18世紀に大きな変化を被ったイギリスの農村社会のなかで、農業もまた、社会の工業化と自然の大規模な開発の手段として位置づけられることが自明となっていった。そのなかで、ロバート・オーウェン(1771-1851)は、あくまでも農業は「人類の、たのしい仕事」だとして、農民を励ます。
これがひとつの基調となって、1930年代を中心にして、日本やドイツで農本主義思想が生まれる。農本主義は激しい反近代の主張を特徴とする。その主張の構造は二項対立的である。農本主義では、ものを加工するだけの工業にくらべて、大地と生命に深く根ざす農業の持つ、高い倫理的、文化的な価値が、強調される。農業は徹底して近代を排除する、孤立した原理として、高い評価があたえられる。そこでは、近代と農業という異質なものの対話や交配が模索されてはいない。しかし、オーウェン自身は、工業と農業の共存を目指していた。
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オーウェンの思想的継承関係 トマス・モア
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□参考文献
- 渡辺義晴訳『社会変革と教育』明治図書、1963
