自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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匿名ユーザー

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9月1日 午前4時 サイフェルバン グリンスウォルド飛行場
まだ薄暗い明け方に、1つの音が響き渡った。その音は、エンジンがプロペラを回転させる音だった。
最初は少なかったエンジン音。だが、それに触発されたかのように次々と音が広がっていく。
気付く頃には、飛行場を轟々と揺るがすようだった。
誘導員の指示に従い、1機のB-24が巨体をゆっくりと前進させた。
誘導路に乗ったことを確認すると、次のB-24がやはりゆっくりと誘導路に進んでいく。
やがて、B-24の1番機が滑走路に機体を進めた。管制塔からOKの指示が出る。
それを聞いたB-24のパイロットはすぐさまブレーキを解除し、速力を上げた。
エンジンが唸りをあげる。滑走路を1500メートルほど走ったところで機体が浮き上がった。
その頃には2番機が滑走を始めていた。

グオオオォォォォーーーーーーン!
轟音をあげながら、B-24が大空を舞い上がっていった。第790航空隊の最後のB-24だ。
「よし、次は俺達だ。」
操縦桿を握るポール・フランソワ大尉はそう言った。
「こちら管制塔、ベイティ1へ、感度いかが?」
「こちらベイティ1、全て異常なしだ。」
彼の機は、今しがた滑走路上に機を進めたばかりだ。その頃には、時刻は4時40分を過ぎていた。
「OK。ベイティ1、離陸を許可する。派手にやってこい。」
「ああ、暴れてくる。」
そう言うと、彼は機のブレーキを解除した。
それと同時にスピードを上げる。両翼の2基のエンジンがこれまで以上にけたたましく鳴る。
90キロ、120キロ、160キロ。B-25の速度はぐんぐん上がっていく。
フランソワ大尉は操縦桿を手前に引いた。
B-25の機体が地面との束縛を解かれ、フワッとした感触になる。
彼はそのまま高度3000メートルまで上昇させた後、上がってくるであろう寮機を待った。
待つのは編隊を組むためである。

午前5時30分 第790航空隊の攻撃隊は全機が発進を終えた。
攻撃隊の内訳は、B-24が80機、B-25が70機、A-20が30機。
そして護衛のP-51が40機となっていた。

午前6時50分 バーマント公国 ファンボル
ここファンボルの町は、サイフェルバンと首都ファルグリンのちょうど中間にあたる地域である。
草原に囲まれた辺ぴな町だが、人が比較的穏やかな性格だと言われている。
また、休養地としても知られており、有力貴族などが別荘をここに作っていることもある。
農場の主の息子であるイレイス・ハウイルは、壊れた家の屋根を修理していた。時間は7時10分前。
太陽もまだ高くは上がっていない。
彼は次の釘を打とうと、袋をまさぐった。だが、釘が無い。
「ちぇっ、もう切れたのか。」
愚痴をこぼしながら、梯子を降りて下に降りようとした。その時、よく晴れた青い空が見えた。
そしてその空に、不思議なものがあった。
「ん?なんだあれ?」
イレイスは呟いた。空に幾筋もの白い線が伸びている。それも半端ない数だ。
その小さな筋は、ざっと見ても50以上はあり、すうーっと伸びつつあった。
「綺麗だなあ・・・・・」
彼はその光景に見とれていた。白い筋は北西のほうに伸びていき、やがて消えていった。

午前7時10分 
轟々たるエンジン音が、碧空の空に木霊している。
周りには、多くのB-24が編隊を組んで飛行している。主翼の後ろから飛行機雲を出していた。
「こちらコロネット1、各機に告ぐ。これより高度7000から高度4500まで降下する。
降下のさい味方機の接触に注意せよ。」
ファルグリン爆撃隊の指揮官であるハルク・ウォーレット中佐は隊内無線でそう告げた。
現在、サイフェルバンを発進した爆撃隊は次の編成になっている。
まず、第689、第790航空隊のB-24が40機ずつ、2個集団に分かれ、
この護衛に第774航空隊のP-51ムスタングの4シュヴァルム、16機が護衛に当たる。
次にダム攻撃隊のB-25編隊にP-51が3シュヴァルム12機。
最後に軍事施設爆撃隊60機にP-51が3シュヴァルム12機。
合計で、戦爆連合220機の大編隊が、バーマント公国の首都に手痛い一撃を下すべく、
時速220マイルのスピードで向かっている。

攻撃割り当ては既に決められている。
まずAグループと呼ばれる先頭集団のB-24が要塞西棟を、次に第2集団のB-24が要塞東棟を爆撃する。
ここで少し時間を置き、第3集団のB-25がダムを、第4集団の爆撃隊が軍事施設を攻撃する。
これが今回の作戦のおおまかな内容である。
爆撃隊は、高度7000メートルにB-24隊、後方6キロ離れたところにダム、軍事施設攻撃隊が飛行している。
やがて、B-24爆撃隊は高度を落とし始めた。
機体の高度が徐々に下がっていく。時折、機体がガタガタ揺れる。
揺れを抑えながら、操縦士は機を操る。
高度5000メートルまで降りたときには、先頭集団はファルグリンまであとあと200キロの地点に迫っていた。
午前7時40分、緑色の大地の遥か向こうに、それとは違う物がある。
「隊長、あれを。」
操縦士の声に、ウォーレット中佐は弾かれる様に反応した。風防窓の向こうに何かがある。
そう、それは彼らが追い求めていたものだった。
「間違いない、ファルグリンだ。」
ウォーレット中佐は、双眼鏡で確かに確認した。
そして、その南側には、爆撃隊の目標、バーマントの力の象徴でもあるファルグリン要塞があった。
彼は席に戻ると、隊内無線で全機に伝えた。
「こちらコロネット1、目標を発見した。これより突入する。攻撃目標は事前に指定したとおり。以上。」

中佐はそっけない口調で無線機にそう話しかけた。
「現在、高度4800メートル。」
副操縦士の声が聞こえる。窓の外がビュービュー鳴っている。
ウォーレット中佐は腕時計を見てみた。時間は午前7時30分を指していた。
「目標到達まで、あと20分。目標上空に敵戦闘機の機影なし。」
前方を行くムスタングの編隊はまだ動いていない。だとすれば、空の敵は心配しないでいい。
彼はそう思った。
機体は10分後に高度4500メートルまで降下し、水平に移った。
機首の爆撃手が照準機を覗き込む。
「針路適正。」
爆撃手の機械的な声が聞こえてくる。中佐が率いる第1中隊は爆撃針路に入った。
爆弾投下まであと10分。下方には、広大な要塞が見えてきた
2つの要塞。そしてその真ん中のダムが、ファルグリンの南方にどっしりと構えている。
その内の向こう、西棟を中佐のB-24は爆撃することになっている。
B-24の胴体には、9発の500ポンド爆弾が搭載されている。
西棟に投下する爆弾は360発にものぼる。
それに9発のうちの2発は、サイフェルバン精油所で捕獲したものの使用できなかった異世界ガソリンを使った焼夷弾である。
「爆弾倉開け。」
機長が指示する。その後にB-24の胴体が開かれた。
その胴体からは、9発の500ポンド爆弾が地上を見下ろしている。

「ちょい右に修正。」
爆撃手が進路を確かめる。パイロットはそれに従って機体を操る。
「もうちょい右。」
「少し左。」
「OKです。針路そのまま。」
爆撃手が完全に爆撃針路に入ったことを確かめると、後は目標に爆弾を投下するだけである。
眼下には通り過ぎていくダムが見える。その湖面はキラキラと光っていた。
照準機にファルグリン要塞西棟が見えてきた。爆撃手のマクナマラ軍曹は、それが別世界のように思えた。
「針路そのまま。」
ダムの通路に沿うように、照準は徐々に西にずれていく。マクナマラ軍曹は投下スイッチに手を置いた。
直径3キロという広大な円状型要塞が見える。機銃弾を撃っているのか、外縁部がやや煙っている。
だが、B-24編隊にはなんの効果も無い。
「爆弾投下まであと1分。」
彼の機械的な声が機内に響く。なぜか喉が渇いてきた。
(水をもっと飲んでおけば良かったかな)
軍曹は一瞬そう思ったが、雑念を振り払って照準機を覗き込む。
「投下まであと20秒。」
照準機が要塞のほぼ真ん中に移動しつつある。速力は240マイル、風向きは西向き。さまざまな事を彼は考える。
そして照準機の十字に要塞の中央部が当たった。
「爆弾投下!!」
マクナマラ軍曹は投下スイッチを押した。その瞬間、爆弾の懸架装置が止め金を次々に離し、500ポンド爆弾が落下していった。
その直後、2トン以上の重量物を落としたB-24の機体が上空に浮き上がる。
第1中隊の後続機も次々と爆弾を投下している。胴体からバラバラと、9発の500ポンドを落としていく。

マクナマラ軍曹は落ちていく爆弾を見つめていた。9発の爆弾がフワフワ揺れながら地上に消えていった。
やがて、それが見えなくなったと思ったとき、要塞の中央部よりやや西にずれた所で爆発があった。
それから次々にパッパッと閃光が走り、爆煙と粉塵が舞い上がった。
最後の2発はド派手に炎を吹き上げた。ナパーム弾の業火が要塞を焼き尽くしているのだ。
(爆弾が落下した地点には、誰1人として生きていないだろう。)
ふと、軍曹はそう思った。
その間にも、次々と要塞西棟に爆弾の雨が降り注ぐ。
第1中隊12機が投下した爆弾が次々と炸裂し、要塞の破片、粉塵を空高く吹き上げ、火炎が要塞内をなめる。
その阿鼻叫喚の巷と化した西棟に、第2中隊が投下した爆弾が命中し、さらなる地獄を現出した。

「何だと!敵の大型飛空挺がこの要塞に向かっている!?」
東棟司令官ヴィッス・ヘランズ騎士中将はギョッとなった表情でバーラッグ大佐に聞き返した。
「はい。報告によるとファルグリンの南東30キロのルクスから、魔法通信で敵編隊発見の報を受けました。」
「30キロだと!?近いではないか!」
ヘランズ中将は叫んだ。
「全員配置だ!今すぐ戦闘配置につかせろ!敵機はすぐにやってくるぞ!!」
ヘランズ中将は、最初、敵の小型飛空挺が襲ってきたものと思った。
だが、中央部の10階にある監視小屋で飛空挺を見たとき、ヘランズ中将は驚いた。
なんと、偵察にやってきたあの大型爆撃機が、大挙してやってくるではないか!それも高度はかなり高い。
「見たまえ、敵は本気で首都を潰すつもりだぞ。」
ヘランズ中将は、となりのバーラッグ大佐にそう言った。
おそらく、あの爆撃機は首都の皇帝陛下のおられる宮殿か、市街地を狙うのだろう。
ヘランズはそう思った。だが、敵飛空挺は東棟をパスすると、なぜか西棟のほうへ向かっていった。

「どうしたのだ?敵は様子見か?」
そう思ったのもつかの間、なんと、敵の編隊は西棟上空に達した瞬間、胴体から爆弾を投下した。
その数秒後、西棟に爆弾の雨が降り注ぎ、外縁の内側から盛大な黒煙と粉塵を吹き上げた。
バーラッグ大佐は監視小屋から降りて、外縁の最上階に上り、西棟の様子を見た。
西棟は、次々と飛来する敵編隊によって爆撃され、外縁の内側は濃い煙に覆われてしまった。
膨大な費用と時間を費やし、その堂々たる威容で首都の守りにあたっていたファルグリン要塞。
その片割れが、未知の世界の飛空挺によって、無残な姿に変わりつつある。
だが、感傷に浸っているひまはなかった。
「東方向より敵飛空挺!」
見張りの緊迫した声が、要塞に木霊する。見ると、10機以上の編隊が東棟に覆いかぶさるように展開しようとしている。
やばい、と思った瞬間、敵機の腹から何かが落ちてきた。バーラッグはすかさず爆弾だと思った。
「いかん!ふせろ!!」
彼は大声でそう叫んだ。それを聞き取った兵が、周りに伝えていく。
バーラッグはそのまま床にふせて、耳を押さえた。
次の瞬間、連続して轟音が鳴り響いた。それを機に、東棟にも次々と爆弾が落ちてきた。
ドガアァァン!バゴォン!!ズダアアァァーーン!!!聞くに堪えないような轟音が次々と、それが無数に広がっていく。
大地震のように地面が揺さぶられる。
直径3キロという巨大な要塞が、痛みにのた打ち回っているようである。
(ここに落ちてくるな。せめて俺だけでも助かってくれ!)
バーラッグ大佐はそう思った。爆弾はその思いを跳ね除けるように、近くで炸裂した。

エリル・バーテルン兵長は、急に退避命令を受けたことに拍子抜けしていた。
彼女らはこれから機銃弾の弾薬を運ぶところだった。
「えっ?なぜですか!?」
「敵の飛空挺が来てるんだ!さっさと戻れ!」
髭面の古参少尉がそう怒鳴った。次の瞬間、なにかが空を切る音がした、と思ったとき、
ガガーン!という爆発音が連続して鳴り響いた。
衝撃に足を取られた彼女らは思わずよろけた。
「なんかやばい!戻ろうよ!」
バーテルンは振り返ってそう叫ぶと、後ろの6人が頷いて、通路を元に戻った。
通路を30秒ほど走り抜けた直後、後ろでバーン!という猛烈な轟音が鳴り響き、瓦礫がガラガラと落ちてきた。
彼女は衝撃で前に倒れ、意識を失いかけた。
どこか頭がぼんやりする。視界が悪い。バーテルンはそう思った。それを振り払って、ようやく正気に戻った。
その時、腰の辺りに激痛が走った。後ろを振り返ると、背中に大きな瓦礫が乗っており、彼女の体を下敷きにしていた。
腰と、胸の辺りに痛みが走った。彼女は知らなかったが、この時腰の骨と、右のあばら骨2本が折れていた。
視界を前に移すと、あたふたと逃げていく同僚達が見えた。
「ちょ、ちょっと待って!助けて!!」
バーテルンは必死にそう叫んだ。ふと、最後尾の男性兵が足を止めた。
(これで助かる。)
彼女は安心した。だが、男性兵の振り返った顔は、明らかに恐怖に歪んでいた。
「わ、わりぃ。俺、先に言っとくわ。じゃあな。」

男性兵はそう言うと、再び足を進め、右の曲がり角を走っていった。
「そんなあ・・・・・・・・・・馬鹿野郎――-――――――!!」
彼女を見捨てた男性兵に、大声で罵った。
その直後、連続した爆発音がまたもや響き、要塞内を激しく振動した。
粉塵がパラパラとバーテルンに降り注いできた。
一瞬、曲がり角の向こうがオレンジ色に染まったが、そんなことは彼女にはどうでも良かった。
また暗くなった要塞内で、バーテルンは痛みに耐え切れず、意識を失った。
彼女達を見捨てた同僚達は、落下してきたナパーム弾に焼かれ、全員戦死した。

第790航空隊のB-25爆撃隊40機は、ファルグリン要塞の真ん中にあるダムの北側から突入しつつあった。
露払い訳のP-51が速度を上げ、先にダムに突っ込んでゆく。
先にダムの湖面に突入してきたP-51に対して機銃が放たれる。
その機銃弾を右に左にかわして、両翼の12.7ミリ機銃を撃ち込む。
たちまち、射手が体を穴だらけにされて絶命する。
そしてその機銃までもが無数の12.7ミリ機銃弾に滅茶苦茶に叩き壊されてしまった。
ムスタング隊が対空砲火との戦いを演じているとき、B-25編隊はダムの湖面に到達した。
B-25編隊の指揮官機であるポール・フランソワ大尉のB-25は、ダムの壁まであと900メートルまで迫った。
「射店までもう少しです!」
機首の爆撃手が叫ぶ。

「OK!本家の腕前、敵さんに見せてやろうじゃねえか!」
フランソワ大尉は獰猛な笑みを浮かべた。
B-25は、胴体に2発の500ポンド爆弾を抱いており、
現在湖面スレスレのところを時速400キロ以上のスピードで驀進している。
スキップボミングは雷撃機のパイロット並みの技量を要求されるが、
ダム爆撃隊のパイロット達は、いずれもソロモン諸島、ニューギニア戦線などの
激戦地を潜り抜けてきた、精鋭部隊である。
現在高度は湖面とB-25の間で、わずか15メートル。目を背けたくなるような高さだ。
一歩間違えれば、即、あの世である。
P-51の掃射を生き残った機銃が、フランソワ隊に向けて撃って来た。
まだ20丁ほどの機銃が生き残っている。
バーマント側は、必死に弾幕を張るが、B-25編隊はそれをあっさりと突き抜ける。
ガンガン!という鐘を叩くような振動が伝わった。
「胴体に被弾!されど、損害は軽微!」
「ようし、そう来なくては。爆弾倉開け!」
指示した直後、金属音と共に爆弾倉が開かれる。
「射点まで、あと300メートル!」
目の前に、ダム固有の壁が聳え立っている。水面から約10メートルの高さだ。
対空機銃が一層激しく撃って来る。彼らも必死なのだろう。
だが、今のところ軽微な損害のみで、被撃墜機は出ていない。
(このまま、全機が無事に投弾出来るといいが)
彼がそう思う間に、ついに、
「射点到達!」
待望の時がやってきた。

「爆弾投下ぁ!」
フランソワ大尉は鋭い声で指示を下した。
爆撃手が投下スイッチを押し、胴体から2発の500ポンド爆弾が離れた。
操縦桿を引き、上昇に移った。小高い監視塔からバーマント兵が機銃弾を撃ってきている。
そこに胴体上方の12.7ミリ連装機銃が撃ち返す。
ガンガン!と、さらに機銃弾が命中したが、機体にはどこにも異常は無かった。
「命中!命中しました!」
後部座席の機銃員が弾んだ声で報告した。]
フランソワ機の放った2つの500ポンド爆弾は、しっかりと500メートル先のダムの防壁に命中した。
後続機が次々と低空で投弾し、湖面を500ポンド爆弾が飛びはね、次々と命中した。

ガガーン!という凄まじい衝撃がダムの防壁を叩いた。水柱と、石屑が舞い上がった。
「なんということだ!こうもあっさり、敵機の攻撃を許すとは!!」
監視塔の指揮官であるルクサーナ少佐は、次々と飛来してくるB-25に向けて、
やりきれない怒りで顔を真っ赤に染めていた。
監視塔には3丁の11.2ミリ機銃があったが、1丁が先のP-51の掃射で破壊され、
もう1丁がB-25の機銃掃射で射手を射殺された。
残る1丁の機銃が、後から来るB-25に向けて撃ちまくる。
「少佐!既に防壁に20発以上が命中しています!これ以上爆弾を浴びせられたら危険です!」
この時、既に10機以上のB-25が爆弾を命中させており、被弾の集中している中央部は大きな亀裂が走っている。
あと数発の爆弾を浴びせられれば、崩壊は間違いなかった。
「1機でもいいから敵機を落とせ!」
少佐は必死に指示を飛ばす。
だが、B-25群はバーマント側の対応をあざ笑うかのように、猛スピードで中央部に向かっていた。

「ルクサーナ少佐!残りの敵機が!!」
少佐は湖面のほうに視線を移し、驚愕した。
なんと、20機近くの双発飛空挺が、監視塔の方角に向かってきたのである。
B-25群は横に4機1列となって向かってきた。
生き残りの機銃が横から銃撃してきた。
弾幕を張るが、敵双発機はよほど頑丈なのか、破片を飛び散らしながらも向かってきた。
「なんて頑丈な奴なんだ!!」
11.2ミリ機銃の射手が忌々しげに叫ぶ。距離が500に迫ったところで4機が一斉に爆弾を投下した。
2発ずつ、計8発の爆弾がテンテンと水を跳ね飛び、監視塔付近に向かってきた。
1機のB-25が左主翼から火を噴いた。
その直後、もんどりうってダムの湖面に墜落した。
だが、バーマント兵の注目は、迫り来る爆弾に注がれていた。
次の瞬間、猛烈な轟音と、衝撃が伝わり、ルクサーナ少佐らは飛び上がった。
その衝撃から立ち直らないうちに、第2、第3波の爆弾が次々とダムに叩き込まれた。
そして第5波の爆弾が命中、炸裂したとき、ついにその時がやってきた。
頑丈な作りのダムの防壁に、さらに亀裂が走り、耐用限界に達した時、ダムの中央部が大きく崩れ落ちた。
生き残りのバーマント兵を巻き込みながら、ダムの崩壊は急速に進んで行き、最終的に幅70メートルにわたって防壁が崩れ落ちた。

「一体何事か!?」
皇帝であるバーマント皇は、遠くから聞こえる聞きなれない音に不審を抱いた。
その直後、直属将官の1人が血相を変えて執務室に入ってきた。
「た、大変でございます!」
「何があったのだ?」
「よ、要塞が!ファルグリン要塞が!!」
バーマント皇は足早に要塞が見えるベランダに移動した。
ベランダに移動した瞬間、バーマント皇は愕然とした。
7キロほど離れた要塞が、真っ黒な黒煙に包まれている。要塞のうち、西棟が攻撃を受けていた。
「西棟が攻撃を受けているのか!?詳しい情報は!?」
彼は直属将官に問いただした。その直後、今度は東棟に次々と黒煙が吹き上がった。
上空には飛空挺らしきものがいる。
東棟はさらに悲惨で、黒煙に包まれたかと思うと、要塞の一部の外縁が大爆発と共に吹き飛んでしまった。
B-24の放った爆弾が、弾火薬庫付近にまで火災を起こさせ、引火誘爆したのである。
遅れて、腹に応える爆発音が、宮殿にまで聞こえた。
あまりの突然の出来事に、バーマント皇は呆然としていた。
しばらく経って、南東の空から1群の航空機がやってきた。
その航空機部隊は、轟音を轟かせながら、傍若無人にも首都上空を横切っていった。
そして錬兵場の上空に到達すると、すぐさまこれを攻撃し、施設群をあっという間に壊滅させてしまった。

施設群が壊滅するまでわずか26分、まるで演習のような鮮やかさで次々と施設に爆弾を叩き込み、
機銃弾を撃ち込んでいった。
さんざん暴れまわった米軍機の編隊は、再び編隊を組んで来た方角に帰っていった。
バーマント皇はその間、ずーっと立ち尽くしたままだった。

この日、バーマント公国の首都、ファルグリンは米軍の空襲によって要塞、錬兵場が壊滅してしまった。
要塞西、東棟はどちらも被害甚大で、西棟で戦死218人、負傷2890人。
東棟で戦死1089人、負傷4000人を出した。
ダムはB-25のスキップボミングで崩落し、貯蔵されていた水はほとんどが下流に流れていった。
錬兵場は猛烈な銃爆撃を受けて全滅した。
この空襲のあと、ファルグリン市内は一時パニックに陥り、
各種のデマも飛び交い、軍や官憲はそれの対応に丸1日費やすことになる。
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