大陸暦1098年 5月19日 バーマント公国首都 ファルグリン
ファルグリンはバーマント公国の首都として建国以来、発展を続けた町である。市街には
立派なレンガ造りの建物が並び、市場には人手溢れかえっていた。
そんな中、このファルグリンの真ん中に、どっしりと構えるように居座った城があった。
その城こそ、バーマント公国の皇帝が居座る根城であり、この国の心臓である。
その巨大な城の中のとある一角で、円卓に座った6人の男達が話を重ねていた。
「諸君は、この紙を見てどう思うかね?」
1人の、白髪交じりの男が顔を上げ、口を開いた。尊大そうな服装ながら、がっしりした
体格で、顔立ちは白髪が多少混じっているが、目が鋭く、まるで獣のようである。
このいかつい顔した男こそ、この国の皇帝、グルアロス・バーマントその人である。
「私としては、理解に苦しむ内容です。」
頭が禿げ上がった男がそう言った。バーマント公国海軍の最高司令官、ネイリスト・
グラッツマン元帥である。
「そもそも、なぜヴァルレキュア人が、このアメリカとやらの蛮族共をどうやって召喚したのか、
その、理由は分かります。魔法においては世界一のヴァルレキュアの魔術師が、起死回生のために
異世界から助っ人を呼んだのでしょう。そしてそれを持って我々に対抗するとの算段です。」
「対抗?敵は一体何人いるのだ?」
バーマント公国陸軍騎士元帥であるオール・エレメントがふんと鼻を鳴らしていった。
「我が軍には200万の軍隊がいるのだぞ。だが、召喚された第5艦隊という変な名前の軍隊には
一体何人の兵隊がいると思う?私的には我が軍の10分の1、いや、100分の1もいないと思う
が。それに、いくら敵が攻めてこようとも、我が軍の精鋭が叩き潰してくれる。」
そこへ、バーマント空中騎士軍司令官であるジャロウス・ワロッチ騎士大将が口を挟んだ。
「叩き潰すですと?叩き潰されるほうは、むしろ我々のほうかもしれませんよ。」
円卓の一同の視線が彼に集中した。
ファルグリンはバーマント公国の首都として建国以来、発展を続けた町である。市街には
立派なレンガ造りの建物が並び、市場には人手溢れかえっていた。
そんな中、このファルグリンの真ん中に、どっしりと構えるように居座った城があった。
その城こそ、バーマント公国の皇帝が居座る根城であり、この国の心臓である。
その巨大な城の中のとある一角で、円卓に座った6人の男達が話を重ねていた。
「諸君は、この紙を見てどう思うかね?」
1人の、白髪交じりの男が顔を上げ、口を開いた。尊大そうな服装ながら、がっしりした
体格で、顔立ちは白髪が多少混じっているが、目が鋭く、まるで獣のようである。
このいかつい顔した男こそ、この国の皇帝、グルアロス・バーマントその人である。
「私としては、理解に苦しむ内容です。」
頭が禿げ上がった男がそう言った。バーマント公国海軍の最高司令官、ネイリスト・
グラッツマン元帥である。
「そもそも、なぜヴァルレキュア人が、このアメリカとやらの蛮族共をどうやって召喚したのか、
その、理由は分かります。魔法においては世界一のヴァルレキュアの魔術師が、起死回生のために
異世界から助っ人を呼んだのでしょう。そしてそれを持って我々に対抗するとの算段です。」
「対抗?敵は一体何人いるのだ?」
バーマント公国陸軍騎士元帥であるオール・エレメントがふんと鼻を鳴らしていった。
「我が軍には200万の軍隊がいるのだぞ。だが、召喚された第5艦隊という変な名前の軍隊には
一体何人の兵隊がいると思う?私的には我が軍の10分の1、いや、100分の1もいないと思う
が。それに、いくら敵が攻めてこようとも、我が軍の精鋭が叩き潰してくれる。」
そこへ、バーマント空中騎士軍司令官であるジャロウス・ワロッチ騎士大将が口を挟んだ。
「叩き潰すですと?叩き潰されるほうは、むしろ我々のほうかもしれませんよ。」
円卓の一同の視線が彼に集中した。
「実は、第2空中騎士団のとある飛空挺が、映写機で攻撃した敵を捉えています。その敵の写真が、
皇帝陛下に渡されたその文書の中に入っています。」
「ん?これかね?」
バーマント皇帝が別の袋に入った映写機の写真を取り出した。ワロッチ騎士大将は既に報告書と写真
は見ていたが、彼はそれを見終わった時、自分達が積み上げてきた自身や誇りが一気に崩れさったと
思った。
皇帝陛下は、映写機から映し出された、未知のものに釘付けとなった。それぞれの写真には、彼らが
しらない未知の船、米機動部隊から繰り出される猛烈な反撃の模様が映し出されていた。
空母を守る護衛艦から吐き出される、目を覆うような対空砲火、連続でVT信管つきの高角砲弾で
撃墜される数機の飛空挺、とてつもなく巨大な砲塔を持った巨大船、30ノット以上の高速で
投弾を次々とかわす平らな甲板の巨大船・・・・・・・・・・・・
まさに、想像を絶する光景が、その写真には映し出されていた。
「その映写機を搭載した攻撃機は、敵弾によって大破しましたが、なんとか基地に帰還しました。
しかし、飛空挺は使用不能になり、2人のパイロットは共に重傷、一生空を飛べない体になりました。」
ワロッチ騎士大将はそう付け加えた。バーマント皇帝は、写真を見終えるとグラッツマン元帥に
手渡した。写真は順めぐりに全員に渡せられ、見せられた。
誰もが言葉を失っていた。
「なるほど・・・・・・・・それなら、陸軍が被ったこの被害も納得がいきますな。」
エレメント元帥が、報告書にあったララスクリス、クロイッチの両軍が被った望外の被害を思い出して
頷いた。
皇帝陛下に渡されたその文書の中に入っています。」
「ん?これかね?」
バーマント皇帝が別の袋に入った映写機の写真を取り出した。ワロッチ騎士大将は既に報告書と写真
は見ていたが、彼はそれを見終わった時、自分達が積み上げてきた自身や誇りが一気に崩れさったと
思った。
皇帝陛下は、映写機から映し出された、未知のものに釘付けとなった。それぞれの写真には、彼らが
しらない未知の船、米機動部隊から繰り出される猛烈な反撃の模様が映し出されていた。
空母を守る護衛艦から吐き出される、目を覆うような対空砲火、連続でVT信管つきの高角砲弾で
撃墜される数機の飛空挺、とてつもなく巨大な砲塔を持った巨大船、30ノット以上の高速で
投弾を次々とかわす平らな甲板の巨大船・・・・・・・・・・・・
まさに、想像を絶する光景が、その写真には映し出されていた。
「その映写機を搭載した攻撃機は、敵弾によって大破しましたが、なんとか基地に帰還しました。
しかし、飛空挺は使用不能になり、2人のパイロットは共に重傷、一生空を飛べない体になりました。」
ワロッチ騎士大将はそう付け加えた。バーマント皇帝は、写真を見終えるとグラッツマン元帥に
手渡した。写真は順めぐりに全員に渡せられ、見せられた。
誰もが言葉を失っていた。
「なるほど・・・・・・・・それなら、陸軍が被ったこの被害も納得がいきますな。」
エレメント元帥が、報告書にあったララスクリス、クロイッチの両軍が被った望外の被害を思い出して
頷いた。
「しかし、私としては対抗策はあると思います。我が軍には近々、小銃、機関銃といった近代兵器が
装備されます。これらの兵器は剣や槍に比べて手軽かつ、威力のある武器です。飛空挺に機関銃を積め
ば、今回全滅した2個空中騎士団のようにはなりません。」
ワロッチ騎士大将はそう確信したように言った。報告書の中では、被撃墜機の半数が、敵の速度の速い
飛空挺に叩き落されたとある。ならば、速力を早めた飛空挺を開発し、これに機関銃を装備して、
これを攻撃部隊の護衛にあてればある程度の被害は軽減できるかもしれない。
彼はそう思っていた。
「私としては、」
バーマント皇帝が言い始めた。
「シュングリルの侵略は諦めるつもりは無いと判断する。陸軍や空中騎士軍の被害は大きいが、まだまだ
戦力はある。よって、殲滅作戦は続行する。それから、海軍にも今回はシュングリル攻撃に出てもらう。」
「はい。分かりました。我々は、意外な敵の出現に思わぬ被害を食らいました。しかし、敵の正体さえ分かれば
こっちのものです。あとは新たな蛮族共の敵襲に備えつつ、準備を整えます。」
「うむ。今回の戦いで、我々は馬鹿にならん被害を受けたが、敵の船も1隻使い物にならなくした。より戦備
を充実させれば、いずれはこの海の蛮族共も皆殺しにできるであろう。」
皇帝はそう言いながら、一枚の写真を見下ろしていた。その写真は、平らな甲板の大型船が、甲板から黒煙を
吹き上げて航行している姿があった。
装備されます。これらの兵器は剣や槍に比べて手軽かつ、威力のある武器です。飛空挺に機関銃を積め
ば、今回全滅した2個空中騎士団のようにはなりません。」
ワロッチ騎士大将はそう確信したように言った。報告書の中では、被撃墜機の半数が、敵の速度の速い
飛空挺に叩き落されたとある。ならば、速力を早めた飛空挺を開発し、これに機関銃を装備して、
これを攻撃部隊の護衛にあてればある程度の被害は軽減できるかもしれない。
彼はそう思っていた。
「私としては、」
バーマント皇帝が言い始めた。
「シュングリルの侵略は諦めるつもりは無いと判断する。陸軍や空中騎士軍の被害は大きいが、まだまだ
戦力はある。よって、殲滅作戦は続行する。それから、海軍にも今回はシュングリル攻撃に出てもらう。」
「はい。分かりました。我々は、意外な敵の出現に思わぬ被害を食らいました。しかし、敵の正体さえ分かれば
こっちのものです。あとは新たな蛮族共の敵襲に備えつつ、準備を整えます。」
「うむ。今回の戦いで、我々は馬鹿にならん被害を受けたが、敵の船も1隻使い物にならなくした。より戦備
を充実させれば、いずれはこの海の蛮族共も皆殺しにできるであろう。」
皇帝はそう言いながら、一枚の写真を見下ろしていた。その写真は、平らな甲板の大型船が、甲板から黒煙を
吹き上げて航行している姿があった。
5月22日、とある前線にバーマント側の返事が届いた。その返事は、四肢が切断された死体つきで送られてきた。
5月25日 午前8時、シュングリル北方20キロ、ウルシー
アメリカ第58任務部隊の延べ1000機以上にも渡る艦載機の猛攻を受けた、バーマント公国のシュングリル侵攻
軍は、喪失した戦力を立て直すため、一旦進撃を停止し、ララスクリス、クロイッチ方面で戦力回復にあたった。
一方、シュングリル沖合いには、マーシャル諸島を出航してきた多数の輸送船団が次々とシュングリル沖に到着し、
ロタ半島の一角は、米の大船団に覆われた。
アメリカ第58任務部隊の延べ1000機以上にも渡る艦載機の猛攻を受けた、バーマント公国のシュングリル侵攻
軍は、喪失した戦力を立て直すため、一旦進撃を停止し、ララスクリス、クロイッチ方面で戦力回復にあたった。
一方、シュングリル沖合いには、マーシャル諸島を出航してきた多数の輸送船団が次々とシュングリル沖に到着し、
ロタ半島の一角は、米の大船団に覆われた。
5月19日に、スプルーアンス大将は、攻撃成功の見返りとして広大な泊地を提供してほしいと頼んだ。ヴァルレキュア
側はすぐに泊地の捜索にあたった。これには米側も協力した。
5月22日、捜索隊はシュングリルより北20キロに艦隊の泊地に理想的な地域を見つけたと報告してきた。
すぐさまスプルーアンスのインディアナポリスが急行した。
その地はウルシーと呼ばれる地域で、現在は小さな村が少数あるだけだが、港としては十分すぎるほどの広い入り江があり、
大船団の停泊には最適だとスプルーアンスは判断した。
そしてその日の午後から早速、米海軍の移動サービス部隊が、シュングリルの北方20キロにあるウルシーに急行した。
村の住人達は、最初は突如見慣れぬ大船団が現れた事で戸惑い、警戒心をむき出しにしたが、上陸してきた米軍将兵は
むしろ低姿勢で彼らに接した。その事から、かれらの警戒心も薄れ、そしてあの凶暴なバーマント軍の侵攻を阻止した
軍隊だと知ると、米軍は熱烈な歓迎を受けた。
村は内陸部にあるため、海岸地帯は無人であった。そこで、米側はまず飛行場などの施設の建設を始めた。輸送船の中から
何台もの土木工作機械が吐き出され、飛行場建設、宿舎建設に最適と思われる土地に派遣された。
翌24日には浮きドッグが、広大な入り江に入港してきた。それから続々と、空母や戦艦といった戦闘艦艇も入泊し、
25日には総勢で400隻以上の大船団が停泊する事となった。
側はすぐに泊地の捜索にあたった。これには米側も協力した。
5月22日、捜索隊はシュングリルより北20キロに艦隊の泊地に理想的な地域を見つけたと報告してきた。
すぐさまスプルーアンスのインディアナポリスが急行した。
その地はウルシーと呼ばれる地域で、現在は小さな村が少数あるだけだが、港としては十分すぎるほどの広い入り江があり、
大船団の停泊には最適だとスプルーアンスは判断した。
そしてその日の午後から早速、米海軍の移動サービス部隊が、シュングリルの北方20キロにあるウルシーに急行した。
村の住人達は、最初は突如見慣れぬ大船団が現れた事で戸惑い、警戒心をむき出しにしたが、上陸してきた米軍将兵は
むしろ低姿勢で彼らに接した。その事から、かれらの警戒心も薄れ、そしてあの凶暴なバーマント軍の侵攻を阻止した
軍隊だと知ると、米軍は熱烈な歓迎を受けた。
村は内陸部にあるため、海岸地帯は無人であった。そこで、米側はまず飛行場などの施設の建設を始めた。輸送船の中から
何台もの土木工作機械が吐き出され、飛行場建設、宿舎建設に最適と思われる土地に派遣された。
翌24日には浮きドッグが、広大な入り江に入港してきた。それから続々と、空母や戦艦といった戦闘艦艇も入泊し、
25日には総勢で400隻以上の大船団が停泊する事となった。
25日午後1時 重巡洋艦インディアナポリス
インディアナポリスの艦橋で本を読んでいたスプルーアンスは、唐突に昼休みの読書を取り上げられた。
その理由は、アームストロング中佐が持ってきた報告にあった。
「長官、バーマント側の反応がありました。」
「どんな反応があった?」
彼は無表情で彼に質問した。
「返事は・・・・・・・・・死体付きで送られてきました。バーマント側の返事は、唯一つでした。
回答は、「「蛮族の意見は聞くに値せず。直ちに死すべし」」でありました。」
スプルーアンスはそうかと言って頷いた。彼は相変わらず、冷静な表情を変えなかった。
「バーマント側はよほど、敵を殲滅しないと納得できないらしい。ならば、我々も彼らを
徹底的に叩くまでだ。弾薬の続く限りな。」
彼は淡々とした口調でそう言った。
インディアナポリスの艦橋で本を読んでいたスプルーアンスは、唐突に昼休みの読書を取り上げられた。
その理由は、アームストロング中佐が持ってきた報告にあった。
「長官、バーマント側の反応がありました。」
「どんな反応があった?」
彼は無表情で彼に質問した。
「返事は・・・・・・・・・死体付きで送られてきました。バーマント側の返事は、唯一つでした。
回答は、「「蛮族の意見は聞くに値せず。直ちに死すべし」」でありました。」
スプルーアンスはそうかと言って頷いた。彼は相変わらず、冷静な表情を変えなかった。
「バーマント側はよほど、敵を殲滅しないと納得できないらしい。ならば、我々も彼らを
徹底的に叩くまでだ。弾薬の続く限りな。」
彼は淡々とした口調でそう言った。
午後2時、スプルーアンスら、第5艦隊の主だった首脳は、第3海兵師団の護衛1個大隊を引き連れて、
ヴァルレキュア王国の首都に向かった。
ヴァルレキュア王国の首都に向かった。