自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

094 外伝7

最終更新:

tapper

- view
だれでも歓迎! 編集
※投稿者は作者とは別人です

177 :外伝(またはパラレル):2007/11/23(金) 17:06:30 ID:OiXF2z220
「何なんだここは!神の糞溜めか?」
大隊本部の置かれたテルモナの街を嫌がらせのように砲撃してくる敵の移動式野砲を捜索
するため、町の北東に広がるチュルネントの森に分け入ったオーディ・マーフィー軍曹の
指揮する第3分隊は、森の植物の手荒い歓迎を受けていた。
肌に張り付いた葉から血を吸うもの、蛇のように忍び寄り蔓の先端から毒霧を吹くもの、
ブレード状の花弁を回転させながらガトリングガンのごとく種を飛ばすもの。
ファンタジー世界というよりはむしろ怪獣無法地帯。
「畜生、これじゃあシホッド共をやっつける前にこっちがお陀仏だぜ!」
『今、何と言った?』
突如として響き渡る女性の声を合図に植物の攻撃はピタリと止んだ。
日の光さえ遮る密度で生い茂る樹木が門を開くように左右に別れ、森の奥から現れたのは
全身緑色のグラマラスな美女だった。
「ば、バケモノ?」
『無礼者、妾はこの森の植物の長なるぞ』
一斉に向けられた銃口の前で堂々と豊満な胸を張る
『重ねて聞くぞ、シホッドというのは石の傀儡を操る連中のことか?』

「発射!」
頑丈な四肢を踏ん張り、腰を落とした四足獣型ゴーレムの背中に装備された野砲が火を吹
く。
テルモナの街を見下ろす森の斜面から着弾を確認した将校が合図すると、剣を構えた兵士
の前で跪かされていた全身緑色の美しい少女が人間には聞こえない声で唄う。
少女の歌声に従って斜めに傾いていた巨木の群れが一斉に姿勢を戻し、ゴーレムと兵士達
を緑の天幕で覆う。
「なるほど、これなら偵察機じゃ見つけられんわけだ」
植物女に案内され探していた移動式野砲と支援の歩兵から成る小部隊を発見した分隊は、
相手より一段高い台地の上から様子を伺っていた。
『アレはいずれ妾からこの森を受け継ぐ大事な娘じゃ、何とか取り返してはくれまいか?』
「この人数と装備じゃ少々きついが…何とかしよう。コロラド、ここから魔法使いを狙え
るか?」
無言で頷くジャクソン二等兵は仇名のとおりコロラドの猟師で、他の分隊員がセミオート
のM1ライフルを装備しているのに対し一人私物のユナーテル社製スコープを装着したボ
ルトアクションのM1903を使用している。
狙撃銃を構えたコロラドをその場に残し、分隊の残りを二手に分けたオーディは自身が率
いる班を右手から、伍長の班を左手から回り込ませ、古典的な挟撃作戦を取ることにした。

『嫌あ、放してええっ!』
「ヒヒヒたまんねな」
見張りをそっちのけにして暴れる植物少女を二人懸かりで押し倒し、未成熟ながら均整の
取れた肢体を撫で回す兵士達がテントの中に滑り込んだ人影に気付いた時には手遅れだっ
た。
「俺だよ、ジョン・ウエインさ!」
オーディのトミーガンの短い連射で、植物少女の見張りは悲鳴を上げる暇もなく打ち倒さ
れる。
突然の銃声に兵舎として使われていた大き目の天幕から飛び出してきた兵士達が鉢合わせ
したのは、ポーランド系の大男ピドロスキ一等兵の構えたBARの銃口だった。
「ハーイ」
至近距離から発射された30-06弾は一人目の体をボール紙のように貫通し、二人目の
体をボウリングのピンのように吹き飛ばす。
ピドロスキが弾倉内の二十発を撃ち尽すと、そこには立っている者はいなかった。
防御側の半数以下の人数でありながら奇襲効果と自動火器の威力で戦闘の主導権を握って
いた第3分隊だったが、ゴーレムが戦闘に参加してきたことで一気に劣勢に立たされた。
戦闘開始とともにコロラドが仕留めた魔導師は実は通信担当で、ゴーレム使いは戦闘の混
乱に乗じて装甲の施されたゴーレムの砲座に辿り着くことが出来たのだ。
「バーバラ!」
「バーブラだよ!」
名前を間違えられながらもバーブラ二等兵はオーディに対戦車用のM9A1ライフルグレ
ネードを装着したM1ライフルを投げ渡す。
オーディはゴーレムの正面に飛び出すとライフルの銃床を地面に着け、ゴーレムの肩口を
狙って重量113グラムの成形炸薬弾を射ち出す。
対戦車擲弾は狙い通りに命中したもののゴーレムの表面にヒビを入れるに留まった。
『後は妾にまかせるがよい』
オーディの目の前の地面から植物女が生えてきた。
植物女の足元から伸びた無数の根が表面のヒビから侵入し、ゴーレムを内側から破壊する。
『フン、やはり魔法で強化しておるのは殻だけか』
隅々まで根を張られたゴーレムは波に洗われる砂の城のように崩れ落ちた。

オーディと分隊員は植物女とその娘の存在を秘密にするという条件で、コンパスも効かな
い森の最深部から無事生還することが出来た。
その後負傷して乗機もろともチェルネントの森に不時着した飛行士が、いつのまにか手当
てをされて森の外にいたという報告が何件かあったという。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 星がはためく時
  • アメリカ軍
  • アメリカ
ウィキ募集バナー