7月11日 午前1時 第58任務部隊第3群
先の空襲で軽空母サンジャシント、駆逐艦ドーチを喪失した第3群は、損傷した艦艇のうち被害が大きい
クリーブランドとインガソル、それに乗員を救助した駆逐艦ブレインとテリーを後方に下げることにした。
その命令が出されたのは午後0時の事である。その後、スプルーアンスは自室に閉じこもった。
先の空襲で軽空母サンジャシント、駆逐艦ドーチを喪失した第3群は、損傷した艦艇のうち被害が大きい
クリーブランドとインガソル、それに乗員を救助した駆逐艦ブレインとテリーを後方に下げることにした。
その命令が出されたのは午後0時の事である。その後、スプルーアンスは自室に閉じこもった。
そして1時間後の午前1時、スプルーアンスは自室から出てくるなり、フォレステル大佐にこう言った。
「ミッチを呼んでくれ。彼と話したいことがある。」
それから10分後、内火艇に乗せられたミッチャー中将はインディアナポリスに向かい、そこで彼と今後の作戦について打ち合わせた。
「ミッチを呼んでくれ。彼と話したいことがある。」
それから10分後、内火艇に乗せられたミッチャー中将はインディアナポリスに向かい、そこで彼と今後の作戦について打ち合わせた。
午前2時、第58任務部隊はサイフェルバン沖から東に向けて遠ざかっていった。
同時刻、グリルバン郊外 バーマント軍飛行場
「1、2、3・・・・・・・・16機・・・・・・・戻ってきたのは16機だけか。」
第13空中騎士団の司令官代行を務めるイーレル大佐は、あまりにも少ない帰還機の数に愕然とした。
「敵艦隊の対空砲火は正確かつ熾烈でした。」
頭に包帯を巻いた飛行長のダルキア中佐が彼に言ってきた。ダルキア中佐の第1中隊は、輪形陣外輪部の駆逐艦を狙った。
第1中隊は8機を失ったが、米駆逐艦に5発の爆弾を命中させ、撃沈確実の被害を与えている。
だが、彼の機も被弾し、ダルキア中佐は頭部に高角砲弾の小さな破片が刺さった。幸いにも傷が浅かったので大したことはなかった。
だが、後部座席に座っていたグロルズは腹部に受傷し、到着したときには既に意識を失っていた。
医官の話では助かるかどうかは本人次第と言われ、グロルズは寝台の上で死の淵をさまよっている。
「途中、燃料切れで海に降下していく機体なども何機かいました。」
「なるほど。よくわかった。」
彼は頷いた。
「だが、104機が出撃して80機以上を失い、戦果が敵艦8隻撃沈破とは。
もはや精鋭をもってしても、敵機動部隊の防空網の前には打つ手なしか。」
「1、2、3・・・・・・・・16機・・・・・・・戻ってきたのは16機だけか。」
第13空中騎士団の司令官代行を務めるイーレル大佐は、あまりにも少ない帰還機の数に愕然とした。
「敵艦隊の対空砲火は正確かつ熾烈でした。」
頭に包帯を巻いた飛行長のダルキア中佐が彼に言ってきた。ダルキア中佐の第1中隊は、輪形陣外輪部の駆逐艦を狙った。
第1中隊は8機を失ったが、米駆逐艦に5発の爆弾を命中させ、撃沈確実の被害を与えている。
だが、彼の機も被弾し、ダルキア中佐は頭部に高角砲弾の小さな破片が刺さった。幸いにも傷が浅かったので大したことはなかった。
だが、後部座席に座っていたグロルズは腹部に受傷し、到着したときには既に意識を失っていた。
医官の話では助かるかどうかは本人次第と言われ、グロルズは寝台の上で死の淵をさまよっている。
「途中、燃料切れで海に降下していく機体なども何機かいました。」
「なるほど。よくわかった。」
彼は頷いた。
「だが、104機が出撃して80機以上を失い、戦果が敵艦8隻撃沈破とは。
もはや精鋭をもってしても、敵機動部隊の防空網の前には打つ手なしか。」
まるであり地獄だ。そう彼は思った。詳しい戦果は海竜隊の報告を待つしかない。
その海竜隊の報告は未だに届いていなかった。
(早く届かないものかな?そうしないと、明日以降の作戦が実行に移せない)
焦りが見え始めたその時、若い将校が紙を持って彼のもとに走り寄ってきた。空中騎士団直率の若い魔道師である。
「イーレル司令官代行、海竜収集隊から魔法通信です。」
彼は差し出された紙をひったくり、目を通した。
「貴空中騎士団による敵機動部隊に対する確認戦果は以下のとおり。敵大型艦1隻、小型艦1隻撃沈、
敵大、小型艦4隻戦場離脱。敵機動部隊は2群とも東南に後退せり。なお、分派された敵機動部隊も
針路を北東に変針せり。明日いっぱいは敵機動部隊の上空援護はないと思われる。」
彼はつかの間目を疑った。敵機動部隊が後退している!そして敵艦を2隻撃沈し、
4隻に戦場離脱させるほどの手傷を負わせたのである。
彼はダルキア中佐に視線を向けた。そして紙をダルキア中佐に見せた。中佐も紙を見た瞬間、顔色が変わった。
「よくやったぞ。爆弾を食らわせた8隻の敵のうち、2隻は傷が浅くて戦列を離れていない。
だが、敵機動部隊は一時的とはいえ後退し始めている。貴様たちのおかげで敵に一泡吹かせることが出来たのだ!」
そう、勝ったのだ。イーレル大佐の顔は紅潮していた。
今まで敵に跳ねつけられてきた空中騎士団の攻撃が、敵に手痛い一撃を加え、敵を退かせたのである。
この報告はすぐさま他の空中騎士団にも伝えられた。バーマント軍の飛空挺乗りの士気はこの時、頂点に達した。
「白星の悪魔の軍艦も沈むときは沈むのだ!」
「そうだ!奴らとて同じ生き物だ!生き物は必ず傷つき、死ぬのだ!」
「白星の悪魔に死を!蛮族に死を!」
夜中にもかかわらず、各空中騎士団の将兵は、初の敵空母撃沈に沸き立った。そして、みなの思いは夜明け後の作戦。
米上陸軍に対する絨毯爆撃の成功を誰もが確信していた。
敵の抵抗もあるだろうが、300機以上はいる飛空挺の襲撃に、たちまち押し潰されてしまうだろう。
バーマント兵たちはそう思いながら、夜明け後の出撃に備えていった。
その海竜隊の報告は未だに届いていなかった。
(早く届かないものかな?そうしないと、明日以降の作戦が実行に移せない)
焦りが見え始めたその時、若い将校が紙を持って彼のもとに走り寄ってきた。空中騎士団直率の若い魔道師である。
「イーレル司令官代行、海竜収集隊から魔法通信です。」
彼は差し出された紙をひったくり、目を通した。
「貴空中騎士団による敵機動部隊に対する確認戦果は以下のとおり。敵大型艦1隻、小型艦1隻撃沈、
敵大、小型艦4隻戦場離脱。敵機動部隊は2群とも東南に後退せり。なお、分派された敵機動部隊も
針路を北東に変針せり。明日いっぱいは敵機動部隊の上空援護はないと思われる。」
彼はつかの間目を疑った。敵機動部隊が後退している!そして敵艦を2隻撃沈し、
4隻に戦場離脱させるほどの手傷を負わせたのである。
彼はダルキア中佐に視線を向けた。そして紙をダルキア中佐に見せた。中佐も紙を見た瞬間、顔色が変わった。
「よくやったぞ。爆弾を食らわせた8隻の敵のうち、2隻は傷が浅くて戦列を離れていない。
だが、敵機動部隊は一時的とはいえ後退し始めている。貴様たちのおかげで敵に一泡吹かせることが出来たのだ!」
そう、勝ったのだ。イーレル大佐の顔は紅潮していた。
今まで敵に跳ねつけられてきた空中騎士団の攻撃が、敵に手痛い一撃を加え、敵を退かせたのである。
この報告はすぐさま他の空中騎士団にも伝えられた。バーマント軍の飛空挺乗りの士気はこの時、頂点に達した。
「白星の悪魔の軍艦も沈むときは沈むのだ!」
「そうだ!奴らとて同じ生き物だ!生き物は必ず傷つき、死ぬのだ!」
「白星の悪魔に死を!蛮族に死を!」
夜中にもかかわらず、各空中騎士団の将兵は、初の敵空母撃沈に沸き立った。そして、みなの思いは夜明け後の作戦。
米上陸軍に対する絨毯爆撃の成功を誰もが確信していた。
敵の抵抗もあるだろうが、300機以上はいる飛空挺の襲撃に、たちまち押し潰されてしまうだろう。
バーマント兵たちはそう思いながら、夜明け後の出撃に備えていった。
7月11日、午前8時40分、サイフェルバン西100キロ
グリルバンを飛び立った第3、第4、第7、第14空中騎士団、合計360機の飛空挺の大編隊は
それぞれ180機ずつにわかれながらサイフェルバンに向かっていた。
第3空中騎士団第6中隊長のマイザー・アス騎士大尉は、興奮冷めやらぬ表情で味方編隊を見回した。
空一面味方の飛行機で溢れかえっている。
おそらく、300機以上もの飛空挺を繰り出すと言う事は、今回が初めてだろう。
「壮大な光景ですな。」
後ろから髭面のゴーレッツ曹長が野太い声で語りかけてきた。
「そうだな。貴様と組んで色々な任務についてきたが、こうして多数の味方の
飛空挺に囲まれながら、進撃するのは初めてだ。」
「今回の任務、敵さんの地上軍を爆撃する任務のようですね。」
「ああそうだ。」
「あの白星の悪魔、高速飛空挺は伴っていないのですか?」
「いや、いるぞ。おそらく50機以上はいるらしい。」
「そうですか・・・・・・おそらく味方はまたかなりやられますね。」
ゴーレッツ曹長は苦い表情でそう言った。
「なあに、心配するな!問題の敵機動部隊は第13空中騎士団の夜間空襲に痛めつけられ、後方に下がって
いったようだぞ。確かに敵の護衛機にだいぶやられるかもしれんが、今日はいつもと数が違う。
なんせ300機以上だ。こんな大群に押し寄せられたら、いくら高速飛空挺とはいえ、全部は落としきれないさ。」
アス騎士大尉は明るい口調で彼を元気付けた。昨日まで空中騎士団の士気はいまいち上がらなかった。
ついこの間までは、無敵の空の勇者と呼ばれた飛空挺部隊が、2ヶ月前に突如現れた異世界軍の飛空挺や軍艦によって、
的よろしくバタバタ撃ち落されたのである。
「異世界軍に攻撃に行ったら絶対に助からない。」
グリルバンを飛び立った第3、第4、第7、第14空中騎士団、合計360機の飛空挺の大編隊は
それぞれ180機ずつにわかれながらサイフェルバンに向かっていた。
第3空中騎士団第6中隊長のマイザー・アス騎士大尉は、興奮冷めやらぬ表情で味方編隊を見回した。
空一面味方の飛行機で溢れかえっている。
おそらく、300機以上もの飛空挺を繰り出すと言う事は、今回が初めてだろう。
「壮大な光景ですな。」
後ろから髭面のゴーレッツ曹長が野太い声で語りかけてきた。
「そうだな。貴様と組んで色々な任務についてきたが、こうして多数の味方の
飛空挺に囲まれながら、進撃するのは初めてだ。」
「今回の任務、敵さんの地上軍を爆撃する任務のようですね。」
「ああそうだ。」
「あの白星の悪魔、高速飛空挺は伴っていないのですか?」
「いや、いるぞ。おそらく50機以上はいるらしい。」
「そうですか・・・・・・おそらく味方はまたかなりやられますね。」
ゴーレッツ曹長は苦い表情でそう言った。
「なあに、心配するな!問題の敵機動部隊は第13空中騎士団の夜間空襲に痛めつけられ、後方に下がって
いったようだぞ。確かに敵の護衛機にだいぶやられるかもしれんが、今日はいつもと数が違う。
なんせ300機以上だ。こんな大群に押し寄せられたら、いくら高速飛空挺とはいえ、全部は落としきれないさ。」
アス騎士大尉は明るい口調で彼を元気付けた。昨日まで空中騎士団の士気はいまいち上がらなかった。
ついこの間までは、無敵の空の勇者と呼ばれた飛空挺部隊が、2ヶ月前に突如現れた異世界軍の飛空挺や軍艦によって、
的よろしくバタバタ撃ち落されたのである。
「異世界軍に攻撃に行ったら絶対に助からない。」
パイロットたちの間では、これまでの戦闘の結果から見てそう判断していた。
2週間前には第7空中騎士団で、パイロット10人が集団脱走する事件まで起きた。
バーマント軍の飛空挺乗りの士気は、従来よりも格段に落ちてしまったのである。
だが、それを第13空中騎士団が吹き飛ばした。彼らは多大な犠牲を出しながらも、
敵の飛空挺母艦、略して空母を見事撃沈しえたのだ。正確にはわからないが、
すくなくとも大型空母1隻と護衛艦艇1隻を撃沈し、2隻の空母に命中弾をあたえ、
うち1隻を戦列から脱落させたと報じられた。
そしてその敵機動部隊はサイフェルバンの後方に下がっているという。
この戦果は意気消沈していたバーマント軍パイロット達の士気を向上させた。
「夜の悪魔に続け!」
誰もがその言葉を叫びながら、意気揚々と出撃していったのである。
「確かに。これまでのツケを返さないといけませんな。」
曹長は不敵な笑みを浮かべた。
「ツケか、こいつはいい。笑える。」
アス大尉はハッハッハと笑い飛ばした。
編隊は相変わらず時速250キロのスピードでサイフェルバンに向かっている。
目標は、サイフェルバン精油所および地上軍、そして海岸に積み上げられた物資。
これを大量の飛空挺で大空襲を仕掛けるというのだ。
爆弾は通常の250キロ爆弾を各機1発ずつ抱いている。
誰もが、業火のなかで逃げ回る異世界兵の事を思い描いていた。
2週間前には第7空中騎士団で、パイロット10人が集団脱走する事件まで起きた。
バーマント軍の飛空挺乗りの士気は、従来よりも格段に落ちてしまったのである。
だが、それを第13空中騎士団が吹き飛ばした。彼らは多大な犠牲を出しながらも、
敵の飛空挺母艦、略して空母を見事撃沈しえたのだ。正確にはわからないが、
すくなくとも大型空母1隻と護衛艦艇1隻を撃沈し、2隻の空母に命中弾をあたえ、
うち1隻を戦列から脱落させたと報じられた。
そしてその敵機動部隊はサイフェルバンの後方に下がっているという。
この戦果は意気消沈していたバーマント軍パイロット達の士気を向上させた。
「夜の悪魔に続け!」
誰もがその言葉を叫びながら、意気揚々と出撃していったのである。
「確かに。これまでのツケを返さないといけませんな。」
曹長は不敵な笑みを浮かべた。
「ツケか、こいつはいい。笑える。」
アス大尉はハッハッハと笑い飛ばした。
編隊は相変わらず時速250キロのスピードでサイフェルバンに向かっている。
目標は、サイフェルバン精油所および地上軍、そして海岸に積み上げられた物資。
これを大量の飛空挺で大空襲を仕掛けるというのだ。
爆弾は通常の250キロ爆弾を各機1発ずつ抱いている。
誰もが、業火のなかで逃げ回る異世界兵の事を思い描いていた。
「ん?」
ふと、アス大尉は東の空に何かが見えたような気がした。
空は快晴で、よく晴れた青空が広がっている。見るだけで気持ち良い青空だ。
その空に何かが見えた。彼は座席から前に姿勢を乗り出して、前方をよく見ようとした。
「機長、どうかしたんですかい?」
ゴーレッツ曹長が訝しげな口調で聞いてきた。
いくら見ても空には見えない。見間違いだろうか?いや、なんでもないだろう。彼はそう思い、姿勢を正した。
「いや、なんでもないさ。」
彼は微笑みながらそう答えた。そのまま前を見て・・・・・・・・・
そして彼の表情は凍りついた。
最初は一塊ほどの黒い粒が見えた。それがだんだんと増えていき、少しすると40機以上はいるF6Fの姿だとわかった。
最初、大尉は護衛機が慌てて出張ってきたか。と、思った。だが、その黒粒は増えていく。
増えていく増えていく増えていく増えていく・・・・・・・・・無数に増えていく。
そして、気がつくころには、前面の空には300機以上という膨大な数のF6Fが、
彼らの前方に立ちふさがっていたのである。
ふと、アス大尉は東の空に何かが見えたような気がした。
空は快晴で、よく晴れた青空が広がっている。見るだけで気持ち良い青空だ。
その空に何かが見えた。彼は座席から前に姿勢を乗り出して、前方をよく見ようとした。
「機長、どうかしたんですかい?」
ゴーレッツ曹長が訝しげな口調で聞いてきた。
いくら見ても空には見えない。見間違いだろうか?いや、なんでもないだろう。彼はそう思い、姿勢を正した。
「いや、なんでもないさ。」
彼は微笑みながらそう答えた。そのまま前を見て・・・・・・・・・
そして彼の表情は凍りついた。
最初は一塊ほどの黒い粒が見えた。それがだんだんと増えていき、少しすると40機以上はいるF6Fの姿だとわかった。
最初、大尉は護衛機が慌てて出張ってきたか。と、思った。だが、その黒粒は増えていく。
増えていく増えていく増えていく増えていく・・・・・・・・・無数に増えていく。
そして、気がつくころには、前面の空には300機以上という膨大な数のF6Fが、
彼らの前方に立ちふさがっていたのである。
話は少し先まで遡る。
午前1時、インディアナポリスの作戦室に、第58任務部隊司令官の
ミッチャー中将と参謀長のバーク大佐が入ってきた。
「よく来てくれたミッチ。早速だが本題に入りたい。」
「司令長官、今後の作戦について話し合いたいとありましたね。」
「それを今から言うのだよ。」
そう言うと、スプルーアンスは側にあるコーヒーをすすった。それを置くと、意を決したような表情で口を開いた。
「機動部隊を一旦、ここに向かわせよう。」
スプルーアンスは、指揮棒で図面をトントンと叩いた。そこの位置は、なんとサイフェルバンの東南、
160マイル地点の方角である。
「後方に下げるのですか?」
「そうだ。」
スプルーアンスはすかさず答えた。
「ミッチ、君は敵の出方について不思議に思わんかね?」
「不思議・・・・と申しますと?」
「先の飛空挺の攻撃だ。あの飛空挺部隊は夜間にもかかわらず、正確にわが機動部隊にたどり着き、
サンジャシントとドーチを叩き沈めた。敵の飛行工程がまるで誘導されているみたいに思わんか?」
「長官もそう思いますか。」
ミッチャーはスプルーアンスが同じ意見を持っていることに内心やはりか、と思った。
午前1時、インディアナポリスの作戦室に、第58任務部隊司令官の
ミッチャー中将と参謀長のバーク大佐が入ってきた。
「よく来てくれたミッチ。早速だが本題に入りたい。」
「司令長官、今後の作戦について話し合いたいとありましたね。」
「それを今から言うのだよ。」
そう言うと、スプルーアンスは側にあるコーヒーをすすった。それを置くと、意を決したような表情で口を開いた。
「機動部隊を一旦、ここに向かわせよう。」
スプルーアンスは、指揮棒で図面をトントンと叩いた。そこの位置は、なんとサイフェルバンの東南、
160マイル地点の方角である。
「後方に下げるのですか?」
「そうだ。」
スプルーアンスはすかさず答えた。
「ミッチ、君は敵の出方について不思議に思わんかね?」
「不思議・・・・と申しますと?」
「先の飛空挺の攻撃だ。あの飛空挺部隊は夜間にもかかわらず、正確にわが機動部隊にたどり着き、
サンジャシントとドーチを叩き沈めた。敵の飛行工程がまるで誘導されているみたいに思わんか?」
「長官もそう思いますか。」
ミッチャーはスプルーアンスが同じ意見を持っていることに内心やはりか、と思った。
「潜水艦の電波誘導を受けているみたいでした。そう言えば、レキシントンに乗り組んでいる
フレイド魔道師から、さきほどこんなことを聞きました。バーマント軍は過去に一度、海竜を
使って敵側の海上交通路を調べまわったことがあると。」
「海竜と言うと、第2任務群に襲い掛かったあの巨大海蛇か。」
スプルーアンスがそう言うと、ミッチャーは軽くうなずいた。
「そうです。」
「しかし、海竜は人間にはなつきにくいのではないのか?シュングリル
漁師協会の会長がそういっていたような気がするが。」
そこへマイントが話しに加わった。
「確かに成熟しきった海竜は人間にはなつきません。ですが、比較的若い海竜なら、話は別になると思います。
おそらく、私の仮定ではありますが、バーマント軍はこの侵攻部隊に対して、大量の海竜を放って情報を集めているかもしれません。」
「つまり、その海竜とやらが何か情報を魔法で発信しているわけか・・・・・こいつは一杯取られたな。」
スプルーアンスが珍しく、苦悶な表情を浮かべた。だが、それもすぐに元に戻った。
「と言うことは、その海竜共がわが機動部隊を監視しているとすれば・・・・・・なるほど、私の考えた作戦も成功するかも知れん。」
「作戦と申しますと、どういう風なものでしょうか?」
フォレステル大佐が聞いてきた。
フレイド魔道師から、さきほどこんなことを聞きました。バーマント軍は過去に一度、海竜を
使って敵側の海上交通路を調べまわったことがあると。」
「海竜と言うと、第2任務群に襲い掛かったあの巨大海蛇か。」
スプルーアンスがそう言うと、ミッチャーは軽くうなずいた。
「そうです。」
「しかし、海竜は人間にはなつきにくいのではないのか?シュングリル
漁師協会の会長がそういっていたような気がするが。」
そこへマイントが話しに加わった。
「確かに成熟しきった海竜は人間にはなつきません。ですが、比較的若い海竜なら、話は別になると思います。
おそらく、私の仮定ではありますが、バーマント軍はこの侵攻部隊に対して、大量の海竜を放って情報を集めているかもしれません。」
「つまり、その海竜とやらが何か情報を魔法で発信しているわけか・・・・・こいつは一杯取られたな。」
スプルーアンスが珍しく、苦悶な表情を浮かべた。だが、それもすぐに元に戻った。
「と言うことは、その海竜共がわが機動部隊を監視しているとすれば・・・・・・なるほど、私の考えた作戦も成功するかも知れん。」
「作戦と申しますと、どういう風なものでしょうか?」
フォレステル大佐が聞いてきた。
「実は、自室で考えたものなのだが、一旦機動部隊を後方に下げる。そして夜明けと共に反転し、
出せる限りの戦闘機をサイフェルバンに向けて送り出そうというものだ。なぜ反転するのかというと、
先の話に出た海竜があるだろう?あれと似たようなものが存在していると私は思っていたのだ。
その目に見えぬ監視者を欺くために、一度後退したと見せかけ、敵がのこのこと飛空挺の大群を出して
きたときに、機動部隊の大量の艦載機で一気に雌雄を決するというものだ。まあ、作戦立案の
フォレステルにはかなわんと思うが、私が考えたものとしては、こういうものだよ。
フォレステル君、どう思う?」
「これはいいアイデアだと思います。」
彼は頷いた。
出せる限りの戦闘機をサイフェルバンに向けて送り出そうというものだ。なぜ反転するのかというと、
先の話に出た海竜があるだろう?あれと似たようなものが存在していると私は思っていたのだ。
その目に見えぬ監視者を欺くために、一度後退したと見せかけ、敵がのこのこと飛空挺の大群を出して
きたときに、機動部隊の大量の艦載機で一気に雌雄を決するというものだ。まあ、作戦立案の
フォレステルにはかなわんと思うが、私が考えたものとしては、こういうものだよ。
フォレステル君、どう思う?」
「これはいいアイデアだと思います。」
彼は頷いた。
「しかし、これはある意味賭けでもあります。現在、護衛空母は南部攻撃軍を乗せた輸送船団
に5隻が分派されており、サイフェルバンには5隻しかありません。その7隻のF6Fは
各艦15機ずつとして合計85機。一応まとまった数ではありますが、これらは地上部隊の
援護に駆り出されているので、大量に敵機が襲ってきたら阻止するのはきわめて難しいです。
そこにわが機動部隊の艦載機がサイフェルバンに着く前に敵機に取り付かれたら、地上部隊に
被害が出るでしょう。これは発艦のタイミングが遅れれば、非常にまずい結果になります。」
に5隻が分派されており、サイフェルバンには5隻しかありません。その7隻のF6Fは
各艦15機ずつとして合計85機。一応まとまった数ではありますが、これらは地上部隊の
援護に駆り出されているので、大量に敵機が襲ってきたら阻止するのはきわめて難しいです。
そこにわが機動部隊の艦載機がサイフェルバンに着く前に敵機に取り付かれたら、地上部隊に
被害が出るでしょう。これは発艦のタイミングが遅れれば、非常にまずい結果になります。」
スプルーアンスは腕を組みながら唸った。タイミングがすれれば、わが機動部隊の後退に好機とばかり
に発進した無数の飛空挺によって地上部隊が被害を被る。
地上部隊は補充が利かない貴重な部隊だ。それをここで多く傷つけられれば、以降の作戦に大きな支障が出る。
「だが、バーマント軍の残った飛空挺を壊滅させるには、これしかないだろう。」
「では長官・・・・・・・・」
作戦室は静まり返った。誰もがスプルーアンスを見つめている。彼の決断を待っているのだろう。
(ここは・・・・・・・これしかないだろう)
彼はそう心を決めると、うつむいていた顔を上げた。
「私が考えた作戦で行こう。各任務群に伝えよ。第1、第2群は艦隊針路を北東へ、
第3、第4群は艦隊針路を南東へ、速度は28ノット。夜明け前に艦載機を発進させろ。
合流地点はサイフェルバン南東340マイル地点とする。機動部隊全艦艇にこう伝えよ。」
スプルーアンスが決断すると、機動部隊の全艦艇は、その所定の位置に向けて動き始めた。
ミッチャー中将が内火艇でレキシントンに戻ると、第3群は第4群と共に時速28ノットの
スピードで南東に向かい始めた。
に発進した無数の飛空挺によって地上部隊が被害を被る。
地上部隊は補充が利かない貴重な部隊だ。それをここで多く傷つけられれば、以降の作戦に大きな支障が出る。
「だが、バーマント軍の残った飛空挺を壊滅させるには、これしかないだろう。」
「では長官・・・・・・・・」
作戦室は静まり返った。誰もがスプルーアンスを見つめている。彼の決断を待っているのだろう。
(ここは・・・・・・・これしかないだろう)
彼はそう心を決めると、うつむいていた顔を上げた。
「私が考えた作戦で行こう。各任務群に伝えよ。第1、第2群は艦隊針路を北東へ、
第3、第4群は艦隊針路を南東へ、速度は28ノット。夜明け前に艦載機を発進させろ。
合流地点はサイフェルバン南東340マイル地点とする。機動部隊全艦艇にこう伝えよ。」
スプルーアンスが決断すると、機動部隊の全艦艇は、その所定の位置に向けて動き始めた。
ミッチャー中将が内火艇でレキシントンに戻ると、第3群は第4群と共に時速28ノットの
スピードで南東に向かい始めた。
午前6時、夜明けが近くなったこの時間、第3群から艦載機が発艦していった。第4群は
正規空母レキシントンからF6Fヘルキャット36機、エンタープライズからF6Fが36機。
軽空母プリンストンからF6F12機が発艦した。
第4群も合計で96機が発艦し、午前5時にクロイッチ空襲から戻った第1、第2群も
合計で180機が発艦、エセックスのデイビット・マッキャンベル中佐を指揮官機にした
合計360機の大編隊は、誘導機のアベンジャー2機を先行にサイフェルバンに向かっていった。
インディアナポリス艦上のスプルーアンス大将は、次の指令を下した。
「艦隊針路変更。針路は北西、サイフェルバンに向けろ。速力は24ノット。」
「針路北西、速力24ノット、アイアイサー。」
若手士官の声が聞こえ、インディアナポリスは左舷に回頭し始めた。
艦隊は一斉に回頭し、舳先をサイフェルバンに向けた。
正規空母レキシントンからF6Fヘルキャット36機、エンタープライズからF6Fが36機。
軽空母プリンストンからF6F12機が発艦した。
第4群も合計で96機が発艦し、午前5時にクロイッチ空襲から戻った第1、第2群も
合計で180機が発艦、エセックスのデイビット・マッキャンベル中佐を指揮官機にした
合計360機の大編隊は、誘導機のアベンジャー2機を先行にサイフェルバンに向かっていった。
インディアナポリス艦上のスプルーアンス大将は、次の指令を下した。
「艦隊針路変更。針路は北西、サイフェルバンに向けろ。速力は24ノット。」
「針路北西、速力24ノット、アイアイサー。」
若手士官の声が聞こえ、インディアナポリスは左舷に回頭し始めた。
艦隊は一斉に回頭し、舳先をサイフェルバンに向けた。
午前8時30分、サイフェルバン西50マイル地点
「こちらキャリー1、エックフォックスリーダーへ。お客さんがやってきたぞ。」
先頭を行くアベンジャーが、マッキャンベル中佐を呼び出した。よく目を凝らすと、
前方にうっすらとだが、バーマント軍機の編隊が見えてきた。
「こちらエックフォックスリーダー。確認した。たまげたな。すごい数だ。」
「俺もさ。とりあえず俺たちは後方に避退する。地上部隊を守ってくれよ。」
「了解。これからショーの始まりだ。」
(とりあえず間に合ったわけだな)
マッキャンベル中佐は内心でそう思った。今朝方発艦したヘルキャット隊は、時速450キロのスピードで
急ぐように向かった。
既に敵機が地上部隊を空襲し、被害を与えているのではないか?今にも無線機に、空襲を受ける
味方の悲鳴が聞こえないか?その思いが何度も湧き上がってきた。
だが、そうなる前に自分たちはしっかり、敵の眼前に立ち塞がっている。
これから起こる戦闘は一方的なものになるだろう。だが、迷いはない。
彼らの仲間だって、昨夜味方機動部隊を空襲し、大勢の仲間の命を奪ったのだ。
手加減などする必要はない。
「こちらエックフォックスリーダー。各機へ、敵機を発見した。これより攻撃位置につけ。
目標割り当ては、第1、第2群隊が後方集団を、第3、第4群隊は先頭集団を叩く。
包囲するように襲い掛かるんだ。1機も逃がすな。かかれ!」
マッキャンベル中佐の声に、各母艦の戦闘機隊長が威勢のいい返事を送ってきた。高度は5000メートル、
敵機は4000メートル付近にいるから、優位はヘルキャット隊にある。
第1、第2群の戦闘機が別れ、スピードを上げて敵の後方に回り込むコースに向かおうとしている。
マッキャンベル中佐を始めとする第3、第4群の戦闘機はそのまま敵に向かって進む。
心なしか、敵機の編隊が乱れているように見える。いや、少々乱れていた。
(敵さん、こっちが大量の戦闘機を出して迎撃に来るとは思っていなかったのだろう。)
彼はふとそう思った。敵機がF6Fの下に覆いかぶさる位置に来た。
「こちらキャリー1、エックフォックスリーダーへ。お客さんがやってきたぞ。」
先頭を行くアベンジャーが、マッキャンベル中佐を呼び出した。よく目を凝らすと、
前方にうっすらとだが、バーマント軍機の編隊が見えてきた。
「こちらエックフォックスリーダー。確認した。たまげたな。すごい数だ。」
「俺もさ。とりあえず俺たちは後方に避退する。地上部隊を守ってくれよ。」
「了解。これからショーの始まりだ。」
(とりあえず間に合ったわけだな)
マッキャンベル中佐は内心でそう思った。今朝方発艦したヘルキャット隊は、時速450キロのスピードで
急ぐように向かった。
既に敵機が地上部隊を空襲し、被害を与えているのではないか?今にも無線機に、空襲を受ける
味方の悲鳴が聞こえないか?その思いが何度も湧き上がってきた。
だが、そうなる前に自分たちはしっかり、敵の眼前に立ち塞がっている。
これから起こる戦闘は一方的なものになるだろう。だが、迷いはない。
彼らの仲間だって、昨夜味方機動部隊を空襲し、大勢の仲間の命を奪ったのだ。
手加減などする必要はない。
「こちらエックフォックスリーダー。各機へ、敵機を発見した。これより攻撃位置につけ。
目標割り当ては、第1、第2群隊が後方集団を、第3、第4群隊は先頭集団を叩く。
包囲するように襲い掛かるんだ。1機も逃がすな。かかれ!」
マッキャンベル中佐の声に、各母艦の戦闘機隊長が威勢のいい返事を送ってきた。高度は5000メートル、
敵機は4000メートル付近にいるから、優位はヘルキャット隊にある。
第1、第2群の戦闘機が別れ、スピードを上げて敵の後方に回り込むコースに向かおうとしている。
マッキャンベル中佐を始めとする第3、第4群の戦闘機はそのまま敵に向かって進む。
心なしか、敵機の編隊が乱れているように見える。いや、少々乱れていた。
(敵さん、こっちが大量の戦闘機を出して迎撃に来るとは思っていなかったのだろう。)
彼はふとそう思った。敵機がF6Fの下に覆いかぶさる位置に来た。
「第3、第4群隊、突入せよ!」
マッキャンベル中佐は無線機に向かってそう叫ぶと、操縦桿を左に倒した。
それを機に、F6Fは次々と翼を翻し、飛空挺部隊に向かって襲い掛かった。
その光景は、まるで獲物を見つけた猛禽類が、猛然とそれに突っかかっていくようなものだった。
マッキャンベル中佐は無線機に向かってそう叫ぶと、操縦桿を左に倒した。
それを機に、F6Fは次々と翼を翻し、飛空挺部隊に向かって襲い掛かった。
その光景は、まるで獲物を見つけた猛禽類が、猛然とそれに突っかかっていくようなものだった。
2000馬力エンジンがごうごうと鳴り響き、照準機の中の敵機がみるみるうちに大きくなっていく。
機体のスピードは600キロを超え、敵機との距離はすぐに縮まった。
「サンジャシントとドーチの仇だ!」
マッキャンベル中佐はそう叫ぶと、発射ボタンを押した。
両翼の12.7ミリ機銃が振動と共に吐き出され、6本の線となって吐き出された。
そのうちの何発かが命中し、胴体から破片が飛び散る。だが、機銃弾はまだ降り注ぐ。
翼、エンジンに多数の12.7ミリ機銃弾を食らった飛空挺は、黒煙を噴きながら
まっ逆さまになって墜落していった。
機体のスピードは600キロを超え、敵機との距離はすぐに縮まった。
「サンジャシントとドーチの仇だ!」
マッキャンベル中佐はそう叫ぶと、発射ボタンを押した。
両翼の12.7ミリ機銃が振動と共に吐き出され、6本の線となって吐き出された。
そのうちの何発かが命中し、胴体から破片が飛び散る。だが、機銃弾はまだ降り注ぐ。
翼、エンジンに多数の12.7ミリ機銃弾を食らった飛空挺は、黒煙を噴きながら
まっ逆さまになって墜落していった。
高度6000から後方に回り込んだ第1、第2群の戦闘機隊は、バーマント飛空挺部隊の最後尾
に到達した。
空母ヨークタウンⅡのVF-10飛行隊隊長のブルース・グリューン少佐は先頭集団のほうに
ちらりと視線を移した。
先頭集団は、F6Fの大群に引っ掻き回され、既に隊形が崩れかけている。
火を噴く敵機の数は10~20機と多い。
「マッキャンベル中佐は派手にやってるな。こっちも負けてられんぞ。」
そう呟いた彼は、全機突撃を命じた。すぐさま180機のF6Fが襲い掛かる。
高度6000からまるで隕石のごとく降りかかったF6Fの集団は、みるみるうちに
敵機との差を縮めた。
「よし、いただきだ。グリューン少佐は1機の飛空挺に狙いをつけ、機銃を放った。
その時、照準機の向こうの敵機の後部座席から、機銃らしきものを振りかざした敵兵が
それを向け、そしてバリバリと撃ちまくってきた。
米軍が保有する後部旋回機銃と同様なものだ!互いの銃弾が交錯し、たちまち無数の
12.7ミリ機銃弾が飛空挺を打ち据えた。
F6Fの機体に何かが連続してあたり、震えた。被弾したのだ。
グリューン少佐はそれでも機銃弾を撃ちまくった。
に到達した。
空母ヨークタウンⅡのVF-10飛行隊隊長のブルース・グリューン少佐は先頭集団のほうに
ちらりと視線を移した。
先頭集団は、F6Fの大群に引っ掻き回され、既に隊形が崩れかけている。
火を噴く敵機の数は10~20機と多い。
「マッキャンベル中佐は派手にやってるな。こっちも負けてられんぞ。」
そう呟いた彼は、全機突撃を命じた。すぐさま180機のF6Fが襲い掛かる。
高度6000からまるで隕石のごとく降りかかったF6Fの集団は、みるみるうちに
敵機との差を縮めた。
「よし、いただきだ。グリューン少佐は1機の飛空挺に狙いをつけ、機銃を放った。
その時、照準機の向こうの敵機の後部座席から、機銃らしきものを振りかざした敵兵が
それを向け、そしてバリバリと撃ちまくってきた。
米軍が保有する後部旋回機銃と同様なものだ!互いの銃弾が交錯し、たちまち無数の
12.7ミリ機銃弾が飛空挺を打ち据えた。
F6Fの機体に何かが連続してあたり、震えた。被弾したのだ。
グリューン少佐はそれでも機銃弾を撃ちまくった。
新たな被弾が後部座席の射手を捉え、射手が仰け反る。そして胴体から赤黒い炎が湧き出し、
力尽きたように機首を下にして、その飛空挺は墜落していった。
「ヨークフォックスリーダーより全機へ、敵飛空挺は旋回機銃を持っている!
後方から狙うときはその旋回機銃に注意を払え!」
彼は繰り返しそれを言おうとした時、恐れていた事態が起こった。
「第2中隊長機被弾!」
「第1中隊4番機被弾!」
彼が後方を見ると、2機のF6Fがうなだれたように機首を下げ、墜落していく。
パイロットが脱出していく気配がない。恐らく、敵機の機銃弾がコクピットに飛び込んだのだろう。
なんという悪運か。
だが、彼は感傷にひたらず、自分の愛機を確かめる。各種計器は問題ない。
機体もこれまで通り動いている。
「さすがはグラマン鉄工所の機体だ。頼りになる。」
そうニヤリと笑みを浮かべると、グリューン少佐は反転上昇に移った。
その頃には敵機はだいぶ撃ち減らされていた。
180機のF6Fは初撃で40機の飛空挺を撃墜し、60機に損傷を負わせていた。
力尽きたように機首を下にして、その飛空挺は墜落していった。
「ヨークフォックスリーダーより全機へ、敵飛空挺は旋回機銃を持っている!
後方から狙うときはその旋回機銃に注意を払え!」
彼は繰り返しそれを言おうとした時、恐れていた事態が起こった。
「第2中隊長機被弾!」
「第1中隊4番機被弾!」
彼が後方を見ると、2機のF6Fがうなだれたように機首を下げ、墜落していく。
パイロットが脱出していく気配がない。恐らく、敵機の機銃弾がコクピットに飛び込んだのだろう。
なんという悪運か。
だが、彼は感傷にひたらず、自分の愛機を確かめる。各種計器は問題ない。
機体もこれまで通り動いている。
「さすがはグラマン鉄工所の機体だ。頼りになる。」
そうニヤリと笑みを浮かべると、グリューン少佐は反転上昇に移った。
その頃には敵機はだいぶ撃ち減らされていた。
180機のF6Fは初撃で40機の飛空挺を撃墜し、60機に損傷を負わせていた。
反転上昇に移ったグリューン少佐は、右前方を行く飛空挺に狙いをつけた。
彼はそれを狙うことにした。
高度は3000まで下がっていたが、2000馬力のエンジンは、
重いF6Fの機体をぐんぐん上空に押し上げていった。
彼はそれを狙うことにした。
高度は3000まで下がっていたが、2000馬力のエンジンは、
重いF6Fの機体をぐんぐん上空に押し上げていった。
彼は敵機の後ろ下方から狙おうとした。敵機はそれに気づいたのか、急に爆弾を捨て、
急降下に移った。
(畜生、感づかれたか。)
彼は内心で舌打ちしたが、その敵機を追った。急降下性能でも断然F6Fが早かった。
すぐにその敵飛空挺に追いついた。
敵機の後部座席から機銃弾が放たれてくる。だが、それは見当違いの方向に流れていた。
「射撃がなっちゃいねえな、バーマントさん。」
彼は物凄い笑みを浮かべながらそう呟いた。
「射撃というものは、こうやるんだ!!」
照準器に捉えた敵機めがけて、6丁の12.7ミリ機銃が放たれる。
ダダダダダダダダダ!というリズミカルな振動がF6Fをゆらし、曳光弾が敵機に注がれる。
さすがは頑丈といわれたバーマント機。一連射を浴びせたが破片を飛び散らせただけで火を噴かない。
だが彼にはそんなことは関係ない。一連射で屈しなければもっと叩き込めばいいことだった。
無数の機銃弾に貫かれた飛空挺は、あっという間に空中分解を起こした。
彼はその破片に当たるまいと、機を巧みに操作して避けた。
急降下に移った。
(畜生、感づかれたか。)
彼は内心で舌打ちしたが、その敵機を追った。急降下性能でも断然F6Fが早かった。
すぐにその敵飛空挺に追いついた。
敵機の後部座席から機銃弾が放たれてくる。だが、それは見当違いの方向に流れていた。
「射撃がなっちゃいねえな、バーマントさん。」
彼は物凄い笑みを浮かべながらそう呟いた。
「射撃というものは、こうやるんだ!!」
照準器に捉えた敵機めがけて、6丁の12.7ミリ機銃が放たれる。
ダダダダダダダダダ!というリズミカルな振動がF6Fをゆらし、曳光弾が敵機に注がれる。
さすがは頑丈といわれたバーマント機。一連射を浴びせたが破片を飛び散らせただけで火を噴かない。
だが彼にはそんなことは関係ない。一連射で屈しなければもっと叩き込めばいいことだった。
無数の機銃弾に貫かれた飛空挺は、あっという間に空中分解を起こした。
彼はその破片に当たるまいと、機を巧みに操作して避けた。
バーマント第14空中騎士団第3中隊長のオスト大尉は、もはやサイフェルバンを攻撃
できないことを確信した。
目の前の光景は想像を絶するものだった。周り中に敵味方の航空機が入り乱れ、
味方の航空機のほうが一方的に叩き落されている。
旋回機銃を持たない第3、第4、第7空中騎士団の飛空挺はあっという間に敵機に食らいつかれ、
戦闘開始20分たった今では、先頭の第3空中騎士団は既に20機しかおらず、全滅も時間の問題だ。
第14空中騎士団も既に30機が撃墜され、20機が被弾し、隊列から脱落している。
そこを別の高速飛空挺が群がり、1機、また1機と撃ち落されている。
だが、第14空中騎士団の飛空挺には、後部座席に10.2ミリ機銃が装備されており、
この旋回機銃によって6機のF6Fを撃墜し、12機に損傷を与えた。
しかし、それも雲霞のごとき大編隊相手には通用しない。またも1機が派手に爆発し、
自らの破片を空中に撒き散らした。
このまま行けば、全滅だ。もし全滅したら、この戦闘の模様を誰が知らしめるのか?
ここは敵に背を向けてでも生き残るべきだ!
そう決意した彼は爆弾を捨て、機を元来た方向に向けた。
その時、
「後ろ上方より敵機接近!向かってくる!」
ついに彼の機にもF6Fという悪魔が取り付き始めたのだ。
「タイミングを見計らって急降下するぞ!お前は敵の目測の距離を俺に伝えろ!」
「わかりました!」
できないことを確信した。
目の前の光景は想像を絶するものだった。周り中に敵味方の航空機が入り乱れ、
味方の航空機のほうが一方的に叩き落されている。
旋回機銃を持たない第3、第4、第7空中騎士団の飛空挺はあっという間に敵機に食らいつかれ、
戦闘開始20分たった今では、先頭の第3空中騎士団は既に20機しかおらず、全滅も時間の問題だ。
第14空中騎士団も既に30機が撃墜され、20機が被弾し、隊列から脱落している。
そこを別の高速飛空挺が群がり、1機、また1機と撃ち落されている。
だが、第14空中騎士団の飛空挺には、後部座席に10.2ミリ機銃が装備されており、
この旋回機銃によって6機のF6Fを撃墜し、12機に損傷を与えた。
しかし、それも雲霞のごとき大編隊相手には通用しない。またも1機が派手に爆発し、
自らの破片を空中に撒き散らした。
このまま行けば、全滅だ。もし全滅したら、この戦闘の模様を誰が知らしめるのか?
ここは敵に背を向けてでも生き残るべきだ!
そう決意した彼は爆弾を捨て、機を元来た方向に向けた。
その時、
「後ろ上方より敵機接近!向かってくる!」
ついに彼の機にもF6Fという悪魔が取り付き始めたのだ。
「タイミングを見計らって急降下するぞ!お前は敵の目測の距離を俺に伝えろ!」
「わかりました!」
後部座席の部下が上ずった口調で返事した。F6Fのずんぐりとした機体がぐんぐん迫ってくる。
1200・・・・1000・・・・800。
「600です!」
「急降下するぞ!」
オスト大尉はそう叫ぶと、操縦桿を下に倒し、急降下に入った。
ガクンと機首が下を向き、降下を始めた機のすぐ後ろを、6条の光が駆け巡っていった。
間一髪、F6Fの銃撃をかわしたのである。
グオーン!という悔しげなような音を立てて、F6Fは飛び去る。
だが、敵は諦めていなかった。飛び去ったF6Fは、大きく左旋回し、またもや彼らに向かってきた。
「また向かってきましたぁ!」
悲鳴のような報告が、オスト大尉の耳に届く。
畜生、何が敵機動部隊は後退しただ!あの数の高速飛空挺は一体なんだというのだ!?
心の中で、上層部を罵った。その間にも敵機は彼らの右斜め後ろの位置についた。
急降下速度も敵機のほうが速い。小さな点だった敵機の姿は、段々と大きくなってくる。
高度はまだ2400、地表すれすれに飛行すれば、なんとか敵をかわせると思っていたが、
その思いは甘かったようだ。
「敵が近くに来たら撃て!死ぬか生きるかはお前にかかっているぞ!」
オスト大尉は、後部座席の部下を叱咤した。その間にも、F6Fの姿は大きくなっている。
後部座席の機銃手であるグリンス軍曹は、高まる鼓動を抑えながら、F6Fをにらみ続けた。
そして頃合よしと判断すると、機銃の引き金を引いた。
ドガガガガガガ!という重々しい発射音と共に機銃弾が銃身から吐き出される。
反動で跳ね上がる銃身を力ずくで押さえながら、F6Fに向けて銃弾を送り続けた。
1200・・・・1000・・・・800。
「600です!」
「急降下するぞ!」
オスト大尉はそう叫ぶと、操縦桿を下に倒し、急降下に入った。
ガクンと機首が下を向き、降下を始めた機のすぐ後ろを、6条の光が駆け巡っていった。
間一髪、F6Fの銃撃をかわしたのである。
グオーン!という悔しげなような音を立てて、F6Fは飛び去る。
だが、敵は諦めていなかった。飛び去ったF6Fは、大きく左旋回し、またもや彼らに向かってきた。
「また向かってきましたぁ!」
悲鳴のような報告が、オスト大尉の耳に届く。
畜生、何が敵機動部隊は後退しただ!あの数の高速飛空挺は一体なんだというのだ!?
心の中で、上層部を罵った。その間にも敵機は彼らの右斜め後ろの位置についた。
急降下速度も敵機のほうが速い。小さな点だった敵機の姿は、段々と大きくなってくる。
高度はまだ2400、地表すれすれに飛行すれば、なんとか敵をかわせると思っていたが、
その思いは甘かったようだ。
「敵が近くに来たら撃て!死ぬか生きるかはお前にかかっているぞ!」
オスト大尉は、後部座席の部下を叱咤した。その間にも、F6Fの姿は大きくなっている。
後部座席の機銃手であるグリンス軍曹は、高まる鼓動を抑えながら、F6Fをにらみ続けた。
そして頃合よしと判断すると、機銃の引き金を引いた。
ドガガガガガガ!という重々しい発射音と共に機銃弾が銃身から吐き出される。
反動で跳ね上がる銃身を力ずくで押さえながら、F6Fに向けて銃弾を送り続けた。
同時にF6Fも両翼をマズルフラッシュで染めて、機銃弾を叩き付けた。
その時、グリンス軍曹は、機銃弾がF6Fの胴体、そしてエンジンに突き刺さるのが見えた。
「やった、命中した!」
彼はそう喝采を叫んだ。次の瞬間、ガンガンガン!という殴りつけられたかのような振動が
機体を激しく揺さぶった。
グリンス軍曹は左肩に焼き付けるような激痛を感じ、座席に座り込んだ。終わりだ。
ここで死ぬんだ。彼はあきらめた。新たなる被弾でこの飛空挺も終わるだろう。
そして俺と機長の人生も。
だが、敵弾は来なかった。後ろに位置していた敵機もいなかった。
「ど、どこに行った?」
グリンス軍曹は辺りを見回した。そして、うっすらと黒煙を吐きながら、
逃げるようにして東の空に避退していくF6Fの姿があった。
その時、グリンス軍曹は、機銃弾がF6Fの胴体、そしてエンジンに突き刺さるのが見えた。
「やった、命中した!」
彼はそう喝采を叫んだ。次の瞬間、ガンガンガン!という殴りつけられたかのような振動が
機体を激しく揺さぶった。
グリンス軍曹は左肩に焼き付けるような激痛を感じ、座席に座り込んだ。終わりだ。
ここで死ぬんだ。彼はあきらめた。新たなる被弾でこの飛空挺も終わるだろう。
そして俺と機長の人生も。
だが、敵弾は来なかった。後ろに位置していた敵機もいなかった。
「ど、どこに行った?」
グリンス軍曹は辺りを見回した。そして、うっすらと黒煙を吐きながら、
逃げるようにして東の空に避退していくF6Fの姿があった。
午前9時17分。辺りは静けさを取り戻していた。
「こちらエックフォックスリーダーより、マザーグースへ。敵機の攻撃は撃退した。
撃墜戦果は300機以上。味方の損害は撃墜8機、被弾20機。我、作戦終了。これより帰還す。」
戦闘機隊指揮官のデイビット・マッキャンベル中佐は戦闘終結宣言を高らかに上げた。
彼自身、6機の飛空挺を撃墜している。
彼を始めとするF6Fの編隊は、勝ち誇ったように西の空に向けて飛んでいった。
「こちらエックフォックスリーダーより、マザーグースへ。敵機の攻撃は撃退した。
撃墜戦果は300機以上。味方の損害は撃墜8機、被弾20機。我、作戦終了。これより帰還す。」
戦闘機隊指揮官のデイビット・マッキャンベル中佐は戦闘終結宣言を高らかに上げた。
彼自身、6機の飛空挺を撃墜している。
彼を始めとするF6Fの編隊は、勝ち誇ったように西の空に向けて飛んでいった。
この日、勝利を確信して飛び立った360機の飛空挺部隊は、無数のF6Fに襲われて壊滅した。
米軍機の被害は8機が撃墜され、4機が着艦事故で失われ、1機が修理不能とみなされ、
合計13機を失い、8人が戦死した。
バーマント側は第3、第4空中騎士団が全滅し、第7空中騎士団が8機、第14空中騎士団が
20機を残したのみとなり、合計で332機が撃墜されてしまった。
搭乗員の戦死は撃墜機だけで600人以上を数えた。
米軍機の被害は8機が撃墜され、4機が着艦事故で失われ、1機が修理不能とみなされ、
合計13機を失い、8人が戦死した。
バーマント側は第3、第4空中騎士団が全滅し、第7空中騎士団が8機、第14空中騎士団が
20機を残したのみとなり、合計で332機が撃墜されてしまった。
搭乗員の戦死は撃墜機だけで600人以上を数えた。
ここにして、バーマント軍のサイフェルバン方面の航空戦力は壊滅したのである。
この戦いは、後に「サイフェルバンの七面鳥撃ち」とあだ名されることとなる。
この戦いは、後に「サイフェルバンの七面鳥撃ち」とあだ名されることとなる。