9月9日 午後9時 エイレーンの森
東方軍集団の司令官であるルーゲラー騎士元帥は、しきりに時間を気にしていた。
この日、バーマント軍の東方軍集団は、7万以上の大兵力を注ぎ込んで、米軍3個師団が守る防衛線を攻撃した。
だが、航空支援のないバーマント地上軍は非常に苦しい戦いを強いられた。
米機動部隊、陸軍航空隊、海兵隊航空隊の戦闘機、爆撃機は入れ替わり、立ち代り襲い掛かってきた。
そして航空攻撃に数を減らされながらも、やっとのことで米軍陣地にたどり着いた部隊にも
猛烈な砲撃、弾幕射撃が待ち受けていた。
苦闘5時間の末、7万の突撃部隊はあっけなく壊滅してしまった。
あまりの損害に驚いたルーゲラー元帥は昼間の攻撃を中止し、夜戦で新たに勝負を決めようと考えた。
理由は敵機の行動が無くなるからである。
夜戦の開始時刻は9時20分。攻撃部隊は新たに到着した第16軍を中心に行われる。
第16軍は4個師団が全て騎兵と言う、機動力に長けた軍で、過去に所属していた
グランスプ軍団でも数々の戦果を収めている。
「第16軍を中心に野戦を行えば、今度こそ、敵異世界軍陣地を全て突破できる。」
ルーゲラーはそう確信している。
何しろ、圧倒的不利な状況で戦った昼間の味方部隊も、最終的には米軍陣地に突入して少なからぬ被害を与えている。
航空機の支援が出来にくい夜間ならば、戦果は格段に上がるだろう。
攻撃中止の時は憂鬱そうな表情を浮かべていたルーゲラーは、今では元の自信に満ちた表情に戻っている。
「早く攻撃が待ち遠しいですな。」
参謀長が軽い口調で声をかけてきた。
「うむ。今度こそ、我が軍自慢の騎兵軍団で目に物を見せてやるわ。」
東方軍集団の司令官であるルーゲラー騎士元帥は、しきりに時間を気にしていた。
この日、バーマント軍の東方軍集団は、7万以上の大兵力を注ぎ込んで、米軍3個師団が守る防衛線を攻撃した。
だが、航空支援のないバーマント地上軍は非常に苦しい戦いを強いられた。
米機動部隊、陸軍航空隊、海兵隊航空隊の戦闘機、爆撃機は入れ替わり、立ち代り襲い掛かってきた。
そして航空攻撃に数を減らされながらも、やっとのことで米軍陣地にたどり着いた部隊にも
猛烈な砲撃、弾幕射撃が待ち受けていた。
苦闘5時間の末、7万の突撃部隊はあっけなく壊滅してしまった。
あまりの損害に驚いたルーゲラー元帥は昼間の攻撃を中止し、夜戦で新たに勝負を決めようと考えた。
理由は敵機の行動が無くなるからである。
夜戦の開始時刻は9時20分。攻撃部隊は新たに到着した第16軍を中心に行われる。
第16軍は4個師団が全て騎兵と言う、機動力に長けた軍で、過去に所属していた
グランスプ軍団でも数々の戦果を収めている。
「第16軍を中心に野戦を行えば、今度こそ、敵異世界軍陣地を全て突破できる。」
ルーゲラーはそう確信している。
何しろ、圧倒的不利な状況で戦った昼間の味方部隊も、最終的には米軍陣地に突入して少なからぬ被害を与えている。
航空機の支援が出来にくい夜間ならば、戦果は格段に上がるだろう。
攻撃中止の時は憂鬱そうな表情を浮かべていたルーゲラーは、今では元の自信に満ちた表情に戻っている。
「早く攻撃が待ち遠しいですな。」
参謀長が軽い口調で声をかけてきた。
「うむ。今度こそ、我が軍自慢の騎兵軍団で目に物を見せてやるわ。」
彼は居丈高にそう言った。
その直後、窓の外から青白い光が差し込んできた。
「ん?何だ?」
不審に思った参謀長が首をかしげる。
「敵の飛空挺の攻撃か。」
ふと、ルーゲラーはそう思った。
敵の飛空挺は照明弾の明かりを元に、森に空襲をしかけるのだろう。
「ふん。上空からは下の様子が見えないのに、どうやって狙うのだ?」
彼は米軍の攻撃のやり方に対して、嘲笑を浮かべる。
「司令官!敵の飛空挺が照明弾を落としました!」
「わかっておる。だが、ここは鬱蒼とした森に覆われた森の中だ。爆弾を落としても正確には狙えまい。」
微笑みながらそう言う。それから20秒立った時、何かの空気を切るような音が聞こえた。
「この音」
最後まで言い切ろうとした瞬間、ドガーン!という腹に応えるような音が鳴った。
衝撃でテーブルがガタガタ揺れる。
「な、何だ!?」
幕僚の1人が仰天した表情でそう喚いた。その直後、通信兵が血相を変えた表情で入ってきた。
「ルーゲラー司令官!ザラーク要塞から緊急信です。内容は、敵軍艦10隻現れ、以上です!」
「それだけか?」
「はい。恐らく、発信中に戦死したものと思われます。」
その時、シュウウゥーという音が聞こえ、南側のほうからドドーン!という雷が落下したような音が鳴り響いた。
その直後、窓の外から青白い光が差し込んできた。
「ん?何だ?」
不審に思った参謀長が首をかしげる。
「敵の飛空挺の攻撃か。」
ふと、ルーゲラーはそう思った。
敵の飛空挺は照明弾の明かりを元に、森に空襲をしかけるのだろう。
「ふん。上空からは下の様子が見えないのに、どうやって狙うのだ?」
彼は米軍の攻撃のやり方に対して、嘲笑を浮かべる。
「司令官!敵の飛空挺が照明弾を落としました!」
「わかっておる。だが、ここは鬱蒼とした森に覆われた森の中だ。爆弾を落としても正確には狙えまい。」
微笑みながらそう言う。それから20秒立った時、何かの空気を切るような音が聞こえた。
「この音」
最後まで言い切ろうとした瞬間、ドガーン!という腹に応えるような音が鳴った。
衝撃でテーブルがガタガタ揺れる。
「な、何だ!?」
幕僚の1人が仰天した表情でそう喚いた。その直後、通信兵が血相を変えた表情で入ってきた。
「ルーゲラー司令官!ザラーク要塞から緊急信です。内容は、敵軍艦10隻現れ、以上です!」
「それだけか?」
「はい。恐らく、発信中に戦死したものと思われます。」
その時、シュウウゥーという音が聞こえ、南側のほうからドドーン!という雷が落下したような音が鳴り響いた。
「戦艦を突っ込ませる?」
インディアナポリスの司令部幕僚は、誰もが素っ頓狂な声を上げた。
「そうだ。」
スプルーアンスは、地図のとある部分を指差した。
そこは、サイフェルバン南西部にあるザラーク湾である。
「ここザラーク湾は、幅が約2マイルある。潜水艦部隊の調査によると、
水深も湾から500メートル部分までは大型艦が停泊できる深さがある。」
「しかし、このザラーク湾の西側には要塞砲があります。我々はここを叩くにしても、
戦略的な価値はないからここはパスしていましたが、この要塞には70~200門の砲台があり、
近づくのは少々危ないような気がします。」
フォレステル大佐が異を唱える。
「私も同感です。ザラーク要塞には7センチから13センチ、大きいものでは26.5センチという
大型の要塞砲も存在します。いくら戦艦を突っ込ませても、無傷ではすまないと思われます。」
レイムも待ったをかける。しかし、スプルーアンスの意は硬かった。
「では、諸君らは地上軍の兵が、バーマント兵の凶刃に倒れる事を望むのかね?」
スプルーアンスは、その怜悧な双眸で周りを見回した。
作戦室の中は、雰囲気が凍りついたように静まり返る。
「確かに、正攻法もいいだろう。しかし、戦いはとは常に流動的なものだ。
被害に恐れをなした敵軍の司令官が攻撃を一旦中止して、航空作戦の取れにくい
夜間に地上部隊を突っ込ませるかもしれない。我が地上軍は優秀だし、敵に屈しないだろう。
だが、味方にも多大な損害が出るに違いない。」
インディアナポリスの司令部幕僚は、誰もが素っ頓狂な声を上げた。
「そうだ。」
スプルーアンスは、地図のとある部分を指差した。
そこは、サイフェルバン南西部にあるザラーク湾である。
「ここザラーク湾は、幅が約2マイルある。潜水艦部隊の調査によると、
水深も湾から500メートル部分までは大型艦が停泊できる深さがある。」
「しかし、このザラーク湾の西側には要塞砲があります。我々はここを叩くにしても、
戦略的な価値はないからここはパスしていましたが、この要塞には70~200門の砲台があり、
近づくのは少々危ないような気がします。」
フォレステル大佐が異を唱える。
「私も同感です。ザラーク要塞には7センチから13センチ、大きいものでは26.5センチという
大型の要塞砲も存在します。いくら戦艦を突っ込ませても、無傷ではすまないと思われます。」
レイムも待ったをかける。しかし、スプルーアンスの意は硬かった。
「では、諸君らは地上軍の兵が、バーマント兵の凶刃に倒れる事を望むのかね?」
スプルーアンスは、その怜悧な双眸で周りを見回した。
作戦室の中は、雰囲気が凍りついたように静まり返る。
「確かに、正攻法もいいだろう。しかし、戦いはとは常に流動的なものだ。
被害に恐れをなした敵軍の司令官が攻撃を一旦中止して、航空作戦の取れにくい
夜間に地上部隊を突っ込ませるかもしれない。我が地上軍は優秀だし、敵に屈しないだろう。
だが、味方にも多大な損害が出るに違いない。」
スプルーアンスの言葉に、皆が真剣に聞き入っている。
「それを未然に防ぐためにも、敵の指揮を落とす必要があるのだ。
今回、なぜ私が戦艦を突っ込ませようとしたのか、感付いているものもいるかもしれんが」
スプルーアンスはコンパスを取り、ザラーク湾を中心にして円を描いた。
その大きな円は、エイレーンの森も範囲内に入っている。
「これは、我が戦艦の射程距離、22マイルの範囲内だ。範囲内には、我が3個師団に攻撃を
仕掛けたと思われる、突撃部隊の出発位置も入っている。我々はこの、敵軍の司令部が駐屯している
エイレーンの森を、艦砲射撃で叩き潰す。航空機でやったほうがいいと、諸君らは思うだろう。
しかし、リーソン魔道師が言うように、奥は鬱蒼とした森に覆われている。
それでは爆撃しても、効果が上がらないだろう。それならば、軍艦の砲弾を撃ち込むしかない。」
「榴弾砲はどうです?ロングトムなら、森を狙えると思いますが。」
「確かにそうと思うだろう。だが、ロングトムの6インチ砲は榴弾だ。
榴弾では木々に当たっても上で爆発してしまう。だが、分厚い装甲を打ち抜くように作られている、
我が戦艦の主砲弾なら効果はもっと上がるはずだ。」
「なるほど・・・・確かに。」
デイビス少将は頷く。その後、色々議論が交わされた末、戦艦部隊のザラーク湾突入が決定された。
「それを未然に防ぐためにも、敵の指揮を落とす必要があるのだ。
今回、なぜ私が戦艦を突っ込ませようとしたのか、感付いているものもいるかもしれんが」
スプルーアンスはコンパスを取り、ザラーク湾を中心にして円を描いた。
その大きな円は、エイレーンの森も範囲内に入っている。
「これは、我が戦艦の射程距離、22マイルの範囲内だ。範囲内には、我が3個師団に攻撃を
仕掛けたと思われる、突撃部隊の出発位置も入っている。我々はこの、敵軍の司令部が駐屯している
エイレーンの森を、艦砲射撃で叩き潰す。航空機でやったほうがいいと、諸君らは思うだろう。
しかし、リーソン魔道師が言うように、奥は鬱蒼とした森に覆われている。
それでは爆撃しても、効果が上がらないだろう。それならば、軍艦の砲弾を撃ち込むしかない。」
「榴弾砲はどうです?ロングトムなら、森を狙えると思いますが。」
「確かにそうと思うだろう。だが、ロングトムの6インチ砲は榴弾だ。
榴弾では木々に当たっても上で爆発してしまう。だが、分厚い装甲を打ち抜くように作られている、
我が戦艦の主砲弾なら効果はもっと上がるはずだ。」
「なるほど・・・・確かに。」
デイビス少将は頷く。その後、色々議論が交わされた末、戦艦部隊のザラーク湾突入が決定された。
午後8時40分 ザラーク要塞
ここザラーク要塞は、3年前にヴァルレキュア軍の侵攻に備えて建造された施設だ。
この要塞は、ザラーク湾西側の断崖を削って作られており、岩肌から多くの大砲が、
来るべき外敵に備えて海上を睨んでいる。
ザラーク要塞の真ん中側、13センチ砲の2番砲を受け持つ、ジィルウッド騎士軍曹は、
あくびをかいていた。
「敵の野郎、内陸ばかり攻撃してこっちには見向きもしねえぜ。」
傍らにいる同僚が、皮肉そうな口調で言ってくる。
「暇だよな~。」
「全くだ。それとも、俺達を恐れて向かってこないんじゃないのか?」
「だとしたら、敵は腰抜けだな」
そう言うと、2人はハッハッハと笑いあった。7月のサイフェルバン攻略戦の時には、
米艦隊はこの要塞にも来ると、何度も現地指揮官に言われていた。
だが、待てども待てども、敵は全く現れなかった。
そればかりか、敵異世界軍はこの要塞を無視して、サイフェルバンの攻略を推し進めた。
サイフェルバンが占領された8月上旬には、この要塞に配置されていた9センチ砲30門が東方軍集団に回されてしまった。
何人かは反対の意見が出たものの、
「どうせ敵はこっちには見向きもしていないんだ。持っていくのなら全て持っていくがいいさ。」
と、ジィルウッド軍曹は疲れたような口調でそう言ってきた。
そして現在、敵も全く来ないこの要塞で、彼らは暇な警戒任務についている。
ここザラーク要塞は、3年前にヴァルレキュア軍の侵攻に備えて建造された施設だ。
この要塞は、ザラーク湾西側の断崖を削って作られており、岩肌から多くの大砲が、
来るべき外敵に備えて海上を睨んでいる。
ザラーク要塞の真ん中側、13センチ砲の2番砲を受け持つ、ジィルウッド騎士軍曹は、
あくびをかいていた。
「敵の野郎、内陸ばかり攻撃してこっちには見向きもしねえぜ。」
傍らにいる同僚が、皮肉そうな口調で言ってくる。
「暇だよな~。」
「全くだ。それとも、俺達を恐れて向かってこないんじゃないのか?」
「だとしたら、敵は腰抜けだな」
そう言うと、2人はハッハッハと笑いあった。7月のサイフェルバン攻略戦の時には、
米艦隊はこの要塞にも来ると、何度も現地指揮官に言われていた。
だが、待てども待てども、敵は全く現れなかった。
そればかりか、敵異世界軍はこの要塞を無視して、サイフェルバンの攻略を推し進めた。
サイフェルバンが占領された8月上旬には、この要塞に配置されていた9センチ砲30門が東方軍集団に回されてしまった。
何人かは反対の意見が出たものの、
「どうせ敵はこっちには見向きもしていないんだ。持っていくのなら全て持っていくがいいさ。」
と、ジィルウッド軍曹は疲れたような口調でそう言ってきた。
そして現在、敵も全く来ないこの要塞で、彼らは暇な警戒任務についている。
「そういえば、俺たちは近く、東方軍集団に編入されるらしいぞ。」
「それは本当か?」
ジィルウッドはそう質問する。
「ああ。なんでも、3時間前に東方軍集団の参謀が来て、ここの大砲を
全て取っ払って急増の砲兵軍団にするそうだ。」
「へえ~、そいつは面白そうだな。俺は普段から、調子に乗っているアメリカ軍とやらが
気にいらねえんだ。そうか、砲兵軍団か。」
彼はうんうんと頷きながらそう呟いた。この噂はあちらこちらで広まっている。
退屈な要塞任務に辟易としていた彼らだが、やっと自分達にも働きどころが出来たか、と満足していた。
「それなら、大砲で敵異世界軍を吹飛ばせるな。で、準備はどれぐらいかかるかな?」
「さあなあ。まあ短くても3週間はかかるんじゃないか?長くても1ヶ月ぐらいだな。」
「なるほど。実戦が楽しみだな。」
ジィルウッドはにやりと笑みを浮かべた。
その時、遠くから何かの音が聞こえてきた。飛空挺が真上を通り過ぎていく音である。
何だ?と、誰もが思った時、いきなり上空に青白い閃光が走った。その光は、ゆらゆらときらめいている。
「照明弾!?」
彼はすかさずそう思った。その時、
「海上に不審船!距離およそ、9000!」
「それは本当か?」
ジィルウッドはそう質問する。
「ああ。なんでも、3時間前に東方軍集団の参謀が来て、ここの大砲を
全て取っ払って急増の砲兵軍団にするそうだ。」
「へえ~、そいつは面白そうだな。俺は普段から、調子に乗っているアメリカ軍とやらが
気にいらねえんだ。そうか、砲兵軍団か。」
彼はうんうんと頷きながらそう呟いた。この噂はあちらこちらで広まっている。
退屈な要塞任務に辟易としていた彼らだが、やっと自分達にも働きどころが出来たか、と満足していた。
「それなら、大砲で敵異世界軍を吹飛ばせるな。で、準備はどれぐらいかかるかな?」
「さあなあ。まあ短くても3週間はかかるんじゃないか?長くても1ヶ月ぐらいだな。」
「なるほど。実戦が楽しみだな。」
ジィルウッドはにやりと笑みを浮かべた。
その時、遠くから何かの音が聞こえてきた。飛空挺が真上を通り過ぎていく音である。
何だ?と、誰もが思った時、いきなり上空に青白い閃光が走った。その光は、ゆらゆらときらめいている。
「照明弾!?」
彼はすかさずそう思った。その時、
「海上に不審船!距離およそ、9000!」
のぞき穴から海上を見張っていた見張りが、突然不審船発見を報告してきた。
「不審船だと?なぜこんなところに・・・・・もしや、異世界軍!?」
彼がそういった直後、1隻の不審船から閃光が走った。
しばらくすると、600メートル南側の第1砲台群の付近から爆発音と衝撃が伝わった。
「敵だ!敵がやってきたぞ!おい、砲撃の準備だ、急げ!!」
彼は慌てて部下に砲戦の準備をさせた。普段から訓練しているため、動きは良い。
だが、準備している間にも、第1砲台群の付近に敵の砲撃が殺到しつつある。
準備開始から1分後、13センチ砲に弾が込められた。
「装填よし!」
ジィルウッド軍曹は射手兼、照準手を勤めている。照準の中に黒々とした軍艦が見える。
2つの砲塔らしきものと、その後ろに先鋭的な艦橋、そして2本の煙突が見える。
ごつごつとしつつも、スマートで、力強さを感じさせる。
軍曹は知らなかったが、その軍艦は重巡洋艦のニューオーリンズだった。
「照準よし!発射!」
彼は引き金を引いた。ズドォーン!という轟音と共に砲弾が飛び出した。
弾はニューオーリンズの手前、1000メートルに落下した。
他の砲台からも砲撃が始まった。先頭艦のニューオーリンズに弾着が集中する。
だが、どれもこれも外れだった。1発もかすってすらいない。
「くそ、ハズレだ!次弾装填!」
「敵軍艦は10隻以上、敵艦からの砲撃は熾烈!」
この時、米艦隊はニューオーリンズを先頭に重巡洋艦ミネアポリス、サンフランシスコ、
軽巡洋艦のマイアミ、ヒューストン、ビンセンズが主に砲撃を行っている。
6巡洋艦の後方には、戦艦インディアナ、アラバマ、ノースカロライナの3戦艦が続航している。
「不審船だと?なぜこんなところに・・・・・もしや、異世界軍!?」
彼がそういった直後、1隻の不審船から閃光が走った。
しばらくすると、600メートル南側の第1砲台群の付近から爆発音と衝撃が伝わった。
「敵だ!敵がやってきたぞ!おい、砲撃の準備だ、急げ!!」
彼は慌てて部下に砲戦の準備をさせた。普段から訓練しているため、動きは良い。
だが、準備している間にも、第1砲台群の付近に敵の砲撃が殺到しつつある。
準備開始から1分後、13センチ砲に弾が込められた。
「装填よし!」
ジィルウッド軍曹は射手兼、照準手を勤めている。照準の中に黒々とした軍艦が見える。
2つの砲塔らしきものと、その後ろに先鋭的な艦橋、そして2本の煙突が見える。
ごつごつとしつつも、スマートで、力強さを感じさせる。
軍曹は知らなかったが、その軍艦は重巡洋艦のニューオーリンズだった。
「照準よし!発射!」
彼は引き金を引いた。ズドォーン!という轟音と共に砲弾が飛び出した。
弾はニューオーリンズの手前、1000メートルに落下した。
他の砲台からも砲撃が始まった。先頭艦のニューオーリンズに弾着が集中する。
だが、どれもこれも外れだった。1発もかすってすらいない。
「くそ、ハズレだ!次弾装填!」
「敵軍艦は10隻以上、敵艦からの砲撃は熾烈!」
この時、米艦隊はニューオーリンズを先頭に重巡洋艦ミネアポリス、サンフランシスコ、
軽巡洋艦のマイアミ、ヒューストン、ビンセンズが主に砲撃を行っている。
6巡洋艦の後方には、戦艦インディアナ、アラバマ、ノースカロライナの3戦艦が続航している。
ニューオーリンズはしょっぱなから9門全てを使って、断崖沿いの砲台群を撃ちまくった。
最初は見当ハズレの所に命中したが、2斉射目で7センチ砲群のど真ん中に命中。
3斉射は砲弾の1発が砲戦用の穴から進入して施設内部で炸裂、この砲台の弾薬庫が誘爆起こした。
これに追い討ちをかけるかのように、残る5巡洋艦も砲弾を叩きつける。
特に激しく撃ちまくったのが、クリーブランド級軽巡の属する3艦で、6インチ砲12門を急斉射で相当数を発砲している。
普通なら20秒おきに斉射だが、急斉射になると、15~10秒おきの発砲となる。
マイアミ、ヒューストン、ビンセンズが発砲を開始してから5分が経ったが、3艦だけで合計600発を第1砲台群に叩き込んでいた。
それに両脇を固める駆逐艦も砲撃に加わったため、第1砲台群はたちまち、多数の砲弾を浴びせられる事になった。
そして砲戦開始から7分後に、第1砲台群70門の各種大砲は、一方的に撃ちまくられて壊滅してしまった。
「第1砲台群が壊滅しました!」
「早すぎるぞ!!」
「敵の大砲の発射速度が速いんだ。これは大変な事になったぞ!」
要塞内の兵は、半ば恐慌状態に陥っていた。
「ぐずぐずするな!さっさと弾を込めろ!」
ジィルウッド軍曹は先ほどからのそのそとしか動かない部下達を叱咤した。
そして8発目を放った。
砲弾はニューオーリンズの中央部に命中した。
「やった!命中だぞ!」
最初は見当ハズレの所に命中したが、2斉射目で7センチ砲群のど真ん中に命中。
3斉射は砲弾の1発が砲戦用の穴から進入して施設内部で炸裂、この砲台の弾薬庫が誘爆起こした。
これに追い討ちをかけるかのように、残る5巡洋艦も砲弾を叩きつける。
特に激しく撃ちまくったのが、クリーブランド級軽巡の属する3艦で、6インチ砲12門を急斉射で相当数を発砲している。
普通なら20秒おきに斉射だが、急斉射になると、15~10秒おきの発砲となる。
マイアミ、ヒューストン、ビンセンズが発砲を開始してから5分が経ったが、3艦だけで合計600発を第1砲台群に叩き込んでいた。
それに両脇を固める駆逐艦も砲撃に加わったため、第1砲台群はたちまち、多数の砲弾を浴びせられる事になった。
そして砲戦開始から7分後に、第1砲台群70門の各種大砲は、一方的に撃ちまくられて壊滅してしまった。
「第1砲台群が壊滅しました!」
「早すぎるぞ!!」
「敵の大砲の発射速度が速いんだ。これは大変な事になったぞ!」
要塞内の兵は、半ば恐慌状態に陥っていた。
「ぐずぐずするな!さっさと弾を込めろ!」
ジィルウッド軍曹は先ほどからのそのそとしか動かない部下達を叱咤した。
そして8発目を放った。
砲弾はニューオーリンズの中央部に命中した。
「やった!命中だぞ!」
ニューオーリンズの艦体に命中弾を認めた彼は、思わず歓声を上げた。
「次だ!急げ!!」
ニューオーリンズも、彼が所属する第2砲台群に向けて射撃を開始した。
時速18ノットの低速で、照明弾に照らされた砲台群に照準を合わす。
9門の8インチ砲が吼えた。
「発射!」
ドーン!という発射音がした直後、猛烈な衝撃が、頑丈な要塞内を激しく揺さぶった。
「3つ隣の13センチ砲台がやられました!」
「畜生、やりたい放題やりやがって!」
ジィルウッドは忌々しげに呟いた。
その時、繰り返し起きたニューオーリンズ付近の弾着に、新たに3つの異なる閃光が走った。
水柱が晴れると、ニューオーリンズは中央部と艦首から黒煙を吹き上げていた。
「敵艦火災発生!ですがまだ健在です!」
「なら健在じゃなくするぞ!」
13センチ砲に弾が込められ、照準を合わせる。そして引き金を引く。
強い衝撃と共に砲弾が放たれる。
要塞側にも次々と命中弾が出て、多くの砲が沈黙に追い込まれている。
軍曹の放った砲弾は、ニューオーリンズの前側の煙突に命中した。
根元で炸裂した砲弾は、あたりを滅茶苦茶に叩き壊して、煙突を右舷側に傾斜させる。
ニューオーリンズも健在な8インチ砲9門を振りかざして、砲撃を続ける。
「敵2番艦にも火災発生!」
集中射撃を受けているのはニューオーリンズとミネアポリスである。
この時点で、ニューオーリンズは6発、ミネアポリスには3発の砲弾が命中している。
「次だ!急げ!!」
ニューオーリンズも、彼が所属する第2砲台群に向けて射撃を開始した。
時速18ノットの低速で、照明弾に照らされた砲台群に照準を合わす。
9門の8インチ砲が吼えた。
「発射!」
ドーン!という発射音がした直後、猛烈な衝撃が、頑丈な要塞内を激しく揺さぶった。
「3つ隣の13センチ砲台がやられました!」
「畜生、やりたい放題やりやがって!」
ジィルウッドは忌々しげに呟いた。
その時、繰り返し起きたニューオーリンズ付近の弾着に、新たに3つの異なる閃光が走った。
水柱が晴れると、ニューオーリンズは中央部と艦首から黒煙を吹き上げていた。
「敵艦火災発生!ですがまだ健在です!」
「なら健在じゃなくするぞ!」
13センチ砲に弾が込められ、照準を合わせる。そして引き金を引く。
強い衝撃と共に砲弾が放たれる。
要塞側にも次々と命中弾が出て、多くの砲が沈黙に追い込まれている。
軍曹の放った砲弾は、ニューオーリンズの前側の煙突に命中した。
根元で炸裂した砲弾は、あたりを滅茶苦茶に叩き壊して、煙突を右舷側に傾斜させる。
ニューオーリンズも健在な8インチ砲9門を振りかざして、砲撃を続ける。
「敵2番艦にも火災発生!」
集中射撃を受けているのはニューオーリンズとミネアポリスである。
この時点で、ニューオーリンズは6発、ミネアポリスには3発の砲弾が命中している。
ニューオーリンズが新たな砲撃を行った、と思った瞬間、これまで以上の水柱が立ち上がった。
第3砲台群の9門の26.5センチ砲が砲撃を行ったのだろう。
水柱が晴れると、ニューオーリンズに異変が起きていた。
なんと、艦前部の前側の砲塔が叩き潰されているではないか!
ニューオーリンズは第1砲塔を敵の大口径砲弾によって叩き潰されており、
左舷を向いていた3門の8インチ砲は、いずれも飴のように捻じ曲げられていた。
「敵は大怪我を負ったぞ!このままいけば叩き沈められるぞ!」
ジィルウッド軍曹は感激した口調で喚いた。
行けるぞ!彼は弾が込められた事を確認すると、ニューオーリンズ向けて新たな射弾を送った。
その直後、ドガーン!という轟音が間近で鳴り響く。
ジィルウッド軍曹は、部下と共に飛び込んできた8インチ砲弾に吹飛ばされてしまい、
何事かと気付く前に、意識は強引にかき消される。
彼の砲台は、誘爆を起こして崩れ去っていった。
第3砲台群の9門の26.5センチ砲が砲撃を行ったのだろう。
水柱が晴れると、ニューオーリンズに異変が起きていた。
なんと、艦前部の前側の砲塔が叩き潰されているではないか!
ニューオーリンズは第1砲塔を敵の大口径砲弾によって叩き潰されており、
左舷を向いていた3門の8インチ砲は、いずれも飴のように捻じ曲げられていた。
「敵は大怪我を負ったぞ!このままいけば叩き沈められるぞ!」
ジィルウッド軍曹は感激した口調で喚いた。
行けるぞ!彼は弾が込められた事を確認すると、ニューオーリンズ向けて新たな射弾を送った。
その直後、ドガーン!という轟音が間近で鳴り響く。
ジィルウッド軍曹は、部下と共に飛び込んできた8インチ砲弾に吹飛ばされてしまい、
何事かと気付く前に、意識は強引にかき消される。
彼の砲台は、誘爆を起こして崩れ去っていった。
重巡洋艦サンフランシスコ艦長のアルア・リットマン大佐は、左前方5000メートル付近で
一際大きな閃光が走ったのを確認した。
「敵要塞、第3砲台群に大口径砲あり!数、約8ないし9!」
その閃光を確認した見張り員が艦橋に報告してきた。
先の被弾で、黒煙を吹き上げるニューオーリンズの周囲に水柱が立ち上がった。
第3砲台群は、7センチ砲8門、13センチ砲12門、26.5センチ砲9門で構成されている。
そのうちの26.5センチ砲9門の砲弾が、一斉にニューオーリンズに襲い掛かってのである。
周囲に上がった水柱の中に、また1つ命中弾の閃光が走った。
この時、26.5センチ砲弾はニューオーリンズの左舷中央部に命中し、第2甲板で炸裂した。
一際大きな閃光が走ったのを確認した。
「敵要塞、第3砲台群に大口径砲あり!数、約8ないし9!」
その閃光を確認した見張り員が艦橋に報告してきた。
先の被弾で、黒煙を吹き上げるニューオーリンズの周囲に水柱が立ち上がった。
第3砲台群は、7センチ砲8門、13センチ砲12門、26.5センチ砲9門で構成されている。
そのうちの26.5センチ砲9門の砲弾が、一斉にニューオーリンズに襲い掛かってのである。
周囲に上がった水柱の中に、また1つ命中弾の閃光が走った。
この時、26.5センチ砲弾はニューオーリンズの左舷中央部に命中し、第2甲板で炸裂した。
この炸裂で中央部の兵員室が滅茶苦茶にされた。
しばらくすると、火災が発生し、区画の周りを炎が蹂躙しようとする。
そこにダーメージコントロールチームが早々と到着し、炎との格闘を始める。
だが、ニューオーリンズは先頭を譲ろうとしない。
健在な6門の8インチ砲を向けて、尚砲撃を続けている。
これを援護するかのように、後続のミネアポリスとサンフランシスコ、
軽巡マイアミ、ヒューストン、ビンセンズも、生き残りがいる第2砲台群に向けて砲撃を続けた。
第2砲台群もまた、敵に負けじと必死に応戦する。
ガーン!という衝撃がサンフランシスコの艦橋を揺さぶった。
お返しだ、と言わんばかりに、9門の8インチ砲が咆哮する。
偵察機が繰り返し投下しる照明弾に、うっすらと断崖に作られた砲台が見える。
その砲身の周囲に砲弾が炸裂する。
「左舷40ミリ機銃座1基破損!それ以外は被害なし!」
「敵砲台、4基沈黙!」
「マイアミに命中弾!」
様々な報告が一気に寄せられる。状況はめまぐるしく変わりつつあった。
第2砲台群は、第1砲台群よりもしたたかであったが、6巡洋艦の8インチ、
6インチの集中射撃を受けてはひとたまりもない。
砲戦開始から20分、第2砲台群は粘ったが、最終的には壊滅してしまった。
「旗艦ニューオーリンズより、砲撃部隊へ、目標、第3砲台群。」
ニューオーリンズから各艦に向けて通信が入る。
ニューオーリンズの砲撃部隊司令官、バーケ少将は、新たな砲撃目標に対して砲戦開始を命じた。
「さて、次はあいつだな。」
しばらくすると、火災が発生し、区画の周りを炎が蹂躙しようとする。
そこにダーメージコントロールチームが早々と到着し、炎との格闘を始める。
だが、ニューオーリンズは先頭を譲ろうとしない。
健在な6門の8インチ砲を向けて、尚砲撃を続けている。
これを援護するかのように、後続のミネアポリスとサンフランシスコ、
軽巡マイアミ、ヒューストン、ビンセンズも、生き残りがいる第2砲台群に向けて砲撃を続けた。
第2砲台群もまた、敵に負けじと必死に応戦する。
ガーン!という衝撃がサンフランシスコの艦橋を揺さぶった。
お返しだ、と言わんばかりに、9門の8インチ砲が咆哮する。
偵察機が繰り返し投下しる照明弾に、うっすらと断崖に作られた砲台が見える。
その砲身の周囲に砲弾が炸裂する。
「左舷40ミリ機銃座1基破損!それ以外は被害なし!」
「敵砲台、4基沈黙!」
「マイアミに命中弾!」
様々な報告が一気に寄せられる。状況はめまぐるしく変わりつつあった。
第2砲台群は、第1砲台群よりもしたたかであったが、6巡洋艦の8インチ、
6インチの集中射撃を受けてはひとたまりもない。
砲戦開始から20分、第2砲台群は粘ったが、最終的には壊滅してしまった。
「旗艦ニューオーリンズより、砲撃部隊へ、目標、第3砲台群。」
ニューオーリンズから各艦に向けて通信が入る。
ニューオーリンズの砲撃部隊司令官、バーケ少将は、新たな砲撃目標に対して砲戦開始を命じた。
「さて、次はあいつだな。」
リットマン大佐は、依然として砲撃を続ける第3砲台群を見つめた。
「照準よし!」
艦橋に報告が入る。一旦休められていた砲が、また再び咆哮した。
8インチ砲24門、6インチ砲36門、護衛駆逐艦の5インチ砲20門が一斉に打ち出される。
そして、後方で戦闘を見守っていた戦艦群もついに砲撃を始めた。
前部主砲塔のみながら、18門の16インチ砲の咆哮は、ザラーク湾を圧した。
砲撃を続ける第3砲台群の断崖に、無数の砲弾が命中する。
その直後に4つの巨大な爆発が沸き起こった。
16インチ砲弾4発が命中したのである。残りは断崖の上で炸裂した。
この第1斉射で、バーマント側は7センチ砲2門、13センチ砲4門、
26.5センチ砲5門を破壊されてしまった。
生き残ったバーマント側も撃ち返す。
射弾は、先頭のニューオーリンズと、2番艦ミネアポリスに降り注いだ。
この頃には、バーマント側も砲の命中精度が上がっており、7センチ砲弾1発、
13センチ砲弾2発がニューオーリンズに、13センチ砲弾2発、26・5センチ砲弾1発がミネアポリスに命中した。
さんざん撃ちまくられたニューオーリンズは、合計で19発の命中弾を受けている。
その中には戦艦クラスの26.5センチ砲弾も3発含まれている。
艦の損害レベルは大破の域に達している。
だが、6門の8インチ砲は健在で、今でも第3砲台群に砲撃を続けている。
「照準よし!」
艦橋に報告が入る。一旦休められていた砲が、また再び咆哮した。
8インチ砲24門、6インチ砲36門、護衛駆逐艦の5インチ砲20門が一斉に打ち出される。
そして、後方で戦闘を見守っていた戦艦群もついに砲撃を始めた。
前部主砲塔のみながら、18門の16インチ砲の咆哮は、ザラーク湾を圧した。
砲撃を続ける第3砲台群の断崖に、無数の砲弾が命中する。
その直後に4つの巨大な爆発が沸き起こった。
16インチ砲弾4発が命中したのである。残りは断崖の上で炸裂した。
この第1斉射で、バーマント側は7センチ砲2門、13センチ砲4門、
26.5センチ砲5門を破壊されてしまった。
生き残ったバーマント側も撃ち返す。
射弾は、先頭のニューオーリンズと、2番艦ミネアポリスに降り注いだ。
この頃には、バーマント側も砲の命中精度が上がっており、7センチ砲弾1発、
13センチ砲弾2発がニューオーリンズに、13センチ砲弾2発、26・5センチ砲弾1発がミネアポリスに命中した。
さんざん撃ちまくられたニューオーリンズは、合計で19発の命中弾を受けている。
その中には戦艦クラスの26.5センチ砲弾も3発含まれている。
艦の損害レベルは大破の域に達している。
だが、6門の8インチ砲は健在で、今でも第3砲台群に砲撃を続けている。
ミネアポリスも7発の砲弾を受けているが、こちらは今しがた、
中央部に26.5センチ砲弾が命中して、大火災が発生している。
しかし、ダメージコントロールチームの決死の消火作業のお陰で、延焼は避けられた。
お返しだとばかりに、米艦隊が砲弾を叩きつける。
8インチ砲は急斉射で20秒~17秒、6インチ砲は15~10秒の発射速度で撃ちまくる。
これに駆逐艦の5インチ砲弾、戦艦の16インチ砲弾も加わるからたまらない。
砲台の中に飛び込んだ砲弾が内部で炸裂し、中の人員もろとも砲を破壊する。
たちまち人員を皆殺しにされてその砲は沈黙を余儀なくされる。
かと思えば、とある砲台は、16インチ砲の爆発で崩落した岩の塊に砲身を叩き折られ、
あっと言う間に戦闘不能に陥ってしまった。
また、とある砲台は、砲弾の連続した絶壁での炸裂に天井の強度が限界に達し、
砲撃を行っている人員の上に何十トンという膨大な崩落が起きて、あっという間にあの世送りとなる。
米艦隊の猛砲撃は、第3砲台群との戦闘開始からわずか10分で、16インチ砲200発、
8インチ砲600発、6インチ砲1700発、5インチ砲も含めると、
合計で4800発以上を第3砲台群に叩き込んだ。
そして第3砲台群からは、2度と発砲炎が見える事はなかった。
中央部に26.5センチ砲弾が命中して、大火災が発生している。
しかし、ダメージコントロールチームの決死の消火作業のお陰で、延焼は避けられた。
お返しだとばかりに、米艦隊が砲弾を叩きつける。
8インチ砲は急斉射で20秒~17秒、6インチ砲は15~10秒の発射速度で撃ちまくる。
これに駆逐艦の5インチ砲弾、戦艦の16インチ砲弾も加わるからたまらない。
砲台の中に飛び込んだ砲弾が内部で炸裂し、中の人員もろとも砲を破壊する。
たちまち人員を皆殺しにされてその砲は沈黙を余儀なくされる。
かと思えば、とある砲台は、16インチ砲の爆発で崩落した岩の塊に砲身を叩き折られ、
あっと言う間に戦闘不能に陥ってしまった。
また、とある砲台は、砲弾の連続した絶壁での炸裂に天井の強度が限界に達し、
砲撃を行っている人員の上に何十トンという膨大な崩落が起きて、あっという間にあの世送りとなる。
米艦隊の猛砲撃は、第3砲台群との戦闘開始からわずか10分で、16インチ砲200発、
8インチ砲600発、6インチ砲1700発、5インチ砲も含めると、
合計で4800発以上を第3砲台群に叩き込んだ。
そして第3砲台群からは、2度と発砲炎が見える事はなかった。
戦艦ノースカロライナは、ザラーク湾の海岸より2000メートル離れた位置で停止した。
そして後続の戦艦、インディアナとアラバマも、それぞれ700メートルの間隔を取って停船した。
停船と言っても、いつでも動き出せるように缶の圧力は高めている。
戦艦群の両脇には、護衛の巡洋艦、駆逐艦が辺りに目を光らせている。
「それにしても、巡洋艦部隊は派手に撃ちまくったな。」
艦長のフロック・サイモン大佐が副長に向かって言う。
「ええ。通信によれば、巡洋艦、駆逐艦部隊は砲弾の残弾が残り少ないようです。」
「そうか・・・・だが、あれだけ巨大な要塞だったんだ。
あんなのを静かにさせておくには、この方法が一番だったのだ。」
今回の作戦で、サイモン大佐は戦艦部隊が先頭に立って前進すると思い込んでいた。
そして後続の戦艦、インディアナとアラバマも、それぞれ700メートルの間隔を取って停船した。
停船と言っても、いつでも動き出せるように缶の圧力は高めている。
戦艦群の両脇には、護衛の巡洋艦、駆逐艦が辺りに目を光らせている。
「それにしても、巡洋艦部隊は派手に撃ちまくったな。」
艦長のフロック・サイモン大佐が副長に向かって言う。
「ええ。通信によれば、巡洋艦、駆逐艦部隊は砲弾の残弾が残り少ないようです。」
「そうか・・・・だが、あれだけ巨大な要塞だったんだ。
あんなのを静かにさせておくには、この方法が一番だったのだ。」
今回の作戦で、サイモン大佐は戦艦部隊が先頭に立って前進すると思い込んでいた。
砲撃部隊司令官のバーケ少将は、巡洋艦部隊を先頭にすると決めた。
彼は疑問に思って彼に聞いてみた。
バーケ少将の言い分によると、戦艦は大口径の大砲を積んではいるが、その分発射速度が遅い。
そうなると敵の集中砲火を一身に受けてしまう。
それよりかは、頑丈な戦艦と比べてやや貧弱だが、発射速度の速い巡洋艦部隊を先に進めて、
砲の発射速度で敵を圧倒したほうが良い。と、バーケ少将は言っていた。
最初、サイモン大佐は不満だったが。結果を見るとバーケ少将の考えが正しかった。
重巡洋艦のニューオーリンズが大破し、ミネアポリスが中破する損害を受けたものの、
バーケ部隊の巡洋艦は、見事に砲戦力で圧倒し、巡洋艦、駆逐艦のみで敵第1、第2砲台群を叩き潰している。
「さすがはソロモン帰り。本国勤務ばかりだった私とは違う、と私は思ったよ。」
「バーケさんは昔からの巡洋艦乗りですからね。」
副長はそう相槌を打つ。彼の言うとおりバーケ少将は、ガダルカナル、ソロモン沖で数々の
海戦を巡洋艦の砲術長として参加している。ヘレナが魚雷で沈没した時も、バーケはヘレナで砲術長を勤めている。
サイモン大佐と副長が話し合っているその時、遠くの陸地から青白い光が浮かび上がった。
双眼鏡で覗いて見ると、下のほうにうっすらとだが、木々が見える。
「左砲戦、距離9マイル。」
「左砲戦、距離9マイル、アイサー!」
復唱の声が上がる。少し時間が経ち、9門の16インチ砲が左舷を向く。
左舷を向くと、それぞれの砲身が生き物のように上下に動く。
彼は疑問に思って彼に聞いてみた。
バーケ少将の言い分によると、戦艦は大口径の大砲を積んではいるが、その分発射速度が遅い。
そうなると敵の集中砲火を一身に受けてしまう。
それよりかは、頑丈な戦艦と比べてやや貧弱だが、発射速度の速い巡洋艦部隊を先に進めて、
砲の発射速度で敵を圧倒したほうが良い。と、バーケ少将は言っていた。
最初、サイモン大佐は不満だったが。結果を見るとバーケ少将の考えが正しかった。
重巡洋艦のニューオーリンズが大破し、ミネアポリスが中破する損害を受けたものの、
バーケ部隊の巡洋艦は、見事に砲戦力で圧倒し、巡洋艦、駆逐艦のみで敵第1、第2砲台群を叩き潰している。
「さすがはソロモン帰り。本国勤務ばかりだった私とは違う、と私は思ったよ。」
「バーケさんは昔からの巡洋艦乗りですからね。」
副長はそう相槌を打つ。彼の言うとおりバーケ少将は、ガダルカナル、ソロモン沖で数々の
海戦を巡洋艦の砲術長として参加している。ヘレナが魚雷で沈没した時も、バーケはヘレナで砲術長を勤めている。
サイモン大佐と副長が話し合っているその時、遠くの陸地から青白い光が浮かび上がった。
双眼鏡で覗いて見ると、下のほうにうっすらとだが、木々が見える。
「左砲戦、距離9マイル。」
「左砲戦、距離9マイル、アイサー!」
復唱の声が上がる。少し時間が経ち、9門の16インチ砲が左舷を向く。
左舷を向くと、それぞれの砲身が生き物のように上下に動く。
「撃ち方準備良し!システムオールグリーン(異常なし)」
彼はふと、この砲撃がバーマントの歴史を変えるきっかけとなるのでは?と思った。
(いや、細かい事は後だ。今は自分の仕事に集中するんだ)
彼は、そう思って振り払った。
「撃ち方はじめえ!」
サイモン大佐は号令した。ドドーン!という音と共に各砲塔の1番砲が咆哮する。
後続のインディアナ、アラバマも交互打ち方で発砲する。
時間を置いて、遥かかなたの森の方向に、オレンジ色の光が広がった。
「第1目標付近に至近4。」
その通信の直後に2番砲が発砲する。
そしてしばらく経って、再び森の方向にオレンジ色の光が広がる。
「第1目標付近に命中4。照準、適正なり。」
観測機から次々と報告が飛び込んでくる。
3番砲が咆哮すると、サイモン大佐は新たな命令を発した。
「一斉撃ち方用意!」
砲がしばらく鳴りを潜める。やがて、調整を終えた16インチ砲9門は、一斉撃ち方を開始した。
ドドドーン!という強烈な轟音と衝撃が、ノースカロライナを揺さぶる。
しばらく経つと、森の方向の光は、一層大きなものとなった。
「第1目標に命中弾多数。森方面から数人の敵兵を確認。敵兵は西に逃走しつつあり。」
観測機パイロットの機械的な声が、艦橋に聞こえた。
彼はふと、この砲撃がバーマントの歴史を変えるきっかけとなるのでは?と思った。
(いや、細かい事は後だ。今は自分の仕事に集中するんだ)
彼は、そう思って振り払った。
「撃ち方はじめえ!」
サイモン大佐は号令した。ドドーン!という音と共に各砲塔の1番砲が咆哮する。
後続のインディアナ、アラバマも交互打ち方で発砲する。
時間を置いて、遥かかなたの森の方向に、オレンジ色の光が広がった。
「第1目標付近に至近4。」
その通信の直後に2番砲が発砲する。
そしてしばらく経って、再び森の方向にオレンジ色の光が広がる。
「第1目標付近に命中4。照準、適正なり。」
観測機から次々と報告が飛び込んでくる。
3番砲が咆哮すると、サイモン大佐は新たな命令を発した。
「一斉撃ち方用意!」
砲がしばらく鳴りを潜める。やがて、調整を終えた16インチ砲9門は、一斉撃ち方を開始した。
ドドドーン!という強烈な轟音と衝撃が、ノースカロライナを揺さぶる。
しばらく経つと、森の方向の光は、一層大きなものとなった。
「第1目標に命中弾多数。森方面から数人の敵兵を確認。敵兵は西に逃走しつつあり。」
観測機パイロットの機械的な声が、艦橋に聞こえた。
午前9時7分、東方軍集団司令部
「弾着は、南5キロ先の第12軍司令部に集中しています!」
伝令の声が聞こえた瞬間、新たな弾着が大地を揺るがした。
「敵は大型艦をザラーク湾に突っ込ませ、ここから我が方の陣地や司令部を狙い撃ちにしています。」
「もしや、あの上空を飛んでいる飛空挺を観測員代わりにしておるのか?」
「恐らくそうでしょう。そうでなければ、あのような命中精度は望めません。」
ルーゲラーは、幕僚達の話を聞くと、絶句した。
米戦艦の砲弾が落ち始めたのは9時ちょうど過ぎからである。
夜戦に向けて綿密な計画を練っていた第12軍司令部に、突然16インチ砲弾が落下してきたのである。
最初は第12軍司令部の500メートル南に落下していた。この突然の砲撃に、第12軍司令部はパニックに陥った。
16インチ砲弾は、硬い森の木々を突っ切り、地上に突き刺さってから1秒ほど後に炸裂した。
弾着点の至近にいた将兵は跡形もなく吹き飛ばされ、遠くに離れていた者でも砲弾の破片や、
木々の破片を受けて絶命するものが相次いだ。
次第に弾着は北にずれ始めた。砲撃開始から6分後に、第12軍司令部の木造建築物
(接収したエルフの村長の家)は1発の16インチ砲弾の直撃を受けた。
何の装甲も施されていない司令部は、一瞬にして木っ端微塵に吹き飛んでしまった。
さらに不運な事に、突然の艦砲射撃に状況をつかめないでいた第12軍司令官も、幕僚共々戦死した。
「報告します!第12軍司令部に敵弾命中!司令部職員はほぼ全員が絶望的です!」
「何だと!?」
ルーゲラーは思わず仰天した。まさか第12軍司令部も戦死するとは思わなかったのである。
「司令官!味方兵の一部が後方に逃げつつあります!」
「何?それはいかん。すぐに戻るように伝えろ!敵前逃亡は死刑に処するぞ!」
彼は物凄い剣幕で伝令兵を睨み付けた。睨まれた伝令兵は、蛇に睨まれた蛙のように縮みこんだ。
「弾着は、南5キロ先の第12軍司令部に集中しています!」
伝令の声が聞こえた瞬間、新たな弾着が大地を揺るがした。
「敵は大型艦をザラーク湾に突っ込ませ、ここから我が方の陣地や司令部を狙い撃ちにしています。」
「もしや、あの上空を飛んでいる飛空挺を観測員代わりにしておるのか?」
「恐らくそうでしょう。そうでなければ、あのような命中精度は望めません。」
ルーゲラーは、幕僚達の話を聞くと、絶句した。
米戦艦の砲弾が落ち始めたのは9時ちょうど過ぎからである。
夜戦に向けて綿密な計画を練っていた第12軍司令部に、突然16インチ砲弾が落下してきたのである。
最初は第12軍司令部の500メートル南に落下していた。この突然の砲撃に、第12軍司令部はパニックに陥った。
16インチ砲弾は、硬い森の木々を突っ切り、地上に突き刺さってから1秒ほど後に炸裂した。
弾着点の至近にいた将兵は跡形もなく吹き飛ばされ、遠くに離れていた者でも砲弾の破片や、
木々の破片を受けて絶命するものが相次いだ。
次第に弾着は北にずれ始めた。砲撃開始から6分後に、第12軍司令部の木造建築物
(接収したエルフの村長の家)は1発の16インチ砲弾の直撃を受けた。
何の装甲も施されていない司令部は、一瞬にして木っ端微塵に吹き飛んでしまった。
さらに不運な事に、突然の艦砲射撃に状況をつかめないでいた第12軍司令官も、幕僚共々戦死した。
「報告します!第12軍司令部に敵弾命中!司令部職員はほぼ全員が絶望的です!」
「何だと!?」
ルーゲラーは思わず仰天した。まさか第12軍司令部も戦死するとは思わなかったのである。
「司令官!味方兵の一部が後方に逃げつつあります!」
「何?それはいかん。すぐに戻るように伝えろ!敵前逃亡は死刑に処するぞ!」
彼は物凄い剣幕で伝令兵を睨み付けた。睨まれた伝令兵は、蛇に睨まれた蛙のように縮みこんだ。
「すぐに各隊に知らせろ!敵前逃亡を企てるものは即しょ」
最後まで言葉が告げなかった。次の瞬間、ダーン!というこれまでにない爆発音が鳴り響いた。
急な轟音と、猛烈な振動に誰もが飛び上がった。
振動で窓ガラスがバリバリガチャーン!と、けたたましい音を立てて砕け散り、
テーブルに置いてあるコップが床に落ちた。
「くそ、おのれえ。異世界軍め、やりたい放題やりよって!」
ルーゲラーは悔しさのあまり、そう喚き散らした。
「閣下!ここも狙われているかもしれません。急いで避難を!」
幕僚の1人が非難を促した。
「隣の小屋には地下室がございます。そこに我らだけでも非難しましょう!閣下が死なれては、
今後の作戦が出来なくなります。」
「うむ・・・・・・」
彼は非難をためらった。ここで非難しては、今までに戦死した部下将兵に申し訳が立たない。
彼はそう思っていたが、幕僚説得に渋々ながらも応じた。
5分後には、弾着は第8軍司令部の付近まで及んでいた。
16インチ砲弾の炸裂は凄まじいもので、砲弾が落下した付近では、大きな木も容赦なく倒され、
そこにいた将兵を吹き飛ばす。
何もかもが、巨弾に粉砕され、無に返していく。
バーマント軍の空襲に耐えたエイレーンの森も、16インチ砲弾の前にはなすすべもないように見える。
最後まで言葉が告げなかった。次の瞬間、ダーン!というこれまでにない爆発音が鳴り響いた。
急な轟音と、猛烈な振動に誰もが飛び上がった。
振動で窓ガラスがバリバリガチャーン!と、けたたましい音を立てて砕け散り、
テーブルに置いてあるコップが床に落ちた。
「くそ、おのれえ。異世界軍め、やりたい放題やりよって!」
ルーゲラーは悔しさのあまり、そう喚き散らした。
「閣下!ここも狙われているかもしれません。急いで避難を!」
幕僚の1人が非難を促した。
「隣の小屋には地下室がございます。そこに我らだけでも非難しましょう!閣下が死なれては、
今後の作戦が出来なくなります。」
「うむ・・・・・・」
彼は非難をためらった。ここで非難しては、今までに戦死した部下将兵に申し訳が立たない。
彼はそう思っていたが、幕僚説得に渋々ながらも応じた。
5分後には、弾着は第8軍司令部の付近まで及んでいた。
16インチ砲弾の炸裂は凄まじいもので、砲弾が落下した付近では、大きな木も容赦なく倒され、
そこにいた将兵を吹き飛ばす。
何もかもが、巨弾に粉砕され、無に返していく。
バーマント軍の空襲に耐えたエイレーンの森も、16インチ砲弾の前にはなすすべもないように見える。
昔から、この森には精霊が住んでいるといわれている。
その精霊が、昔から共に暮らしてきたエルフを叩き出し、勝手に居座ったバーマント軍を憎んでいたとしたら。
そしてそのバーマント軍が居なくなるなら、どんなものを受けても構わないと思うのなら・・・・・
その精霊が、昔から共に暮らしてきたエルフを叩き出し、勝手に居座ったバーマント軍を憎んでいたとしたら。
そしてそのバーマント軍が居なくなるなら、どんなものを受けても構わないと思うのなら・・・・・
森はバーマント兵を守らないばかりか、逆に牙をむき出しにしてきた。
16インチ砲弾の爆風で折れた太い枝が、バーマント兵を叩き潰し、あるいは串刺しにする。
直撃を受け、倒れてきた木が少なからぬバーマント兵を潰して大地に轟音を立てて倒れる。
木々の破片を全身に浴びた兵が、苦痛にのた打ち回り、大声で泣きじゃくる。
助けてくれ!置いて行かないでくれ!バーマント兵は逃げる仲間に必死にそう叫ぶ。
だが、その逃げようとした仲間もろとも、落下してきた16インチ砲弾が爆裂し、
負傷したバーマント兵をたちまちあの世送りにする。
森の中は、阿鼻叫喚の巷と化していた。もはや、地獄に等しい状況だ。
バーマント軍第8軍に属する第79歩兵旅団の旅団長は、独断で森からの撤退を命令した。
第79旅団の第1大隊に所属するイリヤ・エルヴィルト伍長は、命令に従って森の中を
ひたすら西に向かって逃げていた。
突然、空気を切り裂くような音が耳に聞こえてきた。
(危ない!)
危険を感じた彼女は、咄嗟に地面に伏せた。
次の瞬間、ドーン!という大地震が起きたような猛烈な振動が、地面を揺さぶった。
背中をゴー!という音を立てて爆風が通り過ぎていく。
肩や背中に、砕けた木の木屑がパラパラと落ちてきた。
爆風が止むと、彼女は顔を上げて、再び走り出そうとした。不意に足元に何かが落ちている。
見てはいけないような気がした。だが、好奇心が先立ち、彼女は足元を見た。
なんと、そこには人間の胴体が落ちていた。それも酷い有様である。
16インチ砲弾の爆風で折れた太い枝が、バーマント兵を叩き潰し、あるいは串刺しにする。
直撃を受け、倒れてきた木が少なからぬバーマント兵を潰して大地に轟音を立てて倒れる。
木々の破片を全身に浴びた兵が、苦痛にのた打ち回り、大声で泣きじゃくる。
助けてくれ!置いて行かないでくれ!バーマント兵は逃げる仲間に必死にそう叫ぶ。
だが、その逃げようとした仲間もろとも、落下してきた16インチ砲弾が爆裂し、
負傷したバーマント兵をたちまちあの世送りにする。
森の中は、阿鼻叫喚の巷と化していた。もはや、地獄に等しい状況だ。
バーマント軍第8軍に属する第79歩兵旅団の旅団長は、独断で森からの撤退を命令した。
第79旅団の第1大隊に所属するイリヤ・エルヴィルト伍長は、命令に従って森の中を
ひたすら西に向かって逃げていた。
突然、空気を切り裂くような音が耳に聞こえてきた。
(危ない!)
危険を感じた彼女は、咄嗟に地面に伏せた。
次の瞬間、ドーン!という大地震が起きたような猛烈な振動が、地面を揺さぶった。
背中をゴー!という音を立てて爆風が通り過ぎていく。
肩や背中に、砕けた木の木屑がパラパラと落ちてきた。
爆風が止むと、彼女は顔を上げて、再び走り出そうとした。不意に足元に何かが落ちている。
見てはいけないような気がした。だが、好奇心が先立ち、彼女は足元を見た。
なんと、そこには人間の胴体が落ちていた。それも酷い有様である。
「!!」
仰天した彼女は、思わずその場に吐き出してしまった。胃袋の中に残っている物は全て外に出した。
「いや・・・・・死にたくない!」
イリヤはそう言うと、再び走り始めた。
何分走っただろうか、目の前に大き目の木造の建物が見えてきた。
木造の建物の少し離れたところに、小さな小屋みたいなものがある。
そこに人が入っていって、ドアを閉めた。だが、彼女は脇目も振らずにその建物を通り過ぎた。
「どうせ、司令官連中は自分達だけ、安全なところに逃げてるんだわ。あたし達の苦労も知らずに!!」
彼女の心に、ふつふつと怒りが滾ってきた。その時、またもや16インチ砲弾の飛翔音が聞こえてきた。
それもかなり近い。
「どうしてこんな目に!」
彼女は忌々しげにそう呻きながら、すかさず伏せる。
その瞬間、ドゴーン!という雷が間近で爆発したような轟音が鳴り響いた。
爆風に体が吹飛ばされ、イリヤは何かに体をぶつけて意識を失った。
彼女は知らなかったが、この時、東方軍集団司令部の付近に4発の16インチ砲弾が落下してきた。
そのうちの1発が司令部の建物と小屋の間で落下、1秒後に炸裂した。
爆風をもろに浴びた小屋と建物は、あえなく吹き飛ばされた。
それだけでなく、地下室で息を潜めていたルーゲラーらも、土と一緒に巻き上げられてしまった。
その命中箇所には、直径14メートルのクレーターが開いており、小屋はちょうど8メートル付近に位置していた。
当然ルーゲラーらも吹き飛ばされ、幕僚共々、戦死した。
仰天した彼女は、思わずその場に吐き出してしまった。胃袋の中に残っている物は全て外に出した。
「いや・・・・・死にたくない!」
イリヤはそう言うと、再び走り始めた。
何分走っただろうか、目の前に大き目の木造の建物が見えてきた。
木造の建物の少し離れたところに、小さな小屋みたいなものがある。
そこに人が入っていって、ドアを閉めた。だが、彼女は脇目も振らずにその建物を通り過ぎた。
「どうせ、司令官連中は自分達だけ、安全なところに逃げてるんだわ。あたし達の苦労も知らずに!!」
彼女の心に、ふつふつと怒りが滾ってきた。その時、またもや16インチ砲弾の飛翔音が聞こえてきた。
それもかなり近い。
「どうしてこんな目に!」
彼女は忌々しげにそう呻きながら、すかさず伏せる。
その瞬間、ドゴーン!という雷が間近で爆発したような轟音が鳴り響いた。
爆風に体が吹飛ばされ、イリヤは何かに体をぶつけて意識を失った。
彼女は知らなかったが、この時、東方軍集団司令部の付近に4発の16インチ砲弾が落下してきた。
そのうちの1発が司令部の建物と小屋の間で落下、1秒後に炸裂した。
爆風をもろに浴びた小屋と建物は、あえなく吹き飛ばされた。
それだけでなく、地下室で息を潜めていたルーゲラーらも、土と一緒に巻き上げられてしまった。
その命中箇所には、直径14メートルのクレーターが開いており、小屋はちょうど8メートル付近に位置していた。
当然ルーゲラーらも吹き飛ばされ、幕僚共々、戦死した。
おい・・・・起きろ・・・・・
誰かの声が聞こえる。何だろう?遠くに居るのかな?
おい・・・・・おい・・・・・・おい!!
その声が明瞭に聞こえたとき、彼女は激痛で目が覚めた。
「うっ!」
「動くな。しばらくじっとしておれ。」
声の主は、彼女が所属する第79歩兵旅団の旅団長、ギリアルス騎士准将だった。
「左腕とわき腹に木の破片が刺さっている。今から抜くぞ。」
「旅団長・・・・みんなは・・・・仲間は、どうなりました?」
「詳しい事は知らん。だが、何人かは確実に西に逃げ延びたろう。それは確実だ。」
ヒゲ面の旅団長は、そう言いながら、そっと左腕に触れ、一気に木の枝を引き抜いた。
「ぐっ・・・・ああっ!」
激痛が前進を駆け巡る。しばらくは痛みが脳の思考を占領し、鼓動が早くなる。
しばらくすると、落ち着いてきた。体中がびっしょりと汗をかいている。
「そういえば・・・・あの司令部の建物は・・・・どうなりました?」
「建物か?ああ、あの建物なら綺麗さっぱり吹き飛んだ。司令部の連中と共にな。」
「え?」
彼女は間の抜けた声を漏らした。ギリアルスは今度は腹に刺さっている枝を抜こうとしている。
「さっき、ルーゲラー閣下の死体を見つけた。バラバラだったよ。」
「そ、そんな・・・・」
彼女は、言い知れぬショックに打ちのめされた。わき腹の木の枝が抜けた。
痛みは、なぜか先ほどとは違ってあまり感じられなかった。
誰かの声が聞こえる。何だろう?遠くに居るのかな?
おい・・・・・おい・・・・・・おい!!
その声が明瞭に聞こえたとき、彼女は激痛で目が覚めた。
「うっ!」
「動くな。しばらくじっとしておれ。」
声の主は、彼女が所属する第79歩兵旅団の旅団長、ギリアルス騎士准将だった。
「左腕とわき腹に木の破片が刺さっている。今から抜くぞ。」
「旅団長・・・・みんなは・・・・仲間は、どうなりました?」
「詳しい事は知らん。だが、何人かは確実に西に逃げ延びたろう。それは確実だ。」
ヒゲ面の旅団長は、そう言いながら、そっと左腕に触れ、一気に木の枝を引き抜いた。
「ぐっ・・・・ああっ!」
激痛が前進を駆け巡る。しばらくは痛みが脳の思考を占領し、鼓動が早くなる。
しばらくすると、落ち着いてきた。体中がびっしょりと汗をかいている。
「そういえば・・・・あの司令部の建物は・・・・どうなりました?」
「建物か?ああ、あの建物なら綺麗さっぱり吹き飛んだ。司令部の連中と共にな。」
「え?」
彼女は間の抜けた声を漏らした。ギリアルスは今度は腹に刺さっている枝を抜こうとしている。
「さっき、ルーゲラー閣下の死体を見つけた。バラバラだったよ。」
「そ、そんな・・・・」
彼女は、言い知れぬショックに打ちのめされた。わき腹の木の枝が抜けた。
痛みは、なぜか先ほどとは違ってあまり感じられなかった。
米戦艦群の砲撃は、1時間半に渡って行われた。
砲撃を受けた箇所は、南北28キロ。この28キロには、各攻撃軍団の司令部も入っていた。
米戦艦は3隻合計で1890発の16インチ砲弾を発砲した。
砲撃は32キロ地点を満遍なく叩くようにして行われた。
この砲撃で第12軍、第8軍司令部が吹き飛ばされ、第12軍司令部、東方軍集団司令部は全滅した。
他にも、兵員の戦死は2080人、負傷者3000人を超えた。
そして東方軍集団司令部全滅の報は、瞬く間に攻撃部隊全軍に知れ渡り、
バーマント東方軍集団将兵の戦意を絶望的なまでに低下させてしまった。
砲撃を受けた箇所は、南北28キロ。この28キロには、各攻撃軍団の司令部も入っていた。
米戦艦は3隻合計で1890発の16インチ砲弾を発砲した。
砲撃は32キロ地点を満遍なく叩くようにして行われた。
この砲撃で第12軍、第8軍司令部が吹き飛ばされ、第12軍司令部、東方軍集団司令部は全滅した。
他にも、兵員の戦死は2080人、負傷者3000人を超えた。
そして東方軍集団司令部全滅の報は、瞬く間に攻撃部隊全軍に知れ渡り、
バーマント東方軍集団将兵の戦意を絶望的なまでに低下させてしまった。