9月10日 午前8時40分
陸軍第790航空隊に所属するB-25ミッチェルは、今しがたエイレーンの森を越えようとしていた。
B-25の機長であるポール・フランソワ大尉は、下界の森をみつめた。
森の所々に昨夜の艦砲射撃で受けた箇所がちらほらと見える。
その箇所は、爆心地を中心に周りの木が吹き飛んで、10メートル以上はある穴が開いていた。
それもかなりの数である。
「見た限りでは30以上はありますな。」
左隣の副機長であるジミー・グレゴリー少尉が言ってきた。
「従兄弟が海軍の戦艦コロラドに乗っていて、昔そいつから聞いたんですが、戦艦の砲弾って、
16インチ砲で砲弾の重量が1トンを超えるらしいです。」
「1トンか・・・・このミッチェルは爆弾が1.3トンまで積める。
だとすると、俺たちが見たクレーター数からして、30機分のB-25が爆撃したことになるな。」
「いや、威力は16インチ砲弾のほうが強いですから、もっといくかもしれませんよ。」
「確かにな。」
昨日の夜まで、この森の下には何万ものバーマント兵がいた。
その森に、大口径砲弾を、なんと1800発も叩き込んだのだ。
「確実に1個師団はぶっ飛んだぞ。」
出撃前に彼はグレゴリー少尉に向かってそう言っている。
森へ抜けると、広大な平野が続いている。その平野部に、一群の群れがある。
「左前方に人の群れです!」
グレゴリー少尉が叫んだ。フランソワ大尉は視線を左に移し、目をさらにして見つめる。
かすかながらだが、確かに人影の集団が見える。
陸軍第790航空隊に所属するB-25ミッチェルは、今しがたエイレーンの森を越えようとしていた。
B-25の機長であるポール・フランソワ大尉は、下界の森をみつめた。
森の所々に昨夜の艦砲射撃で受けた箇所がちらほらと見える。
その箇所は、爆心地を中心に周りの木が吹き飛んで、10メートル以上はある穴が開いていた。
それもかなりの数である。
「見た限りでは30以上はありますな。」
左隣の副機長であるジミー・グレゴリー少尉が言ってきた。
「従兄弟が海軍の戦艦コロラドに乗っていて、昔そいつから聞いたんですが、戦艦の砲弾って、
16インチ砲で砲弾の重量が1トンを超えるらしいです。」
「1トンか・・・・このミッチェルは爆弾が1.3トンまで積める。
だとすると、俺たちが見たクレーター数からして、30機分のB-25が爆撃したことになるな。」
「いや、威力は16インチ砲弾のほうが強いですから、もっといくかもしれませんよ。」
「確かにな。」
昨日の夜まで、この森の下には何万ものバーマント兵がいた。
その森に、大口径砲弾を、なんと1800発も叩き込んだのだ。
「確実に1個師団はぶっ飛んだぞ。」
出撃前に彼はグレゴリー少尉に向かってそう言っている。
森へ抜けると、広大な平野が続いている。その平野部に、一群の群れがある。
「左前方に人の群れです!」
グレゴリー少尉が叫んだ。フランソワ大尉は視線を左に移し、目をさらにして見つめる。
かすかながらだが、確かに人影の集団が見える。
「よし、確かめるぞ。」
フランソワ大尉は機首をその方向に向けた。現在、高度は2500メートル。
速力は240マイル(384キロ)。
(本来なら、1200ほどで確かめるんだが、敵は対空火器を持っているからな。用心しねえと)
彼は心の中でそう呟いた。
昨日の航空攻撃で、米側はバーマント軍の対空機銃によって44機が撃墜されている。
撃墜機の内訳は、海兵隊のF4Uが2機、陸軍のP-47が4機、P-51が3機、B-25が3機、A-20ハボック7機。
海軍のF6Fが7機、SBDが3機、SB2Cが8機、TBFが7機失われている。
いずれもが、低空での機銃掃射のさいに反撃を食らっている。
この他にも陸軍側で24機、海軍側で54機が機銃弾を受けている。
そのうち修理不能機は陸軍でB-25が1機、P-51が1機。海軍でF6Fが3機、TBFが2機出ている。
この事から、フランソワ大尉は出撃前に、なるべく高度1600以上を飛べと言われている。
そのため、フランソワは高度2500を維持しながら、バーマント軍の軍勢に近づいていった。
バーマント軍の軍勢の上空に来た。敵はたった1機のB-25には興味ないのか、ひたすら西に向かって歩き続けている。
彼らは鉄道に沿って歩いているが、その様子は、葬列さながらの寂しさを感じる。
「敗軍の部隊というものは、なんか惨めですねえ。」
「そうだな。昨日は敵側は散々だったからな。昼間の大攻撃は完全に失敗し、
夜には軍艦に撃ちまくられる。まさに泣きっ面に蜂の状態だな。」
「やっぱ、戦艦部隊の砲撃が一番利いたんですかね?森のあちこちに砲弾穴がありましたから。」
フランソワ大尉は機首をその方向に向けた。現在、高度は2500メートル。
速力は240マイル(384キロ)。
(本来なら、1200ほどで確かめるんだが、敵は対空火器を持っているからな。用心しねえと)
彼は心の中でそう呟いた。
昨日の航空攻撃で、米側はバーマント軍の対空機銃によって44機が撃墜されている。
撃墜機の内訳は、海兵隊のF4Uが2機、陸軍のP-47が4機、P-51が3機、B-25が3機、A-20ハボック7機。
海軍のF6Fが7機、SBDが3機、SB2Cが8機、TBFが7機失われている。
いずれもが、低空での機銃掃射のさいに反撃を食らっている。
この他にも陸軍側で24機、海軍側で54機が機銃弾を受けている。
そのうち修理不能機は陸軍でB-25が1機、P-51が1機。海軍でF6Fが3機、TBFが2機出ている。
この事から、フランソワ大尉は出撃前に、なるべく高度1600以上を飛べと言われている。
そのため、フランソワは高度2500を維持しながら、バーマント軍の軍勢に近づいていった。
バーマント軍の軍勢の上空に来た。敵はたった1機のB-25には興味ないのか、ひたすら西に向かって歩き続けている。
彼らは鉄道に沿って歩いているが、その様子は、葬列さながらの寂しさを感じる。
「敗軍の部隊というものは、なんか惨めですねえ。」
「そうだな。昨日は敵側は散々だったからな。昼間の大攻撃は完全に失敗し、
夜には軍艦に撃ちまくられる。まさに泣きっ面に蜂の状態だな。」
「やっぱ、戦艦部隊の砲撃が一番利いたんですかね?森のあちこちに砲弾穴がありましたから。」
「そうかもしれない。敵は夜戦をやろうと構えていたところに、いきなり砲撃だ。
そしてその砲撃で、大勢の味方が吹っ飛んじまったのだろう。正面には装備優秀な敵が備えている。
そこに横槍の艦砲射撃だ。こんなんじゃ俺でもやる気無くすな。」
「まあ、敵の司令官の判断は結果としてはいいでしょう。なんたって、これ以上無意味な犠牲が出なくて済みますからね。」
「そうだな。」
2人はそれっきり、黙り込んだ。それから彼らのB-25はバーマント軍の上空で偵察を続けた。
彼ら2人は、いや、米側は現時点で、昨夜の砲撃が敵軍の最高司令官を吹き飛ばしたことを知らない。
ただ、砲撃で敵の戦意を削ぎ、撤退のきっかけを作ったとしか思っていない。
そしてその砲撃で、大勢の味方が吹っ飛んじまったのだろう。正面には装備優秀な敵が備えている。
そこに横槍の艦砲射撃だ。こんなんじゃ俺でもやる気無くすな。」
「まあ、敵の司令官の判断は結果としてはいいでしょう。なんたって、これ以上無意味な犠牲が出なくて済みますからね。」
「そうだな。」
2人はそれっきり、黙り込んだ。それから彼らのB-25はバーマント軍の上空で偵察を続けた。
彼ら2人は、いや、米側は現時点で、昨夜の砲撃が敵軍の最高司令官を吹き飛ばしたことを知らない。
ただ、砲撃で敵の戦意を削ぎ、撤退のきっかけを作ったとしか思っていない。
悠然と旋回していたB-25はようやく過ぎ去って行った。
恐らくただ自分達の様子を見に来ただけだろう。
レイックル軍曹はそう思った。
そして再び周りに視線を巡らせる。味方の将兵が歩いている。
その表情は、どれもこれも曇ったままだ。
「敗軍の兵たち・・・・か。」
彼は、布切れで吊った左腕をさすりながら、小さく呟いた。
「でも、確かな事があります。」
右隣に居る彼の部下、この戦いで唯一生き残った彼の分隊の兵である。その兵が口を開いた。
「ここしばらくは、敵の銃弾に倒れる心配がありません。」
「ちげえねえ。」
レイックル軍曹は引きつった笑みを浮かべた。
昨日の戦闘は、まさに地獄そのものだった。
待ち構えていたアメリカ軍は、大量の航空機、そして銃器、砲撃で進撃してきた味方軍を次々に狙い撃ちした。
期待の陣地突破用のストーンゴーレムは最初の段階で早々と全滅し、味方の騎兵、歩兵部隊も相次いで壊滅した。
最もきつかったのが、敵の陣地に取り付く前だった。敵軍は、まるで吐き出すように大量の銃弾を放ってきた。
これに討ち取られた味方は数知れず、あっという間に大半がバタバタ打ち倒された。
それでも、レイックル軍曹を始めとする生き残りが敵軍陣地に殴り込み、相当の被害を与えた。
恐らくただ自分達の様子を見に来ただけだろう。
レイックル軍曹はそう思った。
そして再び周りに視線を巡らせる。味方の将兵が歩いている。
その表情は、どれもこれも曇ったままだ。
「敗軍の兵たち・・・・か。」
彼は、布切れで吊った左腕をさすりながら、小さく呟いた。
「でも、確かな事があります。」
右隣に居る彼の部下、この戦いで唯一生き残った彼の分隊の兵である。その兵が口を開いた。
「ここしばらくは、敵の銃弾に倒れる心配がありません。」
「ちげえねえ。」
レイックル軍曹は引きつった笑みを浮かべた。
昨日の戦闘は、まさに地獄そのものだった。
待ち構えていたアメリカ軍は、大量の航空機、そして銃器、砲撃で進撃してきた味方軍を次々に狙い撃ちした。
期待の陣地突破用のストーンゴーレムは最初の段階で早々と全滅し、味方の騎兵、歩兵部隊も相次いで壊滅した。
最もきつかったのが、敵の陣地に取り付く前だった。敵軍は、まるで吐き出すように大量の銃弾を放ってきた。
これに討ち取られた味方は数知れず、あっという間に大半がバタバタ打ち倒された。
それでも、レイックル軍曹を始めとする生き残りが敵軍陣地に殴り込み、相当の被害を与えた。
だが、地上部隊の善戦はほんの一握りの時間でしかなかった。
第1線陣地を占領したとたん、洋上の敵機動部隊からやってきた艦載機にたかられ、あっという間に
残存部隊の大多数が死傷してしまった。
これに業を煮やしたレイックル軍曹は(撤退時に現地の最高指揮官になっていた)全部隊撤退を命じた。
そして、森の前の味方陣地に戻ってきたのは、わずか80名しかいなかった。
このため、第89歩兵師団は事実上全滅状態になった。
味方の被害甚大に驚愕した上層部は昼間の戦闘を中止。戦闘は夜戦に持ち込まれる事になった。
残存わずかとなった第89歩兵師団は、第64歩兵旅団に編入されて、夜間の攻撃を行う予定であったが、
その予定された攻撃も、ザラーク湾に乗り込んだ米戦艦部隊の砲撃によって吹き飛んでしまった。
この砲撃で彼の分隊の部下も4人が戦死した。レイックルも木の枝で左腕を傷付けられた。
そして砲撃が終わり、辺りには鉄の暴風の甚大な被害に呆然とする将兵と、傷に呻く多数の負傷者が残された。
この砲撃で、バーマント軍第8軍は、渡そうとしていた小銃の弾薬が、弾薬庫共々、16インチ砲弾によって叩き潰されていた。
そして809人が死亡し、1020人が負傷した。
そして、午後10時50分、レイックル軍曹は、突然放心状態に陥った魔道将校から、信じられない情報を聞いた。
東方軍集団司令官オリオス・ルーゲラー騎士元帥戦死。
その情報はたちまち口コミで広がっていき、臨時に東方軍集団司令官に任ぜられた
第8軍司令官コルレ・イルフェリンド大将は全軍に撤退を命じた。
彼いわく、
第1線陣地を占領したとたん、洋上の敵機動部隊からやってきた艦載機にたかられ、あっという間に
残存部隊の大多数が死傷してしまった。
これに業を煮やしたレイックル軍曹は(撤退時に現地の最高指揮官になっていた)全部隊撤退を命じた。
そして、森の前の味方陣地に戻ってきたのは、わずか80名しかいなかった。
このため、第89歩兵師団は事実上全滅状態になった。
味方の被害甚大に驚愕した上層部は昼間の戦闘を中止。戦闘は夜戦に持ち込まれる事になった。
残存わずかとなった第89歩兵師団は、第64歩兵旅団に編入されて、夜間の攻撃を行う予定であったが、
その予定された攻撃も、ザラーク湾に乗り込んだ米戦艦部隊の砲撃によって吹き飛んでしまった。
この砲撃で彼の分隊の部下も4人が戦死した。レイックルも木の枝で左腕を傷付けられた。
そして砲撃が終わり、辺りには鉄の暴風の甚大な被害に呆然とする将兵と、傷に呻く多数の負傷者が残された。
この砲撃で、バーマント軍第8軍は、渡そうとしていた小銃の弾薬が、弾薬庫共々、16インチ砲弾によって叩き潰されていた。
そして809人が死亡し、1020人が負傷した。
そして、午後10時50分、レイックル軍曹は、突然放心状態に陥った魔道将校から、信じられない情報を聞いた。
東方軍集団司令官オリオス・ルーゲラー騎士元帥戦死。
その情報はたちまち口コミで広がっていき、臨時に東方軍集団司令官に任ぜられた
第8軍司令官コルレ・イルフェリンド大将は全軍に撤退を命じた。
彼いわく、
「これ以上、勝ち目の無い戦いを続けるのは、武人にあるまじき行為である」
こうして、米戦艦部隊の砲撃は、多くの敵兵を吹き飛ばしたばかりか、
その戦意すらも、綺麗さっぱり吹き飛ばしてしまったのである。
「次の駅まであと・・・・」
「6キロ、6キロです。」
部下、イザレル・アス1等兵は自身ありげに行ってくる。
「6キロか。イザレル、どうしてわかった?」
「あれですよ。」
彼は右方向を顎でしゃくった。
イザレルは両方の手の骨が折れているので、指をさすことが出来ない。
右方向には、やや小高い丘が聳え立っている。
頂上には緑の木が生い茂っており、目印にはもってこいの丘である。
「友人の砲兵が、丘から次の駅までは6キロちょうどと言っていました。」
「なるほど。分かりやすいな。」
レイックルは納得する。
味方の兵は、相変わらず、ゆっくりとした足並みで次の駅に向かっていた。
その戦意すらも、綺麗さっぱり吹き飛ばしてしまったのである。
「次の駅まであと・・・・」
「6キロ、6キロです。」
部下、イザレル・アス1等兵は自身ありげに行ってくる。
「6キロか。イザレル、どうしてわかった?」
「あれですよ。」
彼は右方向を顎でしゃくった。
イザレルは両方の手の骨が折れているので、指をさすことが出来ない。
右方向には、やや小高い丘が聳え立っている。
頂上には緑の木が生い茂っており、目印にはもってこいの丘である。
「友人の砲兵が、丘から次の駅までは6キロちょうどと言っていました。」
「なるほど。分かりやすいな。」
レイックルは納得する。
味方の兵は、相変わらず、ゆっくりとした足並みで次の駅に向かっていた。
9月10日 午後2時
「長官、第5水陸両用軍団司令部は防衛戦の終結宣言を下したようです。」
参謀長のデイビス少将は、イスに座って読書を嗜んでいるスプルーアンス大将にそう報告した。
「そうか。バーマント軍は撤退したのか。」
「はい。情報によると、バーマント軍の最後尾部隊は西18キロの所を西進中とのことです。」
「なるほど・・・・・昨夜の砲撃が利いたものと見えるな。」
スプルーアンスは本をテーブルに置くと、テーブルのコーヒーを飲み干した。
コーヒーは冷えていてまずい。
「作戦室に戻るか。」
彼はそう呟くと、イスから立ち上がって長官公室を出た。
しばらくして作戦室に入った。
作戦室にはレイムと情報参謀のアームストロング中佐、作戦参謀のフォレステル大佐が地図を見ながら話し合っている。
「長官、敵は戦線を離脱中のようです。」
「ああ、参謀長から聞いたよ。それにしても、敵が一斉に撤退を開始すると言うのが少々驚きだな。
私としては、敵の戦意を削いで、地上部隊の作戦をやりやすくしようと思ったのだが・・・・・・・
レイム君、何か分かるかな?」
スプルーアンスは、レイムに話を振った。
レイムはしばらく考え込む。やがて思い立ったのか、自分の意見を言い始めた。
「長官、第5水陸両用軍団司令部は防衛戦の終結宣言を下したようです。」
参謀長のデイビス少将は、イスに座って読書を嗜んでいるスプルーアンス大将にそう報告した。
「そうか。バーマント軍は撤退したのか。」
「はい。情報によると、バーマント軍の最後尾部隊は西18キロの所を西進中とのことです。」
「なるほど・・・・・昨夜の砲撃が利いたものと見えるな。」
スプルーアンスは本をテーブルに置くと、テーブルのコーヒーを飲み干した。
コーヒーは冷えていてまずい。
「作戦室に戻るか。」
彼はそう呟くと、イスから立ち上がって長官公室を出た。
しばらくして作戦室に入った。
作戦室にはレイムと情報参謀のアームストロング中佐、作戦参謀のフォレステル大佐が地図を見ながら話し合っている。
「長官、敵は戦線を離脱中のようです。」
「ああ、参謀長から聞いたよ。それにしても、敵が一斉に撤退を開始すると言うのが少々驚きだな。
私としては、敵の戦意を削いで、地上部隊の作戦をやりやすくしようと思ったのだが・・・・・・・
レイム君、何か分かるかな?」
スプルーアンスは、レイムに話を振った。
レイムはしばらく考え込む。やがて思い立ったのか、自分の意見を言い始めた。
「考えられる点はいくつかあります。まず1つが、昨日の戦闘で甚大な損害を出したため、
これ以上の作戦が困難になったか。もう1つは、昨夜の艦砲射撃で重要な、例えば
主戦力師団を粉砕されたか、あるいは・・・・・・」
「あるいは?」
「・・・・・敵の総大将を吹き飛ばしてしまった・・・・かです。
バーマント軍の戦意が高いのは既にお察しと思われます。」
彼女の言葉に誰もが頷く。バーマント軍の戦意の高さは幾度も発揮されている。
海軍も、飛空挺によって軽空母サンジャシントと駆逐艦ドーチを撃沈されているし、
水上砲戦でも大損害を被る艦艇が度々出てきている。
「今撤退中のバーマント軍はグランスプ軍団と呼ばれる精鋭部隊で、軍団長のオリオス・ルーゲラー騎士元帥は
部下からも慕われており、ヴァルレキュア戦でも常に先頭を切って戦っていた軍です。」
レイムの語調が、後半部分だけやや震える。スプルーアンスは一瞬どうしたのか?と思ったが、レイムは言葉を続ける。
「この軍団の功績は抜群で、常に無敗で押し通してきました。
軍団の将兵は皇帝よりも、ルーゲラー元帥を士気の拠り所にしていたようです。
彼の指揮する作戦は常に勝利に導かれています。」
バーマント軍はよく、敵の指揮を阻喪させるために、よく味方軍の強さを敵に知らしめていた。
この戦術は意外に効果があり、ヴァルレキュア戦に至るまではかなりの対抗軍が降伏している。
最も、この戦術はヴァルレキュア相手には全く通じていない。
これ以上の作戦が困難になったか。もう1つは、昨夜の艦砲射撃で重要な、例えば
主戦力師団を粉砕されたか、あるいは・・・・・・」
「あるいは?」
「・・・・・敵の総大将を吹き飛ばしてしまった・・・・かです。
バーマント軍の戦意が高いのは既にお察しと思われます。」
彼女の言葉に誰もが頷く。バーマント軍の戦意の高さは幾度も発揮されている。
海軍も、飛空挺によって軽空母サンジャシントと駆逐艦ドーチを撃沈されているし、
水上砲戦でも大損害を被る艦艇が度々出てきている。
「今撤退中のバーマント軍はグランスプ軍団と呼ばれる精鋭部隊で、軍団長のオリオス・ルーゲラー騎士元帥は
部下からも慕われており、ヴァルレキュア戦でも常に先頭を切って戦っていた軍です。」
レイムの語調が、後半部分だけやや震える。スプルーアンスは一瞬どうしたのか?と思ったが、レイムは言葉を続ける。
「この軍団の功績は抜群で、常に無敗で押し通してきました。
軍団の将兵は皇帝よりも、ルーゲラー元帥を士気の拠り所にしていたようです。
彼の指揮する作戦は常に勝利に導かれています。」
バーマント軍はよく、敵の指揮を阻喪させるために、よく味方軍の強さを敵に知らしめていた。
この戦術は意外に効果があり、ヴァルレキュア戦に至るまではかなりの対抗軍が降伏している。
最も、この戦術はヴァルレキュア相手には全く通じていない。
「バーマント軍の体質からすると、撤退の原因となったのは、やはりルーゲラー元帥が負傷したか、あるいは・・・・」
「戦死したか、だな?」
スプルーアンスは怜悧な口調で言ってきた。
「はい。恐らくは。」
レイムはそう言って頷いた。だとすると、昨日の艦砲射撃はラッキーヒットを当てたと言う事になる。
スプルーアンスは、机の地図を眺めた。地図には森から西に伸びる赤い矢印が描かれている。
たった今しがた描かれた矢印だ。
この矢印は、撤退中のバーマント軍を表している。
スプルーアンスは、その地図に手を置いた。
(もし・・・・・敵の総大将を討ち取ったとすると・・・・・あの急な戦意喪失も説明がつくな。
と言う事は、戦艦部隊の派遣は吉と出たか)
運命と言うものは情け容赦ないものだな、と彼は思った。
「損傷した艦はどうなっている?」
スプルーアンスは話題を変えた。
「ハッ。まず大破したニューオーリンズですが、現在缶ドッグに収容して目下修理中です。
ミネアポリスは中破レベルえありますが、こちらはドッグに入れず、工作艦の戦場修理でなんとかなると
伝えられています。ニューオーリンズは最低でも1ヵ月半、ミネアポリスは3週間ほど戦線を離れます。
それから小破したサンフランシスコとマイアミは、いずれも1週間程度の修理で済むそうです。」
「そうか。それにしても、バーケはよくやってくれたな。大したものだ。」
彼は無表情な顔つきで、淡々とそう口を動かす。
「とりあえず、ひと段落はついたな。バーケ部隊の将兵によくやったと伝えてくれ。」
「戦死したか、だな?」
スプルーアンスは怜悧な口調で言ってきた。
「はい。恐らくは。」
レイムはそう言って頷いた。だとすると、昨日の艦砲射撃はラッキーヒットを当てたと言う事になる。
スプルーアンスは、机の地図を眺めた。地図には森から西に伸びる赤い矢印が描かれている。
たった今しがた描かれた矢印だ。
この矢印は、撤退中のバーマント軍を表している。
スプルーアンスは、その地図に手を置いた。
(もし・・・・・敵の総大将を討ち取ったとすると・・・・・あの急な戦意喪失も説明がつくな。
と言う事は、戦艦部隊の派遣は吉と出たか)
運命と言うものは情け容赦ないものだな、と彼は思った。
「損傷した艦はどうなっている?」
スプルーアンスは話題を変えた。
「ハッ。まず大破したニューオーリンズですが、現在缶ドッグに収容して目下修理中です。
ミネアポリスは中破レベルえありますが、こちらはドッグに入れず、工作艦の戦場修理でなんとかなると
伝えられています。ニューオーリンズは最低でも1ヵ月半、ミネアポリスは3週間ほど戦線を離れます。
それから小破したサンフランシスコとマイアミは、いずれも1週間程度の修理で済むそうです。」
「そうか。それにしても、バーケはよくやってくれたな。大したものだ。」
彼は無表情な顔つきで、淡々とそう口を動かす。
「とりあえず、ひと段落はついたな。バーケ部隊の将兵によくやったと伝えてくれ。」
9月12日 バーマント公国首都 ファルグリン
陸軍最高司令官であるオール・エレメント騎士元帥は、皇帝の玉座の前に足を止めた。
玉座に座るバーマント皇は機嫌が悪い。しきりに指を肘掛にトントン叩いている。
「オール・エレメント元帥。ただいま参りました。」
「うむ。ご苦労。」
バーマント皇は頷くと、閉じていた目を開いた。その目には怒りが混じっている。
「エレメント元帥、グランスプ軍団・・・・もとい、東方軍集団は、公国でも最強の軍団である。
そうであったな?」
「は、はい。おっしゃるとおりであります。」
「ふむ。で、その最強軍団が、なぜ・・・・・なぜ1日で撤退したのだ!!!!」
突如、バーマント皇は怒声を上げた。
「わしは全滅してでもサイフェルバンを取り返せと言ったはずだ!それを軽々しく無視して撤退だと!?
やられたと言っても17万中、8万人。たった半分しかやられておらんではないか!!」
「い・・・一度に投入できる兵力には、限度があって。」
「黙れ!貴様らの敢闘精神が足りぬからだ!最強軍団なら今頃、異世界軍の蛮族共を全て皆殺しにしておるはずだ!
それが、たったの6万ごときの地上軍にやられおって!!」
バーマント皇はエレメントに人差し指をむけ、彼をなじった。
バーマント皇は知らないが、周りの直属将官達は聞くに堪えないような言葉に、顔を歪めていた。
「し、しかし皇帝陛下。あの時、我が地上軍には空中騎士団の支援はありませんでした。
それに対して、異世界軍は飛行場、洋上の空母機動部隊から多数の飛空挺を飛ばして地上軍の支援にあたりました。
はっきり申しまして、あの状況で勝つのは表情に難しかったと言わざるを得ません。
便りの空中騎士団もいない中、どうやって、堅陣を突破せよと言われるのですか?」
陸軍最高司令官であるオール・エレメント騎士元帥は、皇帝の玉座の前に足を止めた。
玉座に座るバーマント皇は機嫌が悪い。しきりに指を肘掛にトントン叩いている。
「オール・エレメント元帥。ただいま参りました。」
「うむ。ご苦労。」
バーマント皇は頷くと、閉じていた目を開いた。その目には怒りが混じっている。
「エレメント元帥、グランスプ軍団・・・・もとい、東方軍集団は、公国でも最強の軍団である。
そうであったな?」
「は、はい。おっしゃるとおりであります。」
「ふむ。で、その最強軍団が、なぜ・・・・・なぜ1日で撤退したのだ!!!!」
突如、バーマント皇は怒声を上げた。
「わしは全滅してでもサイフェルバンを取り返せと言ったはずだ!それを軽々しく無視して撤退だと!?
やられたと言っても17万中、8万人。たった半分しかやられておらんではないか!!」
「い・・・一度に投入できる兵力には、限度があって。」
「黙れ!貴様らの敢闘精神が足りぬからだ!最強軍団なら今頃、異世界軍の蛮族共を全て皆殺しにしておるはずだ!
それが、たったの6万ごときの地上軍にやられおって!!」
バーマント皇はエレメントに人差し指をむけ、彼をなじった。
バーマント皇は知らないが、周りの直属将官達は聞くに堪えないような言葉に、顔を歪めていた。
「し、しかし皇帝陛下。あの時、我が地上軍には空中騎士団の支援はありませんでした。
それに対して、異世界軍は飛行場、洋上の空母機動部隊から多数の飛空挺を飛ばして地上軍の支援にあたりました。
はっきり申しまして、あの状況で勝つのは表情に難しかったと言わざるを得ません。
便りの空中騎士団もいない中、どうやって、堅陣を突破せよと言われるのですか?」
「兵の数だ!いくら敵とはいえ、大軍に攻め込まれればたちまちもみ潰されるはずだ!
君が送った報告書の中にも、ちゃんと戦果があったではないか!」
「戦果は確かにありました。しかし」
「黙れ!言い訳は聞きたくない!1ヵ月後にもう一度奪還作戦をやるぞ!
今度は空中騎士団も参加してもらう。そうすれば、前のような惨めな敗北は起こらんはずだ。」
エレメントは絶句した。この人は何も分かっていない。
「お言葉ですが、これ以上兵の消耗が続くと、国民に実情が知られる事になります。
どうか、侵攻はもうしばらく様子を見たほうがいいのでは?」
「いや、君の判断には承服しかねる。」
バーマント皇は彼の提案を突っぱねた。
「味方が苦しいときは敵も苦しいのだ。戦場と言うものはそう言うもんだろう。」
さらりと言ってのけた。流石のエレメント元帥も、この言葉に反応した。
(そう言うもんだろう・・・・・だと?この人は・・・・・この人は!!)
内心、怒りが沸き立つ。顔が次第に赤くなった。
「そう言うことだ。すぐに新手の部隊の準備を進めたまえ。」
その言葉に対して、罵声をあげかけた瞬間、
「大変でございます!」
後ろから侍従係が大声で叫んだ。
「何事か?」
慌てて走ってきたその侍従係は、血相を変えた表情を浮かべている。
「異世界軍機が首都に接近しております!」
「な・・・・なんだとぉ?」
先ほどまで血色の良かったバーマント皇の顔色が、さっと変わった。
君が送った報告書の中にも、ちゃんと戦果があったではないか!」
「戦果は確かにありました。しかし」
「黙れ!言い訳は聞きたくない!1ヵ月後にもう一度奪還作戦をやるぞ!
今度は空中騎士団も参加してもらう。そうすれば、前のような惨めな敗北は起こらんはずだ。」
エレメントは絶句した。この人は何も分かっていない。
「お言葉ですが、これ以上兵の消耗が続くと、国民に実情が知られる事になります。
どうか、侵攻はもうしばらく様子を見たほうがいいのでは?」
「いや、君の判断には承服しかねる。」
バーマント皇は彼の提案を突っぱねた。
「味方が苦しいときは敵も苦しいのだ。戦場と言うものはそう言うもんだろう。」
さらりと言ってのけた。流石のエレメント元帥も、この言葉に反応した。
(そう言うもんだろう・・・・・だと?この人は・・・・・この人は!!)
内心、怒りが沸き立つ。顔が次第に赤くなった。
「そう言うことだ。すぐに新手の部隊の準備を進めたまえ。」
その言葉に対して、罵声をあげかけた瞬間、
「大変でございます!」
後ろから侍従係が大声で叫んだ。
「何事か?」
慌てて走ってきたその侍従係は、血相を変えた表情を浮かべている。
「異世界軍機が首都に接近しております!」
「な・・・・なんだとぉ?」
先ほどまで血色の良かったバーマント皇の顔色が、さっと変わった。
首都上空に現れたのは、B-24爆撃機20機に護衛のP-51戦闘機20機だった。
この編隊を見かけたファルグリン市民は仰天した。
そして、B-24編隊が首都上空に到達したとき、誰もが腹から爆弾をばら撒かれると確信した。
以前のエンボスト空襲では、市街地にも被害が出ている。
遂に異世界軍は市民までも狙い始めたのか!誰もが絶望的な気持ちに包まれた。
腹から何かが落ちた。それは・・・・・・・・・・・
紙・・・であった。一塊の物体が落ちると、それは空中でばあっと散った。
無数の紙がヒラヒラと舞いながら、ゆっくりと市街地に落ちていく。
B-24は腹から紙をバラバラ撒き続ける。
それは、公国側が最新の情報の詰まった広報紙を配布した1時間後の出来事であった。
この編隊を見かけたファルグリン市民は仰天した。
そして、B-24編隊が首都上空に到達したとき、誰もが腹から爆弾をばら撒かれると確信した。
以前のエンボスト空襲では、市街地にも被害が出ている。
遂に異世界軍は市民までも狙い始めたのか!誰もが絶望的な気持ちに包まれた。
腹から何かが落ちた。それは・・・・・・・・・・・
紙・・・であった。一塊の物体が落ちると、それは空中でばあっと散った。
無数の紙がヒラヒラと舞いながら、ゆっくりと市街地に落ちていく。
B-24は腹から紙をバラバラ撒き続ける。
それは、公国側が最新の情報の詰まった広報紙を配布した1時間後の出来事であった。