自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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匿名ユーザー

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6月1日午後5時 バーマント領バビラ飛空挺基地
ロイレルを襲った140機の飛空挺は、ロイレルから北340キロのところにあるバビラという
地域から発進した。
ここは元はヴァルレキュア軍の根拠地で、1年半前まではヴァルレキュア領だった。バーマント
はここを5万の軍で攻め込み、わずか1万1千しかいなかったヴァルレキュア軍はよく戦った。
しかし、力戦敢闘空しく、ヴァルレキュア軍は包囲全滅してしまった。
バーマント軍はここに航空基地を設営し、占領から1ヵ月後には、ただの原っぱだった土地が
十分な燃料、爆弾、飛空挺を備えた一大航空基地に姿を変えた。
ここからたびたび、飛空挺部隊が発進しては、王都北方にある街や村を無差別爆撃で焼き払った。
喪失は不慮の事故などで少ない数を失ったが、戦闘喪失は皆無であった。
そんな中、6月1日、第3航空軍創設以来初となる大規模な爆撃が実施される事となった。
第3航空軍に所属する140機の飛空挺は、腹に新型の爆弾を抱え、ロイレル爆撃に勇躍出撃
していった。

そしてそれ以来、誰が待っても帰ってくることは無かった。

この日、第3航空軍司令官であるヨヘル・ルバントス騎士中将は、どこかうつろな表情で南の空を
眺めていた。その表情は、年齢の割りには老けが増したような感じがあった。
「こんな・・・・・こんな馬鹿な事が・・・・・・・」
彼はしわがれた口調でそう呟いた。彼がこうも気を落とす原因は、出撃して行った第5、第6空中
騎士団の壊滅を聞いた事だった。

この日の午4後時、いつまでも帰ってこない攻撃隊の前途を、全滅という二文字が頭に浮かび始めた時、
彼の執務室に一人の男性が飛び込んできた。その男は白い薄めの長袖を付け、下は紫色のズボンを付け
ている。彼は魔道師、つまり魔法使いであった。
その彼が血相を抱えた表情で彼を見つめていた。
「リーグラン魔道師、どうしたのだ?」
いきなり入ってきた彼にやや驚きながら、ルバントスは問うた。
「ロイレル周辺にで活動を行っていたスパイから、魔法通信で連絡がありました。空中騎士団は・・・・」
その後の言葉がなかなかでて来なかった。
魔法通信とは、今に言えば無電のようなものであり、それを魔法使い同士が使える通信手段としてバーマント
では使用している。魔道師は、あらかじめ送りたい人物に向けて、従来の魔法通信の呪文に加えて、特定の
魔道師の特徴や名前などをつけて送るのである。
しかし、遠ければ遠いほど、伝達速度が遅くなるという欠点があり、魔法通信は最大で600~700キロまでしか
使えない。
今回は送られてきた通信内容は、創造しがたい内容だった。彼は魔法通信で入ってきた内容を、一字も逃さずに紙に
書き写した。そして書き写した3枚の紙を、持って執務室に飛んできたのである。

リーグランは青ざめた表情で全滅と言う言葉を出そうとした。だが、なかなか言葉が出せない。
だが、彼がその言葉を言う必要は無かった。
「全滅・・・・・・・したのだな?」
ルバントス騎士中将はそう言った。リーグランは頷いた。
「その紙をちょっと見せてくれ。」
彼は、震える手を押さえながらルバントスに渡した。ルバントスはその紙に目を通した。
何度も何度も読み返した。やがて・・・・・彼の体は熱病に冒されたかのように、ブルブル震えた。
「な・・・・・何と言う事だ。」
彼の顔は真っ赤に染まっていた。3枚の紙には、米陸軍第774航空隊に襲撃され、全滅していく
様子が簡潔ながらも刻々と記されていた。
その内容は、空中騎士団が一方的に叩き落とされていく様子が書かれていた。
ルバントスはしばらく、怒りに満ちた表情で紙にらんでいた。しばらくして、彼は落ち着きを取り戻した。
椅子から立ち上がり、彼は手を後ろに組んで、窓に向かって歩いた。
「5日前の定時の通信では、何も以上はないと言っていた。だが、それからわずか5日後の今日。
攻撃部隊を送り出したら、異世界の高速飛空挺に襲われて全滅した。」
彼は夕焼けに染まる空をながめながらそう言った。
「飛空挺の飛行場を作るには、最低でも1週間半か2週間。大量の人員を投入して造られる。だが、スパイが異常
なしと送って、わずか5日でロイレルの空に、あの第1、第2空中騎士団を襲った高速飛空挺が現れた。」
ルバントスはリーグランに振り返った。

「この意味は分るか?」
「い・・・・・・・・・・もしかして。」
リーグランはおぼろげながらも、思い立った。敵は短期間で飛行場を作れる能力を持っている。
それも我がバーマントよりも短い時間で!
「敵は、こちらが1週間以上はかかる飛行場、それも簡易の奴を、わずか5日。いや、場合によっては4日以内に造った
事になる。この意味、分るな。異世界軍は、わずか数日で簡易飛行場を作れる力を持っているのだ。それも大量の
航空機を保有できる飛行場を。」
彼はそう言うと、がくりと肩を落とした。
「我々は、とんでもない相手を敵につけてしまったのかもしれない。」
ルバントスは、呻くような口調でそう呟いた。彼の脳裏には、親しく言葉を交わした飛行隊長や各中隊の
指揮官の顔が浮かんだ。どれもこれもいい奴だった。
第1、第2空中騎士団ほどでないにしろ、彼らは経験を積んだパイロットだった。技量も優秀なものばかり
だった。その貴重な人材を、一気に失ってしまったのである。もはや死んだ者は二度と生き返らない。
リーグランは、血色のよかったルバントスの顔が、一気に20年分は老けたと思った。それほど、彼の
落胆振りは激しいものだった。

窓から差し込んでくる夕焼けの色は、ひどく黄昏ていた。
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