自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

72 外伝05

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1098年 10月3日 午後7時 オルフォリゲンスク
ゼルネスト・パルンク騎士中将は、オルフォゲリンスクの基地に戻ってきた。

「司令、お疲れ様です。」

指揮所に入ってくると、飛行隊長のクランベリン少佐が出迎えてくれた。

「ああ、ただいま。」

そう言って、彼は深いため息をついた。どことなく顔色が冴えない。

「作戦会議はどうでしたか?」

主任参謀であるバーキリアン中佐が質問してきた。

「どの司令官も、ショックが残ってた。ただ、自分で決めた信念をひたすら貫く。
そんな思いで一杯だったな。」

この日、オルフォゲリンスクより南西60キロにあるクアイオルグで、継戦派の主だった司令官が集まった。
クアイオルグには、ヴァルケリン大将の総司令部(住居も兼ねている)があり、大将が直々に皆を呼び出したのである。
午前11時までには各司令官が集まり、作戦会議が開かれた。
会議の題目は、敵輸送船団の対処と、アメリカ空母部隊への対策。そして革命軍への対抗策の立案である。
しかし、会議が始まって20分が経った時、会議室に深い衝撃が走った。
それは、海竜情報収集隊が送ってきた情報だった。

「敵輸送船団は、空母部隊に対して補給を開始せり。輸送船団に兵員輸送船はあらず。全て補給船、補助船であり」

会議の最初の要目は、敵上陸部隊に対する作戦を考えるものであったが、この情報では兵員輸送船はいないと伝えている。
つまり、継戦側は存在しない上陸部隊に怯えていたのである。
それはとにかく、題目の1つ目はこれによって議論の必要が無くなり、すぐに2つめの題目に議論が移された。
2つ目の題目は、現在消息不明であるアメリカ機動部隊の対処法である。
マリアナを巡る防衛線で、継戦側はこの機動部隊に対し、かなりの打撃を与えたと確信している。
それでも、敵飛空挺がどこから襲ってくるかわからない。
この敵機動部隊に対しては、各基地の対空見張りや、対空火器を強化すること。
または、敵空母の戦力が少ないときにはパルンク中将のワイバーンロード部隊で奇襲を仕掛け、撃退することで合意した。
3つ目の革命軍に対する対抗策としては、南東に集結中の革命軍部隊に対して、構築した防衛線を放棄。
その後、後部の山岳地帯に後退して革命側の侵攻部隊を迎撃する。
一方で、グランスボルグ地方に残っている革命軍残党部隊は、後顧の憂いを絶つため、早々に捜索、殲滅することで合意した。
会議が終わったのは午後4時であった。

「そうですか。」
「うむ。今後の計画は、会議で合意した内容に基づいて立案する事が決められたよ。」

パルンクは机に座って、書類を取り出した。

「敵上陸部隊が来なかったのは・・・・・良いと言うべきか、悪いと言うべきか。」
「閣下に言われて、作っておいた上陸部隊襲撃案は、これでボツということですな。」

バーキリアン中佐は、顎鬚を撫でながらそう呟いた。

「本当ならば、こんな襲撃案も、今日行った作戦会議も・・・・・・無かったはずなのだが。」
椅子から腰を捻り、すっかり暗くなった夜空を見つめた。
「今頃は、敵の蛮族共をエンシェントドラゴンのブレスで焼き殺し、自分達の国をやりたい放題に作ってやると、
そんな言葉が交わされるような宴会が行われていたはずなのに、現実では大魔道院が崩落し、エリラ殿下が自らの血の海に沈んでいた。
このような事態を、誰が予想したと思う?」

9月31日 午後7時・・・・・・・・・・・それは、唐突に送られてきた。

「マリアナから魔法通信です。」

その時、パルンクはマリアナからの通信が途絶えた事にやきもきしていた。
苛立つ事1時間、やっと情報が入ってきたのである。

「紙を見せてみろ。」

彼は魔道将校から紙を渡すように命じ、その将校は従った。
ふと、その将校の顔色が真っ青になっている事に気がついた。
(・・・・・・・まさか!)
そう思いながら、紙を見てみた。

「大魔道院は崩落、エリラ・バーマント殿下は、敵飛空挺の銃撃によって戦死。」

何かが崩れ去るような音がした。頭の中は真っ白になり、しばらくは何も考えられなかった。
10分ほど沈黙した後、彼はようやく事態が飲み込めた。
大魔道院は強固な防御魔法で覆われており、その防御魔法は数百年に1度にしか見られないほど、
完璧かつ強固なものであると言われている。
敵の空襲などは簡単に防げると思われていた。だが、相手が違いすぎた。
確かに前半戦はそのように上手くいった。しかし、敵は圧倒的多数の航空機を持って、執拗に反復攻撃を繰り返した。
そして、完璧であったはずの魔法防御は、敵の「物量」に屈してしまったのだ。
それも、最高指揮者の戦死というおまけもついて・・・・・・・・・
20分後、継戦派ナンバー2であるヴァルケリンが、継戦派の指揮をこれから取ると書かれていた。
同時に、今後も革命軍やアメリカ軍上陸部隊に対して徹底抗戦すると、魔法通信によって各部隊に伝えられた。

「3日前の出来事だったが、あの時ほど時間の流れを遅く感じたことは無かった。」
「流れ・・・・・ですか。」

バーキリアン中佐はかみ締めるような口調で言う。

「魔法ばかりに頼る時代は、もう終わったのかもしれん。そして、ワイバーンロードも。」

クランベリンがうっと小さく声を漏らした。

「飛空挺・・・・・空母・・・・・この2つを持つ者がどのような成果を挙げるか。
私達はこの一連の戦いで見せ付けられたような気がする。高速で海上を機動し、好きな所を
飛空挺で気の済むまで叩ける艦隊。高速機動部隊・・・・・・か。
本当に、ヴァルレキュアはとんでもないものを召喚してくれたものだ。」

彼は自嘲しながら、苦笑を浮かべた。

「バーキリアン、クランベリン。」

パルンクは2人の名を呼ぶ。

「これからカウェルサント攻撃について話をしたい。」

10月4日 午前5時 カウェルサント
どうも外が騒がしい。あちらこちらで叫び声や何かを運ぶ音がする。
外の騒がしさに目を覚ました俺は、テントから出てみた。
そこここに、甲冑や戦闘服を着込んだ兵隊がいて、木箱や物資を運んでいた。
ただならぬ雰囲気が流れている。通り過ぎる兵の誰もが、緊張に顔を歪めている。
俺はこのような表情を、エセックスに乗っていた時に何度も見ている。

そう、戦闘が近いのだ。

「マッキャンベル中佐。」

背後から聞き覚えのある声が上がった。だが、オイルエン大尉ではない。
振り向くと、オイルエン大尉の副官であるシャルカ・ヌーメラー中尉が走り寄ってきた。

「ヌーメラー中尉か。なんか砦全体が、かなり殺気立っているような気がするが。」
「実は、ヌーメアの町に継戦派の部隊が進出してきたのです。」
「なんだって!?」

思わず驚いてしまった。

「もしかして、ここに向かっているのか?」
「そうで。ヌーメアには1個連隊2400人ほどが進出しており、その部隊の一部は4時間前にヌーメアを出発したようです。」
「なんでここが狙われたんだ?」
「私の推測では、カウェルサントにいる部隊はグランスボルグに点在している他の革命軍部隊と比べて、規模が多い。
近々、革命軍本隊が侵攻してくる。それまでに、継戦側は後顧の憂いを絶つため、革命側残存部隊を殲滅しようと考えたのでしょう。
その手始めに制圧するのが、ここカウェルサントというわけです。」
「革命軍本隊が集結中の南東にはいけないのか?」
「南東部には2万以上の継戦側の部隊が、侵攻してくるであろう革命軍部隊に備えて待機しています。
それ以前に、南東部には長大な山岳地帯があり、南東部へ抜けるには、この山岳地帯を抜けなければなりません。
しかし、自分達の装備は山越えに必要なものはありません。山越えは、達成できるでしょう。
その後は待機している継戦側部隊に頭から突っ込む事になります。」

厳しい表情浮かべて、彼は言った。

「現状では、このカウェルサントで敵を叩けるだけ叩いて、一度引いた時に北東部に逃れるしかありません。」

「そうなのか。」
「でも、すぐに負けはしません。」
「すぐに負けないだと?どうしてそれが言える。」

ここにいる革命軍は2800人しかいない。それに対し、敵は確認されている1個連隊だけとはいえ、2000人以上いる。
敵はこれだけではない。師団単位で攻めてくるであろうから、少なめに見積もっても8000人、多くて1万人はいるだろう。
敵は、戦場の常識である、攻める側の必要兵力は守る側の3倍の法則をしっかりとクリアーしている。
4倍から5倍近い相手では、すぐにもみ潰されるだけじゃないのか。

「自分達は、たった2度だけですがゲリラ行動も行っています。それに、付近は自分達の庭みたいなものです。
敵戦力の完全撃滅とまではいけないでしょうが、大いに引っ掻き回したやることなら、なんとか可能です。」

まるで先生のような口調で言ってくる。うちの総大将と似たような話し方だな。
さっきからずーっと無表情だ。でも、心なしか、結構自信があるような口調だ。

いや、元々、彼らはこの砦付近に駐屯していた部隊だ。訓練などで周囲を見て回っているだろうから、土地勘はある。
なるほど・・・・・大軍で迫る敵に対して、地の利を生かしたゲリラ戦法で敵の側面や後方を突くというわけか。
それならば、ヌーメラー先生が自信ありげに言うのも納得がいく。
敵の腕前はどんなものかは分からないが、彼らほどこの土地の周辺を知り尽くしている訳ではない。
だったら、後に行われるはずの戦いでは、地の利に関してはこちら側が結構有利かもしれない。

「なるほど。」

ふと、俺はある疑問が沸き起こった。なぜ、彼らは同じバーマント人なのに、継戦側の事をいともあっさりと敵と認識できるのだろうか?
「ちょっとおせっかいな質問かもしれないが、聞いていいか?」
「自分が答えられる範囲なら。」

「なんで、君達は同じバーマント人なのに、継戦側のことをはっきり敵と認識できるのか?
普通なら、敵といっても多少ためらうはずだが。」
「同じバーマント人ですよ。一応はね。」

ヌーメラーは含みのある言葉を言った。一応?

「正確に言えば、“20年前からは”と言ったほうがいいですね。
元々、自分達はライルフィーグ王国という国の国民だったんです。」
え?ライルフィーグ?
「何だと?初めて聞いたぞ。その話は。」
「あなたには、なるべく言いたくはなかったのですが。」

ヌーメラーは声のトーンを落として言ってきた。俺のようなよそ者には、あまり話したくなかったのだろう。

「20年前、ライルフィーグはバーマント公国に強引に併合されたのです。きっかけは、バーマント皇帝の
たんなる領土拡張のためだったんです。ライルフィーグの当時の国王陛下は、併合か、戦争かの選択を迫られましたが、
7000万の人口を誇るバーマントに対し、ライルフィーグは・・・・・・たったの100万の民しかいませんでした。
国王は断腸の思いで、ライルフィーグをバーマントに明け渡したのです。」
「もしかして、ヌーメアで亡くなった人達も」
「彼らもバーマント人ではありません。僕たちと同じように、ライルフィーグの国民であったもの達です。」

それで、無差別にヌーメアの町を焼き払ったのか。虐殺好きな継戦側のやりそうな事だ。

「今回、ガルファン将軍がカウェルサントの住人達を避難させたのも、ヌーメアの二の舞を避けるためです。」
「住人達を避難させたのは正しい判断だよ。そうでなければ、戦闘に巻き込まれる危険が高いからな。
それにしても、君達がバーマント人ではなく、併合された国の国民だったとは・・・・・正直、驚いたね。」

「ヌーメアから東のパレイラまでは、元々ライルフィーグ王国の領土でした。
ヌーメア、パレイラ間までは、住人はほとんどがライルフィーグ人ばかりです。
バーマント人は少数のみです。」

その時、オイルエン大尉がやってきた。

「ヌーメラー中尉、全員集まったか?」
「はい。いつもの場所で集合しています。」
「よし。出発するぞ。あっ、マッキャンベル中佐。おはようございます。」
「おはよう。朝っぱらからやけに賑やかだから、思わず目が覚めちまったよ。」
「まあ、賑やかなのは違いないですけどね。それでは中佐。自分達は急いでいるので。」

そう言って、彼らは直立不動の態勢を取って、手のひらを左胸にピシっとあわせた。

これが、彼らバーマント軍の敬礼の仕方だと言う。

「大尉、無茶するなよ。」

そう言いながら、俺もいつもの敬礼をした。

「大丈夫です。これでも不死身野郎とあだ名されてますからね。ヌーメラー、行くぞ!」

彼はヌーメラーを引き連れて、俺のもとから離れていった。

恐らく、ヌーメラーの言っていた撹乱作戦に参加するのだろう。彼らには生き延びて欲しい。
無意識のうちに、そう思った。

10月4日 午前8時 マリアナ沖270マイル地点
「旗艦より入電。救出部隊の指揮を任せる。」

第4任務群司令官である、ウイリアム・ハリル少将は、通信士官が読み上げる声を黙って聞いていた。

「旗艦に返信。我、必ずや戦友を救出する。以上だ。」
メモを取った通信士官が、艦橋から出て行った。
「救出部隊の名にしては、どこかを占領しに行くような編成だな。」

ハリル少将は、エセックス艦長のオフスティー大佐に話しかけた。

「占領と言っても、機動部隊の艦載機のみでは、爆撃だけしかできませんよ。
上陸部隊はいるにいますが、1個大隊のみですからねえ。」

第5艦隊司令部は、30、31日の海空戦で、墜落した艦載機のパイロットが、マリアナ、ギアルグ周辺
でパラシュートを使って脱出した事を確認していた。
報告だけでも、20以上あり、そのうちの大多数がマリアナ周辺の山岳地帯や、ギルアルグ周辺の森林地帯に逃げ込んでいると思われている。
第5艦隊は1人でも多くのパイロットを連れて帰るため、艦隊の一部を引き抜いてパイロット救出を行う事を決定した。
救出作戦を行うと同時に、継戦側の抵抗意欲を喪失させるため、残った敵拠点への捜索爆撃が行われる事になった。

救出部隊は、第58任務部隊の2個空母群と第52任務部隊のタフィ2。
そして海兵隊1個大隊を載せた輸送船と、弾薬運搬船、給油艦を含む支援部隊8隻である。
救出作戦の際、主役になるであろう空母部隊は、第58.1任務群と第58.4任務群である。

救出部隊配置図


                        ブリュンス岬                                  
      TF58.1                     ソヽ                                    
      ●                   ミ ° ゝ                           
           TF52.tfi2 TF58.4    丶    ヽ                            
ゝ   ヾゝゝ    ●     ●      ゝ     ヽ
 ヽ、!)   ゝ                 丶    ゝ
        丶丶丶丶丶丶丶   ゝヾ丶      丶
                  ヽ丶丶         丶丶丶ヽヾゞ
    ○マリアナ       。ギルアルグ                 \  ヽ'’'~丶
                                        ヽヽ    丶ゞゝヽ丶


     グ ラ ン ス ボ ル グ 地 方


空母は正規空母がヨークタウン、ホーネット、エセックス。
軽空母はバターン、ベローウッド、カウペンス、ラングレーである。
これに戦艦サウスダコタとワシントンを始めとする各任務群のエスコート艦が空母の周囲を固めている。
艦載機は7隻合計で409機が使用でき、もし敵対勢力を発見した場合は、これらが攻撃を行う。
救出作戦は、主に2つの海域に展開してから行う事が決定された。
まず、第58.1任務群は、ラグナ岬北方70マイルに進出して、偵察機を発艦させる。
次に、第58.4任務群がギルアルグ沖北方80マイル付近に進出し、同じように偵察機を内陸に向けて発艦する。
第52.タフィ2は、支援艦隊と共に第1、第4任務群の昼間海域に待機し、いつでも支援ができるようにする。
万が一の場合は、輸送船上の海兵隊1個大隊を、奇襲部隊として継戦側にぶつけ、地上軍と空母艦載機で打撃を与える事も視野に入れられている。
各空母の弾薬庫は、2日前に行われた補給で再び満杯になっており、艦載機もいつでも発艦できるように、整備済みである。

「これより、第4任務群はギルアルグ周辺海域に進出する。艦隊針路を東に変針。」
「アイアイサー。」

やがて、遊弋していた第4任務群の各艦は、ギルアルグの北方80マイル付近に舳先を向けた。
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