「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち・決戦以降-18h

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 H-No.9が「第三帝国」に囚われてから、翌日
 反省の様子が見えない彼女を、黒服Hと辰也が引き取る事になった
 先に、診療所に到着したのは、辰也の方で

 それが、H-No.9にとって、幸運だったのか、不幸だったのか
 それは、誰にもわからない


「…そうか、犬による被害が完全に消えていない、か」
「まぁ、そっちの総統が野良犬を学校町から逃がしたっつっても、犬なんてその気になればいくらでも集められるからな」

 H-No.9を捕えている研究室
 そこに向かいながら、ドクターと辰也は情報交換を行っていた
 二人の後を、メアリーが付いて来る
 …「第三帝国」の総統が、その能力をもって野良犬を学校町から退避させたと言うのに、クールトーの能力で操られたと思われる犬達による被害が、まだあまり減っていないのだ

「恐らく、保健所から引き取ったか、慈善事業と称して野良犬保護の名目で集めたかどちらかだろう。愛犬家のネットワークを通して、調べてもらってみよう」
「そうした方がいいだろうな。そっちの総統の精神的衛生面の意味でも」

 犬好きの総統にとって、犬を武器のように扱い、使い捨てるなどと言う所業、見過ごせまい
 …それも、今度は、意図的に狂犬病を感染させられたと思われる犬達による被害が増えているのだから、なおさらだ

「朝比奈 秀雄とやらの居場所は見付かったのかな?」
「まだ、どこの組織でも見つけていないらしいな…………それこそ、あの婆が知っている可能性はあるが」

 …視界に入ってきた、研究室の扉
 それを見て、辰也の表情に影が混じる
 湧き上がる憎悪を、隠しきれて居ない……否、隠そうともしない

「少なくとも、その辺りに関して口は割らなかったな」
「だろうな……どうせ、話しはしないだろ」

 だから
 さっさと、殺してしまおう
 そう考える辰也
 H-No.9は、身体能力は6,70代の平均女性程度の身体能力しかなかったはずだし、都市伝説としての体の丈夫さこそあるが…普通の人間より少し丈夫、程度のものだ
 能力を使わずとも、その気になれば殺せる
 「13階段」の能力を使うまでもない
 自分一人でも、問題なく殺せる相手だ
 ……そう考えていたことが、わずかな油断に繋がる

 ぎぃ、と開いた研究室の扉
 手術台の上では、拘束された状態のH-No.9が、ぐったりと目を閉じていた
 衣服の乱れに関しては、突っ込まない事にする
 突っ込んだら負けなような気がしてならない

「…それじゃあ、こいつ、持っていくぞ?」
「あぁ、好きにしたまえ…彼女との因縁は、僕らよりもむしろ、君達の方が深いはずだからね」

 当然だ
 一度殺しただけでは殺したりないほどの恨みが、この女にはある
 ……楽にしなせてなるものか
 そう考えながら、辰也はH-No.9を拘束している拘束機具に手を伸ばした
 拘束機具を外していって、その体を持ち上げようとした、その時


 -----ぱちり、と
 H-No.9が、目を覚ました
 その、目が
 辰也を、捕える


「---------あ、は」

 ゆっくりと
 その唇が、笑みの形を作った

「あ、は、はは、はははははははははははははははっははははははははっははははははっ!!」
「--っ!!」

 狂気に支配された笑い声が、研究室内に響き渡った
 その体のどこに、そんな力が残っていたというのか
 H-No.9は信じられない勢いで立ち上がると……手術台の傍にあったメスを一本、手にとって

「っつ!?」
「広瀬!?」

 だんっ………と
 己の体を持ち上げようとしていた辰也を逆に組み伏せ、その首筋にメスをあてた

「は、はははははっ……まさか、H-No.96が、また私の目の前に現れるだなんて…なんて、幸運でしょう。また、この最高の検体と対面できるとは…!」

 狂気の笑みを浮かべ、H-No.9は笑う
 …人体実験を行いたいという、その執念
 それだけが、今の彼女を突き動かしていた

「あぁ、動かないでください?動けばどうなるか、わかっていますね?」
「…それは、人を殺したり傷つける道具ではない。人を助ける為の道具だ」
「おや、死体を切り刻み、調べるのにだって使うでしょう?」

 怒りを滲ませたドクターの言葉に、H-No.9は笑って答えた
 突然床に組み伏せられた事で体を叩きつけられ、その痛みで辰也は身動きが出来ない
 いや、そもそも、その体の上に圧し掛かられ、首筋にメスが当てられた状態
 ヘタに動いては、首筋の動脈を切られる
 ただ、ギロリと、H-No.9を睨みあげることしかできない

「--っの、婆……っ!」
「あぁ、会いたかったですよ、H-No.96。まだ、あなたには色々と試したい薬があったんですよ。また、実験してさしあげましょう」
「…っそれは、俺の名前じゃねぇ……っ」

 H-No.96
 そのナンバーで呼ばれる事を嫌悪するように、辰也は鋭くH-No.9を睨みあげるが、彼女は意に介した様子はない
 くすくすと、笑い続けている

「…あぁ、本当、動かないでくださいね?」

 バイト君を呼びに行こうとしたメアリーを、そう止めたH-No.9
 …辰也がいるこの状態では、メアリーが能力を発動する訳にもいかない

「逃げられるとでも思っているのかね?」
「さぁ、どうでしょう?でも、いいんです。実験さえできれば、研究さえできれば…この検体が、手に入れば」

 ゆっくりと
 H-No.9の視線が…辰也に、降りる

 その、視線に
 自分を人間ではなく、研究対象としてみてきている…その、目に
 ざわりと、辰也は悪寒を感じた

「H-No.96……H-No.1の、とっておき。今度こそ、研究し尽くして差し上げましょう」
「……お断りだ……!」
「遠慮しなくても、いいのですよ?…何でしたら」

 この、次に、H-No.9が発した、言葉


「1人が寂しいのなら………あなたのお仲間も、一緒に研究して差し上げましょうか?」


 その、言葉に
 …辰也は、頭に上っていた血が……すぅ、と、引いていくのを感じた
 感情の波が、引いていく


 世界の色彩が、ぐるり、と……反転したような、錯覚


「え?」

 己の上に圧し掛かっていたH-No.9の、腕を押さえつけていた手を…体の芯から湧き上がってきた力で、払いのけた
 首に僅かにメスが食い込んだが、その痛みなど気にならない
 呆然とした表情で、その様子を見下ろしてきていたH-No.9
 その、どこか間抜けにあけられた、口

 --っが、と
 辰也の、手が……その上顎に、伸ばされた



「…何だ、辰也の方が早かったのか」
「あぁ、もう研究所の方に行ってるよ」

 辰也より、遅れて診療所に到達した黒服H
 バイト君…伊藤有羽から辰也が先に到着してたことを聞き、肩をすくめた

「やれやれ、仕方ない、今回はあいつに譲るか……」

 そう言って、黒服Hは診療所を後にしようとした、が

 直後
 聞えてきた悲鳴に、脚を止める

「…っ、メアリー!?」

 有羽もまた、その悲鳴に反応した
 悲鳴は……診療所の、奥
 研究室からだ
 舌打ちし、黒服Hは有羽と共にその研究室に駆け込んだ


 血の、臭い
 赤い、赤い、真っ赤な光景

「……辰也?」

 ドクターとメアリーの、向こう側
 赤く、全身を濡らした辰也が…そこに、立っていた
 その片手には、何かが握られている

 人間の、顔
 上顎からその上を、強引に引き剥がした、それ
 そこから下は辰也の足元で、座り込むような体勢で、血の噴水を吹き上げている
 それらが、H-No.9の変わり果てた姿である事に、黒服Hは気づき

 何があったのか
 辰也が、何をしたのかを……はっきりと、理解した



 目の前の惨状に、ドクターは思い出す
 辰也から受け取った、データに記載されていた事実
 辰也に投薬された、薬の一覧を
 確か、その中に「身体能力強化剤」があったはずだ
 あの成分であの分量、投与されれば、人間の限界を超えた身体能力が身につくはず
 それを、辰也はほとんど見せたことがなかった

 それを
 自分は、たった今、見たのだ

 人間とは思えぬ怪力で、辰也はH-No.9の上顎を掴み…強引に、力任せに、体から引き剥がしたのだ
 引きちぎった、と言う言い方の方が正しいだろうか?
 どちらにせよ……あんな状態になっては、いかに都市伝説と言えど、生きていられるはずがない
 その体は、光の粒子に変わっていき、消滅しようとしている


 血塗れの辰也
 俯いたその様子から、研究室に居る他の面々に、彼の表情は見えない

 ただ、彼は
 小さく、暗く……笑っていた



 何だ
 どうせ自分には、これがお似合いなのだと
 血塗れの、人殺しが一番似合っているのだと
 そう、自嘲するような、笑みを浮かべる

 自分には結局
 日常など、似合わないのだ、と


「………あと、三人」


 暗く笑いながら、辰也はそう、低く呟く
 あと、三人
 あと三人殺せば、自分達の復讐は終わるのだ
 それを実感しながら…辰也は低く、暗く、笑い続けていた



to be … ?




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