風の如く颯爽とした、しかしどこか哀愁を感じる大男が、森の中へと突き進む。
大男――
ワムウは、一万数千年の生の中で数える程しか感じたことのない奇妙な感情を抱えながら、主を見つけるべく北へ北へと進んでいた。
その胸に去来する感情は、愉悦、期待、落胆、高揚、寂寥、そのどれもであり、どれでもない。
ワムウ自身、形容できない自らの感情を持て余し、昂っていた。
それでも、目前にその感情をぶつけられる敵がいない以上、今はただ愚直に、忠義に従い、主を探す他なかった。
故に、『闘いたい』その強い思いだけがどんどん膨れ上がっていく。
それも全て、紛い物の太陽の力を持つ有翼の少女、
霊烏路空と闘ったが故だった。
そんな時である。ワムウの鋭敏な感覚が、自分のいるこの場へと何者かが向かってくるのを察知した。
おそらく数は二人。それ以外は詳しく分からない。
だがワムウはこの時心の底から願った。
どうかこれから現れる者達が、主たちではなく自分の命を脅かす、『対等』な存在であることを。
「……行くか」
ワムウは気配を感じた先へと、そのたくましく緊張した脚を運ぶ。
その脚が切り裂く空からは、自ずと真空波が生じ周囲の木々を切り裂く。
柱の男ワムウ、その全身に闘気を漲らせて、敵を求めて進みゆく。
「あーお腹すいた。チョコレートケーキない?あたしあれ大好物なのよ」
「あるわけ無いだろ、そこにチョコレートによく似た色のキノコはあるがな、ちなみに毒キノコだ」
「ゲェッー……まったく荒木も太田も気が利かないわね、支給された食料なんて刑務所のランチのほうがまだましな感じよ」
「殺し合いを強制しておいて気が利くも何もあったもんじゃないと思うぜ」
仄暗く湿った魔法の森を、二人の少女が会話をしながら歩いていた。
空条徐倫と
霧雨魔理沙、『最低のファーストコンタクト』を経た二人は、一応の纏まりを見せ一路『人間の里』を目指していた。
何故『人間の里』なのか。それは魔理沙が決めたことだった。
理由は、単純に人里のような大きく目立つ施設には人が集まりやすい。
そして道具屋もあるため、これから必要になるであろう道具や失った箒もまた手に入れられるかもしれないからだ。
特に後者の理由は大きく、魔理沙は徐倫に対して箒のことを未だ根に持っていた。
徐倫は魔理沙が何も言わなければ、自分が知っていて仲間たちも集まる可能性のあるGDS刑務所を目指そうと思ったが、
魔理沙の箒を破棄する要因(厳密に言えば勘違い)を作った負い目があるため、快くその提案を聞き入れたのだった。
仲間であるエルメェスの安否や、死んでしまっている筈のF・Fや
ウェザー・リポートのことも気にはなったが、
準備を整えてからでも遅くはないと判断した。
「しかし不気味な森ねぇー、あんたほんとこんな場所住んでんの?マジで?」
「マジもマジ、大マジだぜ。案外住んでみりゃあなんてこと無いし、キノコも取り放題だ、それに家賃もいらない。
困ったことがあるとするなら隣人が陰気な人形オタクなのと、日当たりが悪いぐらいだな」
「あんたその年で苦労してんのねー」
「普通だぜ。それよりお前の方が大概だろ、刑務所なんてのは本でしか知らんが、うら若い乙女が閉じ込められるところじゃないぐらい知ってる。
話すと長いだろうから詳しくは聞かないけど、お互い様だぜ」
二人は情報交換によって得られた互いの情報から、雑談を続けていた。
二人とも黙っているのは性に合わないタイプだったし、住む世界の違いや奇妙な境遇などから話題は絶えなかった。
もちろん殺し合いの場であることは二人とも分かっていたし、
抜け目ない性格から周囲には魔理沙のスタンド『ハーヴェスト』が輪形に広がり、警戒網を敷いている。
「そう言えば人形オタクで思い出したが、お前も知り合いがこの場に居るんだっけか」
「ええ……しかも奇妙なことに……」
「死んでいるはずの人間、そしてこの時代に居るはずのない人間も居る、か」
それは名簿見たことで気づいた事実。徐倫自身気がかりなことであり、荒木や太田の能力の秘密とも関わりがあるかもしれないことだった。
「案外重要そうなことだし、移動がてら考えてみるか、魔法使いは実験とか研究とか得意だぜ」
魔理沙は後ろにいる徐倫に振り返り、得意気に笑いかけ提案した。
徐倫も魔理沙の提案に賛成し、考え始める。
「そうね、それもいいかもしれない……じゃあまず
フー・ファイターズとウェザー・リポート、この二人はあたしが知る限りでは確実に死んでいる。
もし本当にこの場にいるなら信頼できる仲間達だけど……」
「ふーむ、私も知り合いがいるどころか参加者の半分くらいは知り合いだが、そういう奴は居ない。
幽霊やキョンシーなんかもいるが、あいつらは死んでるのが平常運転だしなぁ……」
「消滅とか随分と物騒な話だが、まあ成る程ね。
ちなみにフー・ファイターズってやつとウェザー・リポートってやつが死んだのはどちらも同じぐらいか?」
「いいえ、数日以上は離れている。それがどうかしたの?」
「だよなぁ……」
徐倫から質問の答えを聞いた魔理沙は急に立ち止まり腕を組んで考えだした。
そしてうんうん唸りながらじっくり数分思考して、考えついた仮説を話し始めた。
「うーん、これは一応仮説だぞ、自分でも結構飛躍してるしとんでもない考えだと思う。
まあお前も薄々分かっているとは思うが、お前の話に出てきた奴らは皆死んだ時間も時代も場所もバラバラ、これは事実だ。
そうすると参加者たちは全く別の世界、全く別の時間軸から拉致されてきている可能性がある、ということだ。
その考えなら死んだ人間がこの場にいることも説明がつく。
あと、死んだ奴を生き返らせる事ができるって可能性も考えられるが、少なくとも時間や世界を移動できる力があるのなら、
わざわざ死んだ後の奴を蘇らせるより生きてる頃の奴を連れてくるほうが楽だろう。
だがまあ全てこの名簿が確かなものであり、同姓同名の別人ではない、という前提によって成り立つがな」
長々と話して疲れたのか、魔理沙はデイパックから水を取り出して飲み、一息つく。
「その話が確かなら、つまり荒木と太田は『世界』を自在に行き来し、『時間』を自由に操作できるスタンド、もしくは術があるってことね。
それならこの名簿にも納得出来る……」
「ああ、この場にいる全員を何の抵抗も認知もさせずに拉致することの出来る奴らだ、そんなふざけた能力があってもなんらおかしくない。
それと今の話を事実と仮定して考えるとこういうことも考えられる。『自分の知っている奴が自分の知るそいつではないかもしれない』
また『自分を知っているはずのやつが自分を知らないかもしれない』とな。必ずしも自分の知る時間軸から拉致られたとは限らんということだ」
「そうね……確かにあたしの父さんはあたしの知る時点では、プッチから取り返した『記憶のDISC』をスピードワゴン財団に送ったばかりで、
とても殺しあいなんて出来る状態じゃなかったはずだし、
ひいおじいちゃんである
ジョセフ・ジョースターがあたしの知る時代から来たとすると、年齢91歳のボケ老人で参加させる意味がわからない。
それぞれベストな時代から参加させられている可能性が高いってことか」
「そう、おまけにもう一個浮かんだ……これはあってほしくないことだが、時間軸が違うとすると、
過去に敵対していて後に和解した奴が居たとして、そいつが和解した後じゃない可能性もある。
私にも思い当たる奴らが結構居て、異変の首謀者あたりがそうだと中々めんどくさい」
「うげぇ……F・FがもしDISCを守ってた頃のF・Fだったらゾッとするわ……」
徐倫はフー・ファイターズが敵であった時のことを思い出し、苦い笑みを浮かべた。
「まあとにかく思いつく事はこんぐらいか?なんか気が滅入るようなことしか考えつかなかったが……」
魔理沙は今の会話の仮説を紙に記しながら、げんなりした表情で呟く。
「確かにマイナスな情報だけど、今その仮説を立てられて知ることが出来たということはプラスだと思う。
これからもなにか思いついたら話すようにしましょう、暇な時にね」
「うん、しかし我が仮説ながら結構いい線いってると思うんだよなぁー。
問題は実証するには今の説に当てはまる奴と遭遇しなきゃならんということだが・・」
「そのためには進むしか無い。それに今の話を聞いて逆にやる気が出た部分もあるわ……。
私の倒すべき敵、
エンリコ・プッチ。奴がもしケープ・カナベラルに向かう以前、それこそ刑務所で教戒師をやっていた頃の奴なら、
今ここで奴を仕留めれば奴の言う『天国』を阻止できる。F・Fやウェザーも死なずに済むかもしれない。
例えそうでなくとも、ここでプッチは必ず仕留める」
そう言い徐倫は遠くを見る表情を浮かべた。そのしぐさからは既に先ほどの呑気さは消え失せ、
詳しい事情を知らない魔理沙から見ても、徐倫の確固たる決意と気高い信念が伺えた。
魔理沙はその表情を見た時、己が無意識の内に感じていた殺し合いへの冷たい恐怖が、熱く燃え上がり、小さな勇気に変わるのを感じた
「何言ってるか分からないしいちいち話の内容は物騒だが、徐倫がそこまで言うならそのプッチとか言う奴は相当悪いやつなんだろう。
いいぜ、協力してやる、一緒にとっちめてやろうぜ、そいつを。報酬は特別にまけといてやるぜ」
にこやかな笑顔と共に、魔理沙は徐倫に向けて力強く宣言した。
「ありがとう魔理沙、感謝しとくわ……あんた結構イイやつじゃない」
「当然だぜ、私はおせっかい焼きの何でも屋、霧雨魔理沙様だ。それに徐倫もただの痴女じゃなくて、いい痴女だった」
「痴女言うな!」
ゴスッ!
「痛っ!」
「まったく……あんたカラッとした性格かと思えば意外とねちっこいのね、やれやれだわ」
「お前も軽いのか重いのかまったく分からん性格だ、やれやれだぜ」
二人は冗談を飛ばして笑い合う。
お互い初対面の印象は最悪だったが、互いにこうして話すうちに偏見や誤解は消え、
確かな友情が芽生えつつあった。それはこの殺し合いの場においてこれ以上となく尊いことだろう。
そうして魔理沙が紙に仮説をまとめ終えると、二人はまた人里を目指し歩き始めた。
このままのペースで行けば放送前までには人里に着けるだろう。
だが、バトルロワイヤルの環境では、そんな想定など何の意味も持たない。
ハーヴェストの警戒網が、近づいてくる何者かを、察知した。
闘いに飢えた孤独な格闘者、ワムウを。
「徐倫!他の参加者だ!」
「ああ、敵かどうか判らないが、敵だとしても警戒網の外から攻撃してこない所を見ると、射程は近距離のようね、
うかつに近づかない方がいい……」
魔理沙はハーヴェスト達を招集し、徐倫はスタンドを出す。臨戦態勢だ。
そして来訪者、ワムウは二人が視認できる距離まで近づいてきた。
「ねえあんた、あんたは殺し合いに乗っている?乗っていない?」
徐倫はワムウに対して問いかける。
しかしワムウは質問に答えず、値踏みするような視線を二人に注ぎ、ブツブツなにか言うだけだ。
「……また女、しかも少女か……しかし」
「あー?なにいってんだこいつ。格好だけじゃなく頭までおかしいのか?いや、頭がおかしいから格好もおかしいのか」
魔理沙はワムウの古代人のような格好を揶揄するように冗談を吐く。
しかし徐倫は警戒を解くことなく、ワムウを睨み続ける。
「魔理沙……油断するな。コイツ、殺気が尋常じゃない……どうやら話すまでもなく、危険な奴のようだ……」
徐倫のスタンド『ストーン・フリー』が、ワムウに対してファイティングポーズを取る。
魔理沙も追従してミニ八卦炉を構えようとするが、今は持ってないことを思い出し、仕方なくハーヴェストを攻撃態勢に変更した。
「ほう、どうやら貴様達は闘う術を持っているようだな、面白い。ならばこのワムウと……闘えぇぇぇぇいッッ!!」
言うやいなや、ワムウは二人に飛びかかってくる。
闘いの火蓋は切って落とされた。
「魔理沙!あんたは遠距離から援護してッ!あたしはコイツの能力を見極めるッ!!」
「おう!」
徐倫が前衛、魔理沙が後衛。これは事前に決めていた作戦だ。
急造のコンビながら、歴戦の猛者である徐倫はしっかりとまとめあげていた。
「オラァッ!」
まず飛びかかってきたワムウの蹴りを、徐倫がスタンドで防御。
そこに一瞬出来た隙に魔理沙が間髪をいれず収束させたレーザを放つ。
「ムウ!中々良い連携だ……だが、効かぬ!」
ワムウはレーザを防御しきり、疾風のような連撃をストーン・フリーに浴びせようとする。
しかし、
「『スタンドはスタンドでしか傷つけられない』か……どうやらあんたはスタンド使いじゃないようね……」
ストーン・フリーにも、徐倫にもダメージはない。
スタンドの大原則により、非スタンド使いの攻撃はスタンドには通らないのだ。
それにより徐倫はワムウがスタンド使いでないことを悟る。
「ヌウッ!……奇妙な術を使う……波紋でもなく、勿論流法でもない。貴様のそばに立つヴィジョン、それが貴様の能力か……!」
ワムウは状況を不利と見て、一旦距離を取り徐倫達を観察する。
「ええそうよ、これが私のスタンド『ストーン・フリー』……だが能力はこれだけじゃないッ!」
瞬間、ワムウは自分の足元に糸のような何かが巻き付いていることを認識したが、振り払うより速く徐倫はワムウを引き寄せる。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」
そして一気にラッシュを叩き込んだ。
蚊帳の外だった魔理沙もすかさず吹き飛んだワムウに弾幕で追撃する。
「MUOOOOOOOOOOOOOO!!!」
ワムウは勢い良く吹き飛び、背後にあった大木に叩きつけられた。
「やったぜ徐倫!あっけないがこれであの変態マッチョメンは再起不能だろう!」
「いや、何か手応えが薄い……まるでゴムのような……ハッ!」
徐倫がワムウの吹き飛んだ先を見ると、既にそこにワムウの姿はない。
急いで糸の結界を張ると、近くに反応はあったがワムウは見えない。
咄嗟に気配を感じた方向に腕を交差させ防御姿勢を取ったが、まるで近距離パワー型スタンドのような威力の攻撃が襲いかかり、
今度は徐倫が吹き飛ばされた。
「うわああああああッ!!」
魔理沙は戦慄する。徐倫が吹き飛ばされた場所には、うっすらとワムウの姿が見えつつあった。
それもほぼ無傷の状態のワムウが。
「あああっ!徐倫!あ……あいつは一体何なんだ……丈夫なんてもんじゃない……
本気でなくとも一撃で人間を昏倒させられるはずの攻撃を、本気の連打で浴びたのに、ケロッとしてやがる……」
ワムウは首をゴキゴキと鳴らしながら、満足気に愉悦の笑みを浮かべる。
もちろんまったく無傷というわけではないが、柱の男の防御力はストーン・フリーのラッシュと魔理沙の魔法を受けきっていた。
一方徐倫は起き上がらない。
「いいぞ、貴様達。このワムウに対してダメージを与えた事は、俺と闘うに相応しい資格だ。
貴様達を『敵』と認めよう……さあ立てい!立ってこのワムウと闘え!」
言い放つワムウの体からは、闘気が色を持って立ち昇っているかのようだった。
数々の修羅場を超えてきた魔理沙ですら、ワムウの闘気は人間の放つそれとは一線を画するものだと認識する。
それもその筈、幻想郷における闘いはあくまでルールの元で行われる美しさを競う闘いだ。
故に命の危険や全力のぶつけ合い等はなく、人外ですらその全容を晒すことはない。
だがワムウは違う。
戦闘の天才であり、闘いにこそ生きがいを見出す真の格闘者。
敵と認めた相手には敬意を払い全力で殺しにかかる。
それがワムウだ。
魔理沙とワムウには住む世界の違いからの決定的な価値観の相違があった。
「ぐううッ……だからって、安々命をはいどーぞとくれてやるわけにはいかないんだよッ!ハーヴェストッ!!」
魔理沙は一転俯いていた顔を上げ、ハーヴェストを操りワムウを取り囲むように襲わせる。
ワムウの闘気に気圧されながらも、魔理沙の心は折れていない。
挑み続ける心がなければ魔法使いにはなれないし、一見不可能な弾幕を避ける事もできないからだ。
幻想少女は、そして異変の解決人は、例え初見で無謀と思っても、立ち向かえる強さがあった。
「ぐっ、これもスタンドとやらの力か……しかし弱いッッ!」
しかし当然のごとく、ワムウに生半可な攻撃は通用しない。
ハーヴェストの過半数は高速で動くワムウの動きについてこれず振り切られてゆくし、何とか攻撃を与えても、まるで応えていない。
それどころかワムウはハーヴェストの攻撃を無視して魔理沙に流れるような蹴りや拳撃を繰り出してくる。
対して魔理沙はハーヴェストを操りながら、弾幕ごっこで鍛えた動体視力を頼りに必死に避け続けるしかない。
当たり前の話だが、パワーAのストーン・フリーですら大きなダメージは与えられないワムウのボディに、
パワー系スタンドではないハーヴェストがダメージを与えられる道理はない。
しかし魔理沙はそんなことは折り込み済み、狙いは別にあった。
「今だ徐倫ッ!」
「何ッ!?」
ワムウは魔理沙の声に驚き、徐倫が吹き飛んだ先を咄嗟に見るが、徐倫は居ない。
意識を集中して探そうとした瞬間、ワムウの体に衝撃が走る。
「オラァッッ!!」
気絶していたかに思えた徐倫が、ワムウの想定を全く超えた方向からその頭を殴り抜ける。
その足元にはハーヴェスト達が集まって、バケツリレーのようにして徐倫を運び移動を補助していた。
そう、魔理沙はハーヴェスト達を分散させ、一つをワムウの撹乱、もう一つを徐倫の移動用に用いたのだ。
まず徐倫の無事を知った魔理沙は奇襲を仕掛けるため、撹乱用のハーヴェストにワムウの頭を集中的に狙わせた。
それによりワムウの注意と視界を徐倫からそれさせ、ちょうど徐倫が死角となる位置まで誘導する。
そして徐倫をハーヴェストで高速かつ隠密に運ぶことで、スピードの乗った一撃をワムウに察知されることなく喰らわせることに成功したのだ。
これは吹き飛ばされた徐倫がストーン・フリーの『糸電話』で魔理沙に意識があることを知らせていたからこそ出来たことでもある。
慎重に夜闇に紛れさせた細い糸は、柱の男の視覚を持ってしても捉えることは出来なかった。
「やらせていただいたぜ!ちょいと派手さには欠けるがな」
「ああ、しかしこれだけで終わる奴じゃない……」
合流した二人は、倒れているワムウを警戒しながら、短く会話する。
「さっきあれだけ叩き込んで駄目だったし、これで終わりじゃないとはわかっちゃいるが……丈夫すぎないか?
主催者はこの殺し合いをゲームだとかのたまったが、あんなバランスブレイカーがいちゃあとんだクソゲーだぜ……」
「そう、だから奴にも何か制限、もしくは弱点があるはず……その秘密を暴かなければ私達に勝ち目はない。
一つ思い当たる節はあるけど……」
「思い当たる節?何だ?」
「奴は『吸血鬼』かもしれない……父さんの記憶DISCで見ただけだから確かではないけど、
吸血鬼って生物は不死身の生命力と人間離れした身体能力を持っていて、日光を浴びせる以外殺しきる手段はないらしい。
先程からの奴のタフネスとパワーはその吸血鬼の情報と一致するわ……」
「吸血鬼ぃ!?私の知ってる吸血鬼はあんなごつくないし露出癖なんて無いぞ!?」
「ッ!あんたも吸血鬼を知ってるの!?でも今はそれは問題じゃない。
もし奴が吸血鬼ならば、あと1~2時間ちょっと経てば来る日の出に備えて隠れられる場所を探すため、決着を急ぐはず。
だから私達がすべきことは……」
「闘いを長引かせて退かせるか、戦闘不能にして陽の光を浴びせるかってとこだな。
しかし奴が吸血鬼じゃなかったらどうする?幻想郷じゃ見たこと無いが新種の妖怪かもしれんし、未だ奴が吸血する所を見ていない」
「その時はその時よ。……!どうやら議論をしてる暇はもう無いみたいね……第二ラウンド開始よ!」
見るとワムウは既に起き上がり、今にも襲いかかって来そうな気迫を醸し出している。
「うぇ~……しゃーない、腹くくって行くしか無いか!ハーヴェストッ!」
「ストーン・フリーッ!」
そして二人の人間は、果敢にワムウに挑んでいく。
その様をみて、ワムウはこの上ない充足感とたぎる闘志を自覚した。
この自分に対して、波紋も日光も無くとも臆する事なく同等以上に立ち回り、挑み続けてくる。
事実喰らったダメージは想像以上に大きく、再生が若干追い付いていない。
あのジョセフ・ジョースターや翼の娘にも劣らない戦士だ。
そんな二人の戦士に向かって、ワムウは最大限の敬意を払うべく、自身最強の奥義をゆっくりと構えた。
ワムウの両腕の筋肉が、貯めこむパワーに呼応し振動しながら膨張していく。
「ッッッ!!魔理沙!やばい!なにかとんでもない攻撃が来るぞ!!」
「なにっ!?」
瞬間、徐倫はワムウの異常に気づけたが、遅かった。
ワムウの二つの拳からまるでトルネードを凝縮したような一撃が放たれる。
「闘技!神砂嵐!!」
「うおおおおおおストーン・フリーィィィィーーーーーーーーーーッ!!!」
「ぐわあああああああああッ!」
神砂嵐が迫る直前、徐倫は咄嗟に片手で魔理沙を殴り飛ばし、もう片手でワムウの目に糸を射出した。
そして何とか後ろにある木に飛び退き隠れきったが、神砂嵐の威力の前には無駄だった。
それなりの樹齢を重ねた大樹ですら、まるで発泡スチロールで出来ているかのようにボロボロに削れていく。
結果徐倫は錐揉み回転をしながら全身に裂傷を刻み、数メートル先の地面に叩きつけられた。
周囲には、台風一過のような無言の静寂だけが訪れた。
「ふふふ……目潰しで方向をずらそうとしたようだが、例えずらせど威力は十分。
そして木の後ろに隠れようと、俺の神砂嵐は岩すら砕く。人間ごときが耐えられるダメージではない」
倒れている二人を一瞥しながら、ワムウは勝利を確信した。
だが、
「ヌウ……立ち上がるだと……まだ替えの指が馴染んで居なかったからか、それとも先程の一撃の影響が想定異常だったからか……
どちらにせよ貴様は瀕死、もう一人の女も戦闘不能、最早これ以上このワムウと渡り合う策もあるまい。
貴様はこのワムウに拳を当てた強い戦士だ、苦しむこと無く殺してやろう」
徐倫は立ち上がり、ファイティングポーズを構えて佇んでいた。
その表情に余裕はない。
それでも、その瞳には諦めも絶望も映っていなかった。
「あんたの必殺技……神砂嵐だっけ?確かに凄い技だけど、まだ私は死んでいない……まだ私は闘えるぞ!」
徐倫はその拳に力を込め、ワムウを睨みつける。
「そこまでズタボロになりながらもなお生意気なセリフを吐くとは、貴様ジョセフ・ジョースターに似ているな……
女の身ながら実にタフだ!気に入った!貴様とは最後まで全力で闘ってやる!」
「?何故お前が私のひいおじいちゃんを知っているかは知らないけど、受けて立つわ、ストーン・フリー!」
そして第三ラウンドが始まる。
戦況は当たり前だが、徐倫の不利だった。
ワムウは徐倫の予想通り、日の出までに余裕を持って隠れられる場所を見つけるため、全力を発揮したのだ。
ワムウが高速の回し蹴りを仕掛け徐倫はストーン・フリーで防御するが、ワムウは防御に構うこと無く次々と蹴りを繰り出し、
防御かいくぐって一撃を入れようとしてくる。
しかも一撃一撃の威力で真空波が発生し、徐倫の体に傷を増やしていく。
徐倫も何とか反撃を試みるが、前に出した拳はワムウが体を変化させ全て避けきってしまう。
そのうち徐倫は防戦一方になり、ただいたずらに体力を消耗していく。
「どうした!威勢がいいのは口だけか!フンッ!」
ストーン・フリーの攻撃に合わせ、ワムウはカウンターとなる形で徐倫のがら空きの胴体に蹴りを入れる。
そしてそのまま細胞ごと同化し、消化吸収の攻撃を繰り出した。
「ぐううううッ!オラアッッ!!」
徐倫は何とかワムウを殴り飛ばすことで難を逃れたが、ダメージは大きい。
ストーン・フリーで傷口を縫いながら、胴を抑えて荒い呼吸を繰り返した。
「まだよ……まだ死ねない……『ひとりの囚人は壁を見ていた』『もうひとりの囚人は鉄格子からのぞく星を見ていた』
あたしは星を見るッ!父に会うまで、プッチを倒すまで!星の光を見続けるッ!!」
既に徐倫は瀕死で息も絶え絶えだ。しかし決して折れること無く前を見据えている。
そしてそんな徐倫を見つめる、一つの影があった。
そう、霧雨魔理沙だ。
彼女も大きなダメージを負っていたが、神砂嵐が直撃するより早く徐倫に吹き飛ばしてもらったことにより、
なんとか命をつないでいた。
(徐倫……私よりすごい傷を負ってるくせに、なんでまだ立ち上がれるんだよ……
そんなかっこいい姿見せられちゃあ、私だっていいとこ見せ返してやらなきゃ、女が廃るぜ!)
未だ闘いを続ける徐倫の姿を見て、魔理沙も触発され再び闘志を再燃させた。
魔理沙は負けず嫌いで諦めの悪い性格なのだ。
そしてこの状況を打破すべく、自分に今できることを考える。
(私の手元には、奴から攻撃を喰らう直前ハーヴェストで奪った奴のデイパックがある。
そしてこの中身を有効活用出来れば、あいつを退けることが出来るかもしれない……
だが出来るだろうか……正真正銘最後の策。イチかバチか、伸るか反るか、やらなきゃ死ぬし、やっても死ぬかもしれない、なら!)
魔理沙は転んでもただでは起きず、ワムウのデイパックを気づかれること無く盗むことに成功していた。
ハーヴェストの本来の能力『収集』と、魔理沙の盗みの能力が合わさったことによりできたことである。
そしてその中身は、ワムウが使わなかったものなので心配したが、活用次第では使いようのあるものだった。
故に魔理沙は覚悟を決め、確実に策を成功させるため最善のタイミングを窺った。
戦場では、未だに徐倫とワムウが死闘を繰り広げている。
「グッ、ガハッ!」
しかし徐倫も最早限界だ。気を失ってもおかしくないギリギリの状態で立ち続けている。
ワムウもそんな徐倫の限界を悟ったのか、勝負を決めるため、再び奥義を構えた。
「貴様はよく闘ったが、もう終わりだ……貴様のガッツに敬意を評して、再びこの技でトドメをさしてやろう……
闘技!神砂――」
「ここだぁぁぁーーーーーー!徐倫!下がれ!」
ワムウが神砂嵐を構えるその一瞬、そこに隙を見出した魔理沙は突貫する。
「ヌウッ!死に損なったか!」
ワムウは突如現れた魔理沙に気を取られ、神砂嵐の発動が遅れた。
その間に徐倫も魔理沙に言われた通り後ろに退く。
そしてワムウに魔理沙はエニグマの紙から取り出した支給品を、一気に投げつけた。
同時に弾幕も展開する。
「徐倫!私も星を見るぜ!決して消えない、光り続ける流星をな!!」
魔符「スターダストレヴァリエ」
ワムウが投げられたものを弾こうとするが、弾く前に魔理沙は投げたもの――ダイナマイトに弾幕をぶつける。
弾幕の衝撃でダイナマイトは起爆し、辺りに盛大な爆発をもたらす。
「MUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!いつの間に俺の道具を盗んだのか、抜け目ないやつッ!
しかしそのチンケなものでは、俺を倒すことは出来ん!爆風ごと神砂嵐で消し去ってやるッ!」
爆発の衝撃を受けながらなお、ワムウは怯むこと無く神砂嵐を構えた。
ダメージがあるにはあるが、その表皮をほんの少し焦がすだけだった。
「闘技!神砂嵐!!」
ワムウは攻撃を受けながらもそれを自分の攻撃に利用した。
爆風をも巻き込み、さながら火砕流の如きすさまじい熱と風が、怒涛の勢いで魔理沙に襲いかかる。
ワムウの戦闘のセンスが故に出来たことだ。
魔理沙は成すすべなく神砂嵐に巻き込まれていく。
「バカなッ!魔理沙ッ!」
徐倫はその光景を見て魔理沙の危機を察するが、何も出来ない。
これまでかと思ったその時、突然神砂嵐が止んだ。
「なっ、これは!?」
爆風と神砂嵐による視界不良が晴れると、そこには神砂嵐を構えたまま膝を折り全身を震わせているワムウと、
火傷と裂傷を負いながらもなんとか立っている魔理沙の姿があった!。
「またまたやらせていただいたぜッ!(といってもすげーギリギリだが……)」
「魔理沙ッ!いったい何が……」
全ては一瞬の出来事で、徐倫にすら何が起こったのかまるで分からなかった。
だが結果として、立っているのは魔理沙で、膝を付いているのはワムウだ。
「貴様……何をした……」
ワムウも自身の体に何が起きているのか一切分からず、魔理沙を睨みつける。
「あー?いやあ本当に一世一代の賭けだったんだがな、これだよ」
そういって魔理沙は何かの液体の入った瓶を見せつけた。
「それは……俺に支給されていた酒ではないか……そんなものでこの俺を?」
「お前は知らなかったみたいだが、コイツは『一夜のクシナダ』という酒でな、かの八岐の大蛇すら眠らせたといういわれを持つ、
霊験あらたかな酒なんだ。お前に効くか分からなかったけど、効果てきめんといかずともそれなりに効くようだな」
『一夜のクシナダ』――それは魔理沙の言う通り、いわれある伝説の酒だ。
勿論飲ませただけで相手を昏睡させる力は強力過ぎるので、少し抑えられ強い眠気と虚脱感に襲われる仕様となっていた。
人間とは身体構造を異にする柱の一族だが、この手のマジックアイテムは成分以上にそのアイテム自体が持っている『いわれ』が効果に影響を与えている。
それ故ワムウですらその効力を無効にすることは出来なかった。
しかし俺はそんなものを飲まされた覚えはない……一体いつ……?」
「お前が必殺技を撃ってる時だよ。必殺技を撃つ時って集中するだろ?私はする、だからそこしか隙はないと思ったんだ。
で、必殺技を構えた姿勢のお前に奇襲を仕掛ければ、お前はその体制のまま同じ技を仕掛けてくると踏んだ。
そして案の定撃ってきたところにダイナマイトと弾幕で目を晦まし、酒を含ませたハーヴェストを背後から送り込んで事前に徐倫が与えていた傷口と、
私が投げたダイナマイトで出来た傷口に酒を注入したってわけだ。
酒は血管から飲むと何十倍にも効くからな。
一つ誤算だったのがお前が爆風を利用して技を強化してきたところだな。
手元に残したハーヴェストで防御したが、あと少し技が続いていたら今頃私はこの世には居なかっただろうぜ」
「ぐうううううううッ!」
「この結果は幾つもの幸運と偶然がもたらしたもんだ。もしお前が支給品を使っていたら、もし徐倫がお前に技を出される前に倒れていたら、
もしお前が私に技を出さなければ、もしお前に『一夜のクシナダ』が効かなければ……どれか一つ欠けても、この結果はなかった」
魔理沙は噛みしめるように、事実を一つ一つ口にした。
「魔理沙……」
「ああ……」
徐倫が魔理沙の元に何とか歩いてきて、共にワムウを見る。
「悪いがあんたは始末させてもらう。あんたの存在は危険だ……」
「まず日光が効くか試す、効かなければ禁止エリアに放り込ませてもらう……」
ワムウの動きを完全に止めるため、二人はジリジリと詰め寄る。
「WOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
しかし!ワムウは抵抗した。
強風を巻き起こして徐倫と魔理沙が怯んだ隙に、姿を透明にし忽然とその姿を消した。
余力を振り絞った必死の抵抗だった。
二人は後を追おうとしたが、二人ともダメージが大きく、どこに行ったかわからないうえ飛び抜けた身体能力を持つワムウを、
追うことは出来なかった。
そして二人は限界を迎え、そのまま森の中で倒れた。
仰向けに寝そべると、夜空には現代では中々見れないほどの星空が広がっている。
「あーあ……逃しちゃったぜ、あいつ……」
「そうね……でも撃退することは出来た……」
二人は満天の星空に心奪われながら、大地の感触に身を任せ、会話を続けた。
「なんだかこうやって安心したら、さっきまで痛くなかったはずの傷まで痛くなってきたぜ……」
「そういうもんよ……でも、カッコ良かったわよ……さっきの魔理沙」
「へへっ、そういうお前もカッコ良かったぜ徐倫。こういうことはあんまり言わないんだが、お前がいたから私は立ち上がることができたんだ。
感謝してるんだぜ……この魔理沙様が」
二人は笑いあい、互いの健闘を讃え拳をぶつけ合った。
そして同時に、もう少しで消える夜空の星を、また眺めた。
【D-4 魔法の森(地図左上部分)/早朝】
【空条徐倫@ジョジョ第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:体力消耗(大)、左頬・後頭部、両腕を打撲(痛みは治まってきている)、全身に裂傷(縫合済み)、脇腹を少し欠損(縫合済み)
[装備]:ダブルデリンジャー(2/2)@現実
[道具]:基本支給品(水を少量消費)
[思考・状況]
基本行動方針:プッチ神父とDIOを倒し、主催者も打倒する。
1:魔理沙と同行、信頼が生まれた。
2:エルメェス、空条承太郎と合流する。
3:魔理沙に従い人里を目指す。
4:襲ってくる相手は迎え討つ。それ以外の相手への対応はその時次第。
5:ウェザー、FFと会いたい。だが、敵であった時や記憶を取り戻した後だったら……。
6:
姫海棠はたて、ワムウを警戒。
7:しかし、どうしてスタンドDISCが支給品になっているんだ…?
[備考]
※参戦時期はプッチ神父を追ってケープ・カナベラルに向かう車中で居眠りしている時です。
※残りのランダムアイテムは「スタンドDISC「ムーディー・ブルース」@ジョジョ第5部」でしたが、姫海棠はたてに盗まれています。
※「ダブルデリンジャー@現実」を姫海棠はたてから奪い取りました。
※霧雨魔理沙と情報を交換し、彼女の知り合いや幻想郷について知りました。
どこまで情報を得たかは後の書き手さんにお任せします。
【霧雨魔理沙@東方 その他】
[状態]:体力消耗(大)、顎・後頭部を打撲、軽い頭痛、全身に裂傷と軽度の火傷
[装備]:スタンドDISC「ハーヴェスト」@ジョジョ第4部、ダイナマイト(6/12)@現実、一夜のクシナダ(120cc/180cc)@東方鈴奈庵
[道具]:基本支給品×2(水を少量消費、一つはワムウのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:異変解決。会場から脱出し主催者をぶっ倒す。
1:徐倫と同行。信頼が生まれた。それでも『ホウキ』のことは絶対許してやんないからな…
2:このスタンド、まだまだ色々な使い道が有りそうだ。
3:とりあえず人里へ向かい準備を整える。その後信頼出来る霊夢と合流したい。
4:出会った参加者には臨機応変に対処する。
5:出来ればミニ八卦炉が欲しい。
6:何故か解らないけど、太田順也に奇妙な懐かしさを感じる。
7:姫海棠はたて、エンリコ・プッチ、DIO、ワムウを警戒。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※徐倫と情報交換をし、彼女の知り合いやスタンドの概念について知りました。
どこまで情報を得たかは後の書き手さんにお任せします。
※結局魔理沙の箒ではないことに気付かぬまま「竹ボウキ@現実」をC-4 アリスの家に放置することにしました。
※二人は参加者と主催者の能力に関して、仮説を立てました。
内容は
- 荒木と太田は世界を自在に行き来し、時間を自由に操作できる何らかの力を持っているのではないか
- 参加者たちは全く別の世界、時間軸から拉致されているのではないか
- 自分の知っている人物が自分の知る人物ではないかもしれない
- 自分を知っているはずの人物が自分を知らないかもしれない
- 過去に敵対していて後に和解した人物が居たとして、その人物が和解した後じゃないかもしれない
です。
一方ワムウは、力の入らない体にムチを打ち、太陽から逃れられる場所を目指して、ひたすら走っていた。
目指すはここから一番近いD-3エリアの『廃洋館』だ。
しかし当然ながら、走るワムウの表情は、凄まじかった。
してやられ情けなく逃走する自分への憤り、出現した強敵への怒り、そこにさらに満足行く闘いを出来たという充足感が加わり、
例えようのない壮絶な表情のまま走っていた。
(確か……ジョリーンとマリサといったか……その名、決して忘れん。次会うことがあれば全身全霊を出し、貴様らを倒してみせよう……
だが今は、忌々しき太陽から逃れねばならぬ……情けない、これでは
サンタナの奴を馬鹿にできんな……)
ワムウは空に浮かぶ月の位置から、日の出までそう余裕はないと判断し足を速める。
(しかし奇妙な感情だ……この会場に来てから、一万数千年彷徨い癒えなかった孤独が、少しづつ満たされていくのが分かる……
この場ならば、満足の行く闘いを思う存分出来るうえ、『敵』も思わぬ数いる……
ジョセフ・ジョースター、翼の娘、ジョリーン、マリサ……そしてまだ見ぬ強敵たち……俺が必ず殺す、それまで死ぬなよ……)
そうしてワムウは空を仰ぐ。
満点の星空は、ワムウにも一際輝いて映った。
ワムウの闘いは、終わらない。
【D-3 魔法の森(入口付近)/早朝】
【ワムウ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:全身に中程度の火傷(再生中)、右手の指を
タルカスの指に交換(いずれ馴染む)、頭部に裂傷、疲労(中)、眠気、虚脱感
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:他の柱の男達と合流し『ゲーム』を破壊する
1:ひとまず『廃洋館』に向かい日光から逃れる。
2:カーズ・エシディシと合流する。南方の探索はサンタナに任せているので、北に戻る。
3:霊烏路空(名前は聞いていない)と空条徐倫(ジョリーンと認識)と霧雨魔理沙(マリサと認識)と再戦を果たす
4:ジョセフに会って再戦を果たす
5:主達と合流するまでは『ゲーム』に付き合ってやってもいい
[備考]
※参戦時期はジョセフの心臓にリングを入れた後~
エシディシ死亡前です。
○支給品説明
『ダイナマイト』
ワムウに支給。
言わずと知れた、かの有名なノーベル賞の『アルフレッド・ノーベル』が発明した爆発物。
1ダース支給された。
強烈な爆発力をもち、トンネル工事やビル解体、軍事にも利用される。
ちなみに語源はギリシア語のdunamis(ちから)からきているらしい。
爆薬はパワーだぜ!☆
『一夜のクシナダ』
ワムウに支給。
東方鈴奈庵第六話にて、
稗田阿求が人里で暴れる酒飲み妖怪を捕らえるため作った一撃必睡のカクテル。
八岐の大蛇を眠らせたという逸話も持っている霊験あらたかなお酒。一合瓶(180cc)ごと支給された。
しかしこのロワではその効力に制限がかかっており、一定時間の間強烈な眠気と虚脱感に襲われる効力となっている。
最終更新:2016年01月05日 05:01