまずいですね。
溶接しようにも、あの状態で溶接したら、二次被害の原因になります。
缶ドックか、ハワイかサンディエゴあたりに持っていくしかないでしょう。」
「ハンガーも似たようなものか?」
「ハンガーはさらに酷いです。衝突と、火災の影響でハンガー自体、完全にオシャカですよ。これも本格修理が必要ですな。」
上を見てみると、ハンガーがあったはずの部分が、綺麗さっぱり切り取られている。開口部が上50センチ分広くなっている。
「そのまま放置すると、あとの作業に影響しますので、やむなくハンガー収納機ごと撤去しました。」
「意外に酷いものだな。」

彼は知らなかったが、ヨークタウンの左舷側エレベーターは、寮艦から見ると海側に傾いてみるため、
エセックス級独特の精悍な艦影が、エレベーターの傾斜によっていささか損なわれている。
軽巡サンファンの乗員は、いかにも修理待ちの空母だなと、言い合っていた。

「しかし、こんな酷いような損傷でも、先に逝ったランドルフやサンジャシント、戦線離脱を余儀なくされたビッグEよりはましですぜ。」
「確かに。本艦は空母としての機能はまだ生きているからな。
それなのに、舷側エレベーターがぶっ壊れたぐらいで不平を言っていたら、連中に申し訳ないな。」

ピーターズ中佐は頷きながらそう言った。

「要するに、ハンガーとエレベーターの修理はドックの連中に任せるしかない。そう言うことだな?」
「そうです。この事を艦長に報告しようとしたんですが、そこへあなたが来たんですよ。」
「ああ、そうだったのか。邪魔してすまないな。」
「いや、いいですよ。」

スフィスト少佐は微笑んでからそう言う。

(いくら優秀なダメコンチームでも、直せないものはあるのだ。)
「それでは、艦長に報告に行ってきます。」

スフィスト少佐は彼に敬礼する。中佐も答礼し、スフィストは足早にその場を離れていった。

「直せないものは仕方ない。ここしばらくは、ヨークタウンは格好悪い姿で洋上を走り回らないといけないな。」

彼は残念そうな口調で言う。

「中佐。」

ふと、ダメコンチームの水兵が語りかけてきた。

「なんだね?」
「昨日聞いた艦内放送で、墜落機パイロットの救出作戦を行うと言っていましたが、救出作戦は任務部隊全体でやるのですか?」
「詳しい内容は私も分からんのだ。しかし、任務部隊の一部は護衛艦艇の護衛に引き揚げて、海兵隊1個大隊を乗せた輸送船と、
護衛空母数隻が救出部隊と共にこの周辺海域に残されるらしい。」
「一部は引き揚げですか。任務部隊全体で行ったほうが手っ取り早いのでは?」
「俺もそう思うが、上の連中が考えている事だ。理解したくても、難しいよ。」

彼は肩をすくめた。
「色々決めるのはお偉方さ。俺達はそれに従うだけだ。」

そう言って、彼はその場から離れた。
飛行甲板に上がるまでに、彼は格納甲板を見渡す。

「・・・・・少なくなったなあ」

ふと、そう漏らした。
ヨークタウン・エアグループは、30日と、31日の海空戦で、合計29機の喪失機、修理不能機を出している。
現在、即時使用可能な艦載機は、ヘルキャットが28機、ヘルダイバーが20機、アベンジャーが18機である。
ヘルダイバー2機と、ヘルキャット3機は損傷が酷いため、今も修理中だ。
整備兵の話によれば、5機の中からあと1、2機は修理不能機が出そうだと話している。
今日の昼にはヘルキャット、アベンジャー各3機が補充されるから、可動機数は上がるだろう。
それでも、出撃時の100機搭載時と比べると、いささか戦力低下の見は拭えない。
(戦争とは、まさに消耗戦だな。いい奴も、悪い奴も。新人も、ベテランも。そして友人も居なくなって行く。
いくら我が合衆国が豊かとはいえ、これはどうしようもない)
脳裏に、ある友人の顔が浮かぶ。
(マッキャンベルの奴、なんで逝っちまったんだ。帰ったら一杯やろうと約束していたのに。)
彼はどことなく空しい思いがしたが、それをすぐに振り払った。

同日、午前7時 カウェルサント
視界がやたらに白い。
その白い光によって、頭の中がハッキリしてくる。
俺は白い光の先をよく見ようとした。

「・・・・・・・・・ここは?」
俺は寝ぼけながら、周りを振り返った。周囲は布が張られている。
すぐ右側には、ガラス瓶に入った水とコップが置かれている。
しばらくぼんやりとしていたが、俺はやっと思い出した。
「そうか・・・・・俺はバーマントの革命側に救助されて、このカウェルサントという所に連れて来られたんだったな。」
ふと、頭を横に2、3度振ってみた。
「頭痛は収まっているな。」
俺はなんとも無い事に安心した。ここに連れて来られた時、俺は調子に乗って酒を飲みまくった。
オイルエン大尉と肩を組んで大声で歌いまくった後の記憶がさっぱり無い。
その次に起きたのは翌日の昼が2時間も過ぎてからの事だった。
起きようとした時に、強烈な頭痛に思わず唸ってしまった。その日はたったの5時間しか起きてない。
5時間が過ぎた後、俺は頭を抱えながらまた眠り込んでいた。
翌日の2日には、頭痛は幾分和らいだが、少し痛かった。
その日は確か、代わりの服に着替えさせてもらって、今まで着けていた服は洗うといって、どこかに持って行かれた。
で、今現在も俺は服を返してもらっていない。
今着けているのは、上が茶色のTシャツのようなものと、下が毛深い黒いズボンのようなもの。
ここに住んでいる者たちが着けているのと似たような格好だ。
着け心地は意外に良く、すぐに気に入った。
2日はカウェルサントの砦内をぶらぶら歩き回るだけで、何もしていない。
オイルエン大尉に聞いたところ、この砦だけがカウェルサントではなく、他にも幾つか村があるらしく、それも全て含めて、カウェルサントと呼ばれているらしい。
村があるのなら、後々見に行きたいもんだ。
とりあえず、腹が減ったから何か食べなければ。

テントから出ると、外は静かだった。
外にいるのは当直の者しかいない。残りは、砦の中で何かをやっている。

「マッキャンベル中佐、おはようございます!」

この声は、

「ああ、オイルエン大尉か。おはよう。」
「酔いはさめましたか?」
「すっかり収まったよ。」
「ネイル酒はがぶがぶ飲みまくると、後が怖いですからね。
中佐にはそれを前もって注意しようと思ったんですが、その前に飲んじゃっていたんで出来なかったんですよ。」
「迷惑かけてすまんな。俺は調子に乗ると、とことんやりまくっちまうからね。
いつも気をつけるようにしてるんだが・・・・・まあ、俺もまだまだ未熟だな。」

畜生、あの日の事を思い出すと、恥ずかしくなっちまう。

「それよりも、メシでも食べないかね?」
「ええ、いいですよ。」

オイルエン大尉も腹が減ってるようだ。

今日の朝食はちょっといまいちだったな。

「マッキャンベル中佐・・・・・大丈夫ですか?顔が青いですよ?」
「大丈夫さ。変わった味だったね。」

もっとも、あまり食いたくない、と言うのが本音。
出てきた朝食は、卵焼きらしきものと、何かの肉だった。見た目はうまそうで、早速かぶりついた。
肉はなんともなかった。
だが、卵焼きらしきものが曲者だった。

この卵焼きもどき・・・・・物凄く苦いのだ。

あまりの苦さに、思わず吐いてしまいそうだった。
しかし、吐くのは失礼だと思って、俺は作り笑いを浮かべながら、なんとか食べきった。
量が大して少なくて良かった。皿一杯ではなく、4分の1しか量は無かった。
あれが皿一杯まんまであったら、恐らくまずさに耐え切れずにぶっ倒れていただろう。

それに対して、周りのバーマント人はばくばく食べやがる。俺がなんとか食べきった頃には、連中お代わりを要求していた。

「ルエスの卵焼きはどうでした?」

オイルエン大尉が聞いてくる。

「ま・・・・・まあまあだったかな?」

まずいって言っちまうとこだった。あぶねえ。

「かなり変わった味だったね。ステイツ(本国)ではあのようなもんは食った事が無い。」

「そうですか。ちなみに、ルエスってどんな物か教えましょうか?」
「・・・・・・いや、今はいいよ。」

どうせゲテモノの類の植物か、生き物だろう。ここはあえて聞かないことにしておく。

「ところで、大尉。砦の中には入れるのかな?」
「砦の中ですか?入れますよ。」

俺は砦を見てみた。
砦は5階建ての岩を削ったような建造物で、ざっと見たところ、高さが28メートル、横幅は80メートルという所だ。
砦と聞いているから、結構目立つと思っていたが、砦自体には迷彩が書かれていて、上空からは見えずらそうになっている。
といっても、高度が100メートル以下であれば、判別されるだろうと、オイルエン大尉は自信なさげに言っている。
まあ、無いよりはましというものだろうか。
砦の周囲には、丸太を切ってそのまま使用したような、木造の壁が直径500メートルの円を描いており、壁の少し内側は、
兵が上に乗れるように通路が敷かれていて、所々に一段高い櫓が作られている。
壁の外側には、約3メートルの堀があり、外敵を寄せ付けない工夫がされている。
元々は、この陣地は20年前に立てられた演習場で、ここで各種の訓練が行われたようだ。
3年前からは歩兵旅団の駐屯地として使われていた。その歩兵旅団というのが、今この砦に居座っている連中だ。
元々は第241歩兵旅団という部隊で、7000の兵を有していたものの、集結地でまさかの奇襲を受けて以来、部隊はバラバラになった。
そしてここに戻ってきたのが半分以下の2800人のみ。
残りはどこかに潜んでいるか、捕まるか、あるいは殺されたか、だという。

「じゃあ・・・・中に入って見ましょうか?」
「そうしようか。」
「案内は自分がしますんで。」
「よろしく頼むよ。」

砦の中は、複雑に入り組んでいる。時折、立ち入り禁止という札が書かれている(オイルエン大尉が字を読んで教えてくれた)部屋があった。
彼の話によると、立ち入り禁止の部屋には、武器類が納められているか、またはトラップの仕掛けた部屋があると言う事だ。
トラップか・・・・・・恐ろしいものだ。
とりあえず、自分達は1時間ほど各階を回って、今は最上階にいる。
28メートルの頂上からは周りが見渡せた。
周囲には3つほど村があった。砦から南西3キロの所に1つ、北西の所に1つ、そして後ろに当たる東5キロの所に1つだ。
特に後方の部落がどことなく大きく見えた。

「オイルエン大尉、3つの村には人は住んでいるのか?」
「住んでいますよ。でも、ここ最近、継戦側の動きが活発化していて、カウェルサントにも幾度か不審な人物が見つかっています。
ガルファン将軍は継戦側の侵攻が近いと見て、3つの村の住人に避難するようにおっしゃっていました。
今現在は村から人が避難しつつあるようです。」
「可哀相だな・・・・・・住人は合計で何人ぐらい居たんだ?」
「ざっと3000人ですね。こっちより少し多いぐらいです。」
「ってことは、村は空になりつつある、ということか。」
「そうですね。はあ、非番の日は村の酒場で飲んでいたんですが、それもしばらくはお預けですね。」
「何言ってるんだ。3日前、俺と浴びるほど飲んだじゃないか。それで満足だろう?」
「あれだけじゃ、ちょっと足りませんねえ。」

マジで残念そうな顔している。こいつ、3日前の宴会で俺と同じような量の酒を飲んでいるのに、翌日はやたらに元気だった。
恐らく、酒が強いタイプなんだろう。俺だって別段弱い方ではないのだが・・・・・・・
どこの世界にも酒好きな奴はいるものだな。

「味方が救援に来るまで、我慢したほうがいいよ。味方が救援に駆けつけた時に飲めば、酒は格段にうまくなるはずだぞ。」
「はあ・・・・そんなものですか?」

「そうさ。人間、楽しみは後に取って置いた方が、それを受け取った時に喜びも格段に大きな物になる。
それと同じさ。」
「なるほど・・・・・・・では、少しばかり我慢といきましょうか。」

そう言いながら、満面の笑みを浮かべる。
思うんだが、このオイルエン大尉はよく笑っている。それにどこか楽観的な風潮を漂わせている。
大雑把に言えば楽天的な奴だ。
この若い大尉と会って、まだ数日しか経っていないが、見た限りではこの大尉は楽天的な性格なのだろう。
しかし、若くして大尉という階級を貰っているのだから、楽天的な性格とは別に、しっかりした部分も持ち合わせているのだろう。
「しかし、村の住人が居ないとなると・・・・・村の散策出来なくなるなあ。
無理して行っても、人のいない所に言ってもつまらないし・・・・・・・・」

俺としては、周囲の村を見て回りたかったのだが、人が居ないのなら仕方がない。

「散策は取りやめにするか。」
俺は諦めてそう言った。

午後2時
昼飯を食べ終わってから、俺はオイルエン大尉に白、赤、青色の塗料が無いか聞いた。
大尉の答えはイエスだった。
それで、3色の塗料と、白い布を調達した俺は、時間を見てあるものを描く事にした。
ちなみに、昼飯にもあのまずい卵焼きが出てきた。
あんな強烈な苦味を味わうのは2度とごめんだと思った俺は、食欲が少し無いと言ってその場から離れた。
なんだかんだやって、今は再び砦の頂上に向かっている。

砦の最上階は、展望台のように周りが見渡せてなかなか良かった。
一目で気に入った俺は、時々そこを訪れる事にしている。
2回目とあって、俺も道順を覚えているから、今回は1人で最上階に上がった。
今頃、エセックスの仲間達はどうしているだろうか・・・・・・・
家族の事を考え始めた時に、最上階に出た。
おや?珍しい人が居る。
              • いかんな。少し俺が苦手な奴が周囲の風景を眺めている。
イメインだ。
こいつは、俺達の機動部隊によって、弟が今も生死の境をさまよう重傷を負わされている。
というよりも、その弟が所属している第13空中騎士団が襲ったのは、同じ第58任務部隊でも、第3任務群だ。
俺のエセックスは第4任務群に所属している。つまり弟を酷い目に会わせたのは俺ではない。
げっ、こっちを向きやがった。いかんな、また据わった目つきに変わっている。

「やあ。」

とりあえず、元気そうに声をかける。
って、黙ってないで何か言え!

「ここから見る風景はかなりいいな。君もここがお気に入りなのかな?」

ひとまず、ここは動揺を感じられないように、平気なツラをして適当に言おう。

「ええ・・・・・お気に入りよ。それがどうかした?」

声に感情がこもってない・・・・・・・さっさと区切りをつけて切り上げたほうがいいな。
「別にどうもしないが。」
はあ、気まずい。
「ハッキリ言っておく。マッキャンベル中佐。あたしはあなたが好きになれない。どうしてだと思う?」

「君の弟を酷い目に合わせた敵の仲間・・・・・だからか。」
「ご名答。元気な姿で居た弟は、いつ覚めるとも分からない眠りについている。医者の話では、最悪、ずっと眠り続けるだろうと言われている。そんな風にしたのは、あんたらアメリカ軍。違う?」
「確かにそうだな。」

イメインの目、かなり怒っているな。
恐らく、内心では俺を殺したいと思っているのかもしれんな。怖い奴だ。

「イメイン、君は軍人だな?」
「そう。軍人よ。軍曹の階級も持っている。」
「俺も軍人だ。軍人は、敵と闘わねばならない。君の弟は、俺達の仲間の軍艦に爆弾を叩きつけて殺傷した。
そして弟も負傷し、意識がいつ戻らぬか分からない傷を負った。」
「・・・・・何が言いたい?」
「イメイン。これは戦争だ。戦いは相手を傷つけ、自らも傷つく可能性が高い。確かに弟は君と血の繋がった姉弟だ。
その弟が帰らぬ身になると言う事は考えなかったのか?」
「考えた。覚悟もしていた。」
「弟さんが酷い目に会ったことに関しては、同情する。だが、戦争とはそういうものだ。仕方が無いだろう。」
「仕方が無い・・・・確かにな。」

ん?剣に手が・・・・・まずい!剣を抜く気だ!糞、言葉がまずかったな。
懐に拳銃があるから、それを取り出して威嚇・・・・・・・なんてこった。彼女の長剣が首元にぴったりくっつけられている。

「あたしが、ここであんたを殺しても、仕方が無い。戦争とは復讐の連鎖でもある。違う?」
「分かっているな。その通りさ。君がこの剣を一振りすれば、俺は首が離れるだろう。だが、そうなる前に教えてやる。」
「何?」
「弟さんの話だが。俺はその場にいなかった。」

「何?」
「弟さんの話だが。俺はその場にいなかった。」
「はぁ?それはどういう事?」
「分かるかな・・・・・・とりあえず。俺達の艦隊は、第5艦隊と呼ばれる艦隊に所属している。」
「第5艦隊・・・・・あのビラに書かれていたあんたの所属する異世界軍だな。」
「そう。俺達は第5艦隊の第58任務部隊と呼ばれる部隊に所属している。君も高速機動部隊という名は聞いたことはあるだろう。」
「ある。」
「その高速機動部隊は4つに分かれている。第58.1任務群、2任務群、3任務群、4任務群。
それぞれが空母4隻を主力とする独立した機動部隊だ。俺はその第4任務群の空母に乗っていた。
ちなみに、弟さんらに襲われた艦隊は第3任務群だ。」
「・・・・・・と、なると・・・あんたはその場にはいなかった。という事?」
「そうだ。俺達は第3任務群より30キロ離れた海域に居たから、何の異常も無かった。
つまり、俺は弟さんには何も手は出しては居ないのさ。」
どうせこれだけ言っても分からないだろう。
こんな頭でっかちの犬女には、母艦部隊を直接見せる意外、話がわからんだろう。
それにしても、味方である革命軍にやられるとは・・・
ん?剣が首筋から離れた。で、鞘に戻した。
「あたしから見れば、アメリカ軍のパイロットは全員、弟の仇に見えるね。でも、あなたは弟の仇よ。」

無愛想な表情で言いやがる。アメリカ人は軍艦に帰れって奴か。

「仇ね。そう思われるとは、俺達の第5艦隊も落ちたものだな。」

ふんっ、て鼻を鳴らしながら帰っていく・・・・・・畜生、海に放り込んでやりたいぜ。

「言っておくけど、あなたを殺す気なんて、無かったよ。少し、試させてもらっただけ。」
「試・・・・・させたあ?」
「そう。あなたも意外と度胸があるのね。まあ、あなたも戦闘飛空挺乗りだから、結構死線をくぐってきているみたいだらか、度胸はついてるんだろうけどね。」

一瞬、笑ったように見えたが、また嫌そうな表情に戻った。
この女、結構な食わせ物だな。それに度胸もいい。オイルエン大尉が頼りにするのも、どこか分かるような気がする。

1098年 10月3日 午後3時
目の前に、焼け爛れた1機のヘルキャットがあった。

「これが・・・・・・・あの白星の悪魔か。惨めな姿だ。」
「味方戦闘飛空挺の攻撃、または対空砲によって傷つき、ここまで飛んできたのでしょう。」

ヘルキャットの周囲には、調査班が現場検証を行っている。
マルガ・ザルデイグ少将は、調査班班長の少佐と共に、このヘルキャットを眺めていた。

「調査の結果、おおまかな事が分かりました。まず、あれを見てください。」

彼は、ヘルキャットの機尾部分を指差す。そこから数百メートルにわたって、地面が抉れている。

「地面が抉れておるな。」
「はい。どうやら、この敵飛空挺は胴体着陸を行ったのでしょう。
恐らく、胴体着陸時に欠損した翼部分から燃料が漏れ出し、引火爆発したようです。」
「中の奴は死んだのか?」
「死体らしきものは見つかっていません。逃げたか・・・・・もしくは骨も残さずに燃えたか。どちらかでしょう。」
「後者であればいいのだがな。蛮族の丸焼きが1つ完成することになる。」

そう言って、陰険そうな笑みを浮かべた。

「それにしても、なぜ東から来るようになっとるのだ?ギルアルグは西にある。」
「原因としては、あれでしょうな。」
彼は指差した。西のほうには、小高い丘が所々浮き上がっている。
「西からはあのように、丘や山があるので、着陸場所には適していません。
しかし、北の山をぐるりと一周すれば、東の平坦部に出る事が出来ます。
恐らく、パイロットはそれを知った上で、胴体着陸を行ったのでしょう。」

「ふむ。それなら、あのように地面が傷つく事も説明ができるな。」

その時、伝令がやってきた。

「ザルデイグ少将でありますか?」
「そうだ。わしだ。」
「第1連隊はヌーメアに到着いたしました。」
「カウェルサントにはいつ頃着きそうか?」
「あと1日ほどでしょう。」
「分かった。下がってよろしい。」

伝令は敬礼を行ってから、その場を離れていった。
+ タグ編集
  • タグ:
  • US 001-020
  • アメリカ軍
  • アメリカ
ウィキ募集バナー