「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 悪意が嘲う・操られた者達-09a

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匿名ユーザー

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 わりと容赦なくぐりぐりと踏み躙られたはずのヘンリーだったが、平均的なカップ麺が出来る時間で復活してきた
 ……なぜか、この手の変態は、異様に復活速度が早いのだ
 世界七不思議のひとつに数えてもいい謎ではないか、と犬耳メイドはこっそりと考える

「………で、どうしてお前、この街に来てるんだよ」

 膝枕してやっているユニコーンの鬣を撫でてやりつつ、犬メイドは血の涙を流してユニコーンを羨ましがっているヘンリーにそう尋ねた
 処女厨の変態ではあるものの、ヘンリーは「教会」お抱えの契約者だ
 貴重な治癒系能力者、それも、ユニコーンと言う(本性さえ知らなければ)神聖な生き物と契約しているのだ
 そんな存在を、近年弱まってきたとは言え、ヨーロッパで絶大な勢力を誇っている「教会」が放っておくはずがない
 ヘンリーはヘンリーで、「「教会」には処女が多い」と言う理由で、大人しく子飼いに納まっていたはずだ
 …それが、何故、学校町に来ている?
 「教会」の命令で、マリ・ヴェリテのベートに「悪」と言う存在を押し付け続ける為に、連れ戻しにきた、とかだったら厄介である
 言っちゃ悪いが、あそこならそれくらいやりかねないからだ

「いや、ただ、観光に来ただけだよ」

 やや視線を逸らしつつ、そう答えてきたヘンリー
 怪しい
 この上なく、怪しい
 だが、その証言を完全否定できる材料もまた、存在しない

「少なくとも、マリ・ヴェリテには手を出さない方がいいぞ?あいつら、「首塚」と協定を結んだみたいだから、そっちも敵に回す」
「あー、それだけは嫌だな。まぁ、そっち狙いで来た訳じゃないからいいが」

 うんうん
 頷くヘンリー
 ……嘘は、見えない
 幸い、あちら狙いではないようだ
 ………では、何の為に?
 観光目的ではないだろう
 犬メイドは、そう核心していた

「…ところで。そろそろ膝枕代われ」

 ひひん

 ヘンリーの言葉に、ユニコーンは小さく嘶いて答えた
 動く気、0
 どう見ても代わるつもりなさそうです、本当にありがとうございました

「お前、もう充分に堪能しただろ!?」

 ひひひん

「っく!?お前はそうやっていつも俺に膝枕譲らないだろうが!?ってか、どうして乙女達は、ユニコーン相手の膝枕は許すのに俺には許してくれないっ!?」
「動物相手かそうじゃないかの違いだろ」

 きっぱり、突っ込む犬メイド
 …ヘンリーは、一応、「黙っていれば美形」の良い見本である
 そう、黙っていれば
 口を開けば高確率で処女厨である事がバレる為、年齢=彼女いない暦まっしぐらな男だ
 そんなこの男に、膝枕をしてくれる乙女(処女)はめったにいない
 ユニコーンなら、わりと膝枕してくれる相手がいるのだが

「くそ…俺はただ、膝枕を堪能したいだけなのに…」

 がっくりと、わりと本気で項垂れるヘンリー
 同情すべきか、否か
 同情したら調子にのりそうだからしない方がいいな
 一瞬で、犬メイドが答えを導き出した、その時

「………」

 ---ぴくり
 ユニコーンの耳が、何か物音を拾ったように、動いた

 その音は、犬耳になっているせいか、微妙に聴覚があがっていた犬メイドの耳にも届く

「水音……?」

 公園の中の、小さな池
 そこから……音が、した

 犬メイドがユニコーンに膝枕してやっている芝生から、さほど離れていない位置にある、池

 ぽこっ
 ぽこっぽこっぽこっ
 そこに、小さな泡が上がり始める

 すっく、と
 ユニコーンが立ち上がり、警戒するように池を見つめた

「…何か、いるのか?」

 ひひん

 ユニコーンの声が、心なしか機嫌悪そうだ
 項垂れていたヘンリーも、顔をあげる

「池…水……こいつが嫌がって……………っ!!」

 ----ざばぁっ!!と
 そこから、巨大な何かが飛び出した
 それは、真っ直ぐに、警戒するように立ち上がろうとしていた、犬メイドに向かって突進してくる

 目の前に迫ってくる、それ
 それは、巨大なビーバーに、見えて

「う、わっ!?」

 ぐい、と
 首根っこをつかまれ…体が、宙に浮いた
 傍にあった木の上まで、視界が一気に上がる

「---っぶな。何で日本に、あんな野郎がいるんだ」

 すぐ傍から聞こえてきたヘンリーの声
 どうやら、彼につかまれて助けられたようだ
 ユニコーンの身体能力を手に入れているせいか、彼は脚力が格段に上がっている
 犬メイドを引っつかんで、木の上まで一気に跳び上がるくらいは、朝飯前なのだ
 …もそもそ、犬メイドの胸元で、悪霊がヘンリーに見つからないよう、深く潜る

 …つつつ、と
 犬メイドは、視線を下に降ろして…

「---アーヴァンク!?」

 自分に襲い掛かってきたその存在の姿を確認した


 アーヴァンク
 イギリスに伝わる、巨大なビーバーの姿をした怪物だ
 鰐や大蛇に匹敵する力を持ち、鋭い牙と爪を持っている。
 人間を襲う存在だが、美しい乙女に目がなく、誘拐して身近にはべらせておくと言われている
 ある伝承に置いて、人間に捕えられたアーヴァンクは、発見された時、乙女の膝枕で寝ていたところだったと言う…


 ……なるほど
 ユニコーンが、感じた気配を嫌がった理由が、わかった
 すなわち……「膝枕を奪われたくない」
 ただ、それだけの理由だったのだろう
 事実、今、ユニコーンは、アーヴァンクに角を突きつけ、激しく威嚇している
 そして、アーヴァンクもまた、ユニコーンを敵と認識したのだろう
 牙を剥き出しにして、激しく威嚇していた

「まったく…俺の膝枕を奪おうとは、いい度胸だ」
「いつ、お前の膝枕になったよ、おい」

 ヘンリーの言葉に突っ込む犬メイド
 が、ヘンリーはそんな突っ込みなど気にせず、ユニコーンに指示を出す

「やれ!ユニコーン!!」

 ---ひひん!!

 言わなくとも、とでも叫ぶように、ユニコーンが地を蹴った
 毒を浄化し、病気を癒すその角は……同時に、ユニコーン最大の、武器
 象をも一突きに殺すと言われるそれが、アーヴァンクに襲い掛かる
 ----っぎん!!と
 響いた、音

 ユニコーンの角を…アーヴァンクが、牙で、受け止めた
 己を突き刺さんとする角に噛み付き、噛み砕かんとするように渾身の力を込めている

「っちょ、ヤバくないか?」
「いや、問題ないさ」

 -----どろ、と
 一瞬、ヘンリーの胸元に、黒い染みが浮き出た事に
 犬メイドは、気づかない

「ユニコーン!!」

 ヘンリーの声に呼応するように、ユニコーンの力が増していく
 ぐ、ぐ、ぐ……と、角は、段々と、アーヴァンクの口の中に、進んでいって


 次の、瞬間
 アーヴァンクの後頭部を………角が、貫通した


「--------っ!?」

 脳天を貫かれたアーヴァンクは、ぶらり、全身の力が抜けていき
 ……その体は、光となって、消滅した


「物騒な街だな、ここは」

 っとん、と
 ヘンリーが、犬メイドを抱えて地面に降りた
 ユニコーンは、角がアーヴァンクの血で汚れたのが落ち着かないのだろう
 ぱかぱかと、アーヴァンクが出てきた池に近づき……池の水が、清らかさを保っている事を確認し、ぱしゃぱしゃと角を洗い始める

「都市伝説が異様に集まりやすいからな。あぁやって、国産以外の都市伝説まで現れる始末だ」

 はぁ、とため息をつく犬メイド
 …とっととイギリスに帰りたい
 いや、まだまだしばらく、無理なのだが

「なるほど。アァ言う乙女が危険に晒されるような都市伝説が現れるのはいけないな」
「それ以外はいいのか」

 犬メイドのツッコミをスルーし、考え込んでいるヘンリー
 ……うん、と何やら頷いている

「まぁ、いい。俺はしばらくこの街にいるし、何かあったら連絡しろ。今のお前だったら助けてやる」
「元の俺なら助けないとっ!?」
「乙女なら助けるが、それ以外はどうでもいい!!」

 駄目だ、この処女厨
 早く何とかしないと!?

「…と、言う訳で。俺に膝枕してください、お願いします」
「土下座するなっ!?どこで土下座なんて覚えたっ!!??…わかったわかった。やってやるから、顔あげろ」

 犬メイドの言葉に、いやっほぅ!!と喜んでいるヘンリーの姿に
 軽く頭痛を覚えつつ、犬メイドは膝枕してやったのだった




終われ





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