「存外時間を食われた。さっさとミサイルを止めよう」
先に階段を跳んで行った≪赤い靴≫を見上げながらTさんが言った。
「Tさん、ハーメルンとかいうのはどうすんだ?」
「また≪13階段≫を発動させるわけにはいかんし、それに――≪ハーメルンの笛吹き≫のやったことは考え得る限り最悪だ」
助けて厄介事を増やすことも無い。それだけ言ってTさんは階段を確認するように一歩一歩上りはじめた。
「えー、と?」
ハーメルンってなんか悪いことしたんだっけか?
思っていると、
「……契約者よ、少し前になるがずいぶんと騒がれていてニュースにもなっていたんだが?」
Tさんがジト目で見てきた。
ニュース……だと?
「や、は、はは? ちょっとど忘れしてただけだって、あー……ああっ!」
ポンと手を打つ。
「思い出したか?」
「もうバッチリ!」
親指を立てて答える。
そうだそうだ。ニュースなんて朝起きてから学校行くまでの間の奴しか見ねえ上に大抵朝は半分寝てるんで忘れかけてたぜ。そういえばクラスの奴もなんか噂してたっけか。
Tさんは嘆かわしいとかなんとか言って、
「情報屋さんから以前聞いた話では契約者付き、おそらく子供とネズミの操作が可能、そして」
黒服さんを見て、
「≪組織≫の人間がいくらか殺されているらしいな」
「……はい」
黒服さんが頷いた。
「ってか俺と黒服とヤンデレは一度ハーメルンと戦ったことあるぜ?」
「あ、チャラい兄ちゃん……いたの?」
「いただろうがよ!? さっき交渉してただろ!?」
叫ばれた。なんだあんなことがあった後なのに結構元気そうじゃん。
「いや、ちょっと思考の海に沈んでいたもんだからさ」
「は?」
不思議な顔をしているチャラい兄ちゃんをスルーしてタツヤとか名前らしい≪13階段≫の兄ちゃんに寄り添って、たまにチラチラこっちを見ている≪爆発する携帯電話≫の姉ちゃんに声をかける……姉ちゃんで、いいよ、な?
「おーい、大丈夫だった?」
「あ、だ……だいじょ、ぶ」
若干おどおどしながらも答えてくれた。無視されなくてよかったと思いつつ質問してみる。
「つかぬことを訊くけど…………なんで女体化してんだ?」
「くけ、皆の顔、が割れ始めた……から」
なんだ、それが理由か。確かに前に黒服さんから見せてもらった写真の≪爆発する携帯電話≫と今の姉ちゃんでは印象が違う感じがする。顔を変えるには女体化ガスって使えるんだな。
「じゃあもう顔を隠す必要がないわけだし戻るのか?」
訊いてみると、
ばっ、と≪13階段≫の兄ちゃんが反応した。
「いや、べ、べつにムリに戻ることはないと思うぞ!?」
「え、そ……そう、か?」
「あ、ああ! そうだとも」
なにかしら答えようとしていた≪爆発する携帯電話≫の姉ちゃんに対して異様に力強くタツヤが言った。
深いな、うん。深い……。
俺はなんとなく流れでちらっと黒服さんとチャラい兄ちゃんを見る。≪はないちもんめ≫の嬢ちゃんが間に入るようにしているのを見る限り、なんか複雑そうだ。
…………。
「うん」
「なんだよっ!?」
さて、
この場にも女体化した人結構いるんだろうーなー。
いつの間にか愉快な街になりやがって……学校町。
「――ってあれ? Tさんは?」
いつの間にか視界から消えていた。
「あそこなの」
リカちゃんが指さすのは直上。たぶん上の階を指してるんだろう。
「契約者、なにしてるんだ。行くぞ」
案の定Tさんの声が聞こえてきた。
「おう」
頷いて階段を上る。
あ、わざわざ一歩一歩上っていったのは階段の安全を確認してくれたからなのか?
なんとなくそう思って、少し嬉しくなった。
先に階段を跳んで行った≪赤い靴≫を見上げながらTさんが言った。
「Tさん、ハーメルンとかいうのはどうすんだ?」
「また≪13階段≫を発動させるわけにはいかんし、それに――≪ハーメルンの笛吹き≫のやったことは考え得る限り最悪だ」
助けて厄介事を増やすことも無い。それだけ言ってTさんは階段を確認するように一歩一歩上りはじめた。
「えー、と?」
ハーメルンってなんか悪いことしたんだっけか?
思っていると、
「……契約者よ、少し前になるがずいぶんと騒がれていてニュースにもなっていたんだが?」
Tさんがジト目で見てきた。
ニュース……だと?
「や、は、はは? ちょっとど忘れしてただけだって、あー……ああっ!」
ポンと手を打つ。
「思い出したか?」
「もうバッチリ!」
親指を立てて答える。
そうだそうだ。ニュースなんて朝起きてから学校行くまでの間の奴しか見ねえ上に大抵朝は半分寝てるんで忘れかけてたぜ。そういえばクラスの奴もなんか噂してたっけか。
Tさんは嘆かわしいとかなんとか言って、
「情報屋さんから以前聞いた話では契約者付き、おそらく子供とネズミの操作が可能、そして」
黒服さんを見て、
「≪組織≫の人間がいくらか殺されているらしいな」
「……はい」
黒服さんが頷いた。
「ってか俺と黒服とヤンデレは一度ハーメルンと戦ったことあるぜ?」
「あ、チャラい兄ちゃん……いたの?」
「いただろうがよ!? さっき交渉してただろ!?」
叫ばれた。なんだあんなことがあった後なのに結構元気そうじゃん。
「いや、ちょっと思考の海に沈んでいたもんだからさ」
「は?」
不思議な顔をしているチャラい兄ちゃんをスルーしてタツヤとか名前らしい≪13階段≫の兄ちゃんに寄り添って、たまにチラチラこっちを見ている≪爆発する携帯電話≫の姉ちゃんに声をかける……姉ちゃんで、いいよ、な?
「おーい、大丈夫だった?」
「あ、だ……だいじょ、ぶ」
若干おどおどしながらも答えてくれた。無視されなくてよかったと思いつつ質問してみる。
「つかぬことを訊くけど…………なんで女体化してんだ?」
「くけ、皆の顔、が割れ始めた……から」
なんだ、それが理由か。確かに前に黒服さんから見せてもらった写真の≪爆発する携帯電話≫と今の姉ちゃんでは印象が違う感じがする。顔を変えるには女体化ガスって使えるんだな。
「じゃあもう顔を隠す必要がないわけだし戻るのか?」
訊いてみると、
ばっ、と≪13階段≫の兄ちゃんが反応した。
「いや、べ、べつにムリに戻ることはないと思うぞ!?」
「え、そ……そう、か?」
「あ、ああ! そうだとも」
なにかしら答えようとしていた≪爆発する携帯電話≫の姉ちゃんに対して異様に力強くタツヤが言った。
深いな、うん。深い……。
俺はなんとなく流れでちらっと黒服さんとチャラい兄ちゃんを見る。≪はないちもんめ≫の嬢ちゃんが間に入るようにしているのを見る限り、なんか複雑そうだ。
…………。
「うん」
「なんだよっ!?」
さて、
この場にも女体化した人結構いるんだろうーなー。
いつの間にか愉快な街になりやがって……学校町。
「――ってあれ? Tさんは?」
いつの間にか視界から消えていた。
「あそこなの」
リカちゃんが指さすのは直上。たぶん上の階を指してるんだろう。
「契約者、なにしてるんだ。行くぞ」
案の定Tさんの声が聞こえてきた。
「おう」
頷いて階段を上る。
あ、わざわざ一歩一歩上っていったのは階段の安全を確認してくれたからなのか?
なんとなくそう思って、少し嬉しくなった。
三階廊下にいた≪赤い靴≫の隣に立ち、近づいてくる足音を耳にしながら青年は言う。
「≪赤い靴≫よ」
「なんだ?」
「これから先、状況によっては俺が前線に出ることもあるかもしれん。思ったより時間も差し迫っているし、場合によっては≪ハーメルンの笛吹き≫も出てくるだろう。だから一つ引き受けて欲しい」
「なんだ?」
「何かあった場合、契約者とリカちゃんも異空間に匿ってもらいたい」
代わりに、
「異空間に逃れるまでの間、俺がお前たちを守ろう」
「ふむ――」
≪赤い靴≫が何か言おうと――青年には「ば」と言葉を発しようとしているように見えた――する前に言葉を被せた。
「リカちゃんボイス集がここに――」
「引き受けよう」
固い握手を求められた。
「流石寺生まれ、準備がいいのね、すごいわ」
呆れたような≪赤い靴≫の契約者の女の子の声が小さく響いた。
「≪赤い靴≫よ」
「なんだ?」
「これから先、状況によっては俺が前線に出ることもあるかもしれん。思ったより時間も差し迫っているし、場合によっては≪ハーメルンの笛吹き≫も出てくるだろう。だから一つ引き受けて欲しい」
「なんだ?」
「何かあった場合、契約者とリカちゃんも異空間に匿ってもらいたい」
代わりに、
「異空間に逃れるまでの間、俺がお前たちを守ろう」
「ふむ――」
≪赤い靴≫が何か言おうと――青年には「ば」と言葉を発しようとしているように見えた――する前に言葉を被せた。
「リカちゃんボイス集がここに――」
「引き受けよう」
固い握手を求められた。
「流石寺生まれ、準備がいいのね、すごいわ」
呆れたような≪赤い靴≫の契約者の女の子の声が小さく響いた。