亀山ゼミ 個人発表
2012/06/04 小松 美由紀
「新型うつ」の原因・背景について
2012/06/04 小松 美由紀
「新型うつ」の原因・背景について
1.「新型うつ」の概要
2005年頃から目立つようになった、他罰的で気分反応性のある「うつ」
従来型のうつ病(メランコリー親和型、内因性のうつ病)とは特徴が異なる
※昔から似たものは存在(フロイトの神経症性うつ病、1970年代の「逃避型抑うつ」(広瀬))
学術的な用語ではなく、一部マスコミや専門家が一般向けに用いている言葉
2005年頃から目立つようになった、他罰的で気分反応性のある「うつ」
従来型のうつ病(メランコリー親和型、内因性のうつ病)とは特徴が異なる
※昔から似たものは存在(フロイトの神経症性うつ病、1970年代の「逃避型抑うつ」(広瀬))
学術的な用語ではなく、一部マスコミや専門家が一般向けに用いている言葉
- 新型うつについては、まだまだ精神医療では解決できない面が多い。対処していくならば、
精神医療だけでなく、社会病理として考えていく必要があるかも(川原氏(上野,2010より))
- 某製薬会社のアンケート:「新型うつ病」に対し、「単純に病気として対処できない」と回答
した医師が43%(斎藤,2011)
→ 社会病理、あるいは心理学的な問題、として考えてみる(病気か否か、うつ病か別の疾患か、内因性か心因性(反応性)か、等という分類にはなるべくこだわらない)
→ 社会病理、あるいは心理学的な問題、として考えてみる(病気か否か、うつ病か別の疾患か、内因性か心因性(反応性)か、等という分類にはなるべくこだわらない)
○今回のテーマ:「新型うつ」が増加した原因、「新型うつ」の背景にあるものとは?
※うつ病概念の拡大、抗うつ薬の一般化、うつ病の社会的認知度の高まり
→ もともと存在したうつ状態・「新型うつ」の人が、上記要因によりうつ病患者として
認識されるようになっただけ?(人数が増えている訳ではない?)
※うつ病概念の拡大、抗うつ薬の一般化、うつ病の社会的認知度の高まり
→ もともと存在したうつ状態・「新型うつ」の人が、上記要因によりうつ病患者として
認識されるようになっただけ?(人数が増えている訳ではない?)
2. 専門家から見た「新型うつ」
○上野(2010):「新型うつ」発症には、大まかに3つの要素がある
(精神科医(傳田氏、林氏ら)などの意見を総合しまとめたもの)
①自己愛肥大
少子化やゆとり教育の下、子供たちは自己愛を「傷つけない」ような環境に置かれた。
→ 自己愛と社会性のバランスが崩れ、自己愛肥大しやすい。自己中心的な考え方へ。
②アイデンティティの喪失
「大人の見本」がない。また、「なあなあ」な風潮の下、「日本人としての自分とは何か」を考えることを忌避。(日本人:日本に生きる全ての人)
→ 無意味な「自分探し」。アイデンティティを獲得できず、苛立ちが「新型うつ」として発現。
③いい子至情主義(母子密着)
母親は子どもに、いい大学に入りいい企業に入社するという期待を負わせる。母親は過剰に子どもを管理・指導し、子どもは「いい子」になろうとする。
→ 社会性が身につかない。母親の評価が絶対、母親の指示なしでは生きられない。他者との人間関係や企業のルールに適応できず、逃避。
○張(2010):本質的には従来のうつ病(古典的な内因性うつ病、典型的な反応性うつ病)と同じ
うつ病治療は、「服薬、休養、環境調整」(基本)+カウンセリング、社会復帰のリハビリ。
ただ、「新型うつ病」の場合、患者の「成長」(性格・人格の成熟)を促す必要がある。
また、うつ病は予防が軽視されている。認知療法、養育者の愛情、人間関係の構築、組織・共同体への参加、運動、食事などによる、トータルケアを目指す。
○上野(2010):「新型うつ」発症には、大まかに3つの要素がある
(精神科医(傳田氏、林氏ら)などの意見を総合しまとめたもの)
①自己愛肥大
少子化やゆとり教育の下、子供たちは自己愛を「傷つけない」ような環境に置かれた。
→ 自己愛と社会性のバランスが崩れ、自己愛肥大しやすい。自己中心的な考え方へ。
②アイデンティティの喪失
「大人の見本」がない。また、「なあなあ」な風潮の下、「日本人としての自分とは何か」を考えることを忌避。(日本人:日本に生きる全ての人)
→ 無意味な「自分探し」。アイデンティティを獲得できず、苛立ちが「新型うつ」として発現。
③いい子至情主義(母子密着)
母親は子どもに、いい大学に入りいい企業に入社するという期待を負わせる。母親は過剰に子どもを管理・指導し、子どもは「いい子」になろうとする。
→ 社会性が身につかない。母親の評価が絶対、母親の指示なしでは生きられない。他者との人間関係や企業のルールに適応できず、逃避。
○張(2010):本質的には従来のうつ病(古典的な内因性うつ病、典型的な反応性うつ病)と同じ
うつ病治療は、「服薬、休養、環境調整」(基本)+カウンセリング、社会復帰のリハビリ。
ただ、「新型うつ病」の場合、患者の「成長」(性格・人格の成熟)を促す必要がある。
また、うつ病は予防が軽視されている。認知療法、養育者の愛情、人間関係の構築、組織・共同体への参加、運動、食事などによる、トータルケアを目指す。
うつ病患者が多い地域は、うつのスコアが全体的に高い。
→ うつ病の人へのケアに集団としても関与する、集団自体の“治療”も考える
(感情の絆を共有、集団で予防法を取り入れる)
→ うつ病の人へのケアに集団としても関与する、集団自体の“治療”も考える
(感情の絆を共有、集団で予防法を取り入れる)
▽海原(2008):ディスチミア(=気分変調症)は自己コミュニケーション障害なのでは?
自己コミュニケーション:自分で自分と対話、自らに向き合う
自己コミュニケーション障害:「役割という仮面」を脱げない「病」
「いい子」が起こしやすい病気かも知れない
▽片田(2011):自己愛の強い人が増えている
新型うつ患者が他人のせいにしたがるのは「否認」しようとするから。直視したくない現実
から目をそらし、自分の問題を否認したい(根底に無実であると思いたいという自己愛的な欲望)
→「投影」が起こる。周囲の人の中に、自分自身の「内なる悪」と同種のものを見出すがゆえに、他者を責める
新型うつ患者が他人のせいにしたがるのは「否認」しようとするから。直視したくない現実
から目をそらし、自分の問題を否認したい(根底に無実であると思いたいという自己愛的な欲望)
→「投影」が起こる。周囲の人の中に、自分自身の「内なる悪」と同種のものを見出すがゆえに、他者を責める
▽斎藤(2011):社会的な視点は治療論にも応用できるのでは(「社会的うつ病」)
「ひきこもり」への治療方針をうつ病に応用したところ、有効だった。
→「治療の中でいかにして人間関係を活用していくか」が最も重要。「人薬(ひとぐすり)」
「ひきこもり」への治療方針をうつ病に応用したところ、有効だった。
→「治療の中でいかにして人間関係を活用していくか」が最も重要。「人薬(ひとぐすり)」
3. 考えたこと
「新型うつ」に言及する本は増えつつあり、分類や原因に関する考察はある程度進んでいる
→ 研究では、精神医学の範囲外の部分や、予防と「治療」(社会復帰)に重きを置きたい
「新型うつ」に言及する本は増えつつあり、分類や原因に関する考察はある程度進んでいる
→ 研究では、精神医学の範囲外の部分や、予防と「治療」(社会復帰)に重きを置きたい
「自己愛」で説明するのが主流らしい。もう少し学ぶ必要がある(フロイト?コフート?)
→「自己愛」にはネガティブなイメージがつきもの。別の言葉で説明することも考えたい
自分の問題と、他者との関係の問題、社会構造の問題が混在しているように思える
→ これらの関係を分かりやすく示せないだろうか
■参考文献■
上野玲『都合のいい「うつ」』祥伝社新書,2010
海原純子『会社でうつ 休むと元気ハツラツな人』文藝春秋,2008
片田珠美『一億総うつ社会』ちくま新書,2011
斎藤環『「社会的うつ病」の治し方』新潮選書,2011
張賢徳『最先端医療の現場から3 うつ病新時代』平凡社新書,2010
上野玲『都合のいい「うつ」』祥伝社新書,2010
海原純子『会社でうつ 休むと元気ハツラツな人』文藝春秋,2008
片田珠美『一億総うつ社会』ちくま新書,2011
斎藤環『「社会的うつ病」の治し方』新潮選書,2011
張賢徳『最先端医療の現場から3 うつ病新時代』平凡社新書,2010