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連載 - 女装少年と愉快な都市伝説-21a

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匿名ユーザー

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Dさん宅にて~寝起き編


 ……………なんだか、くすぐったい。
 そう感じたこっちは、ゆっくりと目を開けた。
 そしてそのくすぐったさの元を探すと………あった。
 それは、こっちの胸と胸の間に顔を埋めて息苦しそうにしている、一人の女の子。その女の子の吐息がくすぐったさの原因らしい。
 どうしてこんなことに、と一瞬思い、すぐにこっちの腕が女の子の頭をぎゅっ、と抱きしめていたことに気づく。
 ずりずりと身体をずり下げ、女の子と顔を合わせた。………背丈は、今のこっちとそう変わらない。小学生の低学年くらいだろうか、可愛らしい子だ。息苦しさから解放されたその寝顔はとても愛らしい。
 見たことあるような、ないような………そう思いながらも、女の子の首筋に両手を回し、もう一度ぎゅっと抱きしめる。
 抱きしめた身体の柔らかさと温かさに心が安らぐ。
 そのまま、睡魔に身を任せようとして―――ビクン、と跳ね起きた。

「……………え、あれ?」

 女の子までビクンと反応したことに申し訳なさを感じつつ、自分の身体中をぺたぺたと触り、その状態を確認する。
 ちゃんと白いきれいな肌。血が流れてもいないし、焼けてもいない。
 ………あれだけ酷かった全身の怪我が、治っていた。

「………え、嘘。なんで…?」

 左腕とお腹にジクジクと疼くような痛みを感じはするけれど、それでもその程度。
 ―――夢、だったのだろうか。
 そう考え、自分自身で否定する。
 あれが夢だったとは思えないし、それにもし夢だったらこの見知らぬ家であんな女の子といっしょに寝ていたことが説明できないから…………って、見知らぬ家?
 自分の思考中の単語にセルフで反応し、周りをキョロキョロと見回してみる。………完全無欠に、知らない家だった。

「………どうしよう?」

 そう呟いてはみても、返事が返ってくるはずもなく。なのでまだ寝ている女の子に布団をかけてあげた後、部屋から出てみることにした。
 女の子を起こさないよう、忍び足でこっそりとドアまで歩いていき、カチャリとノブを回して部屋の外へ。
 全く知らない家の中ということでいろいろと物珍しさを覚え、天井やら壁やら床やらをじっくりと眺め回す。

(うーん………住み始めてあんまし長くないのかなー?)

 とても綺麗な天井や手垢などがあまりついていない壁から、そう考える。
 それはともかく起きてる人はいないんだろうか、とリビングがあるっぽい方へ歩いていこうとして、

「―――ぁ」

 カチャリ、という音が聞こえた。
 ゆっくりとドアが開き、そこから黒い服を着た男の人が姿を現す。細身で、歳は………二十代後半くらいだろうか?
 思わず漏らしてしまった声と予想外の出来事に固まったこっち。
 当然ながらその人もこっちのことに気づいたらしく、顔を向けてきた。

「……っ、あ、あの、………おはよう、ございます………?」

 言ってしまってから後悔した。いくらなんでもこの状況でおはようはないと、自分でも思う。
 そんな口下手なこっちの言葉を聞き、しかしその黒服さんは優しげな微笑とともに、

「―――ええ、おはようございます。身体はもう、大丈夫なのですか?」

 そう声をかけてくれた。
 それに答えようとして、ふと思い出す。
 そういえば昨日意識を失う直前に見えたのは、黒い服を着た人影だったはずだ。
 ………それも、訊いてみることにする。

「えと、はい。もうだいたい大丈夫です。………あの、助けてくれたのって……あなた、ですか?」
「ええまあ、はい。………あれだけの怪我でしたし、無事でよかったです」

 …………後から思うと、この時のこっちは少しおかしかったんじゃないかと思う。
 命を助けてもらったことへの感謝や自然にこっちのことを心配してくれた黒服さんへの尊敬の念が一気に膨れ上がり、それをどう表そうか困ったこっちは―――直接、行動に表すことにした。

「―――ほんっとうに、ありがとうございましたぁ!」
「………っ!?」

 感情の赴くまま、黒服さんに飛びつく。
 いきなりの衝撃を支えきれなかったようで、黒服さんとこっちは密着したまま床へと倒れこんだ。
 と、同時に、唇に柔らかな感触が。目の前には黒服さんの顔がものすごいアップで。
 ……………え? ………いや、え、あれ? もしかして………もしかしますかこれ!?
 頭がバニックになると同時に、ドアが開く音が複数。

「黒服、どうかしたのか―――って、はい?」
「……うーん、一体何の音よ―――って!?」

 …………数秒前のアホな自分を殺したくなりました。
 タイムマシンが、欲しいです。



 この後、女の子から向けられた敵意やら黒服さんの顔を見ると恥ずかしさで顔が赤くなってしまうことへの誤解やらをなんとかするのに、全身全霊を注いだ土下座と魂を込めた謝罪、ついでに釈明を十数分に渡ってこっちはすることになったのだが、それはまた別の話―――というか悲惨だったので思い出したくないのでした。



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