※投稿者は作者とは別人です
739 :陸士長:2012/04/19(木) 13:56:12 ID:vylzbKeg0
その館の主人は大いに憤慨していた。
彼は戦後、漸くにして自分の屋敷へと戻ってきたのだ。
他の運の悪い貴族の様に接収は免れたものの、屋敷は酷い有様だった。
収奪はそれ程でもなかったが、一番酷かったのが落書きだった。
彼は戦後、漸くにして自分の屋敷へと戻ってきたのだ。
他の運の悪い貴族の様に接収は免れたものの、屋敷は酷い有様だった。
収奪はそれ程でもなかったが、一番酷かったのが落書きだった。
「くそ、なんだこの巫山戯た落書きは。ええい、早く消してくれ!!」
廊下に吐き捨てられたガムを避けながら貴族は苛々と怒鳴る。
変な間抜け面の、異様に長い鼻とつぶらな目付き。
そいつが壁の向こうから覗いててKilroy was hereと呟いている。
そんな絵があらゆる所に書き込まれているのだ。一番激怒したのがエントランスホールの肖像画の顔にあの間抜け面が被せて書いてあった所だ。
お気に入りの画家に修繕を頼もうにも連絡が取れず、倉庫に片付けておく他がない。
変な間抜け面の、異様に長い鼻とつぶらな目付き。
そいつが壁の向こうから覗いててKilroy was hereと呟いている。
そんな絵があらゆる所に書き込まれているのだ。一番激怒したのがエントランスホールの肖像画の顔にあの間抜け面が被せて書いてあった所だ。
お気に入りの画家に修繕を頼もうにも連絡が取れず、倉庫に片付けておく他がない。
「全く、本当に忌々しい!」
数日後、片づけが大まか終わり、例の落書きやら米軍の名残が殆ど消え去った後。
メイドの1人が失神し町の治療院に運び込まれた。夜の見回り時に戻ってこず、同僚が見にいったら廊下で気絶していたらしい。
それから、奇妙な現象が立て続けに起きた。メイドだけでなく、執事や使用人までもが気絶し始めたのだ。
不審に思った主人は家宝の剣を手に、現象が発生した時間帯を見廻る事にした。
特に何も起こらず、屋敷のエントランスに戻ってきた時、主人の眉が吊り上がった。
メイドの1人が失神し町の治療院に運び込まれた。夜の見回り時に戻ってこず、同僚が見にいったら廊下で気絶していたらしい。
それから、奇妙な現象が立て続けに起きた。メイドだけでなく、執事や使用人までもが気絶し始めたのだ。
不審に思った主人は家宝の剣を手に、現象が発生した時間帯を見廻る事にした。
特に何も起こらず、屋敷のエントランスに戻ってきた時、主人の眉が吊り上がった。
「なんだこれは、消し忘れてもあったと言うのか!?」
それは壁にデカデカと書かれた、例の落書きだった。
苛立っていた主人は乱暴に近くに置いてあった布巾を掴み、その落書きを掻き消そうとして。
苛立っていた主人は乱暴に近くに置いてあった布巾を掴み、その落書きを掻き消そうとして。
ブニュ。布巾越しに感じた柔らかい人肌の様な感触。
そして、長い鼻の落書きはやけに立体的だった。
主人が恐る恐る視線を上に上げる。巨大な落書きの、つぶらな2つの瞳が主人をじっとみていた。
そして、長い鼻の落書きはやけに立体的だった。
主人が恐る恐る視線を上に上げる。巨大な落書きの、つぶらな2つの瞳が主人をじっとみていた。
「Kilroy was here」
数日後、主人はこの屋敷を手放し郊外の別館に引っ越したという。