レキシントンのCIC内に設置された丸い円盤、もとい対勢表示板にオペレーターが
緊張した表情で書き込んでいる。
中心から北東方向に飛行機のマークが描かれ、その上に104と数字が書かれている。
レーダー表示機には、マストのSKレーダーが捉えたおびただしい数の機影が映し出されていた。
距離は80マイル。
「まさか、敵の夜間空襲部隊が襲ってくるとはな。」
CIC内にいる班長のデイル・パーキンソン少佐は苦々しい表情でそうつぶやいた。
「もっと外洋に機動部隊を配置したほうが良かったんじゃないか?」
第58任務部隊は、前日に第1、第2群が分離してクロイッチ沖まで南下して、その艦載機で
後方に配置されていたバーマント軍の飛行場を叩いた。
この時、バーマント軍第16、第17空中騎士団がサイフェルバンの後方基地に戻ろうとして
全機がエンジンを回していた。
そこに米艦載機が来襲したのである。この攻撃でタイミングよく200機の飛空挺を地上撃破し、
基地も完膚なきまでに叩き潰した。
第3、第4群もサイフェルバンより南東200キロの野戦飛行場を空襲して80機のバーマント
軍機を破壊、その周辺にあった鉄道も叩き潰して敵の補給能力を大幅に削いでいる。
これで第58任務部隊の将兵は付近一体の飛空挺を一掃したと確信したのである。
だが、敵はまだ余力を残していた。このレーダーに映る敵編隊がなによりの証拠である。
「まだ見つけていない飛行場があるのだ。やつらはここから飛んで、わが機動部隊に反撃を加えようとしているんだ。」
F6Fの援護がない今、艦隊の防空を一身に担うのは各艦取り付けられた対空火器。己の武器が敵に対する唯一の対抗手段。
空母搭乗員は、エスコート艦の奮闘に期待するほかなかった。
緊張した表情で書き込んでいる。
中心から北東方向に飛行機のマークが描かれ、その上に104と数字が書かれている。
レーダー表示機には、マストのSKレーダーが捉えたおびただしい数の機影が映し出されていた。
距離は80マイル。
「まさか、敵の夜間空襲部隊が襲ってくるとはな。」
CIC内にいる班長のデイル・パーキンソン少佐は苦々しい表情でそうつぶやいた。
「もっと外洋に機動部隊を配置したほうが良かったんじゃないか?」
第58任務部隊は、前日に第1、第2群が分離してクロイッチ沖まで南下して、その艦載機で
後方に配置されていたバーマント軍の飛行場を叩いた。
この時、バーマント軍第16、第17空中騎士団がサイフェルバンの後方基地に戻ろうとして
全機がエンジンを回していた。
そこに米艦載機が来襲したのである。この攻撃でタイミングよく200機の飛空挺を地上撃破し、
基地も完膚なきまでに叩き潰した。
第3、第4群もサイフェルバンより南東200キロの野戦飛行場を空襲して80機のバーマント
軍機を破壊、その周辺にあった鉄道も叩き潰して敵の補給能力を大幅に削いでいる。
これで第58任務部隊の将兵は付近一体の飛空挺を一掃したと確信したのである。
だが、敵はまだ余力を残していた。このレーダーに映る敵編隊がなによりの証拠である。
「まだ見つけていない飛行場があるのだ。やつらはここから飛んで、わが機動部隊に反撃を加えようとしているんだ。」
F6Fの援護がない今、艦隊の防空を一身に担うのは各艦取り付けられた対空火器。己の武器が敵に対する唯一の対抗手段。
空母搭乗員は、エスコート艦の奮闘に期待するほかなかった。
「この方角だ!この方向から強い生命反応がある!」
愛機の後部座席に乗っているグロルズがそう叫んだ。
「本当にこっちで良いのですね!?」
ダルキア中佐は聞き返した。
「ああ、ここの方角だ。間違いない!」
「了解!」
彼はそう言いながら後ろを振り返った。後続機の主翼の夜光塗料がうっすらと見える。
まるで夜光虫の群れを思わせる光景である。
「ついてきてるな。」
彼は満足した。第13空中騎士団は午後8時に発進した。
サイフェルバンを北に迂回する形で飛行し、それから南西に変針して海に出た。
それまでは、海竜が誘導魔法を使って途中まで攻撃隊を誘導していた。海に出ると、
グロルズが生命反応を探知し始めた。
そして南西に進むこと30分、ついに生命反応を捉えたのだ。
各機とも、胴体には250キロ爆弾を1発ずつ積んでいる。命中したら5秒で
爆発するように遅延信管がセットされている。編隊は高度700メートルを維持している。
「今に見ていろよ、白星の悪魔。今日が貴様らの命日だ。」
彼は獰猛な笑みを浮かべながら、そうつぶやいた。
愛機の後部座席に乗っているグロルズがそう叫んだ。
「本当にこっちで良いのですね!?」
ダルキア中佐は聞き返した。
「ああ、ここの方角だ。間違いない!」
「了解!」
彼はそう言いながら後ろを振り返った。後続機の主翼の夜光塗料がうっすらと見える。
まるで夜光虫の群れを思わせる光景である。
「ついてきてるな。」
彼は満足した。第13空中騎士団は午後8時に発進した。
サイフェルバンを北に迂回する形で飛行し、それから南西に変針して海に出た。
それまでは、海竜が誘導魔法を使って途中まで攻撃隊を誘導していた。海に出ると、
グロルズが生命反応を探知し始めた。
そして南西に進むこと30分、ついに生命反応を捉えたのだ。
各機とも、胴体には250キロ爆弾を1発ずつ積んでいる。命中したら5秒で
爆発するように遅延信管がセットされている。編隊は高度700メートルを維持している。
「今に見ていろよ、白星の悪魔。今日が貴様らの命日だ。」
彼は獰猛な笑みを浮かべながら、そうつぶやいた。
「敵編隊、北東からわが第3群に近づきます!距離は30マイル、スピードは200、
いや、敵編隊増速!250マイルで向かってきます!」
オペレーターの声がスピーカーから聞こえた。やがて、レキシントンの左舷方向から
いくつもの閃光がきらめいた。輪形陣外輪部のエスコート艦が高角砲を撃ち始めたのである。
リリアは、艦橋の張り出し通路で戦闘の成り行きを見ていた。貸し与えられた双眼鏡で
閃光の場所をながめる。盛んに閃光が湧き上がっている。バーマント機は輪形陣のすぐ
そばまで来ているのだろう、駆逐艦や軽巡が5インチ砲を乱射している。
対空砲火はかなり正確だ。すでに砲弾の炸裂とは別の光が、沸き起こってはすぐに消え、
あるいは、光をたなびかせるように海中に落ちている。
それも1つや2つではない。3つや4つ、いやそれ以上である。
「なんて激しい対空砲火なの・・・・・・・あんな中に突っ込むこと自体自殺行為だわ。」
夜間にもかかわらず、エスコート艦の高角砲は正確に敵機を捉えている。
リリアは、その激しい対空砲火に息を呑んだ。
(これがレーダー射撃)
彼女はそう思った。
彼女が初めて目にするレーダー射撃は、見方を変えればまるで夜に打ち上げられる
花火大会のようにも思えた。
いや、敵編隊増速!250マイルで向かってきます!」
オペレーターの声がスピーカーから聞こえた。やがて、レキシントンの左舷方向から
いくつもの閃光がきらめいた。輪形陣外輪部のエスコート艦が高角砲を撃ち始めたのである。
リリアは、艦橋の張り出し通路で戦闘の成り行きを見ていた。貸し与えられた双眼鏡で
閃光の場所をながめる。盛んに閃光が湧き上がっている。バーマント機は輪形陣のすぐ
そばまで来ているのだろう、駆逐艦や軽巡が5インチ砲を乱射している。
対空砲火はかなり正確だ。すでに砲弾の炸裂とは別の光が、沸き起こってはすぐに消え、
あるいは、光をたなびかせるように海中に落ちている。
それも1つや2つではない。3つや4つ、いやそれ以上である。
「なんて激しい対空砲火なの・・・・・・・あんな中に突っ込むこと自体自殺行為だわ。」
夜間にもかかわらず、エスコート艦の高角砲は正確に敵機を捉えている。
リリアは、その激しい対空砲火に息を呑んだ。
(これがレーダー射撃)
彼女はそう思った。
彼女が初めて目にするレーダー射撃は、見方を変えればまるで夜に打ち上げられる
花火大会のようにも思えた。
米艦隊に接近しつつある第13空中騎士団のパイロットは、まるで悪夢を見ているかのようだった。
アメリカ艦の放つ砲弾はいずれも至近距離で炸裂している。それもほとんどの砲弾がである。
既に先行していった4機の照明隊は、高度2500まで上がったところで全機が叩き落された。
彼が直率する第1中隊12機も、この激烈な砲火によって2番機と6番機が撃墜された。
「照明隊がやられた時はどうなるかと思ったが、敵さんが盛んに発砲を繰り返しているおかげ
で位置がモロバレだな。」
視界の前には、狂ったように対空砲火を吹き上げる米駆逐艦、その後方には大きめの米軽巡が
第13空中騎士団に対して応戦している。その発砲炎が敵艦の位置を割り出していた。
「あっ、4番機が!」
後部座席のグロルズが叫んだ。4番機が左主翼から猛烈な火炎を噴出し、海面に叩きつけられた。
高度は150メートルという低空に下げてはいるが、敵の応戦は激烈だ。
敵艦はさらに対空機銃を撃ち出してきた。奔流のような機銃弾が彼らに向けて注がれている。
(なんということだ!私は彼らを地獄に連れ出してしまったのだ!)
グロルズはこの作戦の誘導役を引き受けたことを激しく後悔した。彼も米艦隊の対空砲火は
厳しいとは聞いていたが、夜間ではそれも大分和らぐだろうと考えていた。
それはとんでもない誤解だった。
米機動部隊の対空砲火は夜間でも正確かつ、猛烈なものであったのだ。
この砲火に突っ込む事は、地獄の鍋に頭から突っ込むことと同義語だったのだ。
だが、もはや後戻りはできない。それなら、しゃにむに突っ込み、敵艦にダメージを与えることを考えるのみだ。
「これより敵艦に突入します!」
ダルキアは攻撃開始を言ってきた。
「ああ、思う存分暴れてやろう!」
グロルズも吹っ切れたような口調で言い返した。人生57年。おそらくここで命を落とすだろう。
だがそれもいい。未知の強敵と戦って死ぬのもいいではないか。
やがて後続の第2、第3、第4中隊が分離し始めた。作戦前の打ち合わせで、
第1、第2、第3、第4中隊は米艦隊の輪形陣外輪部に陣取る米艦を爆撃し、防御網を食い破ろうと考えていた。
それで敵の防御網に穴を開け、後続が内側にいる空母を叩く、という作戦である。
敵艦に向かっていく第2中隊は、わずか6機しかいなかった。
アメリカ艦の放つ砲弾はいずれも至近距離で炸裂している。それもほとんどの砲弾がである。
既に先行していった4機の照明隊は、高度2500まで上がったところで全機が叩き落された。
彼が直率する第1中隊12機も、この激烈な砲火によって2番機と6番機が撃墜された。
「照明隊がやられた時はどうなるかと思ったが、敵さんが盛んに発砲を繰り返しているおかげ
で位置がモロバレだな。」
視界の前には、狂ったように対空砲火を吹き上げる米駆逐艦、その後方には大きめの米軽巡が
第13空中騎士団に対して応戦している。その発砲炎が敵艦の位置を割り出していた。
「あっ、4番機が!」
後部座席のグロルズが叫んだ。4番機が左主翼から猛烈な火炎を噴出し、海面に叩きつけられた。
高度は150メートルという低空に下げてはいるが、敵の応戦は激烈だ。
敵艦はさらに対空機銃を撃ち出してきた。奔流のような機銃弾が彼らに向けて注がれている。
(なんということだ!私は彼らを地獄に連れ出してしまったのだ!)
グロルズはこの作戦の誘導役を引き受けたことを激しく後悔した。彼も米艦隊の対空砲火は
厳しいとは聞いていたが、夜間ではそれも大分和らぐだろうと考えていた。
それはとんでもない誤解だった。
米機動部隊の対空砲火は夜間でも正確かつ、猛烈なものであったのだ。
この砲火に突っ込む事は、地獄の鍋に頭から突っ込むことと同義語だったのだ。
だが、もはや後戻りはできない。それなら、しゃにむに突っ込み、敵艦にダメージを与えることを考えるのみだ。
「これより敵艦に突入します!」
ダルキアは攻撃開始を言ってきた。
「ああ、思う存分暴れてやろう!」
グロルズも吹っ切れたような口調で言い返した。人生57年。おそらくここで命を落とすだろう。
だがそれもいい。未知の強敵と戦って死ぬのもいいではないか。
やがて後続の第2、第3、第4中隊が分離し始めた。作戦前の打ち合わせで、
第1、第2、第3、第4中隊は米艦隊の輪形陣外輪部に陣取る米艦を爆撃し、防御網を食い破ろうと考えていた。
それで敵の防御網に穴を開け、後続が内側にいる空母を叩く、という作戦である。
敵艦に向かっていく第2中隊は、わずか6機しかいなかった。
軽巡洋艦クリーブランド艦長のプラド・バージニア大佐は異変に気がついた。
敵の一部が分離し始めたのだ。
「輪形陣の右側に回りこむつもりか?」
だが、彼の予想は違っていた。
なんと、その敵機は、駆逐艦のインガソルとドーチに襲い掛かったのである。
狙われたインガソルとドーチは、狂ったように高角砲、機銃を乱射しながら、必死に回頭を繰り返した。
だが、敵も執拗に両艦を狙った。
ついに駆逐艦インガソルが、250キロ爆弾1発を食らってしまった。
その爆弾は後部に命中し、機関室の一部を叩き壊した。
]インガソルは浸水と機関損傷で隊列から落伍し始めた。続いてドーチにも命中弾が出た。
ドーチには5発が艦体にまんべんなく命中してしまった。
この被弾でドーチはあっという間に火に包まれ、機関停止を起こした。
「左舷から8機、本艦に向かってくる!」
CICから報告が届く。
「なんてこった!敵はエスコート艦を叩き潰して後続隊の道を作っているぞ!」
敵の意図を確信したバージニア大佐はぞっとした。そして、脅威はこのクリーブランドにも迫っている!
「目標、本艦に向かってくる左舷の敵機。全力射撃はじめえ!」
40ミリ機銃、20ミリ機銃が超低空で迫るバーマント機に向けて射撃をはじめ、
左舷側に向けられる4基の連装高角砲もガンガン唸った。
先頭の1機の目前にVT信管が作動した高角砲弾が炸裂し、無数の破片が風貌ガラスを叩き割った。
破片に切り刻まれたパイロットは瞬時に絶命した。
主を失った機にさらに40ミリ機銃の集中射撃が加えられ、あっという間にバラバラになった。
敵の一部が分離し始めたのだ。
「輪形陣の右側に回りこむつもりか?」
だが、彼の予想は違っていた。
なんと、その敵機は、駆逐艦のインガソルとドーチに襲い掛かったのである。
狙われたインガソルとドーチは、狂ったように高角砲、機銃を乱射しながら、必死に回頭を繰り返した。
だが、敵も執拗に両艦を狙った。
ついに駆逐艦インガソルが、250キロ爆弾1発を食らってしまった。
その爆弾は後部に命中し、機関室の一部を叩き壊した。
]インガソルは浸水と機関損傷で隊列から落伍し始めた。続いてドーチにも命中弾が出た。
ドーチには5発が艦体にまんべんなく命中してしまった。
この被弾でドーチはあっという間に火に包まれ、機関停止を起こした。
「左舷から8機、本艦に向かってくる!」
CICから報告が届く。
「なんてこった!敵はエスコート艦を叩き潰して後続隊の道を作っているぞ!」
敵の意図を確信したバージニア大佐はぞっとした。そして、脅威はこのクリーブランドにも迫っている!
「目標、本艦に向かってくる左舷の敵機。全力射撃はじめえ!」
40ミリ機銃、20ミリ機銃が超低空で迫るバーマント機に向けて射撃をはじめ、
左舷側に向けられる4基の連装高角砲もガンガン唸った。
先頭の1機の目前にVT信管が作動した高角砲弾が炸裂し、無数の破片が風貌ガラスを叩き割った。
破片に切り刻まれたパイロットは瞬時に絶命した。
主を失った機にさらに40ミリ機銃の集中射撃が加えられ、あっという間にバラバラになった。
続いて左の敵機が砲弾の破片を受けてぱっと火を噴いた。
次の瞬間、大爆発を起こして火の玉に早変りした。爆弾が誘爆したのだろう。皮肉にも
敵艦に叩きつけるはずの爆弾で自機が吹き飛んだのである。
残りは臆した様子もなく、クリーブランドに向けて、まっしぐらに突っ込んでくる。
これらに対してもさらに容赦のない砲火が放たれる。クリーブランドまであと1000メートル
に来たときにさらに2機が機銃弾に絡めとられて、あっという間に海面に引きずり込まれた。
しかし、残りの敵機は、600メートルで爆弾を投下した。その直後に新たに2機が撃墜されたが、
艦長の注目は海面をテンテンと跳ね飛ぶ爆弾に向けられていた。
「取り舵いっぱい!」
バージニア艦長はすかさず指示を下す。操舵員が必死の形相でハンドルを回す。
軽快なクリーブランドは、瞬く間に回頭を始めた。
艦尾方向をきわどい位置で2発の爆弾が通り過ぎていった。だが、
「爆弾2、左舷中央に接近!避けられません!!」
見張りの絶叫が聞こえた瞬間、ガーン!という衝撃が10000トンのクリーブランドを揺さぶった。
次いで轟音が鳴り響き、クリーブランドは痛みに耐え切れないようにガクガク揺れた。
被弾してしまった!バージニア大佐は悔しさで胸がいっぱいになった。
爆弾は1発が左舷中央の舷側に命中し、爆弾は艦内に侵入してから爆発した。
この被弾で缶室1個が損傷してしまった。2発目は甲板上に命中し、そこで炸裂。
40ミリ連装機銃座1つと、20ミリ単装機銃2丁をそこにいた将兵ともども吹き飛ばした。
次の瞬間、大爆発を起こして火の玉に早変りした。爆弾が誘爆したのだろう。皮肉にも
敵艦に叩きつけるはずの爆弾で自機が吹き飛んだのである。
残りは臆した様子もなく、クリーブランドに向けて、まっしぐらに突っ込んでくる。
これらに対してもさらに容赦のない砲火が放たれる。クリーブランドまであと1000メートル
に来たときにさらに2機が機銃弾に絡めとられて、あっという間に海面に引きずり込まれた。
しかし、残りの敵機は、600メートルで爆弾を投下した。その直後に新たに2機が撃墜されたが、
艦長の注目は海面をテンテンと跳ね飛ぶ爆弾に向けられていた。
「取り舵いっぱい!」
バージニア艦長はすかさず指示を下す。操舵員が必死の形相でハンドルを回す。
軽快なクリーブランドは、瞬く間に回頭を始めた。
艦尾方向をきわどい位置で2発の爆弾が通り過ぎていった。だが、
「爆弾2、左舷中央に接近!避けられません!!」
見張りの絶叫が聞こえた瞬間、ガーン!という衝撃が10000トンのクリーブランドを揺さぶった。
次いで轟音が鳴り響き、クリーブランドは痛みに耐え切れないようにガクガク揺れた。
被弾してしまった!バージニア大佐は悔しさで胸がいっぱいになった。
爆弾は1発が左舷中央の舷側に命中し、爆弾は艦内に侵入してから爆発した。
この被弾で缶室1個が損傷してしまった。2発目は甲板上に命中し、そこで炸裂。
40ミリ連装機銃座1つと、20ミリ単装機銃2丁をそこにいた将兵ともども吹き飛ばした。
「クリーブランド被弾!速度低下!」
艦橋は騒然となっていた。
戦闘開始20分で駆逐艦インガソル、ドーチ、軽巡クリーブランドが相次いで被弾してしまったのである。
それに3隻は低空でのスキップボミングを食らって舷側を破られているため、速度が低下して定位置から離れている。
これによって、第3群の対空砲火網に大きな穴が開いてしまった。もし、こんな所に敵の大群がやってきたら、
主力空母にも被害が及ぶ。
「敵50機以上、輪形陣に突入開始!」
CICからスピーカーごしにそう告げてきた。ミッチャー中将はしぶい表情を浮かべながらじっと黙っていた。
艦橋は騒然となっていた。
戦闘開始20分で駆逐艦インガソル、ドーチ、軽巡クリーブランドが相次いで被弾してしまったのである。
それに3隻は低空でのスキップボミングを食らって舷側を破られているため、速度が低下して定位置から離れている。
これによって、第3群の対空砲火網に大きな穴が開いてしまった。もし、こんな所に敵の大群がやってきたら、
主力空母にも被害が及ぶ。
「敵50機以上、輪形陣に突入開始!」
CICからスピーカーごしにそう告げてきた。ミッチャー中将はしぶい表情を浮かべながらじっと黙っていた。
後続部隊として輪形陣に突入してきた第8中隊は、大型空母の後ろを航行する小さめの空母を狙うことにした。
米機動部隊の対空砲火は、先頭隊が護衛艦の一部を引っ掻き回したため、定位置についていない。そのため、
そこの部分だけ対空砲火の密度は薄かった。
だが、その部分を通り過ぎたとたん、嵐のような猛烈な歓迎を受けた。
「なんて両の放火だ。まるで焚き火に頭から突っ込んだみたいだぜ。」
中隊長のルアーノ大尉は素っ頓狂な声を上げた。
米機動部隊の対空砲火のすごさは、生き残った第2空中騎士団のパイロットから聞かされたが、まさにその通りである。
先行の第7中隊は次第に撃ち減らされていく。それも尋常じゃない速さだ。
2,3秒立つたびに必ず1機が火を噴いて落ちていくほどである。
小型空母に向けて爆弾を投下したときには2機に減っていた。
そのうちの1機が火を吹きながら敵艦の高い舷側に体当たりをかました。その直後に、やや左に離れた位置で閃光が光った。
爆弾が命中したのである。
やったぞ!やがて、第8中隊も爆撃位置につこうとした。
その間にも部下の機が次々と被弾し、射点についたときには既に6機に減っていた。
米機動部隊の対空砲火は、先頭隊が護衛艦の一部を引っ掻き回したため、定位置についていない。そのため、
そこの部分だけ対空砲火の密度は薄かった。
だが、その部分を通り過ぎたとたん、嵐のような猛烈な歓迎を受けた。
「なんて両の放火だ。まるで焚き火に頭から突っ込んだみたいだぜ。」
中隊長のルアーノ大尉は素っ頓狂な声を上げた。
米機動部隊の対空砲火のすごさは、生き残った第2空中騎士団のパイロットから聞かされたが、まさにその通りである。
先行の第7中隊は次第に撃ち減らされていく。それも尋常じゃない速さだ。
2,3秒立つたびに必ず1機が火を噴いて落ちていくほどである。
小型空母に向けて爆弾を投下したときには2機に減っていた。
そのうちの1機が火を吹きながら敵艦の高い舷側に体当たりをかました。その直後に、やや左に離れた位置で閃光が光った。
爆弾が命中したのである。
やったぞ!やがて、第8中隊も爆撃位置につこうとした。
その間にも部下の機が次々と被弾し、射点についたときには既に6機に減っていた。
軽空母サンジャシントは災難に見舞われていた。
まず9機の敵機がサンジャシントに襲い掛かってきた。サンジャシントの左舷前部の
40ミリ連装機銃を操作する射手のチャーリー・ギルバート兵曹は、迫り来る敵機に
向けて引き金を引いた。
ガンガンガンガン!という重々しくもリズミカルな音が鳴り、曳光弾が敵機に向かっていく。
サンジャシントの左舷側は、まるで活火山のように沸き立っていた。無数の光が敵に対して
これでもかとばかりに注がれる。
左舷前方を行く第5艦隊旗艦のインディアナポリス、左舷後方を行くモントピーリアも
苦境に陥る仲間を救おうと、狂ったように機銃弾を吐き続けた。
連続して3機が火を噴いた。だが、ギルバート兵曹が狙う一番右側の敵機にはなかなか当たらない。
わずかに狙いがずれているのだ。
「当たれ畜生!さっさと落ちやがれ!」
ギルバートは罵声を浴びせながら、敵機を撃ち続けた。その時、曳光弾が狙っている敵機を薙いだ。
と思った瞬間、胴体が真っ二つにちぎれた。
2つに叩き折られた敵機は海面に墜落し、2つの水柱を上げた。
「イーヤッホウ!ざまあ見ろ!」
ギルバート兵曹は歓声をあげた。だが、2機に撃ち減らされた敵機のうち、1機が火を噴きながら
サンジャシントの左舷中央に体当たりしてきた。
「当たる!」
ギルバートがそう叫んだ瞬間、グワーン!という激突音が響いた。激突した敵機はサンジャシントの船体
と飛行甲板の間の格納庫の外壁にぶち当たった。
翼に入っていた残存燃料が一気に爆発し、この外壁を叩き割って格納庫にも吹き荒れた。
この影響で艦載機2機が破損し、1機が炎上し始めた。幸いにもこの時点では飛行甲板にも船体にも傷はなく、
激突位置が喫水線よりも大分上の部分であることから、航行には全く支障はない。
まず9機の敵機がサンジャシントに襲い掛かってきた。サンジャシントの左舷前部の
40ミリ連装機銃を操作する射手のチャーリー・ギルバート兵曹は、迫り来る敵機に
向けて引き金を引いた。
ガンガンガンガン!という重々しくもリズミカルな音が鳴り、曳光弾が敵機に向かっていく。
サンジャシントの左舷側は、まるで活火山のように沸き立っていた。無数の光が敵に対して
これでもかとばかりに注がれる。
左舷前方を行く第5艦隊旗艦のインディアナポリス、左舷後方を行くモントピーリアも
苦境に陥る仲間を救おうと、狂ったように機銃弾を吐き続けた。
連続して3機が火を噴いた。だが、ギルバート兵曹が狙う一番右側の敵機にはなかなか当たらない。
わずかに狙いがずれているのだ。
「当たれ畜生!さっさと落ちやがれ!」
ギルバートは罵声を浴びせながら、敵機を撃ち続けた。その時、曳光弾が狙っている敵機を薙いだ。
と思った瞬間、胴体が真っ二つにちぎれた。
2つに叩き折られた敵機は海面に墜落し、2つの水柱を上げた。
「イーヤッホウ!ざまあ見ろ!」
ギルバート兵曹は歓声をあげた。だが、2機に撃ち減らされた敵機のうち、1機が火を噴きながら
サンジャシントの左舷中央に体当たりしてきた。
「当たる!」
ギルバートがそう叫んだ瞬間、グワーン!という激突音が響いた。激突した敵機はサンジャシントの船体
と飛行甲板の間の格納庫の外壁にぶち当たった。
翼に入っていた残存燃料が一気に爆発し、この外壁を叩き割って格納庫にも吹き荒れた。
この影響で艦載機2機が破損し、1機が炎上し始めた。幸いにもこの時点では飛行甲板にも船体にも傷はなく、
激突位置が喫水線よりも大分上の部分であることから、航行には全く支障はない。
だが、その次には250キロ爆弾が、左舷の艦橋と正反対の位置に命中してしまった。
この被弾でサンジャシントはボディーブロウを食らったように大きく揺れた。
被弾箇所は喫水線よりも上2メートルしか離れていないところで、被害は艦内にも及んだ。
だが、まだサンジャシントは屈していない。むしろ怒り狂ったかのように一層激しく撃ちまくった。
この時、第13空中騎士団の第8中隊がサンジャシントに迫りつつあった。
「格納庫の消火急げ!」
マーチン艦長の緊迫した声が艦内に響く。激突された位置は、近くに航空燃料の収納タンクがある。
万が一、そこに引火したら目も当てられない惨状となる。
既にダメージコントロールチームが現場に急行して消火にあたっている。
その間にも敵機はサンジャシントに襲い掛かりつつある。
「通行料は払ってもらうぞ!」
ギルバート兵曹は新たな敵編隊に向かって40ミリ機銃を撃ち始めた。
2本の銃身が生き物のように前後にスライドし、弾丸を闇夜の彼方に弾き飛ばす。
サンジャシントだけではない、インディアナポリスとモントピーリアも苦闘を続ける仲間を救うように援護射撃を続けた。
だが、バーマント機はそれを跳ね除けるように弾幕の中にあえて突っ込んできた。
1機が左主翼を吹き飛ばされ、もんどりうって海面に叩きつけられる。
その右隣の敵機が、高角砲弾の破片をもろに受け、瞬時に空中分解を起こす。
この被弾でサンジャシントはボディーブロウを食らったように大きく揺れた。
被弾箇所は喫水線よりも上2メートルしか離れていないところで、被害は艦内にも及んだ。
だが、まだサンジャシントは屈していない。むしろ怒り狂ったかのように一層激しく撃ちまくった。
この時、第13空中騎士団の第8中隊がサンジャシントに迫りつつあった。
「格納庫の消火急げ!」
マーチン艦長の緊迫した声が艦内に響く。激突された位置は、近くに航空燃料の収納タンクがある。
万が一、そこに引火したら目も当てられない惨状となる。
既にダメージコントロールチームが現場に急行して消火にあたっている。
その間にも敵機はサンジャシントに襲い掛かりつつある。
「通行料は払ってもらうぞ!」
ギルバート兵曹は新たな敵編隊に向かって40ミリ機銃を撃ち始めた。
2本の銃身が生き物のように前後にスライドし、弾丸を闇夜の彼方に弾き飛ばす。
サンジャシントだけではない、インディアナポリスとモントピーリアも苦闘を続ける仲間を救うように援護射撃を続けた。
だが、バーマント機はそれを跳ね除けるように弾幕の中にあえて突っ込んできた。
1機が左主翼を吹き飛ばされ、もんどりうって海面に叩きつけられる。
その右隣の敵機が、高角砲弾の破片をもろに受け、瞬時に空中分解を起こす。
サンジャシントまで1000メートルに近づくころには、12機いた敵機は
たったの6機に撃ち減らされていた。爆弾を投下しようと500メートルに接近した時には、
さらに2機が連続して機銃弾に撃ちぬかれ、海に叩きつけられた。
サンジャシントは左舷に急回頭した。
だが、艦が曲がろうとしたとき、敵飛空挺は次々と爆弾を投下した。
400キロ近くで放たれた爆弾のスピードは、魚雷とは比べ物にならぬ速さで接近してきた。
その内の1発は、ギルバート兵曹が操作する機銃座の下の位置に迫っていた。
「危ないぞ!逃げるんだ!」
彼は給弾作業を行っていた部下の兵にそう告げた。彼らは慌ててその場から逃げ始めた。
ドカンドカンドカン!という連続した爆発音が鳴り響き、サンジャシントが右舷側にのけぞった。
命中弾のうちの1発は、運悪く先の敵機が激突した格納庫付近で炸裂していた。
サンジャシントはツキに見放されていた。
炸裂した爆弾は、消火業に当たっていたダメージコントロールチームを皆殺しにし、
航空燃料収納タンクに熱風が吹きつけた。
次の瞬間、バゴオオオーン!という大音響と共に火山の噴火のような爆炎が飛行甲板を突き破って上空に吹き上げた。
さらに2発が後部に命中し、うち1発が艦内で炸裂して喫水線や機関部をめちゃくちゃに壊した。
爆発が収まると、サンジャシントはガクリとスピードを落とし、這うようなスピードでしか動けなくなった。
まるで猛獣の攻撃に致命傷を負わされ、その場にへたり込む草食獣のようだったと、生き残りの乗員は
そう話していた。
たったの6機に撃ち減らされていた。爆弾を投下しようと500メートルに接近した時には、
さらに2機が連続して機銃弾に撃ちぬかれ、海に叩きつけられた。
サンジャシントは左舷に急回頭した。
だが、艦が曲がろうとしたとき、敵飛空挺は次々と爆弾を投下した。
400キロ近くで放たれた爆弾のスピードは、魚雷とは比べ物にならぬ速さで接近してきた。
その内の1発は、ギルバート兵曹が操作する機銃座の下の位置に迫っていた。
「危ないぞ!逃げるんだ!」
彼は給弾作業を行っていた部下の兵にそう告げた。彼らは慌ててその場から逃げ始めた。
ドカンドカンドカン!という連続した爆発音が鳴り響き、サンジャシントが右舷側にのけぞった。
命中弾のうちの1発は、運悪く先の敵機が激突した格納庫付近で炸裂していた。
サンジャシントはツキに見放されていた。
炸裂した爆弾は、消火業に当たっていたダメージコントロールチームを皆殺しにし、
航空燃料収納タンクに熱風が吹きつけた。
次の瞬間、バゴオオオーン!という大音響と共に火山の噴火のような爆炎が飛行甲板を突き破って上空に吹き上げた。
さらに2発が後部に命中し、うち1発が艦内で炸裂して喫水線や機関部をめちゃくちゃに壊した。
爆発が収まると、サンジャシントはガクリとスピードを落とし、這うようなスピードでしか動けなくなった。
まるで猛獣の攻撃に致命傷を負わされ、その場にへたり込む草食獣のようだったと、生き残りの乗員は
そう話していた。
午後11時20分
「消火急げー!」
レキシントンの飛行甲板で兵員がホースを持って左舷側の被弾箇所に集まっている。
視界からは被弾箇所の様子が見えない。ただ黒煙が噴出しているのみだ。
「司令官、大事な母艦を傷つけつけることになり、申し訳ありません。」
艦長のリッチ大佐は、残念そうな表情で頭を下げた。
今は敵機が去っていき、第3群の艦艇は損傷艦の消火作業などで多忙をきわめていた。
レキシントンには12機の敵機がやってきた。
対空砲火でほとんど叩き落したが、近距離で放たれた爆弾を交わすことは困難だった。
放たれた爆弾5発のうち、1発がレキシントンの中央部より20メートル前側の位置、
右舷側の艦橋前の高角砲が取り付けられている正反対のところに命中した。
被弾箇所は船体の喫水線より上1.5メートルで、艦内の防御区画で炸裂した。
のため、全長2メートルの穴を開けられてしまった。
また、吹き上げられた爆風によって20ミリ機銃6丁が破壊され、2人が戦死、
10人が負傷し、3人が海に吹き飛ばされている。
だが、航行に支障は無く、母艦機能も全然損なわれていない。
「リッチ、そう思い悩むな。君の腕があったからこそ、被弾を1発に抑えることができたのだ。
それに被害も大きくない。安心しろ。」
ミッチャーはなだめるようにそう言った。それを聞いたリッチ大佐はやや表情を緩めた。
(それにしても、今回の敵はうまかった。100機の攻撃で5隻のわが艦に損害を与えた。
その中には無視できない損害を被った船もいる。バーマントにも出来る奴はいるのだ)
ミッチャーは心の中でそう思うと、体が身震いした。
後方のサンジャシントの被害はかなりひどい。
今は停止して、寮艦が消火に当たっているが火災は衰えるどころか、ますます広がっているように見えた。
「消火急げー!」
レキシントンの飛行甲板で兵員がホースを持って左舷側の被弾箇所に集まっている。
視界からは被弾箇所の様子が見えない。ただ黒煙が噴出しているのみだ。
「司令官、大事な母艦を傷つけつけることになり、申し訳ありません。」
艦長のリッチ大佐は、残念そうな表情で頭を下げた。
今は敵機が去っていき、第3群の艦艇は損傷艦の消火作業などで多忙をきわめていた。
レキシントンには12機の敵機がやってきた。
対空砲火でほとんど叩き落したが、近距離で放たれた爆弾を交わすことは困難だった。
放たれた爆弾5発のうち、1発がレキシントンの中央部より20メートル前側の位置、
右舷側の艦橋前の高角砲が取り付けられている正反対のところに命中した。
被弾箇所は船体の喫水線より上1.5メートルで、艦内の防御区画で炸裂した。
のため、全長2メートルの穴を開けられてしまった。
また、吹き上げられた爆風によって20ミリ機銃6丁が破壊され、2人が戦死、
10人が負傷し、3人が海に吹き飛ばされている。
だが、航行に支障は無く、母艦機能も全然損なわれていない。
「リッチ、そう思い悩むな。君の腕があったからこそ、被弾を1発に抑えることができたのだ。
それに被害も大きくない。安心しろ。」
ミッチャーはなだめるようにそう言った。それを聞いたリッチ大佐はやや表情を緩めた。
(それにしても、今回の敵はうまかった。100機の攻撃で5隻のわが艦に損害を与えた。
その中には無視できない損害を被った船もいる。バーマントにも出来る奴はいるのだ)
ミッチャーは心の中でそう思うと、体が身震いした。
後方のサンジャシントの被害はかなりひどい。
今は停止して、寮艦が消火に当たっているが火災は衰えるどころか、ますます広がっているように見えた。
午後11時50分、第58任務部隊第3群
サンジャシントは左舷に大きく傾き、今にも転覆しそうだった。
先の被弾に伴う航空燃料の誘爆で機関が停止し、喫水線下の排水が出来なくなったサンジャシントは、
格納甲板の大火災の消火も出来なくなっていた。
火災は拡大しつつあり、艦長のマーチン大佐は総員退艦を命じた。
そして5分前にサンジャシントの乗員は、救助艦に全て移送が終わった。
今も赤々と燃える断末魔のサンジャシントを、司令長官のスプルーアンスは複雑な表情で眺めていた。
甲板上には救助されたサンジャシントの乗員が、今しも沈み行く自分達の艦を食い入るように見つめている。
「燃料庫の誘爆さえなければ、サンジャシントを救えたのに・・・・・・・」
スプルーアンスはやりきれない思いでそう呟いた。
傍らにいるサンジャシント艦長のマーチン大佐は、煤けた顔を悔しさでゆがめている。
「大事な艦を失うことになってしまい、本当に申し訳ありません。」
「そう自分を責めることもない。今回はたまたま当たり所が悪かったのだ。戦場ではこういうことはつき物だよ。」
スプルーアンスはマーチンに穏やかな口調でそう語りかけた。
時速が100キロ以上を超えているスキップボミングを交わすのは至難の業である。
どんな艦長でもその攻撃方法にはおそらく対応しきれないだろう。
ダンピール海峡海戦以来、日本軍に対して味あわせた恐怖を、所を変えて米海軍が体験するハメになったのである。
だが、スプルーアンスの表情はそれほど暗くはない。むしろ、安堵しているようにも思えた。
サンジャシントは左舷に大きく傾き、今にも転覆しそうだった。
先の被弾に伴う航空燃料の誘爆で機関が停止し、喫水線下の排水が出来なくなったサンジャシントは、
格納甲板の大火災の消火も出来なくなっていた。
火災は拡大しつつあり、艦長のマーチン大佐は総員退艦を命じた。
そして5分前にサンジャシントの乗員は、救助艦に全て移送が終わった。
今も赤々と燃える断末魔のサンジャシントを、司令長官のスプルーアンスは複雑な表情で眺めていた。
甲板上には救助されたサンジャシントの乗員が、今しも沈み行く自分達の艦を食い入るように見つめている。
「燃料庫の誘爆さえなければ、サンジャシントを救えたのに・・・・・・・」
スプルーアンスはやりきれない思いでそう呟いた。
傍らにいるサンジャシント艦長のマーチン大佐は、煤けた顔を悔しさでゆがめている。
「大事な艦を失うことになってしまい、本当に申し訳ありません。」
「そう自分を責めることもない。今回はたまたま当たり所が悪かったのだ。戦場ではこういうことはつき物だよ。」
スプルーアンスはマーチンに穏やかな口調でそう語りかけた。
時速が100キロ以上を超えているスキップボミングを交わすのは至難の業である。
どんな艦長でもその攻撃方法にはおそらく対応しきれないだろう。
ダンピール海峡海戦以来、日本軍に対して味あわせた恐怖を、所を変えて米海軍が体験するハメになったのである。
だが、スプルーアンスの表情はそれほど暗くはない。むしろ、安堵しているようにも思えた。
被害を受けた艦はサンジャシントだけではない。
駆逐艦インガソルとドーチ、軽巡クリーブランド、正規空母レキシントンが同じように被弾している。
インガソルは1発被弾で機関部を直撃したために速度が22ノットに低下。
ドーチは5発被弾し、20分前に沈んでいる。クリーブランドは速度が25ノットまで低下して中破の判定を受けている。
レキシントンは比較的マシなほうで、スピードも31ノットまで発揮でき、判定は小破となっている。
一方敵機撃墜は、総合で78機と確認されている。
「サンジャシント、沈みます!」
見張りの声が聞こえた。艦橋の全ての目がサンジャシントに注がれる。
サンジャシントは、後部からするすると沈みつつある。やがて、艦首が持ち上がった。
クリーブランド級軽巡を改造した軽空母のため、その船体部分はほっそりとしている。
サンジャシントの周りの海面は、火災と艦が閉じ込めていた空気によって白く泡立ち、水蒸気を発した。
後部側が没すると、次いで中央部が水につかり始める。飛行甲板の破孔から吹き上げる火災が水につくと、
ジューという音を立てて白煙をあげた。
艦橋の乗員たちは皆が敬礼を送っている。
サンジャシント艦長、マーチン大佐にいたっては、涙を流しながら、自分と共に過ごした“家”が、
最後を迎える一部始終をずっと見つめていた。
「お前を救ってやれなくてすまない。」
彼は誰にも聞こえないような小声でそう呟く。
午後11時58分、CVL-30サンジャジントは、異世界の海でその生涯を閉じた。
竣工してからわずか半年の命だった。
駆逐艦インガソルとドーチ、軽巡クリーブランド、正規空母レキシントンが同じように被弾している。
インガソルは1発被弾で機関部を直撃したために速度が22ノットに低下。
ドーチは5発被弾し、20分前に沈んでいる。クリーブランドは速度が25ノットまで低下して中破の判定を受けている。
レキシントンは比較的マシなほうで、スピードも31ノットまで発揮でき、判定は小破となっている。
一方敵機撃墜は、総合で78機と確認されている。
「サンジャシント、沈みます!」
見張りの声が聞こえた。艦橋の全ての目がサンジャシントに注がれる。
サンジャシントは、後部からするすると沈みつつある。やがて、艦首が持ち上がった。
クリーブランド級軽巡を改造した軽空母のため、その船体部分はほっそりとしている。
サンジャシントの周りの海面は、火災と艦が閉じ込めていた空気によって白く泡立ち、水蒸気を発した。
後部側が没すると、次いで中央部が水につかり始める。飛行甲板の破孔から吹き上げる火災が水につくと、
ジューという音を立てて白煙をあげた。
艦橋の乗員たちは皆が敬礼を送っている。
サンジャシント艦長、マーチン大佐にいたっては、涙を流しながら、自分と共に過ごした“家”が、
最後を迎える一部始終をずっと見つめていた。
「お前を救ってやれなくてすまない。」
彼は誰にも聞こえないような小声でそう呟く。
午後11時58分、CVL-30サンジャジントは、異世界の海でその生涯を閉じた。
竣工してからわずか半年の命だった。