「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-コーク・ロア-03

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 舞が天使――ハニエルに淹れてもらった紅茶を自棄気味に飲んでいる。給仕をしているハニエルはやけに嬉しそうだ。そんな光景を見てTさんは苦笑し、
 ……さて。
 思考を切り替え、舞と己の天使を興味深げに眺めている直希へと問いかけた。
「この情報は黒服さんには?」
「彼にもまた話すつもりだが」
 それがどうしたのだろうか?
 そう言いたげな直希に「いや、ならまた詳しくは青年の口から言ってくれ。聞きたい事があったのでついでに伝えておこうと思っただけだ」と言いながら、「失礼」と携帯を取り出す。
 数秒の呼び出し音の後、黒服が出た。
「……黒服さん、≪コーク・ロア≫の件、新たに一人加担しているモノの正体が分かった」
『能力なども?』
「ああ、契約しているのは≪セイレーン≫、遭遇者は≪光輝の書≫の契約者の姉だ。どうやらその歌声で相手を支配できるらしいが、これがどこまで効くのかは分からない。少なくとも彼女には効かなかったようだ。
 詳しいことは彼女本人に聞くといい。彼女は精度の高い似顔絵も描く」
 Tさんが話していると直希が怪訝な顔をした。
 自分がまた話すのになぜそんなことを話すのかと言いたげな表情だ。Tさんはその表情を見て苦笑する。
 最初の話題は呼び水だ。
「……それと」
 一呼吸、
「調査結果は出ただろうか?」
 彼の周囲の状況的にいきなり訊くには躊躇われる事柄で、しかしTさんにとってはここからが本題だった。
『はい、翼の元クラスメイトたちの≪悪魔の囁き≫の調査は終わってますよ』
「情報を流してもらっても構わないか?」
 気になる情報ではあるが、彼が≪組織≫としてその情報を流せないと言うのなら無理に聞く気も無かった。
『ええ、構いませんよ』
 返事は当然のように情報を渡そうとするもので、ありがたいとしか言いようがない。
『翼の高校の同級生たちからは≪悪魔の囁き≫は発見されませんでした』
「そうか……彼の、母親については?」
『……反応はありませんでした』
「そうか……わかった」
 やはり彼にしては珍しく明らかな嫌悪が感じられる声だ。
 Tさんはそう思いながら電話口に礼を言う。
「すまない、ありがとう」
『いえ、では私はこれで』
 ああ、と応えて電話を切った。
 得た情報を頭の中で簡単に整理し、
「青年、一ついいだろうか?」
 直希に声をかけた。
「なんだい?」
 気になっていた事がある。
「≪日焼けマシーンで人間ステーキ≫の青年の苗字、あれはこの町にある旧家のそれだろうか?」
 舞が呻きながら机に伏せていた顔を上げた。
「チャラい兄ちゃんの苗字?」
「日景の事か。――確かにそうだが。翼はたしかそこの当主の孫にあたる」
「とーしゅ?」
「家で一番偉い奴のこったな。……え? なに? チャラい兄ちゃん実はいいとこの人間か?」
 リカちゃんへ言葉を教えながら舞はTさんへと疑問符の浮かんだ顔を向けた。Tさんは思案顔で頷く。
「の、ようだな」
 日景、学校町ではわりと古くからある家の家名のようだ。
「それがどうかしたのだろうか?」
「いや、以前小耳に挟んだことがあって、気になってな」
 秋祭りが終わった直後、無理を通して秋祭りの運営を乗っ取った≪赤い靴≫の少女の父親に文句を言ってきた者たちがいたようだ。その文句を言ってきた者の中に日景の姓の者がいたという話を聞いた憶えがある。
 ≪赤い靴≫の父親がその時愚痴交じりに言っていた話によると、
「たしか、政治家なども出していて各界に影響力を持っている家のはずだな」
「その通りだ。どうも翼自身はそのことを把握していないようだが」
「そうか」
「自分の家の事なのになー」
「ねー」
「翼にもいろいろあるんだ」
 直希の困ったような言葉にTさんは無言で頷く。
 ……家の関係で狙われている線もあるわけだ。
 せめて犯行声明でも出てこれば黒服さんも仕事が楽だろうにと思う。
 ふと気づくとハニエルが紅茶のポットを手に持って笑顔で横に居た。見ると、カップの中身が空になっている。
「ああ……すまんな」
 表情を緩めると天使へとカップを差し出した。


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「じゃーん!」
 なんかよく分かんねえが難しいってことはよく分かる会話をしてたTさんと直希の兄ちゃんが醸し出していた空気を盛大にぶち壊す効果音をセルフで発しながら出し抜けに現れた足とかの露出がすげえエリカの姉ちゃんに最速で反応したのはリカちゃんだった。机から飛び上がるとそのまま俺の鞄の中へと潜っていく。
「ああん、待って待ってー! ほら、お洋服作ったんだよープリーズカムバーック!」
 姉ちゃんが片膝をついて手に持ったリカちゃんサイズの服をひらひら振りながら叫ぶ。
「およーふく、なの?」
「みたいだぜ」
 中身がほとんど入っていない鞄から窺うように出てきたリカちゃんをそのまま取り出してエリカの姉ちゃんに渡す。姉ちゃんはリカちゃんに服を合わせてるけど……。
「すげえ」
 この短時間で作り上げたのもすげえけどそれがぴったりと似合うのがまたすげえ。
「おねーさんがんばっちゃったからね!」
 ピースサインしてるけどがんばっちゃっただけでロクに寸法も採ってない人形の服をあそこまで完璧に作れるもんなんだろうか?
「すごいの! きれいなのっ!」
 確かに可愛いし、リカちゃんも嬉しそうだし、いっか。
「ほら、リカちゃん、お礼は?」
「ありがとうございます! なの」
「ああ、良い……っ!」
 恍惚とした表情でなんか別世界にトリップしてる。目が超キラキラしてその視線がリカちゃんをひたと見据えている。
 またリカちゃん怖がんねえかな……。
 そんなことを考えながら姉ちゃんを見ていると、Tさんが席を立った。
「さて、そろそろお暇するとしようか」
 言われて、つと窓の外を見るとそろそろ日が落ちる頃だった。
 ありゃ、結構お邪魔してたんだな。
「じゃあ――ってなんかいろいろもらってばっかで悪りぃな」
 俺も席を立ってご機嫌なリカちゃんを鞄に戻す。
「いや、こちらも姉さんが迷惑をかけてしまって申し訳ない」
 直希の兄ちゃんがエリカの姉ちゃんを見ながら疲れた感じで言う。
「いやいやこんな良いもんもらえたんだし迷惑もくそもねえよ」
 な? とTさんとリカちゃんに言うと二人はそれぞれ頷く。
 帰ろうと部屋を出ようとすると、Tさんが直希の兄ちゃんを振り向いた。
「ああそうだ、青年」
「む?」
「愛という感情が分からないと言ったな」
「ああ、そうだが」
 Tさんは力の抜けた笑みを直希の兄ちゃんに向ける。
「翼や誠、彼らに対する青年の友誼、それも広義には愛だ」
「ふむ……」
 なんか難しそなこと考えてそうな顔になった直希の兄ちゃんにTさんは言葉を重ねた。
「青年が知りたい愛とは違うのだろうが、な」
「あれだ。ある時ぱっと気づくこともあるのかも知んねえぞ」
 俺がそうだったし。もしかしたら気づいてないだけなのかも知んねえ。
「何か焦っているようだが辞書的な意味を知りたいわけではないのだろう? 自身でゆっくりと、通り一遍の知識ではなく青年の本当の愛を知っていくのが一番だ」
「君は、そうして愛を見つけたのだろうか?」
 どうでもいいけどこの男共は愛愛言ってて恥ずかしくねえんだろうか……。
「ああ、俺はそうして幸せを見つけたよ」
 そう言って抱き寄せられた。
「――っ!?」
 何をっ!? や、ちょっ――
「まあ少々蓮っ葉だがな」
 腕の中で暴れてると笑みを含んだ言葉をかけられて、腕を離される。
 直希の兄ちゃんはふむ、なるほどと頷くと、感情が薄い目で俺を見た。
「レディ、もう腕は離されているのに離れないのかい?」
「……」
 そっぽを向いて無視してやった。
 兄ちゃんは姉ちゃんになんか耳打ちされてふむ、と納得したように頷くと、Tさんに問いかけた。
「僕にも見つけることができるだろうか?」
「できるだろう」
 またむやみやたらに断定口調だ。
 直希の兄ちゃんは口の端を緩める。
「また、機会があれば話を聞きたい」
「ああ、では」
「いろいろあんがとな! 姉ちゃん、兄ちゃん!」
「ありがとうなの」
 挨拶をして、俺たちは玄関へと向かっていった。



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