1098年 9月30日 午後3時 ギルアルグ西飛行場上空
照準機の中の敵機は、巧みに左や右に機体を捻らせて、照準を逸らそうとする。
照準機の中の敵機は、巧みに左や右に機体を捻らせて、照準を逸らそうとする。
「畜生!ちょこまかと動きやがって!」
デイビット・マッキャンベル中佐は忌々しげに喚いた。
敵機が照準機に入った瞬間、すかさず引き金を引く。両翼から6丁の12・7ミリ機銃弾が、奔流のように弾き出される。
照準機の左から右にはみ出ようとする敵機の機影に、幾つかの曳光弾が突き刺さった。
胴、尾翼、主翼を数発の機銃弾が突き刺さり、敵機から破片が飛び散る。
その時、反り立った敵機の垂直尾翼から、大きな破片がちぎれとんだ。直後に、敵機はバランスを失って下降していく。
退避時の下降ではない。あきらかに墜落前のダイブである。
敵機が照準機に入った瞬間、すかさず引き金を引く。両翼から6丁の12・7ミリ機銃弾が、奔流のように弾き出される。
照準機の左から右にはみ出ようとする敵機の機影に、幾つかの曳光弾が突き刺さった。
胴、尾翼、主翼を数発の機銃弾が突き刺さり、敵機から破片が飛び散る。
その時、反り立った敵機の垂直尾翼から、大きな破片がちぎれとんだ。直後に、敵機はバランスを失って下降していく。
退避時の下降ではない。あきらかに墜落前のダイブである。
「垂直尾翼を吹っ飛ばしたな。」
マッキャンベル中佐は、敵機から破片が飛び散ったときに、尾翼が大きく欠損していたのを目の当たりにしている。
それが致命傷となって、バーマント機を墜落に至らしめたのである。
それが致命傷となって、バーマント機を墜落に至らしめたのである。
「これで18機目だな。」
彼は一瞬、頬をほころばせた。その時、
「隊長!右上方に敵機!」
不意に味方機からの無線が入った。
はっとなった彼は右上方に向く。
はっとなった彼は右上方に向く。
そこには、まっしぐらに突っ込んでくる別のバーマント機があった。
彼はスロットルレバーを開き、機を増速させた。
プラットアンドホイットニー社製の2000馬力エンジンが力強い音を立てて、520キロ
まで下がっていたスピードを再び、600キロの最高速度まで引き上げる。
重い機体にもかかわらず、ヘルキャットはすぐにスピードを上げていく。
580キロのラインを超え、590キロに達しようとしたその直後、何かの小さな光が眼前に立ちはだかった。
彼はスロットルレバーを開き、機を増速させた。
プラットアンドホイットニー社製の2000馬力エンジンが力強い音を立てて、520キロ
まで下がっていたスピードを再び、600キロの最高速度まで引き上げる。
重い機体にもかかわらず、ヘルキャットはすぐにスピードを上げていく。
580キロのラインを超え、590キロに達しようとしたその直後、何かの小さな光が眼前に立ちはだかった。
「!?」
マッキャンベル中佐は咄嗟にラダーを踏んで、機体を捻ろうとする。
だが、
ガガガン!ベギャアン!
機銃弾の命中する音と振動がヘルキャットを揺さぶり、眼前のエンジンカウリングが火花を散らした。
その刹那、コクピットの外側が真っ黒になった。ベチャッ!という気色の悪い音が耳に飛び込んで来る。
だが、
ガガガン!ベギャアン!
機銃弾の命中する音と振動がヘルキャットを揺さぶり、眼前のエンジンカウリングが火花を散らした。
その刹那、コクピットの外側が真っ黒になった。ベチャッ!という気色の悪い音が耳に飛び込んで来る。
「ああっ!オイルが風防に!!」
マッキャンベル中佐は驚愕の表情を浮かべた。
機体がガクンとつんのめり、心なしかスピードが落ちていくように感じられる。
速度計を見てみると、590キロ近くまで増速していた速度が、今では500キロを割り込み、速度の下降が止まらない。
(なんてこった!俺とした事が!!)
マッキャンベル中佐は、先ほど、敵機を撃墜した時に、一瞬だけ警戒を緩めてしまっていた。
その時は、彼は数秒ほど直線飛行を行っていた。そこへ、別の敵機が横合いから突っ込んできて、マッキャンベル機に機銃弾を叩き込んだのである。
頑丈なヘルキャットは、少しばかりの損傷は大丈夫であるが、今回は運が悪すぎた。
機銃弾の内、数発はエンジン部分にまとまって着弾していた。その際、エンジン内部のパイプを切断し、機構部の一部が破損してしまった。
機銃弾の破孔から真っ黒なオイルが漏れ出し、コクピットの視界を悪くしている。
だが、悪い事はこれだけではなかった。
機体がガクンとつんのめり、心なしかスピードが落ちていくように感じられる。
速度計を見てみると、590キロ近くまで増速していた速度が、今では500キロを割り込み、速度の下降が止まらない。
(なんてこった!俺とした事が!!)
マッキャンベル中佐は、先ほど、敵機を撃墜した時に、一瞬だけ警戒を緩めてしまっていた。
その時は、彼は数秒ほど直線飛行を行っていた。そこへ、別の敵機が横合いから突っ込んできて、マッキャンベル機に機銃弾を叩き込んだのである。
頑丈なヘルキャットは、少しばかりの損傷は大丈夫であるが、今回は運が悪すぎた。
機銃弾の内、数発はエンジン部分にまとまって着弾していた。その際、エンジン内部のパイプを切断し、機構部の一部が破損してしまった。
機銃弾の破孔から真っ黒なオイルが漏れ出し、コクピットの視界を悪くしている。
だが、悪い事はこれだけではなかった。
「こちらエックフォックスワン!被弾した!これより戦線を離脱する!」
マッキャンベル中佐は無線機に向けてそう言う。せめて、離脱する事を仲間に知らせねば。
しかし、
しかし、
「・・・・・・・・・・・・」
「?・・・・・・・・こちらエックフォックスワン!被弾により戦闘を継続できない。これより戦線を離脱する。」
「?・・・・・・・・こちらエックフォックスワン!被弾により戦闘を継続できない。これより戦線を離脱する。」
無線機からは、返事がない。
それどころか、交信のさいに聞こえる雑音も全く聞こえない。
すぐ右横で、2機のヘルキャットの挟撃を受けたバーマント機が、火を噴いて墜落していく。
そのヘルキャットは、すぐに地上に降りて行く。
恐らく、攻撃隊の投弾をやりやすくするために、地上の対空砲火を掃討するのであろう。
それどころか、交信のさいに聞こえる雑音も全く聞こえない。
すぐ右横で、2機のヘルキャットの挟撃を受けたバーマント機が、火を噴いて墜落していく。
そのヘルキャットは、すぐに地上に降りて行く。
恐らく、攻撃隊の投弾をやりやすくするために、地上の対空砲火を掃討するのであろう。
「こちらエックフォックスリーダー、3番機、4番機、聞こえるか?」
無線機からは何も反応がない。そして、マッキャンベル中佐は確信した。
「無線機もやられている・・・・・・・」
まさに不運としかいえなかった。
バーマント機の放った機銃弾は、エンジンに傷を負わせたばかりか、無線のアンテナまでもを吹っ飛ばしてしまったのだ。
しかも、線を切ったとかではなく、コクピットのすぐ後ろ上に取り付けられている無線の柄そのものが根元から折られていた。
それに、戦線離脱をするといったものの、エンジンの計器類はどれもが危険値を示そうとしている。
バーマント機の放った機銃弾は、エンジンに傷を負わせたばかりか、無線のアンテナまでもを吹っ飛ばしてしまったのだ。
しかも、線を切ったとかではなく、コクピットのすぐ後ろ上に取り付けられている無線の柄そのものが根元から折られていた。
それに、戦線離脱をするといったものの、エンジンの計器類はどれもが危険値を示そうとしている。
「なんてこった・・・・・・これじゃあ家族の元に帰れなくなるぞ」
マッキャンベル中佐は、顔からサッと血の気が引いたのを感じた。
星の国の勇者 外伝
陸の海鷲
被弾してから5分が経過した。
エンジン出力は、さらに落ちている。速力は400キロを出せればいいほうであり、それも落ちつつある。
エンジン出力は、さらに落ちている。速力は400キロを出せればいいほうであり、それも落ちつつある。
「今敵機に狙われたら、真っ先にあの世逝きだな」
彼は自嘲しながら、エンジンをだましだまし動かす。ここで出力を上げよう物ならば、エンジンはすぐに火を噴いてしまうだろう。
辺りはマッキャンベル中佐のヘルキャットしかおらず、平穏そのものである。
現在、彼は北東に向けて飛行している。
本当ならば、すぐにでも北西に機体を向けたいところだが、エンジンの状態から言って、海に出る前に墜落する可能性が大である。
辺りはマッキャンベル中佐のヘルキャットしかおらず、平穏そのものである。
現在、彼は北東に向けて飛行している。
本当ならば、すぐにでも北西に機体を向けたいところだが、エンジンの状態から言って、海に出る前に墜落する可能性が大である。
「迂闊だった・・・・・・・」
マッキャンベルは、あの時、一瞬警戒を怠った事を酷く後悔している。
普段、部下に対して、耳にタコが出来るほど、周りに気を配れといい続けている。
その自分が、皮肉にも自分が警戒したやり方で、今しも墜落しようとしている。
「本当に皮肉なものだな・・・・・・・・それにしても、死んだらどんな世界にいけるのかな?」
ここは、現世界とは全く違う、異世界の土地である。
搭乗員の間では、死んだらどこぞの教会か、墓場で生き返るとか、魔法の燃料にされるとか、
はては現世界に戻れるのでは?と言われている。
普段、部下に対して、耳にタコが出来るほど、周りに気を配れといい続けている。
その自分が、皮肉にも自分が警戒したやり方で、今しも墜落しようとしている。
「本当に皮肉なものだな・・・・・・・・それにしても、死んだらどんな世界にいけるのかな?」
ここは、現世界とは全く違う、異世界の土地である。
搭乗員の間では、死んだらどこぞの教会か、墓場で生き返るとか、魔法の燃料にされるとか、
はては現世界に戻れるのでは?と言われている。
マッキャンベル中佐は、そのような類の噂に関しては知った事ではないと思っていたが、今考えると、その死の世界というのも気になる。
「いっそ、これが悪夢であって、墜落したらベッドに寝ている、という事にならんものかな。」
彼はそう呟く。少し考えた後、
「馬鹿馬鹿しい。んな事はあり得んな。」
と呟いて、再び操縦に専念する。
機体の速度の下降は一向に収まる気配が無い。
機体の速度の下降は一向に収まる気配が無い。
「ここらが潮時か。」
彼は計器をコンコン叩きながら、残念そうな口調で呟く。
海軍のエース、デイビット・マッキャンベル。敵機撃墜後に壮絶な自爆を遂げたり。
となるのだろうか・・・・・・・・
ふと、右に何かの光景が目に入った。横目で見たため、最初は何か分からない。
彼は顔を右に向ける。
そこには、森と、岩山の間に、幅800メートル、長さ1キロほどの草原があった。
「・・・・・・・・あそこに不時着してみようか。」
そう呟いた時には、体が反応して、機体が右方向に向けられた。
「革命軍ももうすぐ侵攻を開始するとか言っていたな。それならば、辛抱しつつも味方に助けられたほうがいいかもしれん。」
マッキャンベル中佐は、心のうちでそう呟く。脳裏には、エセックスで共に過ごした中間達の顔が脳裏に浮かぶ。
もう一度会いたい。会って、奴らと共に再び空を飛びたい。
そのためには、まずは生き残る事だ。
海軍のエース、デイビット・マッキャンベル。敵機撃墜後に壮絶な自爆を遂げたり。
となるのだろうか・・・・・・・・
ふと、右に何かの光景が目に入った。横目で見たため、最初は何か分からない。
彼は顔を右に向ける。
そこには、森と、岩山の間に、幅800メートル、長さ1キロほどの草原があった。
「・・・・・・・・あそこに不時着してみようか。」
そう呟いた時には、体が反応して、機体が右方向に向けられた。
「革命軍ももうすぐ侵攻を開始するとか言っていたな。それならば、辛抱しつつも味方に助けられたほうがいいかもしれん。」
マッキャンベル中佐は、心のうちでそう呟く。脳裏には、エセックスで共に過ごした中間達の顔が脳裏に浮かぶ。
もう一度会いたい。会って、奴らと共に再び空を飛びたい。
そのためには、まずは生き残る事だ。
そう決心したマッキャンベルは、機体を慎重に操りながら、西側から草原地帯に侵入していく。
エンジンはもはや死に体である。計器が危険数値を指しっ放しで、いつ発火するか分からない。
開かれたコクピットから顔を出して、機体の姿勢を調整する。
草原の地面は、凸凹であるから、脚をだしての着陸は危険である。
かといって、胴体着陸も危険だ。
死ぬ確立としては、どちらも似たようなものであるが、胴体着陸のほうが、少しばかりは助かる確率が上がるはず。
マッキャンベルは胴体着陸を行う事にした。
脚は出さない。それよりかは胴体着陸を行って、滑走距離を短くし、さっさと脱出したほうがいい。
高度は徐々に下がっていく。500から400。400から300と、どんどん下がっていく。
岩山を超えて、草原地帯に達した時には、高度は200を切っている。
もうすぐである。
次第に動悸が激しくなってきた。
胴体着陸時の衝撃は凄まじいものになるだろう。
彼はそれに耐えて、すぐに脱出しなければならなかった。
コクピットが開かれている事を確認する。
草原地帯は既に3分の1を飛び越えた。残り3分の2で決めなければならない。
ゆっくりと、高度が下がっていく。地面が近づく。
高度が10メートルを割り込み、もうすぐ機体が地面に接する。
咄嗟に、彼はエンジンを切り、弱弱しく回っていたプロペラが停止する。
エンジンはもはや死に体である。計器が危険数値を指しっ放しで、いつ発火するか分からない。
開かれたコクピットから顔を出して、機体の姿勢を調整する。
草原の地面は、凸凹であるから、脚をだしての着陸は危険である。
かといって、胴体着陸も危険だ。
死ぬ確立としては、どちらも似たようなものであるが、胴体着陸のほうが、少しばかりは助かる確率が上がるはず。
マッキャンベルは胴体着陸を行う事にした。
脚は出さない。それよりかは胴体着陸を行って、滑走距離を短くし、さっさと脱出したほうがいい。
高度は徐々に下がっていく。500から400。400から300と、どんどん下がっていく。
岩山を超えて、草原地帯に達した時には、高度は200を切っている。
もうすぐである。
次第に動悸が激しくなってきた。
胴体着陸時の衝撃は凄まじいものになるだろう。
彼はそれに耐えて、すぐに脱出しなければならなかった。
コクピットが開かれている事を確認する。
草原地帯は既に3分の1を飛び越えた。残り3分の2で決めなければならない。
ゆっくりと、高度が下がっていく。地面が近づく。
高度が10メートルを割り込み、もうすぐ機体が地面に接する。
咄嗟に、彼はエンジンを切り、弱弱しく回っていたプロペラが停止する。
「燃えないでくれよ!」
彼は願いを込めて、ヘルキャットに対して叫んだ。
次の瞬間、ドズン!ズザアアアァァーーーー!という胴体下部をこする衝撃と音が聞こえた。
その衝撃に、マッキャンベル中佐は思わず飛び上がった。止められていたベルトが千切れないかと思うほど、彼の体は座席から浮き上がった。
体の浮き上がりがベルトに止められた、かと思うと、今度は尻が座席に叩き付けられ、顔面を計器類に強打してしまった。
ガツン!という音が鳴って、額に激痛が走った。頭の中がぼうっとなって、一瞬なにをしているのか分からなくなる。
次の瞬間、ドズン!ズザアアアァァーーーー!という胴体下部をこする衝撃と音が聞こえた。
その衝撃に、マッキャンベル中佐は思わず飛び上がった。止められていたベルトが千切れないかと思うほど、彼の体は座席から浮き上がった。
体の浮き上がりがベルトに止められた、かと思うと、今度は尻が座席に叩き付けられ、顔面を計器類に強打してしまった。
ガツン!という音が鳴って、額に激痛が走った。頭の中がぼうっとなって、一瞬なにをしているのか分からなくなる。
やがて、機体は滑走をやめて、草原に止まった。
「い、今すぐ脱出しないと。」
マッキャンベル中佐は、痛みが走る頭を無理やり上げて、安全ベルトを外しにかかる。
しかし、どうしたことか、全く外れない。
仕方なく、彼は懐からナイフを取り出して、ベルトを強引に切断した。
ベルトを全て切断した後に、マッキャンベルは前方を見る。
エンジン部分から白煙がもうもうと噴き出しており、焦げ臭い匂いもする。
しかし、どうしたことか、全く外れない。
仕方なく、彼は懐からナイフを取り出して、ベルトを強引に切断した。
ベルトを全て切断した後に、マッキャンベルは前方を見る。
エンジン部分から白煙がもうもうと噴き出しており、焦げ臭い匂いもする。
「くそ、モタモタしてる場合じゃねえ!」
機体には、まだ燃料が残っている。この胴体着陸で破損し、漏れ出している可能性が高い。
それに引火すれば、マッキャンベル中佐の体はバーベキューのごとく、猛火にあぶられるであろう。
それに引火すれば、マッキャンベル中佐の体はバーベキューのごとく、猛火にあぶられるであろう。
「バーベキューになってたまるか!」
脱出する事で頭が一杯の彼は、すぐにコクピットの左から飛び出した。
草原に着地した中佐は、ガソリンの匂いが漂っている事に気が付いた。
頑丈なヘルキャットの機体も、さすがに胴体着陸の際の衝撃にはどうしようもない。
右主翼が中ほどから千切れとび、左主翼は底部がざっくりと裂け、そこから燃料が漏れ出している。
燃料の一部は、機首部分に達しつつあった。
彼は脱兎のごとく、森に向かって逃げ始めた。森までは100メートルある。
その場でぐずぐずしていれば、火災発生時の炎に巻き込まれる。
マュキャンベル中佐が盛りに辿り着いて、木の幹に姿を隠す。
だが、いつまで経っても恐れていた爆発は起こらない。
マッキャンベルは恐る恐る顔を出してみた。
草原に着地した中佐は、ガソリンの匂いが漂っている事に気が付いた。
頑丈なヘルキャットの機体も、さすがに胴体着陸の際の衝撃にはどうしようもない。
右主翼が中ほどから千切れとび、左主翼は底部がざっくりと裂け、そこから燃料が漏れ出している。
燃料の一部は、機首部分に達しつつあった。
彼は脱兎のごとく、森に向かって逃げ始めた。森までは100メートルある。
その場でぐずぐずしていれば、火災発生時の炎に巻き込まれる。
マュキャンベル中佐が盛りに辿り着いて、木の幹に姿を隠す。
だが、いつまで経っても恐れていた爆発は起こらない。
マッキャンベルは恐る恐る顔を出してみた。
その時、
ボーン!という鈍い爆発音が鳴り、ヘルキャットの機体が破片を飛び散らし、火達磨になった。
主翼の機銃弾がパンパンと音を立てて弾け飛び、彼の愛機は真っ赤な炎と、黒煙を噴き出している。
ボーン!という鈍い爆発音が鳴り、ヘルキャットの機体が破片を飛び散らし、火達磨になった。
主翼の機銃弾がパンパンと音を立てて弾け飛び、彼の愛機は真っ赤な炎と、黒煙を噴き出している。
「畜生・・・・・・・これからどうすればいいんだ・・・・」
彼は、懐をごそごそとまさぐりながら、諦めたように呟く。
懐から出したのは、飛行経路が描かれた地図と、1丁のコルトガバメント、そして刃渡りが14センチしかないナイフ。
食料は脱出時に持ち出した1日半分の簡易食料と、水1リットルのみ。
この状態で、継戦派の部隊と出会えば、真っ先にやられてしまうだろう。
ガバメントの装弾数は7発。そして、密かに持っていた予備のマガジンを含めて、14発。
これを1人1発ずつで倒しても、14人が限界であり、ナイフも使えば少しは増えるかもしれぬが、
いずれは圧倒されて殺される運命である。
懐から出したのは、飛行経路が描かれた地図と、1丁のコルトガバメント、そして刃渡りが14センチしかないナイフ。
食料は脱出時に持ち出した1日半分の簡易食料と、水1リットルのみ。
この状態で、継戦派の部隊と出会えば、真っ先にやられてしまうだろう。
ガバメントの装弾数は7発。そして、密かに持っていた予備のマガジンを含めて、14発。
これを1人1発ずつで倒しても、14人が限界であり、ナイフも使えば少しは増えるかもしれぬが、
いずれは圧倒されて殺される運命である。
「こんなはずでは・・・・・・・」
マッキャンベルは頭を抱えたい気分であった。
革命軍がやってくるとしても、果たして何週間待たねばならぬだろうか?
それに、燃えているヘルキャットは、既に敵軍も黒煙で位置を確認しているはずである。
当初、このグランスボルグ地方を征圧する予定であった革命軍も、いまや散り散りとなって継戦側から隠れている有様。
革命軍がやってくるとしても、果たして何週間待たねばならぬだろうか?
それに、燃えているヘルキャットは、既に敵軍も黒煙で位置を確認しているはずである。
当初、このグランスボルグ地方を征圧する予定であった革命軍も、いまや散り散りとなって継戦側から隠れている有様。
「八方塞がり・・・・・・・話にならんな。」
彼は自嘲めいた口調で、そう呟いた。
まずは、森の奥に逃げよう。決心した彼は、森の奥に逃げる事にした。
まずは、森の奥に逃げよう。決心した彼は、森の奥に逃げる事にした。
この未開の土地で、何がいるか分からない。
人食いモンスターなどが出てくる可能性もあるであろう。
その類が出た場合、彼の命は危うい。だが、待っていればバーマント軍もやって来る。
座して滅ぶよりは、自ら進んで行き、手を尽くしながら生き延びる方法を模索したほうがいいだろう。
マッキャンベル中佐は立ち上がって、一度東の空に目を向けた。
飛行場の方面からは、猛烈な黒煙が上がっている。
マッキャンベル中佐は、飛行場攻撃隊のアベンジャーを護衛する任務に当たっていた。
その護衛したアベンジャー達は、立派に任務を成し遂げたようだ。
その一方、味方機がここの上空に来る様子がない。
人食いモンスターなどが出てくる可能性もあるであろう。
その類が出た場合、彼の命は危うい。だが、待っていればバーマント軍もやって来る。
座して滅ぶよりは、自ら進んで行き、手を尽くしながら生き延びる方法を模索したほうがいいだろう。
マッキャンベル中佐は立ち上がって、一度東の空に目を向けた。
飛行場の方面からは、猛烈な黒煙が上がっている。
マッキャンベル中佐は、飛行場攻撃隊のアベンジャーを護衛する任務に当たっていた。
その護衛したアベンジャー達は、立派に任務を成し遂げたようだ。
その一方、味方機がここの上空に来る様子がない。
「せめて、何機かがこの黒煙を見つけてくれればいいのだが・・・・・・」
彼は心の中でそう祈った。
攻撃隊の機影は見えないが、微かながらも爆音は聞こえる。だが、それも徐々に遠ざかりつつある。
恐らく、攻撃隊は彼の未帰還を知ってはいるであろうが、細かな事までは分からないだろう。
それに、帰りの燃料も半分近くしかないから、彼らは早く母艦に帰りたがっている。
結局、第3次攻撃隊の面々は、マッキャンベル中佐が何処に墜落したか分からなかった。
この後、160機の攻撃隊がギルアルグに向かっている。
敵戦闘機はマッキャンベル隊がほとんど駆逐しているから、第4次攻撃隊は思う存分暴れられるだろう。
しかし、第4次が来るまではまだ時間がある。それまでに、ここにバーマント軍が来ないとは限らない。
攻撃隊の機影は見えないが、微かながらも爆音は聞こえる。だが、それも徐々に遠ざかりつつある。
恐らく、攻撃隊は彼の未帰還を知ってはいるであろうが、細かな事までは分からないだろう。
それに、帰りの燃料も半分近くしかないから、彼らは早く母艦に帰りたがっている。
結局、第3次攻撃隊の面々は、マッキャンベル中佐が何処に墜落したか分からなかった。
この後、160機の攻撃隊がギルアルグに向かっている。
敵戦闘機はマッキャンベル隊がほとんど駆逐しているから、第4次攻撃隊は思う存分暴れられるだろう。
しかし、第4次が来るまではまだ時間がある。それまでに、ここにバーマント軍が来ないとは限らない。
「厄介な事になったなあ・・・・」
その時、後ろで何かの気配を感じた。振り向くと・・・・・・
「・・・・・・・こうも、悪い事は連続して続くものなのか?」
彼は絶望的な表情で、諦めたように言い放った。
彼の背後には、いつの間にか、10人ほどの人影がいた。
そのうちの3人は女性らしい。10人は彼に小銃や弓などといった武器を向けている。
頭には戦闘帽らしきものを被っている。
バーマント兵。彼はそう思った。
(俺のヘルキャットの不時着を近くで見ていたのだろう。)
マッキャンベル中佐はそう思いながらも、死を覚悟した。
連続する味方機動部隊との対決で、継戦派の将兵は、機動部隊を目の仇にしているという。
そして、目の前で武器を向けている者達は、明らかに殺気を放っている。
今は武器を向けているだけだが、瞬きした次の瞬間に、息の根を止められるのは確実である。
(死ぬんだな・・・・・・だが、ただでは死なん。懐のガバメントで、2、3人は道連れにしてやる)
彼はそう決め、懐に忍ばせたガバメントを抜こうとした時、意外な事が起きた。
その10人のバーマント兵達は、いきなり武器を下ろしたのである。
彼の背後には、いつの間にか、10人ほどの人影がいた。
そのうちの3人は女性らしい。10人は彼に小銃や弓などといった武器を向けている。
頭には戦闘帽らしきものを被っている。
バーマント兵。彼はそう思った。
(俺のヘルキャットの不時着を近くで見ていたのだろう。)
マッキャンベル中佐はそう思いながらも、死を覚悟した。
連続する味方機動部隊との対決で、継戦派の将兵は、機動部隊を目の仇にしているという。
そして、目の前で武器を向けている者達は、明らかに殺気を放っている。
今は武器を向けているだけだが、瞬きした次の瞬間に、息の根を止められるのは確実である。
(死ぬんだな・・・・・・だが、ただでは死なん。懐のガバメントで、2、3人は道連れにしてやる)
彼はそう決め、懐に忍ばせたガバメントを抜こうとした時、意外な事が起きた。
その10人のバーマント兵達は、いきなり武器を下ろしたのである。
「あんたは飛空挺乗りだよな?」
先頭の赤い長髪の男が声をかけてきた。よく見ると、どことなくあどけない印象がある。
まだ子供と言っていいような顔つきではあるが、なかなか端麗な顔立ちである。
それに加えて、戦士のような印象も持ち得ているようだ。
まだ子供と言っていいような顔つきではあるが、なかなか端麗な顔立ちである。
それに加えて、戦士のような印象も持ち得ているようだ。
「そうだが・・・・・・なぜ質問を?」
「少しばかり興味があってね。」
その男は顔に笑みを浮かべる。いかにも安心したような表情である。
「バーマント軍じゃないな?」
「そうだ。」
「少しばかり興味があってね。」
その男は顔に笑みを浮かべる。いかにも安心したような表情である。
「バーマント軍じゃないな?」
「そうだ。」
と言いながら、マッキャンベル中佐は
(バーマント軍じゃないな?貴様らはバーマント軍だろう)
(バーマント軍じゃないな?貴様らはバーマント軍だろう)
と思ったが、それは赤紙の男の言葉で覆された。
「俺は革命軍に所属しているんだ。森の中を進んでいたら、いきなりあんたの飛空挺が不時着してきてね。所属はどこなんだ?」
「所属か・・・・・・少し長いが、アメリカ合衆国海軍第5艦隊、第58任務部隊・第4任務郡、
空母エセックス所属。名前はデイビット・マッキャンベル。階級は中佐だ。」
「所属か・・・・・・少し長いが、アメリカ合衆国海軍第5艦隊、第58任務部隊・第4任務郡、
空母エセックス所属。名前はデイビット・マッキャンベル。階級は中佐だ。」
10人のバーマント人、もとい、革命軍の兵達の顔色が変わった。
しかし、その内の数人はどこか別の表情を浮かべている。なんとなく恥ずかしそうな表情だ。
しかし、その内の数人はどこか別の表情を浮かべている。なんとなく恥ずかしそうな表情だ。
「中佐・・・・・か。ってことは、自分はあんた、いや、あなたより階級が下ですね。」
いきなり語調を変えて、彼は歩み出てきた。
「自分はアムクス・オイルエン大尉です。」
そう言うと、彼はかぶっていた戦闘帽を取った。そして、手を差し出した。
しかし、マッキャンベルは躊躇った。
(嘘じゃないのか?)
未だに彼らに対する不信感は抜けていない。それどころか、増したと言ったほうがいい。
しかし、マッキャンベルは躊躇った。
(嘘じゃないのか?)
未だに彼らに対する不信感は抜けていない。それどころか、増したと言ったほうがいい。
「大丈夫ですよ。マッキャンベル中佐殿。」
彼の表情からは、真意は感じ取れない。嘘なのだろうか、それとも本当に革命軍なのだろうか。
「・・・・・・・来る。」
唐突に、小さな声が上がった。一番背後にいる女性兵が険しい顔つきでオイルエンに話しかけている。
マッキャンベルは、彼女を見た瞬間、目の前にあるものが信じられなかった。
彼女のショートカットの頭に、2つの獣耳がついているのだ。見たところ、犬のような感じである。
しかし、顔は普通の人間であるが、目は金色である。
その女性兵は顔をマッキャンベルに向ける。険しい顔が、なぜかもっと険しくなる。
彼女のショートカットの頭に、2つの獣耳がついているのだ。見たところ、犬のような感じである。
しかし、顔は普通の人間であるが、目は金色である。
その女性兵は顔をマッキャンベルに向ける。険しい顔が、なぜかもっと険しくなる。
「あたしの顔に何か?」
冷たい口調で彼女は言ってきた。
「い、いや。なんでもない。」
マッキャンベルは慌てて否定する。
その女性兵は、ふんと鼻を鳴らして冷たい態度を崩さぬまま、オイルエン大尉に顔を向ける。
その女性兵は、ふんと鼻を鳴らして冷たい態度を崩さぬまま、オイルエン大尉に顔を向ける。
「敵が来る。今すぐここから離れたほうがいいわ。」
「分かった。それでは進もう。恐らく、先の爆発音に引き付けられたな。」
「分かった。それでは進もう。恐らく、先の爆発音に引き付けられたな。」
彼は顎をしゃくると、全員に進むように命じる。
「マッキャンベル中佐。あなたの身は私等が保護します。
上の命令で、墜落してきた乗組員は、極力救出するように命じられています。さあ、行きましょう。」
「あ、ああ。」
上の命令で、墜落してきた乗組員は、極力救出するように命じられています。さあ、行きましょう。」
「あ、ああ。」
突然の展開に、マッキャンベルは戸惑いつつも、彼らと進む事にした。
「中佐殿、イメインの事に関しては申し訳ありません。」
オイルエンはマッキャンベルに、小さな声で謝って来た。
「イメイン?ああ、あの女の人か?」
「はい。彼女はああですが、根はいい奴なんです。でも、あなたに特に冷たい態度を取られる理由には訳があるのです。」
「訳?」
「ええ。実はイメインには弟がいたんですが、第13空中騎士団に所属していたのです。
その弟は、実施された夜間空襲の時に重傷を負って、今も意識不明の重体なのです。」
「!」
「訳?」
「ええ。実はイメインには弟がいたんですが、第13空中騎士団に所属していたのです。
その弟は、実施された夜間空襲の時に重傷を負って、今も意識不明の重体なのです。」
「!」
夜間空襲・・・・第13空中騎士団。
第58任務部隊の将兵にとっては忘れる事が出来ない、第2次サイフェルバン沖海戦を引き起こした航空部隊である。
あの海戦で、第13空中騎士団は8割以上の喪失を出しながら、軽空母サンジャシントと駆逐艦ドーチを撃沈し、
駆逐艦コットンと軽巡クリーブランドを大中破させ、旗艦のレキシントンに傷を負わせている。
あの時は夜間戦闘機のF6FN-3を、ウルシーの飛行場に上げていたのが失敗だった。
今では機動部隊将兵の語り草となっているあの海戦に、あの女性兵、イメインの弟が参加していた・・・・・・・・・
(だから、先は俺に冷たい態度を取ったのか)
そう思い、彼は後ろを振り向く。獣耳を生やしたイエメンは、彼を見た瞬間、厳しい目つきになる。
(畜生・・・・・・寝込みを掻かれるんじゃないか?)
参った。
マッキャンベルは率直に思った。それを無視するかのように、オイルエン大尉は、
第58任務部隊の将兵にとっては忘れる事が出来ない、第2次サイフェルバン沖海戦を引き起こした航空部隊である。
あの海戦で、第13空中騎士団は8割以上の喪失を出しながら、軽空母サンジャシントと駆逐艦ドーチを撃沈し、
駆逐艦コットンと軽巡クリーブランドを大中破させ、旗艦のレキシントンに傷を負わせている。
あの時は夜間戦闘機のF6FN-3を、ウルシーの飛行場に上げていたのが失敗だった。
今では機動部隊将兵の語り草となっているあの海戦に、あの女性兵、イメインの弟が参加していた・・・・・・・・・
(だから、先は俺に冷たい態度を取ったのか)
そう思い、彼は後ろを振り向く。獣耳を生やしたイエメンは、彼を見た瞬間、厳しい目つきになる。
(畜生・・・・・・寝込みを掻かれるんじゃないか?)
参った。
マッキャンベルは率直に思った。それを無視するかのように、オイルエン大尉は、
「とりあえず、グランスボルグにようこそ、マッキャンベル中佐殿。あなたの身は、我らがお守りします」
と、やや明るい口調で彼に言った。