※投稿者は作者とは別人です
725 :外伝(またはパラレル):2008/02/17(日) 17:01:55 ID:OiXF2z220
「633爆撃隊」「荒鷲の要塞」「空軍大戦略」
やっぱロン・グッドウインの音楽は最高だわ
投下させていただきます
726 :外伝(またはパラレル):2008/02/17(日) 17:02:46 ID:OiXF2z220
第386爆撃航空群第555爆撃飛行中隊のマーチンB-26マローダー十二機は氷雨の
降り注ぐ白い闇の中を高度四千フィートで飛行していた
緊密な編隊を組む爆撃機は全灯火を点灯し戦闘配置に就いた搭乗員がそれぞれの持ち場で
遼機の左右の翼で赤と緑に輝く光点に位置を乱す気配はないか油断無く見張っている
夜の帳と悪天候に護られて南下する輸送船団を叩くべく出撃した555爆撃中隊だったが
状況は目標に辿り着く前に自滅しかねないほどに悪化しつつあった
「“ファニー・デビル”が編隊を離れます」
十二機の爆撃機を先導する“ダンシング・ドードー”の操縦手席でウイリアム・E・ポッ
ツ大尉は両翼にびっしりと着氷しズルズルと横滑りを続ける爆撃機がよろめきながら降下
していく姿を険しい表情で見守る
七百フィートまで高度を落としたところでようやく操縦装置の自由を取り戻した“ファニ
ー・デビル”だったが編隊に追いつく見込みは無く爆弾を投棄して帰路に着いた
断固として前進を続ける十一機の爆撃機は幸いにもそれ以上深刻なトラブルに見舞われる
ことは無かった
雲海を抜けプロペラから剥がれた氷が機体を擦る耳障りな金属音を響かせながら飛行する
爆撃中隊は前方に陸地を認めると高度を下げるとともに編隊を90度変進させて海岸線と
平行に飛ぶコースを取る
「見つけました」
機体後部のマーチン250CE型動力砲塔に超弩級のバストを持つダイナマイトボディを
押し込んだミーア特務曹長が声をあげた
常人に数倍する夜間視力を持つ猫形獣人のミーアは海岸線に沿ってそそり立つ岩山の山頂
近くに設けられた監視所から送られてくるフィルターを掛けた信号灯の紫色のシグナルを
読み取っていく
「輸送船団は三十分前にここを通過しました、針路0-8-0です」
編隊を新しい針路に乗せた十一機の爆撃機は更に高度を下げて前進を続ける
やがて555爆撃中隊の眼下に断雲の下を航行する輸送船団が姿を現す
獲物を見つけた爆撃機は猛毒のスズメバチのように襲撃行動に移った
十一機の爆撃機が六機と五機の二個小隊に分かれ-脱落した“ファニー・デビル”は第二
小隊の四番機だった-小隊はさらに三機で逆V字形の編隊を作る二個分隊に分かれる
レッド分隊を率いるのは機首にシルクハットを被りステッキを小脇に抱えたコミカルなド
ードー鳥を描いた“ダンシング・ドードー”
右後方に真っ赤なマントとミニスカートを翻した美女のノーズアートが目印の“スーパー
ガール”
左後方に素っ気無く機体名だけを黄色いペンキで書き込んだ“SNAFU”が続く
旋回砲塔の中で急速に接近する輸送船の甲板で梱包された積荷に群がる人影を認めたミー
アは大声で警告を発した
727 :外伝(またはパラレル):2008/02/17(日) 17:03:52 ID:OiXF2z220
「左旋回!」
“ダンシング・ドードー”が身を捻ると同時に輸送船の甲板から放たれた夥しい数の火
線が“スーパーガール”と“SNAFU”を捕える
“スーパーガール”は空中で巨大な火の玉と化し“SNAFU”は右エンジンから炎の尾
を引いてクルクルと回りながら墜ちていく
「くそ、あれはFLAK艦だぞ!」
FLAK艦-輸送船の甲板に設置した対空砲を補給物資のコンテナに偽装し不用意に近づ
く米軍機に必殺の砲火を浴びせる仮装防空艦-は十月下旬から登場し艦船攻撃に従事する
双発爆撃機に無視出来ない損害を与えていた
ポッツは罵り声をあげながら“ダンシング・ドードー”の機首をFLAK艦に向けた
黒々と浮かび上がった輸送船のシルエットの六ないし八箇所からレーザービームを思わ
せる色とりどりの光弾が切れ目無く撃ち出されている
海面すれすれまで舞い降りた“ダンシング・ドードー”は左右に鋭くバンクしてS字を描
くコースを飛び対空砲の照準を狂わせながら接近し艦尾方向に回りこむと急流を遡行する
鮭のように急角度で上昇に転じ艦首に向って飛び抜けながら機首側面に取り付けられた四
挺の50口径機関銃で甲板を掃射するとともに爆弾倉の扉を開く
FLAK艦が産み落とした四発の千ポンド爆弾はFLAK艦の装甲されて
いない甲板をあっさりと突き破って船内で爆発した
炎に包まれたFLAK艦の上空を旋回しながら機内通話で一人の負傷者も出なかったこと
を確認したポッツはミーアに話しかけた
「もう少し付き合ってもらうぞ」
「何をするんですか?」
「なにそう難しいコトじゃない、第二小隊を援護するためまだ爆弾があるように装って他
のFLAK艦を襲って対空砲火を分散させるだけだ」
「拒否権は無いんでしょ?」
「飛び降りたいなら止めはしない」
ポッツは高らかに笑いながら“ダンシング・ドードー”を火と鉄の荒れ狂う修羅場へと突
っ込ませた
728 :外伝(またはパラレル):2008/02/17(日) 17:06:22 ID:OiXF2z220
投下終了
“ダンシング・ドードー”の元ネタはジョン・ガードナーの「亡霊機の帰還」(ハヤカワ文庫)
725 :外伝(またはパラレル):2008/02/17(日) 17:01:55 ID:OiXF2z220
「633爆撃隊」「荒鷲の要塞」「空軍大戦略」
やっぱロン・グッドウインの音楽は最高だわ
投下させていただきます
726 :外伝(またはパラレル):2008/02/17(日) 17:02:46 ID:OiXF2z220
第386爆撃航空群第555爆撃飛行中隊のマーチンB-26マローダー十二機は氷雨の
降り注ぐ白い闇の中を高度四千フィートで飛行していた
緊密な編隊を組む爆撃機は全灯火を点灯し戦闘配置に就いた搭乗員がそれぞれの持ち場で
遼機の左右の翼で赤と緑に輝く光点に位置を乱す気配はないか油断無く見張っている
夜の帳と悪天候に護られて南下する輸送船団を叩くべく出撃した555爆撃中隊だったが
状況は目標に辿り着く前に自滅しかねないほどに悪化しつつあった
「“ファニー・デビル”が編隊を離れます」
十二機の爆撃機を先導する“ダンシング・ドードー”の操縦手席でウイリアム・E・ポッ
ツ大尉は両翼にびっしりと着氷しズルズルと横滑りを続ける爆撃機がよろめきながら降下
していく姿を険しい表情で見守る
七百フィートまで高度を落としたところでようやく操縦装置の自由を取り戻した“ファニ
ー・デビル”だったが編隊に追いつく見込みは無く爆弾を投棄して帰路に着いた
断固として前進を続ける十一機の爆撃機は幸いにもそれ以上深刻なトラブルに見舞われる
ことは無かった
雲海を抜けプロペラから剥がれた氷が機体を擦る耳障りな金属音を響かせながら飛行する
爆撃中隊は前方に陸地を認めると高度を下げるとともに編隊を90度変進させて海岸線と
平行に飛ぶコースを取る
「見つけました」
機体後部のマーチン250CE型動力砲塔に超弩級のバストを持つダイナマイトボディを
押し込んだミーア特務曹長が声をあげた
常人に数倍する夜間視力を持つ猫形獣人のミーアは海岸線に沿ってそそり立つ岩山の山頂
近くに設けられた監視所から送られてくるフィルターを掛けた信号灯の紫色のシグナルを
読み取っていく
「輸送船団は三十分前にここを通過しました、針路0-8-0です」
編隊を新しい針路に乗せた十一機の爆撃機は更に高度を下げて前進を続ける
やがて555爆撃中隊の眼下に断雲の下を航行する輸送船団が姿を現す
獲物を見つけた爆撃機は猛毒のスズメバチのように襲撃行動に移った
十一機の爆撃機が六機と五機の二個小隊に分かれ-脱落した“ファニー・デビル”は第二
小隊の四番機だった-小隊はさらに三機で逆V字形の編隊を作る二個分隊に分かれる
レッド分隊を率いるのは機首にシルクハットを被りステッキを小脇に抱えたコミカルなド
ードー鳥を描いた“ダンシング・ドードー”
右後方に真っ赤なマントとミニスカートを翻した美女のノーズアートが目印の“スーパー
ガール”
左後方に素っ気無く機体名だけを黄色いペンキで書き込んだ“SNAFU”が続く
旋回砲塔の中で急速に接近する輸送船の甲板で梱包された積荷に群がる人影を認めたミー
アは大声で警告を発した
727 :外伝(またはパラレル):2008/02/17(日) 17:03:52 ID:OiXF2z220
「左旋回!」
“ダンシング・ドードー”が身を捻ると同時に輸送船の甲板から放たれた夥しい数の火
線が“スーパーガール”と“SNAFU”を捕える
“スーパーガール”は空中で巨大な火の玉と化し“SNAFU”は右エンジンから炎の尾
を引いてクルクルと回りながら墜ちていく
「くそ、あれはFLAK艦だぞ!」
FLAK艦-輸送船の甲板に設置した対空砲を補給物資のコンテナに偽装し不用意に近づ
く米軍機に必殺の砲火を浴びせる仮装防空艦-は十月下旬から登場し艦船攻撃に従事する
双発爆撃機に無視出来ない損害を与えていた
ポッツは罵り声をあげながら“ダンシング・ドードー”の機首をFLAK艦に向けた
黒々と浮かび上がった輸送船のシルエットの六ないし八箇所からレーザービームを思わ
せる色とりどりの光弾が切れ目無く撃ち出されている
海面すれすれまで舞い降りた“ダンシング・ドードー”は左右に鋭くバンクしてS字を描
くコースを飛び対空砲の照準を狂わせながら接近し艦尾方向に回りこむと急流を遡行する
鮭のように急角度で上昇に転じ艦首に向って飛び抜けながら機首側面に取り付けられた四
挺の50口径機関銃で甲板を掃射するとともに爆弾倉の扉を開く
FLAK艦が産み落とした四発の千ポンド爆弾はFLAK艦の装甲されて
いない甲板をあっさりと突き破って船内で爆発した
炎に包まれたFLAK艦の上空を旋回しながら機内通話で一人の負傷者も出なかったこと
を確認したポッツはミーアに話しかけた
「もう少し付き合ってもらうぞ」
「何をするんですか?」
「なにそう難しいコトじゃない、第二小隊を援護するためまだ爆弾があるように装って他
のFLAK艦を襲って対空砲火を分散させるだけだ」
「拒否権は無いんでしょ?」
「飛び降りたいなら止めはしない」
ポッツは高らかに笑いながら“ダンシング・ドードー”を火と鉄の荒れ狂う修羅場へと突
っ込ませた
728 :外伝(またはパラレル):2008/02/17(日) 17:06:22 ID:OiXF2z220
投下終了
“ダンシング・ドードー”の元ネタはジョン・ガードナーの「亡霊機の帰還」(ハヤカワ文庫)