カーニバルの主題による人形のためのいびつな幻想曲

―――あぁ…おかえり。どうだった?

―――ん? コイツらのことか? まぁ気にするなよ。単なる『偵察役』だ。

―――じゃあ、早速報告を聞こうか。




『ジョースター邸近くで火災…? 男女2人と妙な生物の交戦…、オイオイすぐ近くじゃあないか』

『その近くに大統領も居るな。恐らくオレが監視していることは承知だろうが…』

『魔法の森北東でも女2人が大男と交戦か。風を操るだと…?』

『GDS刑務所広場にて男女3人……、フンッ。生きていたか、ジョニィ・ジョースター

『猫の隠れ里で女3人と男が潜伏。ここは凄まじい死闘があった後らしい』

『ポンペイで妙な紫のガス…? 触れると老化するらしく、どうやら近づけない。参加者の情報は分からず』

『レストラン・トラサルディー近くでも戦闘確認。その容姿、まさかこの紅魔館主とやらのレミリア・スカーレットか?』

『髭の男が1人、拳銃片手に森を歩いている。誰か探してんのか?』

『香霖堂で鴉が女を抱えて飛び出した。幻想郷縁起によれば霊烏路空古明地さとりとかいうらしい』

『人間の里中で戦闘。 …アンタがさっき言ってた神父、吹っ飛んでいったぜ? ガキの妖怪と妖精も敗走していったようだ』

『魔法の森西の平原でも大規模な戦いがあったらしい。半裸の大男が森へ逃げていった』

『鉄塔の前で金髪の女2人。随分ギラついた瞳してやがる、怖い怖い…』

『カウボーイ風な男がガキを追跡している。動きからして只者ではなさそうだ』



『兎耳の生えた女と軍服の男…? 女の方は凄く殺気立っているな…こりゃあ近づけそうにない』

『竹林内で集団を発見。ジャイロ・ツェペリ…! ウザったいな、コイツもしぶとく生きているか…!』

『馬鹿みたいに爆走する猫耳女を発見。コイツが大統領の言っていた火焔猫燐か…。なんだってこんな奴を手下につけたんだ?』

『サンモリッツ廃ホテルで参加者が篭城。 …クソ、中へは進入出来そうにないか。様子が分からない』

『ゴミ捨て場で火災。火はほぼ燃え尽きているが、中で2人の女を発見。 …火球を投げたり避けたり、ダンスの練習か?』

『翼の生えた女が飛び回っている。 …速すぎて恐竜共では追いつけない』

『竹林から出てきた女を発見。幻想郷縁起によると八雲藍とかいう大層な妖怪らしいが、随分シケた面で歩いているな…ホントに大妖か?』

『D-4を歩く軍服の…んん? コイツ、さっきは兎耳の女と一緒に居なかったか? どうなっている?』

『森を歩く銀髪の三つ編みの女。 ……ッ!? この女、尋常じゃなく危険なニオイだ…ッ! 警戒しておくべきだろう…!』

『死んだシーザーの死体にあのカーズとかいう奴が入り込んでいる…! アイツはどうやら人間じゃないらしい。 …凄まじい気迫でコイツにも近寄れそうにない』




―――まあ、こんなところか。だいぶ長くなってしまったが…。

―――正直、思った以上にこのバトルロワイヤルってゲームはやばそうだ。どいつもこいつも一筋縄ではいかない雰囲気してるぜ。

―――ん? 空条承太郎…? ああ、黒い制服を着た長身の男なら確かにすぐ北に居るぜ。

―――徹底的にマークだと? …別に構いやしないがオレはアンタの部下じゃあないんだ、気安く指図しないで貰いたいね。

―――それと…またも『お客様』だ。女3人組、この紅魔館に近づいてくる。

―――ひとりは『八雲紫』とかいう、この幻想郷の権力者らしい。

―――迎えてやれだと? いいのか? 敵は大妖怪らしいんだぜ。

―――『引力』ねぇ…、まぁアンタが興味あるんならオレもとやかくは言わないけどな。

―――それを言うなら…オレもアンタには興味があるんでね…。




―――『一巡した新世界』…だっけ? そんなものが本当にあるのかね…。




――――――


―――










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ディエゴ・ブランドー
【早朝】C-3 紅魔館 1階エントランス



    ―――初めに…ディエゴ。可能性の話を少ししよう―――



『この地球上において、海と陸地の割合が7:3と決まっているように…存在する魂の数もキッチリと決まっているらしい』
『つまりこの地球で人間の数が増えれば増えるほど…他の生物が絶滅していると考えても差し支えなく、魂全体の数は影響なく一定だと言われている』
『だがその魂を…たったひとりの人間が何個も何万個も所有できる方法があるとしたら…その人間は何を見ると思う? その人間の先にはどんなことが起こる?』

―――いきなり何を言い出すのか分からないが…アンタは知っているのか? その『魂』を何個も所有する方法とやらを…?

『その方法を私は持っていないが…そうだな、何人か知っている。魂を幾つも所有することの出来るスタンド使いを…』
『私の友や部下にそんな者もいる。極めて稀な能力だ』

―――フーン…。で、魂を幾つも所有すると『何が起こるか』だっけか? さて、全く見当も付かないが…そんな事をすればそいつはもはや人間じゃあなくなるな。
―――『神』にも等しい人知を超えた背徳行為だ。もっともオレは神なんかもはや信じちゃあいないが…おっと、この『幻想郷』は神が住まう土地なんだっけな。まあどうでもいいか。

『神にも等しい…か。フフ……そんな能力を持つ私の友だが、同時に聖職者でもあってね。彼に聞かせたいものだ』
『恐らく彼は「スタンド能力はあくまでスタンド能力。それ以上でもそれ以下でも無い」と、返してくるだろうがね』
『…話が少し逸れたな。しかし魂をただ所有しているだけではただのクレイジーなコレクターで終わってしまう』

―――へぇ、まだ何か必要な行為があるのか?

『そうだ。それは『言葉』だったり『友』だったり『場所』だったりするんだが…まあこの辺りは追々話そう』
『とにかく、魂を集めて必要な条件を満たせば…人は『天国』へ行くことが出来る』

―――…………。

『おい、妙な顔をするな。私の言っている天国とは『精神』に関することだよ。精神の向かう所…』
『精神の力が進化し、究極的に行き着く所という意味さ』



―――精神の力……『スタンド』を進化させる、ということか?

『流石、察しが良い。そういうことになるな。君なら私の言っていることが分かると思う』
『―――何故なら君は『私自身』なのだからね』

―――………頭イカレてんのか? ……と、言いたいとこだが――

『そう! 否定したくても君には否定できない。君自身がそう感じているからだ』
『目の前の男はまさしくオレだ――ってね』

―――………ディオ。アンタは何か知っているのか? オレとアンタの『関係』について…。

『フム…あくまで『推測』の域を出ない。最初に言った『可能性の話』とはそのことだ』
『私達は生まれた年代も、名前も、顔も、ほぼ同じだ』
『だがここへ連れてこられる前の『世界』は、君と私ではどうも違うらしい』
『プッチの話から考えて、あの2人の主催者は時間を越えて私たち参加者をこの会場に集めてきたと考えられるが…』

―――時間だけじゃなく『違う世界』からも参加者を連れてこられると?

『その可能性が大きい。実に突飛た話だが、私たちはお互い違う時間と世界から連れてこられた『同一人物』なのだろう』

―――……似たようなことが出来るスタンド使いに心当たりはあるが…。
―――だがアンタはオレによく似ているが、やはりオレそのものではない。大体オレは人間だ。吸血鬼とかいう胡散臭いバケモノじゃない。

『その通り。私と君は殆ど同じ存在で…しかし全く別の存在だ』
『この矛盾はお互いが元居た世界の『関係』にあるのではないか…と私は考えている』

―――ほお? オレがいた『世界』とアンタがいた『世界』…。何か『関係』があるというのか?

『……さっきの天国の話を覚えているか? 精神が究極的に加速したら何が起こるかという話だ』
『スタンドが加速し、精神が加速し、そして時は加速する。最終的に宇宙が行き着く所は『新しい光』という名の夜明けだ』
『これから少し難しい話をするかもしれない…だが君は聞かなくてはならない…』

―――…………続けろよ、ディオ。

『……ああ、いいだろう。長くなるがとても大切な話だ』



    ―――天国を目指すのに必要なものはまず、『私のスタンド』である―――

『我がスタンド『世界』の先にあるものこそが人間がさらに先へ進む道なのだ。だが、それだけではまだ不十分』



    ―――必要なものは信頼できる『友』である―――

『その者は欲望をコントロール出来る者でなくてはならない』
『人というのは…その生涯で何人の人に出会うことが出来るか…。その生き方に影響を与える人というのならそう多くはないだろう』
『私はそういった人間を探し、今まで世界中を渡ってきた』
『プッチはその過程で出会った親友だが…案外この『幻想郷』でも新たな友に出会えるのかもしれないな。フフ…』



    ―――必要なものは『極罪を犯した36名以上の魂』である―――

『罪人の魂には強い力があるからである』
『だが、必ずしも36名以上の罪人である必要は無い』
『キリストでは36とは三位一体の『神』を意味する数字であるが…『3』という数字もまた神を意味する』
『悪のタガが外れた『極悪人』よりも更に強大な魂を『3つ』も集めれば、より次元の高い進化へと近づけるのかもしれない』
『この幻想郷においてそれほどまでに強大な魂となると…これはもう『神』や『大妖』などの高位な魂しかない』



    ―――必要なものは『14の言葉』である―――

  秘密の皇帝           らせん階段

        カブト虫          イチジクのタルト

      カブト虫

ジョット

             廃墟の街

    カブト虫   特異点

                 特異点

 天使                  ドロローサへの道

      紫陽花              カブト虫



『私自身を忘れないようにこの言葉を私のスタンドに傷として刻みつけておこう』



    ―――必要なものは『勇気』である―――

『私はスタンドを一度捨て去る勇気を持たなければならない』
『朽ちていく私のスタンドは集めた罪人の魂を吸収。そこから新しいものを生み出すであろう』



『生まれたものは目醒める』
『信頼できる友が発する14の言葉に知性を示して…友は私を信頼し、私は友になる』



    ―――最後に必要なものは『場所』である―――

『新月…或いは月の魔力が最も凶暴化する満月の夜に能力は完成させなければならない』
『本来なら北緯28度24分、西経80度36分の場所へ行き『天国の時』を待つのだが…、この会場ではそれは不可能のようだ』
『さて…どうするか? 会場に『月』の重力が最も影響する『場所』があれば良いのだが…』




『―――以上が天国へ向かうための条件。大前提の話だ』
『そしてここからは『能力が完成』した時、世界に何が起こるかという話だ。ここまではいいかな?』

―――……既に突拍子も無い話だぜ。 ……だが『興味』は出てきた。
―――じゃあ、大本命の話だ。その『天国の時』を迎えるとどうなる?

『さっきも言ったが、時間という究極の概念が『世界』を伴って加速し始める』
『時の加速は無限大に拡がり、やがて宇宙はひとつの特異点に辿り着く。宇宙が一度終わりを迎えるんだ』
『無限に加速する時の中を旅してきたこの世の遍く全ての生物は、この旅を一瞬の出来事に感じるだろう』

『そして宇宙は一巡し、新しい地球が生まれる』

『それが、人類の夜明け。新世界だ』
『これは誰にも計り知ることのできない推測だが…だが確信もしている。不思議とね…そうなる『ハズ』なのだ』
『本当の幸福がそこにはある。幸福とは無敵の肉体や、大金を持つことや、人の頂点に立つことでは得られない』
『真の勝利者とは、天国を見た者のことだ。どんな犠牲を払ってでも私はそこへ行く』

―――『真の勝利者』…。
―――なんか、途方もない話だ。無茶苦茶で、馬鹿げていて、とても信じられる話じゃあない。
―――そんな世界を作れる根拠なんか何処にもありゃしない。そもそも前提である必要条件を達成することからして困難すぎるぜ。
―――例えるなら…地図もコンパスも無しに馬のみで大陸を横断するような、そんな無謀で巨大過ぎる難題だ。

『………』




―――だから気に入ったぜ。オレも『天国』へ連れて行けよ、ディオ。



『クックク……! 君ならそう言ってくれると思ったよ、ディエゴ』

―――それで? オレのいた世界とアンタのいた世界の『関係』の話とやらはどうなった?

『一般によく知られる多元宇宙論やエヴェレットの多世界解釈…そういった『横』に繋がった平行世界ではなく、『縦』に繋がった世界…』
『それが天国だ。終わりに到着し、新しい始まりを迎えた世界…』
『ディエゴ…君はそういった世界から連れてこられた人間なのかもしれない』
『そういう意味で、私と君は『同一人物』であり『全くの別人』でもあると言ったのさ』

―――…確かに、アンタはただ『隣の世界』から連れてこられた存在ではないってのはオレにもよく分かる。
―――じゃあつまり、あの主催者はそんな世界にすらも『干渉』でき、この会場に集めてきたってのか?

『あくまでも可能性だ。だが、もはやそう思うしかないだろう』
『…私と君の間には、何か強烈な『引力』が働いている。それだけは間違えようのない事実なのだからな』

―――……ああ。オレだって感じているさ。アンタが俺に極めて近い『ナニカ』だってことはな。

『フフフ…! ならばお互い争う理由はもう無いだろう』

―――そうだな。じゃあオレはしばらく、アンタを見ているとするよ。
―――……別世界のオレは、果たしてどんな人間なのか…それをしばらく見ていたい。おっと、もう人間じゃあなかったんだっけな。

『ありがとう。ではしばらくこの紅魔館に居させてもらうよ。 …放送ももうすぐ始まるだろう』

『じゃあ改めて…』






『よろしく。ディエゴ・ブランドー』


―――ああ、よろしくたのむぜ…、ディオ・ブランドー







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いびつな変貌を遂げた幻想郷にも朝が来た。
太陽は変わらず東から昇り、暁の光が大地に降り注ぐ。
この世界に生き物はいない。神はいない。全ての有情非情が創られたハリボテのように、ただ存在するだけだ。
あるのは『命』という神聖な神からの賜りを、血によって貪りあう冷酷無慙な催しのみ。
舞台に立たされた90もの役者は、先の放送を以って72にまで減ったことが伝えられた。


―――女がひとり、うつ伏せに倒れている。


太陽の光が幻想郷全体を覆っているが、ここ紅魔館の窓の少ない内部に光は殆ど届かない。蝋燭の薄明かりが、屋敷全体の照明を担っている。
その薄い照明に浮かぶ男の黄金の髪が、僅かな風に揺れた。彼の視線は専ら手元の古臭い書物に向いている。
階段上に聳えるように置かれたアンティークな西洋椅子に深く腰掛け、パラリパラリ…と、ページをゆっくり捲る佇まいはまさに芸術的な絵画。
男は書物から溢れる日本独特の紙の匂いを、まるでワインの香りでも楽しむかのように心地良く吸った。


―――倒れた女は、ヒトとは思えぬ威圧を放ちながら段上の男を睨みつけている。


男が読書を楽しむその時間、このエントランスホールはまるで『時』が止まっているかのように森閑としていた。
その静止時間を、時折ページを捲る音が破る。
しばらくすると、男は不意に息を吐き出した。ふぅ…というその微かな音が、この空間の時間という檻を壊し、再び針を進めさせる。
ひと呼吸置いた後、男は首だけを階下に向けた。僅かな灯りに照らされた男の口角が、不気味に吊りあがる。


「―――以上が、私の追い求める『天国へ向かう方法』だ。さて、幻想の賢者『八雲紫』はこれを聞いて、何を思う?」


聴く者を安楽に誘うような心地良い声が、この静寂なホール内に奇妙に響く。
男は本を持つ姿勢はそのままに、実に楽しげな表情で階下の女に語りかけた。
ニタリと笑う口元から覗き見える牙は、男が人間でない事を示している。


「若造の茶目にしては、あまりにも禍々しく、度を過ぎている…としか言えませんわ」


―――圧倒的な妖気を放つ、『八雲紫』と呼ばれた女は、口元から血を垂らしながらも不敵に笑む。




    ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ……………… ッ ! 


大気が震える。地が軋む。
何人をも寄せ付けぬほどの『力』が、地に這い蹲る大妖の身体から無限の如く湧き出していた。
常人では計り知れない重圧が加速的に重さを増し、傍に居るものは悉く耐えられず、砕かれ折れてしまう程の妖気。
その混沌とした雰囲気が、あるひとつの恐ろしい事実を指し示していた。


―――八雲紫が、怒っている。


彼女を知る者がこの事実を聞いたならば、直ちに震え上がり、ただただ祈ることしか出来ないだろう。
自身の強大さを形作っている『境界を操る能力』の機能の殆どを失っているとはいえ、大妖怪たる『格』は依然健在している。

しかし彼女の放つ巨大なプレッシャーを受けてなお、この男――DIOは笑みを崩そうとしない。
まるで自身と紫の妖気との間に『境界』を作り、受け流しているかのように動じない。


「…成る程。凄まじく重々しい『力』だ。大妖怪の肩書きは伊達ではないらしい……、畏怖すら覚えるよ」


言葉の内容とは裏腹に、DIOは笑顔を作ったまま。
怒れる紫の姿から一旦視線を離し、再び本に目を戻す。

「お前は…普通の人間には無い『特別な能力』を持っているそうだな? この幻想郷縁起の項によると『境界を操る能力』だとか。
 その桁違いな力を行使すればこのDIOすらも討てるのではないか?
 そんな所で転がってないで、向かって来たらどうだ? それとも今のプレッシャーは『強がり』なのか? なあ…八雲紫」

おちょくるような真似を…! と紫は唇を強く噛み締め、握り拳を作る。
このゲームにおいて彼女の能力が著しく制限されているという事を、目の前の男は間違いなく気付いている。
気付いていながら紫をからかい、挑発するような言動をしているのだ。

(情けない…! 大妖怪である私が、こんなあられもない姿を見せるなんて…!)

DIOの指摘通り、紫の見せる威圧はいわば強がりで、体力・精神力共にボロボロであった。
そんな状態を見透かしたかのようなDIOの物言いにも、紫は屈辱を覚える。


猫の隠れ里の一件から、既にして大妖怪の威厳は崩れ去ったようなものだ。
それでも愛する幻想郷のために、身を粉にする想いで闘う事を決意した矢先の出来事がこれだ。
先の『天候を操る能力者』相手にも、何一つ抗うこと叶わず逃走。
敵だともいえる邪仙にはついでのように助けられ、借りまで作る始末。
傷心のまま何かに導かれるように、引き合うようにこの紅魔館へ辿り着き――


―――あまりに残酷な運命の壁は、再び八雲紫の前に立ち塞がった。


油断をしていたつもりは無かったが、心に穿たれた多くのスキマはそのまま彼女の『隙』になってしまった。
今や主の居ない紅魔館の門を潜り、このエントランスホールへ辿り着いたその時。

八雲紫は突如血を吐き、吹き飛ばされた。

突然の惨事に、何も考えられなくなった。
自分に何が起こり、何故床に倒れているのか。
そんな思考は、襲い掛かる吐き気と頭痛に蝕まれて露へ消えた。
とうとう耐えられずに吐瀉し、激痛が今更になって腹部と背中を刺してきた。
涙目になりながらも何とか意識を保ち、どうやら自分は背から突然攻撃されたらしいと悟る。

だが、肝心の攻撃された瞬間の記憶は無い。
気が付けば吹っ飛ばされていたその現象に、紫はある予感が走った。

『まるで時間が止められたみたいだ』

そんな芸当が出来る者を紫はひとり知っている。
その者はこの紅魔館にも馴染みある人物だったが、彼女はもうこの世にいないはずであった。
だとすれば、この自分に気付かれずに一体何処の誰が攻撃できようか。
追撃に備える紫の耳に届いたのは、小さく椅子を引く音と本を開く音。

そして――



「君は『引力』を信じるか? この館へ足を運び、私と出会えたことに意味がある事を…?」



凍りつくほどに妖しい、男の囁きだった。






▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


宇佐見蓮子
【朝】C-3 紅魔館 1階エントランス




どこからが、間違いだったのだろう。

この大きな西洋屋敷に入り込んだところから?

あの寂れた里で、八雲さんを助けたところから?

刑務所で、青娥についていったところから?

ジョニィと、はぐれてしまったところから?

わからない。

何が間違っていたかなんて、後になって考えても無駄。
ただひとつ言えるのは、この紅魔館に入り込んでしまったことだけが私の最大の失敗だ。
今はひたすら後悔の念が頭の中をグルグル回っている。あんまり回ってるせいか、吐き気が抑えられなくなってくるぐらいだ。
今のこの光景が夢であって欲しい。そればかりを祈っているけど、背筋の冷たさが嫌でも現実だと言う事を執拗に物語っている。
まるで背骨に直接ツララでも突っ込まれた気分だ。


今、私はかつてないほどに戦慄を覚えている。

心が、魂が、警告を鳴らしている。

『今すぐにこの場所から逃げろ』

わかってはいても、脚は立てず腰は抜けたまま。

私みたいな普通の人間が、こんな場所に迷い込んできたことがそもそも絶望的な状況だったんだ。

『ここ』は私のいるべき場所じゃあない。あまりにも不相応な、ちっぽけな存在だ。

あの『男』が何者かだなんて、どうだっていい。すぐに逃げなきゃダメなんだ…!

八雲さんが、一瞬にして吹き飛んだ。血を吐きながら、床に転がされた。
その醜態とも言える姿を晒しながらも、彼女は階段上に佇むあの男――DIOを睨みつけている。
彼女の圧倒的に重苦しい威圧感は、奇妙にも私の目にハッキリと見えるようだ。
そしてDIOが纏う、あまりにも禍々しい『邪気』…のようなものが、八雲さんのそれとぶつかり合う。

2人の『強者』の覇気が絡み合い、弾き合うこの空間は、ただの人間である私にはあまりに耐えられない。
心臓を鷲掴みにされたような窮屈さが私の全身を駆け巡り、恐怖に負けて涙も止まらなくなった。

出来ることなら、八雲さんを見捨ててでもこの屋敷から走り去りたい。
死にたくない。自分だけでも助かりたい。
その思いばかりが私の思考を蝕んでいく。最低な女だと思った。


(ハァ……ッ! ハァ……ッ! ハァ……ッ! …………ッ!!
 な…なんなの、よ…! あの男……!? 人間…なの…!?
 いきなり八雲さんを吹っ飛ばして、『天国』がどうとか…ッ! 尋常じゃない……ッ!!)


DIOの白く綺麗な指がページを捲る音だけの、静かな世界が続いた。
しかし、依然としてDIOと紫の放つ気同士がぶつかり擦れ合うような、嫌な音が蓮子の耳に絶えず入り込んでくるようだった。

蓮子は――残る全ての力を振り絞り、脚を動かそうと試みた。紫には本当に悪いと思ったが、逃げる事を決意した。



「ヒトをやめて久しいが――」



その刹那に響く、妖しく不気味な声。
怯えて、蓮子の脚は再び竦む。


「――いや、君たち妖の者からすれば瞬きほどの時間かもしれないが、それでも『退屈』なる人生は私にとって苦痛でね」

「――痛いほどに分かりますわ」


静かに流れる、会話。
口調こそ穏健なものだったそれは、しかし相手の全身を突き刺すほどの殺気を纏っている。


「変化の薄い湖面に一石を投じ、波紋を立てたくなるものだ」

「一石…? 『岩』の間違いではなくて?」


紫が立ち上がろうと腕を立てる。
その周りには、凝縮されたエネルギーがフツフツと沸きあがってくるように感じられる。


「クク…! お前は本当に楽しそうな女だ…八雲紫!
 『紫』は『縁』。私はお前と『引力』のように引き合ったと表現したが、それも必然の出来事なのだろう。
 『運命』という言葉を信じるかい? このDIOとお前は『縁』があった、ということだろうさ…」


読んでいた本をパタンと閉じ懐に入れ、DIOはニタリと笑いながら椅子ごと体を紫に向けた。
たったそれだけの行為に蓮子の体に緊張が走った。溢れる涙を拭くことすら出来ないほど、身体が固くなる。
紫もそれに反応したのか、優雅さを伴うようにゆっくりと立ち上がり、DIOと完全に対峙する。


「プロポーズの言葉なら実に素敵な文句なのでしょうけど、残念ながら私と貴方は相容れない存在でしょう。
 『天国』とやらに向かうことが一旦世界の終わりを意味するのなら、それは『幻想郷』の終わりを意味するも同義。
 貴方が『外の世界』で何を始めようが知ったことではありませんが、この儚くも素晴らしい幻想郷までをも巻き込むというのなら――」


彼女の周りからおびただしい数の光球が発生する。
それはまるで空間のスキマから現われたように、激しい敵意が害意となって収縮していく。

激情を露にするように、幻想の賢者は猛る。



「――美しく残酷にこの大地から往ね!」


瞬間、空間に亀裂が走った。
スキマから飛び出る雨あられの弾幕は、見た者を凍えさせるかの如く冷酷なオーラを纏っているようで、蓮子の表情もすぐに白くなっていく。

対してDIOは――椅子に座ったまま微動だにせず、組んだ足に手を置いていた。
微笑を浮かべたまま淡々と、座して賢者の攻撃を迎えていた。
厳かに、帝王のように、動じることなく不敵に構えるのみ。

そして蓮子の視界の端に映ったものは、攻撃を放つ紫の背後へと飛ぶ、黒い影。



「―――紫ちゃん? 『DIO様』にオイタしちゃ駄目じゃない♪」



邪仙・青娥の強靭な肉体によって紫は背中から再び強引に押し倒されてしまった。


「あ……ッ!! せ、青娥……貴女、という女は…ッ!」

「ごめんね紫ちゃん。貴女は大切な御方でもあるけど、それでもDIO様の魅力には遠く及ばないもの♪」


関節技で絞めるかのように、青娥はダメージを負った紫を容赦なく床に叩きつけた。
直後、大きく響く破壊音が蓮子の耳を貫いた。紫の弾幕がDIOの座っていた椅子を粉々にした音だ。
音に驚いて振り向いた蓮子の視界に――DIOは居なかった。
紫を最初に吹き飛ばした時のように、気付くとそこには居ない。
次々と襲い掛かる理解不能な現象が一層恐怖を引き立て、蓮子の歯をガチガチと鳴らす。



「ん、君の名は…え~と『霍青娥』だったかな? そうそう、この幻想郷縁起にも載っていた『仙人』、だとか」


いつの間にか階段に座り込んでいたDIOが、紫の背中に跨っている青娥へと語りかける。


「青娥と申します。以後お見知りおきを…」

「そうか、美しい容姿と名だね。中国の怪異譚を纏めた短編説話集『聊斎志異(りょうさいしい)』に登場する娘の名…だったかな?
 しかし青娥…それで君は何故、『大切な御方』であるはずの八雲紫をそうやって封じ込めているのだね?」

「先程も申しました通り、貴方が魅力的すぎるから…では駄目でしょうか?
 私は道教ですが…語られた『天国』という世界にも、ひどく興味をそそられてしまうほど…。
 共に天国を目指す『同志』をお探しになられていると仰いましたわね? この私も、それについて行き貴方を見ていたい。
 有り体に言えば…それは貴方に対するひとつの『一目惚れ』…と言ってもいいかもしれません」


蓮子はこれ以上に無い嫌悪感を表情に出す。

まるでそうであることが当然だというように、この女は言ってのけた。
青娥の突然の裏切り。 …いや、この女は何も裏切ってなんかいない。
恐らく生まれた時から、ひたすら自分に正直に生きてきたんだ。最初に私と出会った時と、何一つ変わっちゃいない。
『邪仙』と呼ばれる彼女の本質たる所以が、真に理解出来た気がした。
こいつはこの数分で『DIOを気に入ったからついていくことに決めた』という、それだけの理由で軽々と私たちに牙を剥いた。

成る程、こいつは…なんて『邪悪』なんだ…ッ!


「お前のような尻の軽い娘如きが恥ずかしげもなく、よくも堂々と吐けたものね…! 改めて反吐が出るわ…ッ! 霍青娥ッ!!」

「あらあら、カーペットと抱擁したままの姿勢で言われても威厳に欠けるわね、八雲紫?」

紫を押さえつける青娥の手がギリリと鳴った。
青娥は背に跨ったまま、紫の首に手をかけ、そして…!

「まあ待てよ、青娥。その女はまだ殺すわけにはいかない。試してみたい事もあるしな。
 だが、君の熱い情熱はよく伝わった。もしかすれば、私と引き合ったのも紫ではなく君の方かもしれないな。
 OK! 喜んで君を迎え入れよう! 私も君に非常に興味が出てきた。
 人の道から外れた無理非道なる邪仙…このDIOとも共通するモノを持ち得た女よ!」

「感謝致します。では…今からこの霍青娥の身体はDIO様の物ですわ」


実に清淑な振る舞いで立ち上がった青娥は、スカートの裾をひらりと摘み上げお辞儀をした。
それを見て気分を良くしたのか、DIOはニヤリと笑った後、立ち上がって階段を降りてくる。

コツリ…コツリ…と、ゆっくり一歩一歩…段を降りる度に蓮子の心臓は締め付けられる気持ちになる。
やがて倒れた紫の前にまで来ると、DIOは片膝をついて彼女に囁くように呟いた。


「さて――お前なら既に気付いているかもしれないが、実は私は『吸血鬼』でね。例に漏れず人間の血を吸って生きている。
 だが…流石のこのDIOも『大妖怪』の血などは今までに吸ったことはない。 …見るのも初めてだしな。
 果たしてそれはどんな味がするのか? さぞや唸るほどに美味なのだろうな」

「私も吸血鬼の知り合いは何人かいるけど…お前のように節操なく、下賤な者は初めてお目にかかったわ…!
 そんな男にくれてやる血など…ただの一滴だってありはしないッ!
 幻想郷の賢者であるこの私の血が、下種なお前の血と混ざり合うなど――ああァ…ッ!!」

「口を閉ざしなさいな紫ちゃん。風味が逃げちゃうでしょう?
 今の貴女は賢者でもなんでもない、器に盛り付けられた『供物料理』よ。料理が動いちゃダメじゃない」


そう言いながら冷酷に笑う青娥は、DIOによって受けた紫の背の深い傷を抉るようにグリグリと踏みつける。
その行為はさっきまで冗談で笑い合っていた時とは違い、本気で紫を嬲るような態度で残酷さに満ちていた。

そんな光景をDIOはあざ笑うように眺めている。楽しんでいるのだ。
本来なら種族上、紛れも無い『格上』である八雲紫という大妖怪を屈服させていることに至上の幸福を感じているのか。
それでも紫の瞳からは絶えずDIOらに対する敵意が流れ出てきている。
屈辱は感じても、敗北はしないという大妖のプライドがそうさせているのか。
しかし文字通り手も足も出ない紫を見据え、DIOは右手を紫の首元に近づける。


そして、躊躇うことなく血を吸い始めた。


「う…くぅ……あァ…! や…やめ……ッ! うあ…ぁぁあッ!」

「ほお…これは…。成る程、『極上』だ。
 素晴らしい…! 今までに数え切れないほど血を吸ってきたが、これほどのモノは初めてだ。これが『大妖怪』の血か。
 この身体にも馴染む…とてもよく馴染んでくるようだ。パワーが満ち溢れてくる…!」

「へぇ…私には飲血の習慣はないですけれど、試しに飲んでみようかしら?
 案外、美容にも良かったりして♪」


隅で震える蓮子の目の前で、この世のものとは思えぬいびつな狂宴が行われている。
幻想を見守るかの賢者『八雲紫』が、邪仙と吸血鬼に残酷に嬲られ、餌食にされている。
青娥は紫の事を『供物料理』と評したが、眼前の光景はまさしく神にさしだされる『贄』であった。
血を吸う音がここまで木霊するかのように、DIOはしばらく紫の血を吸っていたが、やがて至福の笑みで立ち上がり、階段まで歩き戻ってまた座りつく。

蓮子にもはや出来ることなど、何もなかった。
この場から逃げ出す、そんな稚気さえも抱けない。
立ち上がる事すら出来ず、みっともなく涙を流しながら身体を震わすだけ。
そして蓮子は、『次は自分の番だ』と思った。
この悪魔たちが自分の存在に気付いているかは分からないが、すぐにでも殺されるだろう。
これまでも何度か生命の危機に瀕してきたが、今度こそ人生の『詰み』だ。そう感じていた。


「さて…楽しい食事も終えたことだし、改めて自己紹介しようか。
 私はDIO。『ディオ・ブランドー』という。君と同じで人間をやめた者だよ、霍青娥」

既に意識を失った紫とその身体に足を乗せる青娥を、満足げな顔で交互に眺めながらDIOは言う。
青娥は紫の背中から足を離し、DIOの前で華麗に跪く。

「君は…より力の強い『カリスマ』に惹かれ、その者についていく習慣があるらしいね。
 私の『夢』に加担してくれる…そうも言ってくれた。とても心強いよ、気に入ったぞ」

「嬉しゅうございますわ、DIO様…。
 ところでお話は変わりますが、『スタンドDISC』なる存在をご存知でしょうか?」

ふむ…? とDIOは顎に手をやる。
スタンドDISCといえば友人プッチのスタンドによって生み出される円盤。
勿論DIOは知っていたが、それを青娥が知っているのも妙な話だ、と疑問を露わにした。
その反応を見て青娥は説明する。この会場に支給されている品物の中に幾つかのスタンドDISCが紛れていることを。
そして自分がそのDISCを集めていることを。

青娥は説明を終え、最後に自身が僅かに感じていた『疑問』をDIOにそれとなく聞いてみた。

「DIO様。実を言えば私は集めたDISCをとある『殿方』に差し上げようと考えていました。
 黄金に輝く髪を持ち、『王者』の風格漂う少年…その風貌はDIO様に非常に似ておられますわ。とても他人とは思えないほど…。
 失礼ですが、心当たりなどは…? 例えばDIO様のご家族など…」

家族…その単語を小声で唱えた後、DIOは小さく鼻を鳴らした。
この自分にとって家族など塵ほども価値の無い、下らぬ存在だと疎んじていた。
少年の頃より自分を取りまいていた懐かしき環境にも、些かの温もりすら抱いたことはない。

だが――



「『可能性』はあるな。先程より僅かに感じていた、この得も言われぬ『感覚』…。
 星のアザとも違う、もっと近しい奇妙な感覚だ。私に似た風格、か…。
 成る程、これは血と血が引き合う『親子』の感覚…。それが『心』で理解出来る…!」

「お…親子…。息子様が、いらしたのですか…」

何故か妙にションボリする青娥だが、彼女も心の内で合点がいった。
確かにあの少年とDIOはあまりに似すぎている。
遠くで眺めていただけだったが、2人が親子だというのなら納得のいく話だ。

「まあ、私も今の今までその存在は知らなかったがね。しかし、息子…か。
 このDIOの血を受け継ぐ男…面白い、是非『会ってみたい』ものだ。
 この会場には随分と楽しそうな奴が多く潜んでいるじゃあないか…! 面白くなってきた!」

「ならばその少年を連れてきましょうか? 居場所は分かりませんが、まだポンペイよりそう離れてはいないかと…」

「…いや、それには及ばない。その男とはいずれ会えるだろう。それが『必然』であり『運命』というものだ。
 青娥、君には息子よりも『別の人物』を探しだし、ここへ連れてきてもらいたい」

「別の人物…。ええ、貴方様が望まれるなら勿論尽くしますわ。それで、一体どなたを…?
 『天国』へ行く為に神や大妖の魂が必要とあらば攫ってきますし、会場に居るDIO様の『同志』や『ご友人』が他にいらっしゃるならすぐにでも探しだしてきますわ」

そうだな…とDIOは呟いた後、指を組んだ。
そのまま目を閉じ、じっくりと言葉を溜める。その間、青娥はDIOの次なる言葉をただ待った。


数秒か、はたまた数十秒かの思考を終え、DIOはゆっくりと――瞼を開ける。

口元には悪魔の如き、妖艶な笑み。


そして――帝王は唱えるように、ひとりの名をホールに響かせた。

















マエリベリー・ハーン。その娘を、私の前へ連れてきて欲しい」














え―――



それまで隅で震え泣くことしか出来なかった蓮子が、ここへきて初めて声のようなものを絞った。
頭をハンマーでど突かれたような衝撃が走る。思考が白く染まっていく。
今、あの悪魔から発せられた名前が聞き間違いであることを祈りながら――

気付けば蓮子は声を荒げていた。



「ど…どうしてッ!! なんでそこで、メリーの名前が…!?」


ハッとした時には遅かった。
DIOと青娥、2人が同時に蓮子を振り返る。
瞬間、息が詰まりそうなほどの圧迫感が蓮子を締め付けた。


「君は…メリー君の友人なのかい?」

「そうみたいですわ。こちらの紫ちゃんを見つけた時もメリー、メリーと喧しく、随分メリーちゃんとやらにご熱心な様子です。
 …しかしDIO様? そのメリーちゃんとは如何なる関係で?」

「うむ…実は彼女とは直接の面識は無い。そうだな…なんと説明したものか……。
 メリー君とは『夢の中』で会ったんだ。とはいっても本当に夢でお話したわけではない。
 なんとも奇妙な体験だったが、ある人物に施した私の肉体の『一部』…彼女はそれに介入してきた。
 いわば私の無意識下の中で会話した…と言うべきだろうか。彼女はそれを『境目を見る能力』だと言っていたな。
 こんな事は私も初めてだったし、とても面白い娘だと感じたよ。もう一度、彼女と会話がしたい」

蓮子はDIOの言葉を耳を疑うような面持ちで聞いていたが、同時に彼の話が嘘の類ではないとも確信を得ていた。
メリーの『境目を見る能力』の事については親友である自分にもよく分かる。理屈はよく分からないが、2人は確かに夢の中で会話したのだろう。


「そういうことでしたら、すぐにでも彼女を探しだして連れて来ましょう。
 しかし彼女の居場所も分からぬ故、少しばかり時間を要することをお許しくださいな」

「それには至らないよ。彼女の居場所なら『分かっている』。 …ディエゴ。君の出番だ」


―――……ぱたんっ


DIOが言い終わると、ホール2階の段上から本を閉じる音がした。
その音に驚き、蓮子が頭上を見上げると、ホールの闇から少しずつ人の脚が降りて来た。
蝋燭の明かりに段々と闇が払われ、やがて現われたのはDIOとそっくりの顔立ちをした、乗馬用メットを被った瞳の鋭い男。

「紹介しよう。彼もまた私の友人であり、同志でもある『ディエゴ・ブランドー』だ。
 本来なら彼に間引きを頼みたいところなんだが、彼は人に命令されて動くのを極端に嫌うみたいなんだ…」

ディエゴと呼ばれた男が2階へ続く階段からこちらをギラギラとした視線で見下ろしている。



(いつの間に…! なにあいつ、最初からずっとこの上で読書でもしてたってわけ…!? この狂ったような騒ぎの中!?)


得体の知れない更なる人物の登場に、もはや蓮子は精神の限界が近づく。
これ以上わけのわからない出来事が襲ってくれば、ショックで倒れそうだと焦燥する。


「おいおい、元はオレが根城に決めた城だってのに今日は随分と千客万来だな?
 これ以上ここに人を呼ぶのには良い気もしないが…まっ、いいだろう。
 マエリベリー・ハーンの居場所なら恐竜共に案内させてやるぜ。ニオイを覚えさせているから迷うことなく辿り着くだろう」

階段の手すりに体を預けながらディエゴはふてぶてと言う。
そして口笛を小さく鳴らすとディエゴの懐から1匹の翼竜が羽ばたき、飼いならした小鳥のように青娥の元へ飛んできた。

「あら素敵♪ この子が案内役なのね? ありがとう、ディエゴさん」

翼竜の頭をスリスリと擦る青娥は、可愛いペットでも手に入れたかのようにご機嫌な顔になる。
DIOと青娥とディエゴ。三者三様の恐ろしい顔ぶれを、腰の抜けた姿勢のまま交互に見比べる蓮子。
そんな蒼白な顔をした蓮子を横目に入れながら、DIOは床で倒れている紫を見下ろし、また呟く。


「…確かに、メリーと話したいというのは単純な彼女への興味もある。
 だがそれ以上に気になることがあってね。それは『メリー』と『八雲紫』の関係についてだ」

それは誰に向けての言葉だったのか。
青娥、ディエゴ、そして蓮子が一斉にDIOの方を振り向いた。

「最初にこの紫を見た時、私はすぐにメリーとの会話を思い出した。彼女と紫の姿があまりに酷似していたからだ。
 そして同時にディエゴと初めて出会った時のことも思い出した。実に不思議な関係だと思わないかね?
 『私』と『ディエゴ』。『メリー』と『紫』。容姿がこれほどまでに似ている人物が、この会場に2組。
 これは偶然ではないはずだ。そこには何か『とてつもない力』…それこそ『引力』が働いているのではないか…と感じた。
 月並みな感想だが、私はディエゴのことを私の『生まれ変わり』だと思っている。『新しい世界』から来た私なのだとね。
 ならばもしかするとメリーも、この八雲紫が『新しい世界』で生まれ変わった存在なのかもしれない…。
 そう考えれば、メリーと紫は『同一人物』だと考えて差し支えは無いだろう。推測になるがね」

「…確かに、メリーちゃんと紫ちゃんの関係については私も気になっていたところ…。
 それを確かめる意味でも、メリーちゃんは必要だと…そういうことですわね?」

「ああ…頼めるかい? 青娥よ」

「…申し上げた通り、この青娥の身体は既にDIO様の物。この魂果てるまで、貴方に尽くしましょう」


頭を下げる青娥の従順な姿を視界に入れながら、蓮子は混乱する思考の渦の中、考える。
メリーと八雲さんが…同一人物? 生まれ変わり?
突拍子も無い推測だけど、確かにそう考えるしかない。それほどに2人は何から何まで似ているのだ。
でも、それならなおのこと八雲さんを放っておけない…! 当然メリーもだ!
2人に危機が迫っている。八雲さんはまだ死んでいないみたいだけど、いつ殺されるかわかったもんじゃない!
私が…私だけが無事なんだ…! 八雲さんを助けたい! でも、メリーにも危機を知らせにいかなくては…!

どうする…どうしよう…!?
こんな状況で私なんかに何が出来るっていうの!?
でも…メリーを守らなくちゃ! ちっぽけな私でも、出来ることはきっとあるッ!

メリーを助けたい。八雲さんを助けたい。
それを考えた途端、私に少しだけ勇気が湧いてきた。

竦んで立てなかった脚は、自然に立つことが出来た。
依然震えながら、それでも一歩一歩、倒れる八雲さんに近づくことが出来た。


そして―――







「―――そういえば…君の名前をまだ聞いていなかったかな? お嬢ちゃん」



地獄の底から響いてきそうな、しかしとても澄んだ声が蓮子の体を包み込んだ。
振り向いたDIOの真っ赤な瞳を覗き込んで、蓮子は自分の体がふわりと浮いたような感覚に陥る。
どちらが上でどちらが下だか分からない、地に足着かぬ不思議な感覚と共に蓮子の意識はDIOの瞳の中に吸い込まれそうになった。
底の無いドス黒い深淵に堕ち、蓮子は――死を覚悟した。



「どうやら君は青娥と違って力を持たない、ただの少女のようだ。
 本当ならさっさと『食糧』にでもしておくところだったが…少し『面白いこと』を考えた」

ああ、ダメだ。
こいつらの前で、『勇気』なんか何の役にも立たない。
所詮、私なんかが誰かを助けるなんて無理だったんだ。

「君はメリー君と友人なのだったね。 …どうだい? 彼女と会いたくはないだろうか?」

―――え?

「怖がらなくていい。君を彼女と会わせてあげよう…そう言ったんだ」

メリーと…会える?
本当に…? 私は…まだ生きれるの?

「そうだよ。君は…彼女を守れる力が欲しいと考えている。
 この悪意渦巻く世界で怯えているであろうメリーを守ってあげたいと考えている。 …違うかい?」

DIOの…言うとおりだ。
私は、弱い。誰かに守られてばかりだった。
ジョニィや露伴さん、八雲さん…青娥にすら助けられた。
だから、ずっと誰かを…メリーを守れるぐらい強くなりたいって願ってきたじゃない。

「安心するといい。君の願い…このDIOが叶えてあげよう。 君に私の力の『一部』を貸し与えてね…」

そう言ってDIOは、ゆっくりと私の方へ近づき、私の額に腕を伸ばしてきた。
その瞬間、言い様のない恐怖が私を襲った。
逃げなきゃダメだ。こいつは嘘つきだ。
頭でそう感じても、身体は動かない。
逃げなきゃいけないと思いつつも、私は安心したからだ。
自分はまだ、生きれる。メリーと会えるんだ。
それを思った瞬間、不安は吹き飛び、幸福すら感じてきた。



―――ああ、メリーを守れるのなら私は、なんだって出来るわ。



その思いを最後に、私はそっと瞳を閉じて…DIOの世界の中へ身を委ねてしまった。







▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


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「青娥、この蓮子も連れて行くと良いだろう。ひとりで向かうのは何かと不便だろうからな」

「あら、嬉しい♪ また蓮子ちゃんと一緒に大冒険が出来るのね♪」

『私がほんの少し眠っている間に、どうやら話が大きく動き始めているみたいですねェ…』

「改めてよろしくお願いします…青娥さん。それとヨーヨーマッも。それでは『DIO様』…必ずやメリーをここに連れてきます」


楽しそうに笑う青娥と、再び青娥が蓮子にDISCを挿入させ発現させたヨーヨーマッ。それを淡と受けて早々に玄関に向かう蓮子。
目標は…マエリベリー・ハーン。案内役の翼竜を先頭に、3人は歩き出す。
それを我が子のように送り出すDIOだったが、ここで頭上から声が降りてきた。

「おい、少し待て。メリーとやらを攫いに行くのは良いが、無策で向かう気か?
 恐竜共の情報によれば、メリーの周りには偵察が帰って来た時点で『5人』もの人間が居るんだぜ。
 しかもディオの肉の芽で操ったポルナレフとかいう奴は、ジャイロ・ツェペリや西行寺幽々子とかいう女のおかげで正気に戻されたって話だ。
 蓮子がその状態のまま向かったところで、ポルナレフと同じく肉の芽は浄化されちまうのがオチだろうぜ」

ポケットに手を突っ込ませながら階段を降りてくるディエゴ。
そんな彼の方を振り返りながらDIOは問う。

「何か提案があるようだな、ディエゴ? 言ってみてくれ」

「『保険』をかけておこうって話さ。この『刀』を持っていけよ」

そう言ってどこからともなく数匹の翼竜がバタバタと運んできたのは一振りの刀だった。
それを見て、蓮子、青娥、ヨーヨーマッは同時に反応する。

『おや…それは…』

「! その刀は…八雲紫を操っていた妖刀じゃないですか」

「あらホントね? 確か猫の隠れ里の古井戸の底にすっぽり落ちていったと思ったんだけど…貴方のペットが回収していたのね」


不穏に光るその刀は、確かに紫を操り蓮子を攻撃してきたあの妖刀に違いなかった。
紫の話によれば、その刀に触れるだけで所持者はたちまち意識を刀に乗っ取られてしまうという。
その話が本当なら、蓮子たちは疑問を持つ。
触れれば操られるはずの妖刀を、何故ディエゴの翼竜は何も影響なくここまで運んで来れたのだろうか?

「何故…と言われても困るが、そうだな…。こいつら翼竜はオレの能力『スケアリー・モンスターズ』の『支配力』によって動かしている。
 この刀とオレの『支配力』…どうやらオレの方が格上だった。そんなところじゃないか?」

白い牙を見せながらくつくつと笑うディエゴ。
DIOもその刀に見覚えがあるのか、閃いたような顔を作った。

「それは…成る程、『アヌビス神』か…。この会場にまで支給されているとはな…、ディエゴ、それを少し貸してくれないか?」

何か思うところあるようにDIOは腕を伸ばし、翼竜が掴んでいた刀を両の手でガッシリと掴む。
DIOは…刀に操られる様子なく、まるで美術品を鑑定するかのように静かに呟いた。

「…ほお、このアヌビス神、既に相当の『技』を憶えているな。それなりに血も吸ってきたようだ」

『ディ…DIO様ァ!? お、お、お、お会いできて嬉しゅうございますッ!』
(チクショー! 何でコイツら、操れねェんだッ!? し、『支配力』だとォ…!?)

「ふむ…しかし改めて美しい刀剣だ。こいつを打った鍛冶屋の『執念』が刀を通して伝わる…。
 だがお前の執念は…このDIOやディエゴの『支配力』を上回ることはなかったようだ。
 蓮子よ、この刀はお前が持って行け。きっと力になってくれるだろう」

息を吐きながらしばらく刀を眺め回していたDIOは、満足した表情でアヌビス神を蓮子に譲り渡す。
蓮子はDIOに一歩近づいて、至極丁寧な動作でそれを手に取り、水に濡れたように輝く刀身をジッと覗き込んだ。

『グ…ッ! コイツも操れねえ…!? な…なんてこったい…!』

「当然でしょ。貴方とDIO様の『支配力』が同格なわけないじゃない。
 でも、まあ…良いじゃない? DIO様の敵を斬れることには変わりないんだし。
 いざって時には『身体』だけ貸すわ。貴方の『技』、頼りにしてるわね、ワンちゃん?」


自分の思い通りにいかない事に歯軋りするアヌビス神だったが、考えてみれば蓮子の言う通りこれはそう悲観した事態でもなかった。
ディエゴが自分を古井戸の中から引っ張り出してくれなければ、恐らく永遠にあの暗闇で泣き喚いていただろうし、これからも刀の生き甲斐である『人を斬ること』が存分に行える。
そう思えば、これまでの自分はむしろラッキーだとも思えてくる。
思考が単純なアヌビス神は、蓮子の言葉に俄然やる気を見出してきた。

『そうか…そうだな…! いや、その通りだぜ嬢ちゃん!
 安心しろ! これからは大船に乗ったつもりでおれの能力と技に期待してなッ!』

(単純な犬コロね…)
「それではDIO様、今度こそ行って参ります」

「気をつけて参りますわ。ディエゴちゃんも色々とありがと♪ 楽しみに待ってて下さいな…♪」


帝王の従者へと化した2人の女と気味の悪い召使いは、重厚な扉を開け放ち光に紛れて消えた。
扉は再びゆっくりと閉まりながら、闇が潮のように光を追い出していく。



やがて紅魔館に静寂が訪れた。

後に残るのは、2人の帝王と、堕ちた賢者。
DIOはしばらくの間扉をじっと見つめていたが、やがてディエゴを振り返り、昏睡する紫を指差して口を開いた。

「さてディエゴ…私は彼女たちの帰還を待つ間、図書室にでも篭ってこの幻想郷のことを色々と調べてみることにする。
 そこの八雲紫はまだ必要だ。地下牢にでも閉じ込めておいてくれないか…と言いたいとこだが、手っ取り早い方法がありそうだな?」

「よく分かってるじゃあないか。シーザーも死んじまったことだし、手頃な奴が欲しかったとこだ。
 …だがコイツを貰っておいてなんだが、この八雲紫はさっさと殺しといたほうが良いと思うんだがな」

倒れた紫の背に乱暴に腰を落とし、彼女の頭をポンポンと叩きながらディエゴは目の前の男に忠言する。
その態度にDIOは不満を露わにすることなく、顎を撫でながらディエゴの次の言葉を待つ。

「この腑抜けた賢者様とやらは今や見る影すら無くなっちまってる。この殺し合いゲームでとことん堕ちに堕ちたんだろうさ。
 だが、一度底辺に落ちた輩が最も恐ろしいもんだ。今殺しとかないとそのうち首元に牙を突き立てられるぜ」


「恐怖しているのかね…? ディエゴ・ブランドー」


ディエゴのナイフのような視線がDIOを刺した。
DIOは安心させるように腕を広げ、柔らかな視線をディエゴに返す。



「いや、すまない。君を侮辱する意味で言ったわけではないんだ。
 確かに君の言う事は尤もだ。一度地獄の底辺に堕ちた者はおよそ殆どがそのまま腐れ果てて死ぬ。
 だがたった1本の蜘蛛の糸を死に物狂いで這い上がってくる者も稀に存在するのだ。
 その者は全てを『捨て去り』、他人を蹴落としてでも地上へ到達する『覚悟』ある者。
 いうなれば『飢えた者』だけが勝利を獲得できる。 …君や私のような男がね」

ディエゴは小さく鼻を鳴らすと、自分の下で倒れる紫をもう一度見下ろす。
少しの間彼女を白眼視していたが、次にそっと紫の頭をボーリングの玉のように掴んだ。

「この女は全てを『捨てきれない』…このゲームを制するには器が足りない。そう言いたいのか?」

奇怪に笑うDIOの表情を無言の肯定と受け取ったか、ディエゴも黙って紫に能力を行使し始める。
次第に紫の体は皮膚が割れ始め、やがては血に飢えた肉食の獣へと変貌を遂げた。
そんな彼女の躯を椅子代わりに使い、ディエゴは冷たい瞳でDIOに視線を向けて話す。

「お言葉に甘えてこの女はしばらく借りておくが…こいつの『魂』が必要なんだろ? 天国へ行くためとかで。
 どうやってその魂を取り出す? いくつか方法があるとか言っていたが…」

「我が友人プッチのスタンドを使うのが最も手っ取り早い。彼もそのうちここへ呼び戻さなくてはな…」

「コツコツと地道な作業だな。そうまでしなくてもそのプッチとやらが天国への条件を『殆ど』満たしているんじゃなかったか?」

「彼からはそう聞いている。勿論プッチが天国へ向かう能力をこのまま完成させてくれればそれに越したことはない。
 だがプッチはあくまで私の居ない世界で、『DIOの後継者』として動いていたに過ぎない。
 このDIOという『王』が存在するこの世界で私自らが天国を完成させるということは、それはそれで意味のあることなのだ」

同志は多いに越したことはないしな…、と最後に付け加えてDIOはホールの闇へと消えていった。
後に残るのは男と1匹の恐竜。眠ったように動かないその獣を軽く擦りながらディエゴはしばらくそこから動かなかった。
深く考え耽るように、そのままジッと蝋燭の炎を見つめ続ける。
幾分かの時間が呆然と過ぎ、やがて面白くもなさそうに椅子代わりにしていた紫の体を軽く足蹴にした。



「ディオ・ブランドー…随分と取り澄ました男だ。 …気に入らない。
 気に入らないが…オレの心のどこかで奴を認めている部分もあることは確かだ」

DIOという男をもっとよく知りたいと思った。
DIOという男が自分に如何なる影響を与えるのか興味も持った。
DIOとはまさしくこのディエゴ・ブランドーと同一の存在であり、同時に全くの『異質』な存在だと感じた。

だからこそディエゴは、そのDIOすらも自身の『踏み台』として躊躇なく利用することが出来る。

『飢えた者』だけが勝利する? その通りだ。
だったら…飢えて飢えて、そして最後にお前らの全てを奪ってやるよ…。
『力』も『天国』も、『命』もだ。ディオ・ブランドー。


―――八雲紫。今のコイツみたいにな…。


死んだように眠るこの紫は既にオレの掌中に堕ちた。
さっきも大統領から連絡が来ていたが…このことを奴に伝える気は当然無いし、ディオ達にも大統領のことは伝えるつもりはない。
大統領の奴も何か考えがあって動いているんだろうが、オレは更にその上を行ってやる。
『幻想郷』だの『祖国』だの『天国』だの、どいつもこいつもオレから言わせりゃ自惚れた気取り屋どもの集まりだ。
自分だ。結局は自分こそが『世界』の全てだ。
せいぜい頑張んなよ…。足掻いてもがいて、始まったばかりの『祭り』を楽しみな。


オレはそういう人形どもを上からとことん『支配』してやるんだからな…!



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


【C-3 紅魔館 1階エントランス/朝】

【ディエゴ・ブランドー@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:疲労(小)、体力消耗(小)、首筋に裂傷(微小)、右肩に銃創(止血済み)
[装備]:なし
[道具]:幻想郷縁起@東方求聞史紀、通信機能付き陰陽玉@東方地霊殿、ミツバチの巣箱@現実(ミツバチ残り70%)、
   基本支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る。過程や方法などどうでもいい。
1:ディオ・ブランドー及びその一派を利用。手を組み、最終的に天国への力を奪いたい。
2:同盟者である大統領を利用する。利用価値が無くなれば隙を突いて殺害。
3:主催者達の価値を見定める。場合によっては大統領を出し抜いて優勝するのもアリかもしれない。
4:紅魔館で篭城しながら恐竜を使い、会場中の情報を入手する。大統領にも随時伝えていく。
5:恐竜化した八雲紫は護衛役として傍に置く。
6:レミリア・スカーレット、空条承太郎を警戒。
7:ジャイロ・ツェペリ、ジョニィ・ジョースターは必ず始末する。
[備考]
※参戦時期はヴァレンタインと共に車両から落下し、線路と車輪の間に挟まれた瞬間です。
※主催者は幻想郷と何らかの関わりがあるのではないかと推測しています。
※幻想郷縁起を読み、幻想郷及び妖怪の情報を知りました。参加者であろう妖怪らについてどこまで詳細に認識しているかは未定です。
※恐竜の情報網により、参加者の『6時まで』の行動をおおよそ把握しました。

○『ディエゴの恐竜』について
ディエゴは数十匹のミツバチを小型の翼竜に変化させ、紅魔館から会場全体に飛ばしています。
会場に居る人物の動向等を覗き、ディエゴ本体の所まで戻って主人に伝えます。
また、小さくて重量が軽い支給品が落ちていた場合、その回収の命令も受けています。
この小型恐竜に射程距離の制限はありませんが、攻撃能力も殆ど無く、相手を感染させる能力もありません。
ディエゴ自身が傷を付けて感染化させる事は出来ますが、ディエゴが近くに居ないと恐竜化が始まりません。
ディエゴ本体が死亡または意識不明になれば全ての恐竜化は解除されます。
また、『死体』は恐竜化出来ません。
参加者を恐竜化した場合、傷が小さい程ディエゴの消耗次第で解除される可能性が増します。
それ以外に恐竜化に関する制限が課せられているかは不明です。


【DIO(ディオ・ブランドー)@第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:吸血(紫)
[装備]:なし
[道具]:大統領のハンカチ@第7部、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに勝ち残り、頂点に立つ。
1:部下を使い、天国への道を目指す。
2:永きに渡るジョースターとの因縁に決着を付ける。手段は選ばない。空条承太郎は必ず仕留める。
3:神や大妖の強大な魂を3つ集める。
4:幻想郷及びその住民に強い興味。図書室で色々調べる。
5:メリーに興味。可能なら天国へ加担させてみたい。
6:ジョルノやブチャラティ(名前は知らない)にも興味。いずれ会えるだろう。
[備考]
※参戦時期はエジプト・カイロの街中で承太郎と対峙した直後です。
※停止時間は5秒前後です。
※星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※名簿上では「DIO(ディオ・ブランドー)」と表記されています。
古明地こいしチルノの経歴及び地霊殿や命蓮寺の住民、幻想郷縁起幻想郷について大まかに知りました。
 また幻想郷縁起により、多くの幻想郷の住民について知りました。
※自分の未来、プッチの未来について知りました。ジョジョ第6部参加者に関する詳細な情報も知りました。
※主催者が時間や異世界に干渉する能力を持っている可能性があると推測しています。
※恐竜の情報網により、参加者の『6時まで』の行動をおおよそ把握しました。
※大妖怪・八雲紫の血を吸ったことによりジョースターの肉体が少しなじみました。他にも身体への影響が出るかもしれません。


【八雲紫@東方妖々夢】
[状態]:霊力消費(中)、全身火傷(やや中度)、全身に打ち身、右肩脱臼、左手溶解液により負傷、背中部・内臓へのダメージ、吸血、現在恐竜化
[装備]:なし(左手手袋がボロボロ)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:幻想郷を奪った主催者を倒す。
1:ディエゴの支配を受ける。
2:幻想郷の賢者として、あの主催者に『制裁』を下す。
3:DIOの天国計画を阻止したい。
4:大妖怪としての威厳も誇りも、地に堕ちた…。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手の方に任せます。
※放送のメモは取れていませんが、内容は全て記憶しています。
※太田順也の『正体』に気付いている可能性があります。


【霍青娥@東方神霊廟】
[状態]:疲労(小)、全身に唾液での溶解痕あり(傷は深くは無い)
[装備]:S&W M500(残弾5/5)、スタンドDISC「オアシス」@ジョジョ第5部、河童の光学迷彩スーツ(バッテリー90%)@東方風神録
[道具]:双眼鏡@現実、500S&Wマグナム弾(13発)、未確定ランダム支給品(魂魄妖夢のもの。青娥だけが内容を確認済み)、基本支給品×5
[思考・状況]
基本行動方針:気の赴くままに行動する。
1:DIOの王者の風格に魅了。彼の計画を手伝う。
2:蓮子と共にメリーを攫う。
3:会場内のスタンドDISCの収集。ある程度集まったらDIO様にプレゼント♪
4:八雲紫とメリーの関係に興味。
5:あの『相手を本にするスタンド使い』に会うのはもうコリゴリだわ。
6:時間があれば芳香も探してみる。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。
※光学迷彩スーツのバッテリーは30分前後で切れてしまいます。充電切れになった際は1時間後に再び使用可能になるようです。
※頭のカンザシが『壁抜けののみ』でない、デザインの全く同じ普通のカンザシにすり替えられていることに気づきました。
※『ヨーヨーマッ』のDISCを外しているので現在ヨーヨーマッは引っ込んでいます。
※DIOに魅入ってしまいましたが、ジョルノのことは(一応)興味を持っています。


【宇佐見蓮子@秘封倶楽部】
[状態]:疲労(小)、首筋への打撃、肉の芽の支配
[装備]:アヌビス神@ジョジョ第3部、スタンドDISC「ヨーヨーマッ」@ジョジョ第6部
[道具]:基本支給品、食糧複数
[思考・状況]
基本行動方針:DIOの命令に従う。
1:DIOの命令通り、メリーを紅魔館まで連れて来る。
2:青娥やアヌビス神と協力し、邪魔者は排除する。
[備考]
※参戦時期は少なくとも『卯酉東海道』の後です。
※ジョニィとは、ジャイロの名前(本名にあらず)の情報を共有しました。
※「星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力」は会場内でも効果を発揮します。
※アヌビス神の支配の上から、DIOの肉の芽の支配が上書きされています。

095:薄氷のdisaster 投下順 097:進むべき道
095:薄氷のdisaster 時系列順 097:進むべき道
082:OOO-オーズ- ディオ・ブランドー 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ―
082:OOO-オーズ- ディエゴ・ブランドー 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ―
095:薄氷のdisaster 八雲紫 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ―
095:薄氷のdisaster 宇佐見蓮子 106:DAY DREAM ~ 天満月の妖鳥、化猫の幻想
095:薄氷のdisaster 霍青娥 106:DAY DREAM ~ 天満月の妖鳥、化猫の幻想

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最終更新:2015年06月08日 00:56