自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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午前7時 クロイッチ
バーマント軍の侵攻拠点クロイッチから、黒煙に包まれるララスクリスの容貌が見て取れた。
クロイッチは、ララスクリスと違ってやや標高が高いところに町が置かれている。
そのため、遠いながらもクロイッチが見渡せるのである。ララスクリスには間もなく編成を
終えるはずだった第12軍、第8軍、第6軍、その他、飛空挺部隊など、合わせて15万の
兵員が休息を取っていた。その、15万の兵員が居座るララスクリスが、燃えていた。

クロイッチに司令部を置くシュングリル侵攻軍司令部でも、ララスクリスの黒煙は見えた。
「ララスクリスは、一体どんな敵から攻撃を受けたのだ?」
シュングリル侵攻軍総司令官、グレイソル・キアルング騎士元帥は、イライラした表情で参謀
に聞いた。
「今、連絡用の飛空挺を飛ばしました。その飛空挺が帰ってきたら詳しい情報が入ります。
それまでは、我慢するしか。」
キアルング騎士元帥は、自慢のカイゼル髭を震わせながら、そして深くため息をついた。
その時、聞きなれない爆音が聞こえてきた。
「参謀長、あの音は何だ?」
彼は聞いてみたが、参謀長は首をかしげた。しかし、キアルング騎士元帥は顔色を変えた。
「もしや・・・・・・」
彼は急いで司令部の城のベランダに出た。ベランダからは、海が一望できた。そして、その
音は、海から聞こえ、やがて幾つもの豆粒のような影が現れた。
「参謀長、あれが敵の正体だぞ。あれに間違いない。」
彼はそう確信したように言った。そうしている間にも豆粒はクロイッチに近づきつつある。
そして、その数はとてつもなく多かった。
「なんて数だ!50や100どころじゃないぞ!」
キアルングは、その数の多さに舌を巻いた。普段、バーマント軍の航空部隊は滅多に100機以上の
飛空挺やワイバーン・ロードで編隊飛行などあまりやらない。やるとしても1年に1回か2回で、
それ以外は30機か60機ほどが普通である。
しかし、目の前の豆粒のような影は、それを超えていた。いくつかの集団には分かれているが、それ
でも全体の数は多い。まるで空を覆いつくさんばかりの大編隊だ。
「おい!衛兵!!」
キアルングは衛兵を呼んだ。すぐに衛兵は駆けつけた。
「この城にある鐘を鳴らせ!ガンガン鳴らしまくれ!急げ!!」

バーマント軍第45歩兵旅団の旅団長であるグルエ・エンチャー騎士少将は、突然、小高い丘にある
城が、鐘を大きく鳴らした事に仰天した。
ガラーン!ガラーン!大鐘特有の音が、クロイッチの町に響いていく。
「何だ?8時の時報はまだなのに。」
クロイッチの町には、8時、12時、7時に10回ずつ鐘が鳴る。しかし、今は7時ちょっと過ぎなのに
鐘が鳴っている。それも10回ではない。20回、30回と鳴らしまくっている。
(もしや・・・・・・ララスクリスの異変と何か関係があるんじゃ?)
エンチャー騎士少将はそう考えたとき、鐘の音とは明らかに異なる音が聞こえた。それは時間が経つにつれて
大きくなってきた。
「あの鐘の音は・・・・・・空襲警報だったのか!」
彼がそう確信したとき、異音はどこか音の調子が変わった。その音は、まるで何かに挑みかかっている
ような感じがした。その音は、近づくにつれて大きくなってきた。
「どこから来るんだ?」
彼は外に出てみた。外には将兵が相当数出ており、猛然としたスピードで近づいてくる飛行物体を
見つめていた。彼は次の瞬間、殺気めいたものを感じた。それは、図太いながらも、俊敏そうな感
がある飛行物体の、姿がハッキリした時だった。
「おい、貴様ら!危ないぞ!中に入れ!」
彼と同様に何か異様めいたものを感じたのか。彼の声にハッとなった将兵は宿舎やテントの中に入り始めた。
その時、飛行物体の両翼の付け根から光が発した。ともった時、
「ダダダダダダダダ!!」
というけたたましい音が鳴り響いた。オレンジ色の光が地面に突き刺さって土ぼこりをあげた。幾多もの光は
容赦なく将兵達をなぎ倒した。

たちまち、悲鳴と共に血飛沫をあげて何人かが倒れた。飛行物体はいくらでもいた。別の1機は旅団の武器倉庫、
剣や鎧などが入った倉庫にオレンジ色の光を叩き込んだ。木造の倉庫は何度も何度も繰り返される攻撃に耐えか
ねて倒壊した。
別の飛行機がやってきた。その飛空挺は、甲高い音を回りに撒き散らしながら、旅団の別の宿舎に腹から黒い物
を叩き付けた。エンチャーはそれが宿舎の屋根にすっぽりと入る光景をハッキリと見た。
次の瞬間、ピカーッという閃光に眼をくらまされた。と思った瞬間、ドガアアァーーン!!という猛烈な轟音
が鼓膜を打ち振るった。轟音と共に衝撃があたりを揺さぶった。その余りにも激しい衝撃に、エンチャー騎士
少将含む司令部スタッフ全員が飛び上がった。
スタッフのうち何人かは転倒した。衝撃は連続して続いた。ドカンドカンドカン!という音が鳴り響き、爆風が、
衝撃があたりを襲った。
エンチャー騎士少将が気が付いたのはそれから少し経ってからだった。頭の中がキンキン鳴ってぼうっとしている。
司令部のスタッフ全員は、どこかを打ち付けたりして傷を負っていたが、一応無事だった。
鐘はまだガラーン、ガラーンと鳴っている。それがどこか悲しげに、彼は聞こえた。エンチャー騎士少将は、窓
を見てみた。いつもなら、2階建ての木造の宿舎が、広場を囲むように4つ並んでいる。
並んでいるはずだった。だが、現実には、4つの2階建ての宿舎のうち、2つが全壊して炎上しており、残る2つ
も建物自体がズタズタに切り裂かれていた。この2つも使い物にならない事は、一見して明らかだ。
「酷い光景ですね。」
彼の副官が、比較的落ち着いた声で呟いた。
「ああ、全くだ。」

彼は、まるで雷に直撃されたみたいだ、と付け加えようとした時、先程聞こえた甲高い音がまたもや鳴り響いた。
「一体どこが狙われているんだ?」
エンチャーはふと、鐘を鳴らし続けている城に視線を移した。そして、その上の上空に、猛禽のごとく、総司令部の
城を狙う4つの影があった。まるで、その翻っているバーマントの国旗に吸い寄せられているかのごとく、猛然
と急降下をしていた。
時間はあっという間だった。4つの影が腹から黒い物を吐き出すと、総司令部の城に突き刺さった、と見た次の瞬間、
バコオオォォン!ダダーン!という遠いながらも腹に応える音が鳴り響いた。城は爆炎に包まれ、次いで破片が城の
中央から飛び散った。その後、司令部の城は真っ黒な黒煙に包まれて見えなくなってしまった。
クロイッチ名物となっていた大きな鐘の音も、既に聞こえなくなっていた。
「こいつは・・・・・やばいことになったぞ。」
旅団司令部のスタッフは絶句した。いかなる外敵からも身を守れそうな、堅牢な城があっさりと破壊されてしまった。
そして、城には総司令部がある。彼らの頭の中に総司令部全滅という、最悪の状況が浮かんだ。
「それよりも、我が旅団の被害集計だ!」
エンチャー騎士少将は、打ちひしがれるスタッフに向けて、大声でそう言った。
「戦場で呆然とするな!ボーッとしたら死ぬぞ!さあ、働け!仕事は山ほどあるぞ!」
彼の大渇に、我に返ったスタッフは、被害集計を調べるために外に出たり、
倒れた机や窓を直したり、片付けたりし始めた。エンチャーもそれに加わった。
未知の飛空挺の攻撃はまだ続いていた。タタタタタという音や、ドーンという音は
まだ止みそうにもなかった。

午前7時35分 クロイッチより南南東130マイル地点 第58任務部隊旗艦 空母レキシントンⅡ
「クロイッチ攻撃隊の攻撃は成功せり、敵司令部、飛行場に甚大な損害を与えたり、尚敵地上施設は未だに
多数あり。引き続き第2次攻撃の要ありとみとむ」
参謀長のアーレイ・バーク大佐が、渡された電文の用紙を読み上げると、ミッチャー中将は軽く頷いた。
「クロイッチの第2次攻撃はもう準備出来ているのだろう?」
「はい。第1、第2任務郡の軽空母4隻からそれぞれF6F15機、SB2C8機、TBF8機の合計124機が
既に発艦準備を終えています。」
「よろしい。すぐに出したまえ。」
ミッチャーはそう言った。今のところ、作戦は順調に進んでいた。予想されていた巨大海蛇、この時代で言う海竜
の襲撃も無い。だが、念のために上空直掩機は出している。
「順調だな。」
彼は小さく呟いた。その声はバークには聞こえなかった。
(このまま、何事も無く済めばよいが、どうも変な胸騒ぎがする)
ミッチャーはなぜか不安に思っていた。いきなり飛空挺がこちらの位置を突き止めて襲ってくるのではないか。
そして、大事な母艦が傷ついたりしないか。
(それは・・・・・・大丈夫だろう不用意に入ってきた敵の航空機はF6Fに任せればすむ事じゃないか。大した
事ではない)
彼はそう思い、不安を打ち消した。

南東の方角に、その小さい粒は向かっていた。バーマント軍第1空中騎士団のダイル・フランクル騎士大佐は、部下
の飛空挺、約60機と共にそれを追っていた。
彼らの飛空挺にはいずれも250キロの爆弾が抱かれていた。彼らの他にも、第2空中騎士団の80機も、彼らから
離れた後方を飛行していた。
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