大陸暦1098年 5月2日マーシャル諸島メジュロ環礁
ハリケーンはその後6時間程荒れ狂った。嵐が止み始めたのは午前10時を過ぎてからであった。
午前11時、第58任務部隊司令官であるマークミッチャー中将がインディアナポリスに来艦した。
11時10分にはターナー中将、ホーランドスミス海兵中将が姿を現した。
最後に戦艦部隊司令であるウイリス・リー中将も現れ、インディアナポリスの作戦室に案内された。
スプルーアンス側も参謀長のデイビス少将、作戦参謀のフォレステル大佐、通信参謀のアームストロング中佐
が出席した。
「さて、諸君に早速集まってもらったのだが、今日未明に起こったことはもう既に知っている
だろう?」
スプルーアンスが口を開いた。
「外部との通信がマーシャルのみ。ということですな?」
ミッチャーがたずねると、スプルーアンスはそうだと言って頷いた。
「本国のみならず、ミッドウェーやウェーク。それにハワイといった各基地にも
全く連絡が繋がらない。まるでこのマーシャルがタイムスリップしたようだな。」
彼の言葉に、一同の視線が彼に注がれた。
「ハッハッハッ!スプルーアンス閣下。何を言うんですか。そんな事が起きるはずが無いでしょう。
ここはH・G・ウェルズの世界ではないのですから。」
スミス中将が笑いながらそう言うと、リー中将も同感だと頷く。
「私も同感ですな。きっとハリケーンの影響でまだ電波状態がおかしいのでしょう。」
そこへミッチャーが待ったをかけた。
「いや、それでも電波は通じるぞ。こういう時は無線が聞き取れないのが難点だが、
通信は可能だった。それが全く通じないということは今までに無かったことだ。」
「なら、マーシャルの全通信装置が壊れたことになるぞ?」
ターナーも会話に入ってきた。
「それとも、無線機がマーシャルだけの通信しか入れてないか、あるいは先ほど長官
が言ったとおり、タイムスリップしたか、あるいは世界がここだけを残して一気に
滅んでしまったか。どっちかだぞ。」
「通信参謀。」
スプルーアンスが彼に顔を向けた。
「何度も聞くようでくどいかも知れんが、本当にどことも繋がらないのだな?」
「はい。昨日の3時ごろ以来全く。」
「3時ごろか・・・・・確かあの時は一瞬目の前が真っ白になったな。」
ターナーがふと、思い出したように言った。
「でかい雷だなと思ったんだが、全く音もならなかった。」
「ん?君も見たのか?あの白い光を?」
スミスが奇遇だなと言いながらターナーに言ってきた。
「ああ。見たよ。ちょうど書類に目を通したときにいきなり回りが真っ白になったんだ。
それも一瞬だ。瞬きしたら普通の光景に戻っていたよ。あっ、確かロッキー・マウント
の乗員連中も視界が真っ白くなったとか言ってたな。」
「私もだ。私は寝ているときに見たんだが、いきなりカッと変な白い光を見たんだ。それで
目を開けたら、君と同じようになんとも無かった。」
言葉を終え、スミスが周りを見渡すと、あたりは異様な雰囲気に包まれていた。だれもがその
白い光に心当たりがあるような感じだった。
「お前たちも見たのか?」
スプルーアンスが幕僚に問いかけると、全員が頷いた。
「私も見たのだが・・・・・これは何かあるな。」
彼はそう呟いた。これは何かある。もしかしてどこか異様な世界に引き込まれたのだろうか?
彼がそう思ったとき、ミッチャーが何か言ってきた。
「長官、ではホーランジア出港は見送りということですね?」
スプルーアンスは出港という言葉が引っかかった。そしてすぐさま返事を返した。
「いや、第58任務部隊はこれより出港してもらう。4個郡すべて出す。」
「では、出撃ですか?」
ミッチャーはいささか驚いたような口調だった。
「うむ。出撃だ。機動部隊の偵察機でマーシャルの周りを調べてほしい。それから
マーシャルのカタリナも出す。」
彼の決断は固かった。
「現状があまりにもわからなすぎる。まずは情報収集に当たろう。」
彼がそう言うと、皆が戸惑いの表情を浮かべた。会議は開始わずか15分で終わってしまった。
ハリケーンはその後6時間程荒れ狂った。嵐が止み始めたのは午前10時を過ぎてからであった。
午前11時、第58任務部隊司令官であるマークミッチャー中将がインディアナポリスに来艦した。
11時10分にはターナー中将、ホーランドスミス海兵中将が姿を現した。
最後に戦艦部隊司令であるウイリス・リー中将も現れ、インディアナポリスの作戦室に案内された。
スプルーアンス側も参謀長のデイビス少将、作戦参謀のフォレステル大佐、通信参謀のアームストロング中佐
が出席した。
「さて、諸君に早速集まってもらったのだが、今日未明に起こったことはもう既に知っている
だろう?」
スプルーアンスが口を開いた。
「外部との通信がマーシャルのみ。ということですな?」
ミッチャーがたずねると、スプルーアンスはそうだと言って頷いた。
「本国のみならず、ミッドウェーやウェーク。それにハワイといった各基地にも
全く連絡が繋がらない。まるでこのマーシャルがタイムスリップしたようだな。」
彼の言葉に、一同の視線が彼に注がれた。
「ハッハッハッ!スプルーアンス閣下。何を言うんですか。そんな事が起きるはずが無いでしょう。
ここはH・G・ウェルズの世界ではないのですから。」
スミス中将が笑いながらそう言うと、リー中将も同感だと頷く。
「私も同感ですな。きっとハリケーンの影響でまだ電波状態がおかしいのでしょう。」
そこへミッチャーが待ったをかけた。
「いや、それでも電波は通じるぞ。こういう時は無線が聞き取れないのが難点だが、
通信は可能だった。それが全く通じないということは今までに無かったことだ。」
「なら、マーシャルの全通信装置が壊れたことになるぞ?」
ターナーも会話に入ってきた。
「それとも、無線機がマーシャルだけの通信しか入れてないか、あるいは先ほど長官
が言ったとおり、タイムスリップしたか、あるいは世界がここだけを残して一気に
滅んでしまったか。どっちかだぞ。」
「通信参謀。」
スプルーアンスが彼に顔を向けた。
「何度も聞くようでくどいかも知れんが、本当にどことも繋がらないのだな?」
「はい。昨日の3時ごろ以来全く。」
「3時ごろか・・・・・確かあの時は一瞬目の前が真っ白になったな。」
ターナーがふと、思い出したように言った。
「でかい雷だなと思ったんだが、全く音もならなかった。」
「ん?君も見たのか?あの白い光を?」
スミスが奇遇だなと言いながらターナーに言ってきた。
「ああ。見たよ。ちょうど書類に目を通したときにいきなり回りが真っ白になったんだ。
それも一瞬だ。瞬きしたら普通の光景に戻っていたよ。あっ、確かロッキー・マウント
の乗員連中も視界が真っ白くなったとか言ってたな。」
「私もだ。私は寝ているときに見たんだが、いきなりカッと変な白い光を見たんだ。それで
目を開けたら、君と同じようになんとも無かった。」
言葉を終え、スミスが周りを見渡すと、あたりは異様な雰囲気に包まれていた。だれもがその
白い光に心当たりがあるような感じだった。
「お前たちも見たのか?」
スプルーアンスが幕僚に問いかけると、全員が頷いた。
「私も見たのだが・・・・・これは何かあるな。」
彼はそう呟いた。これは何かある。もしかしてどこか異様な世界に引き込まれたのだろうか?
彼がそう思ったとき、ミッチャーが何か言ってきた。
「長官、ではホーランジア出港は見送りということですね?」
スプルーアンスは出港という言葉が引っかかった。そしてすぐさま返事を返した。
「いや、第58任務部隊はこれより出港してもらう。4個郡すべて出す。」
「では、出撃ですか?」
ミッチャーはいささか驚いたような口調だった。
「うむ。出撃だ。機動部隊の偵察機でマーシャルの周りを調べてほしい。それから
マーシャルのカタリナも出す。」
彼の決断は固かった。
「現状があまりにもわからなすぎる。まずは情報収集に当たろう。」
彼がそう言うと、皆が戸惑いの表情を浮かべた。会議は開始わずか15分で終わってしまった。
午後2時 ホーランジア支援の為、出港準備を終えていた第58任務部隊は
急遽、情報収集のため4個郡すべてが外洋に出撃した。
西側には第1、第2任務郡、東側には第3、第4任務郡がそれぞれ向かっていった。
同時に、クェゼリンに駐留しているカタリナ索敵機も同時に四方八方に飛ばした。
急遽、情報収集のため4個郡すべてが外洋に出撃した。
西側には第1、第2任務郡、東側には第3、第4任務郡がそれぞれ向かっていった。
同時に、クェゼリンに駐留しているカタリナ索敵機も同時に四方八方に飛ばした。
インディアナポリス艦上の通信室に午後6時、カタリナからの第一報が入った。
「我、現在ギルバート諸島上空に到達せり、されどもギルバート諸島はあらず。」
その50分後に今度はウェーク島に向かったカタリナからも連絡が入った。
「ウェーク島上空に達するも、同島はあらず。海しかあらず。」
この報告は第5艦隊司令部を驚愕させた。
「長官、どうやら我々は未知なる世界に放り込まれたようです。」
参謀長のデイビス少将が顔を青ざめてそう言った。
「機動部隊はどうなっている?まだ索敵機を飛ばさんのか?」
「ミッチャー提督の機動部隊は、この4つの地点にいます。」
作戦地図にマーシャルを囲むようにして離れていく線がある。それはミッチャーが率いる
TF58である。各任務郡とも24ノットのスピードで航行しているから約180キロ
離れている。
「ミッチャー提督はあと200マイル進んでから索敵機を発艦させるようです。ですから
翌日にはミッチャー機動部隊も索敵行動に移ります。」
本来、機動部隊の分散は避けたい行動だ。なぜなら、日本の基地航空隊、機動部隊に捕捉
されれば大量の攻撃機が向かってくるからだ。
そうなれば、1個郡のみの機動部隊では敵機の攻撃を支えきれず、たちまち叩き潰されてしまうだろう。
だが、今は違う。この世界は、元の世界にあるはずのものがない。
ひょっとしたら日本機動部隊、基地航空隊も無いのかもしれない。そう思ってミッチャーは普段なら
2郡以上で密集させるのをあえて分散させたのだろう。
「明日はより有力な情報が入るでしょう。」
「うむ。明日を待つとしよう。」
スプルーアンスは頷いた。心中では、なんでこんなことになったのか?という疑念が常に渦巻いていた。
「我、現在ギルバート諸島上空に到達せり、されどもギルバート諸島はあらず。」
その50分後に今度はウェーク島に向かったカタリナからも連絡が入った。
「ウェーク島上空に達するも、同島はあらず。海しかあらず。」
この報告は第5艦隊司令部を驚愕させた。
「長官、どうやら我々は未知なる世界に放り込まれたようです。」
参謀長のデイビス少将が顔を青ざめてそう言った。
「機動部隊はどうなっている?まだ索敵機を飛ばさんのか?」
「ミッチャー提督の機動部隊は、この4つの地点にいます。」
作戦地図にマーシャルを囲むようにして離れていく線がある。それはミッチャーが率いる
TF58である。各任務郡とも24ノットのスピードで航行しているから約180キロ
離れている。
「ミッチャー提督はあと200マイル進んでから索敵機を発艦させるようです。ですから
翌日にはミッチャー機動部隊も索敵行動に移ります。」
本来、機動部隊の分散は避けたい行動だ。なぜなら、日本の基地航空隊、機動部隊に捕捉
されれば大量の攻撃機が向かってくるからだ。
そうなれば、1個郡のみの機動部隊では敵機の攻撃を支えきれず、たちまち叩き潰されてしまうだろう。
だが、今は違う。この世界は、元の世界にあるはずのものがない。
ひょっとしたら日本機動部隊、基地航空隊も無いのかもしれない。そう思ってミッチャーは普段なら
2郡以上で密集させるのをあえて分散させたのだろう。
「明日はより有力な情報が入るでしょう。」
「うむ。明日を待つとしよう。」
スプルーアンスは頷いた。心中では、なんでこんなことになったのか?という疑念が常に渦巻いていた。
5月4日 午前4時 マーシャル諸島北西380マイル地点
第58任務部隊の第1郡は、午前4時に索敵機の発艦準備を終えた。空母ホーネット
から4機、ヨークタウンから5機、軽空母ベローウッド、バターンからそれぞれ3機
が発艦する予定だ。
第1郡の司令官クラーク少将は、艦橋から偵察機の発艦を見守っていた。柔和な風貌で
体つきは普通であるが、どことなく人が良さそうなおじさんと言う印象がある。
ずんぐりした格好のアベンジャーが飛行甲板をするするとすべり、艦首から空に舞い上がった。
それが合図だったかのように、後続機が次々に轟音を立てながら発艦していった。
左隣の正規空母ヨークタウンも偵察機を発艦させている。
「司令、第1索敵隊、発艦終わりました。」
「うん。ご苦労。」
敬礼をした通信士官に答礼して、彼は偵察隊が飛んで言った北方の空を見つめた。
「本当ならジャップの機動部隊を見つける任務であればうれしいのだが。」
クラーク少将は苦笑しながら呟いた。
「偵察任務に使われるとはな。まっ、情報が全然足りないから収集活動は必要か。」
第58任務部隊の第1郡は、午前4時に索敵機の発艦準備を終えた。空母ホーネット
から4機、ヨークタウンから5機、軽空母ベローウッド、バターンからそれぞれ3機
が発艦する予定だ。
第1郡の司令官クラーク少将は、艦橋から偵察機の発艦を見守っていた。柔和な風貌で
体つきは普通であるが、どことなく人が良さそうなおじさんと言う印象がある。
ずんぐりした格好のアベンジャーが飛行甲板をするするとすべり、艦首から空に舞い上がった。
それが合図だったかのように、後続機が次々に轟音を立てながら発艦していった。
左隣の正規空母ヨークタウンも偵察機を発艦させている。
「司令、第1索敵隊、発艦終わりました。」
「うん。ご苦労。」
敬礼をした通信士官に答礼して、彼は偵察隊が飛んで言った北方の空を見つめた。
「本当ならジャップの機動部隊を見つける任務であればうれしいのだが。」
クラーク少将は苦笑しながら呟いた。
「偵察任務に使われるとはな。まっ、情報が全然足りないから収集活動は必要か。」
その2時間後、クラークはコーヒーを飲んで艦橋で艦長と立ち話をしていた。そこに通信士官
が電報を持って来た。
「司令、索敵3番より電文です。」
「読んでみろ」
「はっ!我、南鳥島上空に到達せるも同島は見当たらず。」
「無かった・・・・のか。」
「いえ、続きがあります・・・・・」
「どうした、言わんか。」
艦長が催促すると、通信士官は謝って続きを読んだ。
「南鳥島の代わりに大陸を発見す。木造の帆船、水車を発見せり。」
その報告に、クラークは思考が停止した。
が電報を持って来た。
「司令、索敵3番より電文です。」
「読んでみろ」
「はっ!我、南鳥島上空に到達せるも同島は見当たらず。」
「無かった・・・・のか。」
「いえ、続きがあります・・・・・」
「どうした、言わんか。」
艦長が催促すると、通信士官は謝って続きを読んだ。
「南鳥島の代わりに大陸を発見す。木造の帆船、水車を発見せり。」
その報告に、クラークは思考が停止した。