自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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大陸暦1098年 5月4日午後2時 マーシャル諸島メジュロ環礁
第5艦隊旗艦インディアナポリスの作戦室では、第5艦隊の幕僚らが額を集めて
これまでの情報を分析していた。
「第1郡の謎の大陸発見、第2任務郡の巨大生物との交戦。この他の情報を見てもこれで
異世界に飛ばされたことは明らかです。」
通信参謀のアームストロング中佐が言った。
「まだ第3、第4任務郡からは連絡は入っておりませんが、このまま機動部隊を現場海域に
留めると第2、第3の巨大生物が機動部隊に襲い掛かる可能性があります。」
「ふむ。これでわれわれは八方塞がりとなったわけか。事実は小説よりも奇なりだな。」
スプルーアンス大将は腕組みをしながらそう呟いた。
「本国がなくなったと言うことは補給の問題があります。これまでは膨大な物資をハワイや
合衆国本土から輸送し、このマーシャルやギルバートと言った拠点に備蓄してきました。」
兵站参謀のバートン・ビックス大佐が陰鬱そうな表情で言い始める。
「私が分析したところ、このマーシャル諸島には来るべきマリアナ侵攻作戦等の上陸作戦のため、
膨大な物資が備蓄されました。その量は、これまでの方法で使い続ければ6ヶ月、長くて8ヶ月
は持ちます。」
「だが、それを過ぎたら・・・・・・・・アウト。」
スプルーアンスの怜悧な声が響くと、作戦室に沈黙が流れた。それはつまり、武器弾薬がある期間
は命の保障はされるが、それを過ぎたらもはや対処不能と言う事なのだ。
ちなみに、これまでの戦法とは地上戦における絨毯爆撃や猛砲撃といった物量にものを言わせる
攻撃方法である。
マーシャルは、後方兵站基地としても機能しているため、このように武器弾薬が豊富にあるのである。
もちろん食料品やその他の物資も同様だ。

だが、裏を返せばそれは普通にやれば6ヶ月、頑張っても8ヶ月しか使いのばしが
出来ないと言うことだ。
武器弾薬は節約できる。備蓄重油や航空燃料も使い方を制限すればだいぶ使い伸ばしはできる。
だが、問題は食料である。この6ヶ月という数字は食料があってこその数字である。
普通に3食つきなら6ヶ月、2食にしたら8ヶ月ということなのだ。周りの海からは魚なども
釣れるかもしれないからこの6、8ヶ月と言う数字も伸びるだろうが、それでも上陸部隊、艦隊将兵、
マーシャルに駐留する陸軍航空隊、基地隊員は合計で14万人を下らない。いずれ飢餓状態に
陥るのは火を見るよりも明らかであった。
「畜生・・・・どこの馬鹿がこんな世界に呼んだんだ。」
参謀長のデイビス少将が怒りに体をわななかせながら言った。
「こっちはこれから決戦に向かおうとしていたのに、それを無しにしたばかりか、逆に補給
不足に陥らせて私達を飢え死にさせようとしている・・・・・こんな馬鹿な話があるかぁ!?」
彼はそう叫ぶと、頭を抱えた。
「しかしこれは事実です。事実は受け止めねばなりません。私だって参謀長と同じです。」
作戦担当のフォレステル大佐がなだめるように言う。
「何か打開策はあるはずです。まずはそれを考えましょう。」
「・・・・・まあ、確かにそうではあるな。」
デイビスは顔をあげた。
「まずはこれまでの情報を洗い直して、これからの対策をたてよう。それから
第58任務部隊に帰還命令を伝えよ。機動部隊は燃料を食うからな。」
スプルーアンスはそう言うと、今度は打開策について話を始めた。

大陸暦1098年 5月5日午後6時ロタ半島の港町シュリングル
港町シュリングルは戦時中にも関わらずに活気に満ちていた。シュリングルはヴァルキュレア王国
建国以来、常に王国の海運業の中心となってきた。
人口は40万を超える大都市で、主に漁業や海運業が盛んな町として広く知られている。だが、裏には
わいろなどの汚職や窃盗、強盗などといった犯罪も起きている。
そんな町に1台の馬車がやってきた。馬車は慌しく中心街を過ぎると、港に近い所にある豪邸に入っていった。
その豪邸は、シュリングル一の海運業者、トラビレス海運協会会長の家だった。

邸宅の玄関前には3人の人物が待っていた。馬車は家のドアの前に止まった。フランクス将軍が馬車の扉を開け、
先に出た。
「フランクス、久しぶりじゃないか!元気にしていたか!」
真ん中のカイゼル髭を生やした色白の男が、笑みを浮かべてフランクス将軍に声をかけた。この人がバベル・トラビレス。
トラビレス海運協会の会長である。
「おう、トラビレス元気しとったか。10年ぶりだな。見ないうちにすっかり立派になったな!」
2人は満面の笑みを浮かべると、互いに抱き合い、久しぶりの再会を喜んだ。
実はトラビレス会長とフランクス将軍は元はこの町で生まれ育ち、共に兵隊の道を歩んだ戦友だった。15年前に
騎兵大隊長で軍歴を終えたバベルは、実家の海運業を引き継いだ。
彼は、当時潰れかけていた父の海運会社を見事な手腕で立ち直らせ、今ではシュリングル一の海運会社に育て上げた。
会社再建中の彼が、部下からは神がかりみたいだと言われたことから、彼は「神懸りのバベル」というあだ名を頂戴していた。
「どうだ?会社の運営は?」
「いまの世の中じゃ、すっかり駄目だね。バーマントの馬鹿共のお陰でどこの会社も経営が行き詰まりかけている。昨日だって
近くを通りかかった別の会社の輸送船がうちの会社の船が燃えているところ見つけたよ。」
「なに?まさか、バーマント軍の通商破壊船に?」
「ああ、そうだ。積荷の上物の剣が船ごと海底に叩き込まれた。前線じゃ粗末な剣しかないと聞いたが?」
フランクスは表情をくらませて頷いた。
「うん。品質が悪いせいで、あちらこちらでポキポキ折れやがるし、切れ味もいまいちだ。」
「そうか・・・・・全く、神は俺達を見放したんだろうかねぇ。」
バベルは自嘲気味に笑った。彼はもう戦局は絶望的になりつつあると感じていた。
「まあ、立ち話もなんだ。中に入らんか?」
バベルはフランクスを屋敷の中に招いた。

「ちょっと待ってくれ、まだ馬車の中に人がいるんだ。おい、出て来いよ。」
彼は馬車の中に声をかけた。中からは若い女性2人に男性1人が出てきた。
「紹介する。この背の高いお嬢さんがレイム・リーソン。魔術師、まあ一般に言われている魔法使いだ。
この眼鏡の女の人がリリア・フレイド、この人がマイント・ターナーだ。この2人も同じく魔術師だ。」
3人はバベルに一礼した。バベルもよろしくと言って一礼した。
一行はバベルの屋敷に招きいれられた。フランクスらは屋敷に入ると、応接室に招かれた。最後にバベルが
席につくと、彼らに質問してきた。
「2週間前に領主様から聞いたが、君達は魔法で何かを召喚する計画に携わっていたようだな。なにを召喚したんだ?」
レイムがこれに答えた。
「島です。私達は強大な戦力が居座る異世界の島を召喚しようとしました。召喚方法は私達で試行錯誤を重ねながら決め、
昨日の未明、計画を実行しました。計画は成功しました。成功するときには何かの紋章がこの腕にでるのです。」
彼女は左腕の袖をまくりあげ、何かの紋章を見せた。それは船のような物が移っていた。しかし船にしては甲板が平べったい
ような印象がある。
「召喚した最大の戦力のシルエットがこのように浮き出るのです。失敗した場合は何もありません。召喚には成功しましたが、3人が
過労で倒れました。」
その答えに、バベルは眉をひそめた。
「倒れた?待てよ、当初は6人いるはずだったのに3人しかいないのことに俺は不思議に思っていたのだが、成るほど。倒れて
来れなかったということか。」
「はい。3人は成功時に倒れて、今も意識を失っています。3人は医者の下で治療を行っていますが、助かるかどうか・・・」
「召喚時には相当な体力を削られます。3人は優秀な魔道師ではありましたが、同時に体力面に不安があったのです。ですが、彼らは
祖国の危機の前に我らだけが参加しないことは納得できないと言い、この召喚計画に参加したのです。」
補足にマイント・ターナーが付け加えた。
「そうだったのか・・・・リーソンさん。あんたもいい部下を持ったな。」
バベルは感慨深げに彼女に言った。
「部下はまだ意識を失っていると言ったな。その部下が無事に復帰できるように私も祈っておくよ。」
「そういえば、聞きたいことがある。」

フランクスが本題に切り替えた。
「ここ2日の間に、何か変わったことは無いか?変な島を見たとか。」
「島か・・・・・あっ。」
彼は思い当たることがあるのか、表情を変えた。
「そういえば、昨日の朝だったかな。このシュリングルの町の空を見たことも無いのが
飛んでいたな。」
「見たことも無いのだと?」
「ああ、なんと言ったらいいかな。」
彼は頭を掻きながら、昨日見た不思議な事を思い出した。
「鳥にしてはやけに高い所を飛ぶなと思ったんだ。確か音も鳴っていたな。ゴオォォーとい
う地鳴りなのかわけの分からん音が。それは確か南東の方角から来たな。」
「南東?・・・・・・リーソン。地図を見せてくれ。召喚したものが現れる予定の。」
フランクスに言われ、彼女は懐から地図を取り出した。その地図はロタ半島から離れた南東の
海域に罰印が書かれていた。それは今回、召喚した物が現れる予定地だった。
「この距離は・・・・・ざっと見ても1000マイル以上はあるな。快速船で行っても3日はかかる
距離だ。」
この時代の快速船は時速が15ノット出ればいいほうで、キロに直すと27キロである。風の有無に
作用されるが、一日に約680キロ航行できる。
「もしかして、この地点に行くというのか?」
「ああ。今日はな。おまえんとこの快速船を1隻貸してもらいたくてここに来たんだ。」
「本当かおい。」
「ああ、本当だとも。これはこのヴァルキュレアの存亡に関わる事なんだ。その為にも、この町
一番の有力者であるお前に協力してもらいたいんだ。」
彼は必死にバベルを説いた。バベルは複雑な表情を浮かべた。1000マイル以上の船旅は決して
楽なものではない。それに、海には少ないながらも凶暴な巨大生物がいる。
襲われないとは言い切れないが、この国の存亡という言葉が、彼の心を動かした。
「いきなりのことで、俺も戸惑っている。だが、俺はこの町で育ってきた。この愛する町がバーマントの侵略者共
に踏みにじられるには耐えられんな。よし。船を出してやる。優秀な船乗りもつけてやるよ。」
彼は意を決した表情で口を開いた。その言葉に、一同に安堵の色が浮かんだ。バベルが断る思っていたからである。
「ありがとう。恩に着る。」
フランクスは笑顔を浮かべて彼に握手を求めた。
「なあに、気にするな。貴様と俺は同じ鍋の飯を食った仲じゃないか。困ったときはお互い様さ。」
バベルは笑いながら握手を握った。2人の握手は力強く交わされた。
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