7月4日 第58任務部隊旗艦レキシントンⅡ 午前2時
「お願いだ!助けてくれ!せめて子供だけには手をださんでくれ!」
男が必死に剣を持つ兵士に懇願する。
「お願いねぇ。」
兵士はどこか下卑た笑みを浮かべて男を値踏みするように見つめる。
心臓の鼓動が早くなってきた。これから起こる事はリリアにとって残酷な事だった。
(いや、やめて・・・・・お願い、やめて!)
彼女は草むらからそう願う。一生懸命願う。だが、彼女に出来ることは、もはやなかった。
「聞くと思ってるのかな?赤目さんよぉ。」
父親と息子を取り囲んでいる兵士たちが笑う。
「息子はまだ若い。5歳だ、こいつの人生はこれからなんだ!」
「それはそうだね。」
リーダー格の男がうんうん頷く。
「まあ、俺としてはね。」
その言葉を言った瞬間、その兵士が思いっきり剣を振り下ろした。父親はあっという間に首を
落とされてしまった。
「こうしたいんだよ。」
その次の瞬間、息子にも剣撃がはなたれ、あっという間に命を失った。
(!!)
リリアは悲鳴あげかけて、すんでの所で抑える。しかし、その一部始終はハッキリと脳裏に
刻まれてしまった。
(お父さん・・・・・・リューク・・・・・・・)
兵士たちは笑いながらその場から去っていった。そこには、倒れ伏せる親子の姿があった。
男が必死に剣を持つ兵士に懇願する。
「お願いねぇ。」
兵士はどこか下卑た笑みを浮かべて男を値踏みするように見つめる。
心臓の鼓動が早くなってきた。これから起こる事はリリアにとって残酷な事だった。
(いや、やめて・・・・・お願い、やめて!)
彼女は草むらからそう願う。一生懸命願う。だが、彼女に出来ることは、もはやなかった。
「聞くと思ってるのかな?赤目さんよぉ。」
父親と息子を取り囲んでいる兵士たちが笑う。
「息子はまだ若い。5歳だ、こいつの人生はこれからなんだ!」
「それはそうだね。」
リーダー格の男がうんうん頷く。
「まあ、俺としてはね。」
その言葉を言った瞬間、その兵士が思いっきり剣を振り下ろした。父親はあっという間に首を
落とされてしまった。
「こうしたいんだよ。」
その次の瞬間、息子にも剣撃がはなたれ、あっという間に命を失った。
(!!)
リリアは悲鳴あげかけて、すんでの所で抑える。しかし、その一部始終はハッキリと脳裏に
刻まれてしまった。
(お父さん・・・・・・リューク・・・・・・・)
兵士たちは笑いながらその場から去っていった。そこには、倒れ伏せる親子の姿があった。
「イヤアアアーーーーー!!」
リリアはがばっと跳ね起きた。ハアハアと息が荒く、心臓の鼓動が早い。ここはどこなの?今は何時?
彼女は一瞬どこにいるのか分からなかった。
少し落ち着くと、彼女はここが空母レキシントンⅡの艦内であることを思い出した。
「また・・・・・あの夢。」
彼女はそう言うと、ショ-トカットの髪をかきむしった。
彼女は時折、悪夢にうなされることがある。リリアはバーマントの侵攻時に父親と弟を目の前で
殺されている。その光景は今でも脳裏に残っており、たまに悪夢になって蘇るのである。
それも最近では全く見なくなっていたが、今日久しぶりに見てしまった。
「疲れがたまってるのかなぁ。」
ここ数日は、第58任務部隊の司令部幕僚と共に作戦会議をしたり、色々なアドバイスを求められ
たり、資料を作成したりなどで忙しかった。
特にここ3日は睡眠時間はわずか3時間であった。なぜか不思議とドジは1回だけで済んだ。
その時は、参謀長のバーク大佐にこっぴどく叱られたが。
今日はそれも一段落ついたので、安心して眠れると思った。しかし・・・・・
「お父さん・・・・リューク・・・・・・」
目頭が熱い。しばらくすると、涙が頬を伝った。
リリアは気を取り直し、涙を拭いて眠ろうとした。ベッドに寝転んだはいいが、今度は頭が
冴えて眠れなかった。
リリアはがばっと跳ね起きた。ハアハアと息が荒く、心臓の鼓動が早い。ここはどこなの?今は何時?
彼女は一瞬どこにいるのか分からなかった。
少し落ち着くと、彼女はここが空母レキシントンⅡの艦内であることを思い出した。
「また・・・・・あの夢。」
彼女はそう言うと、ショ-トカットの髪をかきむしった。
彼女は時折、悪夢にうなされることがある。リリアはバーマントの侵攻時に父親と弟を目の前で
殺されている。その光景は今でも脳裏に残っており、たまに悪夢になって蘇るのである。
それも最近では全く見なくなっていたが、今日久しぶりに見てしまった。
「疲れがたまってるのかなぁ。」
ここ数日は、第58任務部隊の司令部幕僚と共に作戦会議をしたり、色々なアドバイスを求められ
たり、資料を作成したりなどで忙しかった。
特にここ3日は睡眠時間はわずか3時間であった。なぜか不思議とドジは1回だけで済んだ。
その時は、参謀長のバーク大佐にこっぴどく叱られたが。
今日はそれも一段落ついたので、安心して眠れると思った。しかし・・・・・
「お父さん・・・・リューク・・・・・・」
目頭が熱い。しばらくすると、涙が頬を伝った。
リリアは気を取り直し、涙を拭いて眠ろうとした。ベッドに寝転んだはいいが、今度は頭が
冴えて眠れなかった。
「仕方ない。ちょっと散歩でもしようかな。」
いつまでも眠れないので、リリアは艦内を散歩することにした。ベッドから降りて、寝間着
の短パンから、いつもの黒いズボンに着替えた。
上は白布の寝間着そのままで何も羽織らなかった。
彼女は割り当てられた士官室を出ると、まずは飛行甲板に上がろうとした。いつも休憩時間には
甲板の舷側で、海風に当たりながら考え事をしている。
艦内は真っ暗である。当直員以外は全員寝ているので当然であろう。彼女は飛行甲板に繋がる
通路の途中で、格納甲板の入り口にさしかかった。
そこから談笑が聞こえた。
「ん?おいジョージ。あの女の子って、いつぞやの魔法使いじゃねえか?」
「ああ、確かにそうだぜ。」
リリアはそこに視線を向けた。そこには艦載機の間で休憩を取っている6人の将兵が彼女を見ていた。
そのうちの1人とは既に顔見知りだった。
「フレイド魔道師、どうしたのかな、こんな時間に?」
スノードン中佐が彼女に聞いてきた。
「ちょっと、眠れなくて。甲板で風にあたろうかな~と思って上に行こうとしてたんですが。」
「そうか。実は俺も寝れなくてな。艦内をブラブラしていたらヒマそうなこいつらを見つけて
話をしていたのさ。」
「中佐、別にヒマなんかじゃあありませんぜ。ただ休憩をしとっただけですぜ。」
顔の下半分が髭に覆われた古参の兵曹長が口を尖らせて言う。
「休憩という割には、すでに俺と30分以上話しとるじゃないか。」
「ありゃ、そうでしたか。自分は最近体内時計が狂っておって。」
「そんなの元々じゃないですか。」
「黙らんか、この!」
部下の整備兵に悪ふざけで首をしめようとする。その突っ込みに皆は笑った。リリアもつられて
笑ってしまった。
「魔法使いさんもこっちに来たらどうだい?こいつらは色々面白い話を知ってるぞ。」
いつまでも眠れないので、リリアは艦内を散歩することにした。ベッドから降りて、寝間着
の短パンから、いつもの黒いズボンに着替えた。
上は白布の寝間着そのままで何も羽織らなかった。
彼女は割り当てられた士官室を出ると、まずは飛行甲板に上がろうとした。いつも休憩時間には
甲板の舷側で、海風に当たりながら考え事をしている。
艦内は真っ暗である。当直員以外は全員寝ているので当然であろう。彼女は飛行甲板に繋がる
通路の途中で、格納甲板の入り口にさしかかった。
そこから談笑が聞こえた。
「ん?おいジョージ。あの女の子って、いつぞやの魔法使いじゃねえか?」
「ああ、確かにそうだぜ。」
リリアはそこに視線を向けた。そこには艦載機の間で休憩を取っている6人の将兵が彼女を見ていた。
そのうちの1人とは既に顔見知りだった。
「フレイド魔道師、どうしたのかな、こんな時間に?」
スノードン中佐が彼女に聞いてきた。
「ちょっと、眠れなくて。甲板で風にあたろうかな~と思って上に行こうとしてたんですが。」
「そうか。実は俺も寝れなくてな。艦内をブラブラしていたらヒマそうなこいつらを見つけて
話をしていたのさ。」
「中佐、別にヒマなんかじゃあありませんぜ。ただ休憩をしとっただけですぜ。」
顔の下半分が髭に覆われた古参の兵曹長が口を尖らせて言う。
「休憩という割には、すでに俺と30分以上話しとるじゃないか。」
「ありゃ、そうでしたか。自分は最近体内時計が狂っておって。」
「そんなの元々じゃないですか。」
「黙らんか、この!」
部下の整備兵に悪ふざけで首をしめようとする。その突っ込みに皆は笑った。リリアもつられて
笑ってしまった。
「魔法使いさんもこっちに来たらどうだい?こいつらは色々面白い話を知ってるぞ。」
スノードン中佐は彼女を誘った。リリアは少し迷ったが、彼の誘いに乗って格納甲板に入ってきた。
格納甲板には、F6F、SB2C、TBFといった艦載機が翼を折りたたんで格納されている。
合計で100機は下らない数はあるだろう。
「さあ、こっちに座って。」
スノードン中佐は、そこにあった木箱を置いた。
「しかし、こういう殺伐とした軍艦に、女の子が来るって言うのはいいですね。リリアちゃんは
美人ですし、場が和みますな。」
整備兵曹長がタバコを吹かしながらリリアを褒めた。
「そうですね。なんか、スタイルもいいし、それに格闘丈夫と来ている。完璧じゃないですか。
リリアちゃん胸おっきいね。何カップあ」
若い整備兵が聞こうとしたが、その瞬間、ガツンと整備兵曹長に頭を殴られた。
「馬鹿野郎。そんなこと聞くんじゃねえ。」
「で、でも。自分としてはやっぱ聞い」
「やめんか。それ以上言うと海に放り込むぞ!」
怒られた整備兵はばつの悪そうな顔を浮かべた。
「すまんな、魔法使いさん。こいつが下品なこといって。」
「い、いいえ、別に気にしてないですから。」
彼女は慌てて手を振った。しかし、顔は少し赤かった。
「それに私のことはリリアと呼び捨てにしてかまいません。」
「そうか。」
皆が頷いた。
「そういえば、ちょっと聞きたいことがあるんですが。」
「なんだい?」
整備兵曹長が聞いてきた。
格納甲板には、F6F、SB2C、TBFといった艦載機が翼を折りたたんで格納されている。
合計で100機は下らない数はあるだろう。
「さあ、こっちに座って。」
スノードン中佐は、そこにあった木箱を置いた。
「しかし、こういう殺伐とした軍艦に、女の子が来るって言うのはいいですね。リリアちゃんは
美人ですし、場が和みますな。」
整備兵曹長がタバコを吹かしながらリリアを褒めた。
「そうですね。なんか、スタイルもいいし、それに格闘丈夫と来ている。完璧じゃないですか。
リリアちゃん胸おっきいね。何カップあ」
若い整備兵が聞こうとしたが、その瞬間、ガツンと整備兵曹長に頭を殴られた。
「馬鹿野郎。そんなこと聞くんじゃねえ。」
「で、でも。自分としてはやっぱ聞い」
「やめんか。それ以上言うと海に放り込むぞ!」
怒られた整備兵はばつの悪そうな顔を浮かべた。
「すまんな、魔法使いさん。こいつが下品なこといって。」
「い、いいえ、別に気にしてないですから。」
彼女は慌てて手を振った。しかし、顔は少し赤かった。
「それに私のことはリリアと呼び捨てにしてかまいません。」
「そうか。」
皆が頷いた。
「そういえば、ちょっと聞きたいことがあるんですが。」
「なんだい?」
整備兵曹長が聞いてきた。
「この格納庫にある飛空挺ですが、この機の整備って、やっぱり難しくないですか?」
「いや、それほどでもないぜ。」
先の若い整備兵が答えた。
「むしろ整備がやりやすくて俺たちは大助かりさ。なんせ、このアベンジャーとか、あとこの
ヘルキャットはエンジンが大きくて手がすっぽり入るんだ。特にこのヘルキャットはいいな。
それにこのヘルキャットは頑丈で、それに操縦性もいいから、パイロット連中には、こいつが
女だったら結婚してやりたいっていう奴もいるよ。」
「へえ~。」
リリアが感心したように頷いた。
「それに対して、あっちに見える寸胴の機体があるだろ?」
整備兵曹長は後ろを指差した。そこにはヘルダイバーが翼を折りたたんで駐機している。
「あの機体は、昔はものすごい不評だったな。整備製も今ひとつだったし。特にパイロット
連中の中には前のドーントレスという機体を好む奴もいたんだ。なんていったって、急降下
後の肝心の爆弾投下は爆弾倉が開かなかったり、運動性が悪かったり。このレキシントンでも
半年前に着艦しようとしたヘルダイバーが、着艦したと同時にケツがボッキリ折れてしまって
海に転落するっていう事故があったんだ。その時は幸いパイロットは命を取り留めたが、重傷で
本国送還になった。」
「つまり、あまり出来がよくなかったんですね?」
「いや、それほどでもないぜ。」
先の若い整備兵が答えた。
「むしろ整備がやりやすくて俺たちは大助かりさ。なんせ、このアベンジャーとか、あとこの
ヘルキャットはエンジンが大きくて手がすっぽり入るんだ。特にこのヘルキャットはいいな。
それにこのヘルキャットは頑丈で、それに操縦性もいいから、パイロット連中には、こいつが
女だったら結婚してやりたいっていう奴もいるよ。」
「へえ~。」
リリアが感心したように頷いた。
「それに対して、あっちに見える寸胴の機体があるだろ?」
整備兵曹長は後ろを指差した。そこにはヘルダイバーが翼を折りたたんで駐機している。
「あの機体は、昔はものすごい不評だったな。整備製も今ひとつだったし。特にパイロット
連中の中には前のドーントレスという機体を好む奴もいたんだ。なんていったって、急降下
後の肝心の爆弾投下は爆弾倉が開かなかったり、運動性が悪かったり。このレキシントンでも
半年前に着艦しようとしたヘルダイバーが、着艦したと同時にケツがボッキリ折れてしまって
海に転落するっていう事故があったんだ。その時は幸いパイロットは命を取り留めたが、重傷で
本国送還になった。」
「つまり、あまり出来がよくなかったんですね?」
「ああ、そうだな。開発を急いだばかりに、あれこれ欠陥が出ちまったんだ。」
「そんなことからこのヘルダイバーはこう言われていたたな。ろくでなしの2流機ってな。」
さきの若い整備兵が自嘲気味に言った。
「それでも、このヘルダイバーは結構改善されて、今では完全に良くなっている。パイロット連中は
相変わらず文句をいう奴もいるが、昔に比べてマシにはなったな。」
スノードン中佐がそう言う。
「整備性はまだ悪いですけどね。」
髭面の兵曹長が言うと、皆が笑い声をあげた。
「やっぱり、どんな世界の人でも苦労はつき物なんですね。」
「そうだよ、リリアちゃん。どんな物にも苦労はつきもんさ。」
「そういえば。」
メガネをかけた整備兵が聞いてきた。
「リリアさんは魔法使いだったよね。魔法使いってなんか専門の学校とかで魔法を習って
るのかい?」
「ん~、まあ似たようなものですけど。正確には軍人という形で軍隊に入隊してから、魔法教化隊
という部隊で色々習います。」
「つまり君は軍人さんなんだ。」
「ええ。でも卒業後は軍属という形にされるんで、形式上は王国の役人ということになります。
魔法使いになるにはまず、体力と知力が求められます。それに色々な格闘術も習わせられますね。
「なんで格闘術も習うんだ?」
「そんなことからこのヘルダイバーはこう言われていたたな。ろくでなしの2流機ってな。」
さきの若い整備兵が自嘲気味に言った。
「それでも、このヘルダイバーは結構改善されて、今では完全に良くなっている。パイロット連中は
相変わらず文句をいう奴もいるが、昔に比べてマシにはなったな。」
スノードン中佐がそう言う。
「整備性はまだ悪いですけどね。」
髭面の兵曹長が言うと、皆が笑い声をあげた。
「やっぱり、どんな世界の人でも苦労はつき物なんですね。」
「そうだよ、リリアちゃん。どんな物にも苦労はつきもんさ。」
「そういえば。」
メガネをかけた整備兵が聞いてきた。
「リリアさんは魔法使いだったよね。魔法使いってなんか専門の学校とかで魔法を習って
るのかい?」
「ん~、まあ似たようなものですけど。正確には軍人という形で軍隊に入隊してから、魔法教化隊
という部隊で色々習います。」
「つまり君は軍人さんなんだ。」
「ええ。でも卒業後は軍属という形にされるんで、形式上は王国の役人ということになります。
魔法使いになるにはまず、体力と知力が求められます。それに色々な格闘術も習わせられますね。
「なんで格闘術も習うんだ?」
「魔道師はたまに、敵国の暗殺者に狙われる時があるんです。その暗殺者を完全に追い払うか、返り
討ちにできるようにと、昔から習わされているんです。私は家のほうでも教えられていたので、結構
すんなり出来ましたが、それでも最初はとてもきつかったです。このきつさに耐えられるかとうかで、
その教化隊でやっていけるかが分かります。」
「なるほど。ちなみに何人ぐらいが落ちるんだ?」
「私の同期生は200人ほどがいましたが、半数以上の120人が落ちました。」
「厳しいな。」
メガネの整備兵は眉をひそめた。
「よく魔法使いはただ呪文を唱えて終わりという印象があったが、君達の話を聞くと、魔道師も
結構強いんだな。」
「はい。」
彼女はすんなり答えた。
「リリアちゃんは彼氏いるのかな?」
先ほどの若い整備兵が聞いてきた。
「えっ?い、いや。いませんけど。」
「そうか。なら俺と」
「それはちょっと出来ませんね。」
リリアは素早く反応した。先を越された整備兵は、あっ、と言ってうなだれた。
「全く、お前と言う奴は本当に女に目が無い奴だなあ。」
兵曹長がそう言うと、
「私はそれが取り柄ですから。」
と、なぜか胸を張って言う。
「馬鹿もん。何が取り柄だ、いつも告白は失敗しとるくせに。お前は神様に見放されたのさ。」
兵曹長がそう言うと、どっと爆笑が広がった。
討ちにできるようにと、昔から習わされているんです。私は家のほうでも教えられていたので、結構
すんなり出来ましたが、それでも最初はとてもきつかったです。このきつさに耐えられるかとうかで、
その教化隊でやっていけるかが分かります。」
「なるほど。ちなみに何人ぐらいが落ちるんだ?」
「私の同期生は200人ほどがいましたが、半数以上の120人が落ちました。」
「厳しいな。」
メガネの整備兵は眉をひそめた。
「よく魔法使いはただ呪文を唱えて終わりという印象があったが、君達の話を聞くと、魔道師も
結構強いんだな。」
「はい。」
彼女はすんなり答えた。
「リリアちゃんは彼氏いるのかな?」
先ほどの若い整備兵が聞いてきた。
「えっ?い、いや。いませんけど。」
「そうか。なら俺と」
「それはちょっと出来ませんね。」
リリアは素早く反応した。先を越された整備兵は、あっ、と言ってうなだれた。
「全く、お前と言う奴は本当に女に目が無い奴だなあ。」
兵曹長がそう言うと、
「私はそれが取り柄ですから。」
と、なぜか胸を張って言う。
「馬鹿もん。何が取り柄だ、いつも告白は失敗しとるくせに。お前は神様に見放されたのさ。」
兵曹長がそう言うと、どっと爆笑が広がった。
7月4日、午前6時 空母レキシントンⅡ
空はオレンジ色に変わりつつあった。まだ少々暗いではあるが、遠くから来る光は闇を払拭し
つつある。
第3群は28ノットのスピードで風上に向かって走っている。飛行甲板上には46機の艦載機が
エンジンを轟々と轟かせながら、発艦の準備を待っている。
レキシントンの艦橋上で、リリアはその胸躍る光景をじっと見つめていた。
ヘルキャット、ヘルダイバー、アベンジャーが出すエンジン音は、まるで騎士団の雄たけびのよう
に聞こえた。
(いつ見ても心躍る光景ね。)
彼女はふとそう思った。甲板要員がフラッグを掲げている。
「参謀長、各艦に通達。準備出来次第発艦せよ。」
「アイアイサー。」
ミッチャー司令官と、司令部幕僚のやりとりが聞こえてきた。
「艦長、艦載機の発艦準備OKです!」
「よし、発艦はじめ!!」
艦長の号令の下、発艦が始まった。甲板要員がフラッグを降るとF6Fがグオオー!という音を
立てて飛行甲板をするすると滑走していく。
飛行甲板の先端を蹴ると、ふわりと上空に舞い上がっていく。これを皮切りに、次々と艦載機が
発艦していく。
リリアは視線を左舷側のエンタープライズに向けた。ビッグEと呼ばれるその空母からも、飛行甲板上
から続々と艦載機が発艦していく。
乗員の声援の後押しを受けるかのように、艦載機は発艦していった。そして発艦作業は終わった。
上空では各空母から発艦した攻撃隊が、大編隊を組んで艦隊上空を横切っていった。
「がんばれよー!」「敵に後方も安全ではないことを教えてやれ!」
様々な声援を、手空き乗員は送った。攻撃隊が去っていき、艦隊上空は静かになった。
「司令官、各任務群もサイフェルバン攻撃隊、発艦終了いたしました。」
「サイフェルバン攻略部隊は順調に航海を続けているか?」
「今のところ順調に航海を続けています。」
バーク大佐がそう言うと、ミッチャー中将は頷いた。
サイフェルバン侵攻作戦、暗号名オペレーションアイスバーグはいよいよ本腰に入った。
空はオレンジ色に変わりつつあった。まだ少々暗いではあるが、遠くから来る光は闇を払拭し
つつある。
第3群は28ノットのスピードで風上に向かって走っている。飛行甲板上には46機の艦載機が
エンジンを轟々と轟かせながら、発艦の準備を待っている。
レキシントンの艦橋上で、リリアはその胸躍る光景をじっと見つめていた。
ヘルキャット、ヘルダイバー、アベンジャーが出すエンジン音は、まるで騎士団の雄たけびのよう
に聞こえた。
(いつ見ても心躍る光景ね。)
彼女はふとそう思った。甲板要員がフラッグを掲げている。
「参謀長、各艦に通達。準備出来次第発艦せよ。」
「アイアイサー。」
ミッチャー司令官と、司令部幕僚のやりとりが聞こえてきた。
「艦長、艦載機の発艦準備OKです!」
「よし、発艦はじめ!!」
艦長の号令の下、発艦が始まった。甲板要員がフラッグを降るとF6Fがグオオー!という音を
立てて飛行甲板をするすると滑走していく。
飛行甲板の先端を蹴ると、ふわりと上空に舞い上がっていく。これを皮切りに、次々と艦載機が
発艦していく。
リリアは視線を左舷側のエンタープライズに向けた。ビッグEと呼ばれるその空母からも、飛行甲板上
から続々と艦載機が発艦していく。
乗員の声援の後押しを受けるかのように、艦載機は発艦していった。そして発艦作業は終わった。
上空では各空母から発艦した攻撃隊が、大編隊を組んで艦隊上空を横切っていった。
「がんばれよー!」「敵に後方も安全ではないことを教えてやれ!」
様々な声援を、手空き乗員は送った。攻撃隊が去っていき、艦隊上空は静かになった。
「司令官、各任務群もサイフェルバン攻撃隊、発艦終了いたしました。」
「サイフェルバン攻略部隊は順調に航海を続けているか?」
「今のところ順調に航海を続けています。」
バーク大佐がそう言うと、ミッチャー中将は頷いた。
サイフェルバン侵攻作戦、暗号名オペレーションアイスバーグはいよいよ本腰に入った。