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当面の目的地だった雑居ビルをぶち抜いて出てきたのはゲームとかで見た事のあるドラゴンそのものだった。
ドラゴンは羽を広げたり大口開けっ広げて吼えてやがる。その大音声の中、俺も指先をドラゴンに突きつけ、負けじと大声を張り上げて後方のTさんに叫んだ。
「なんじゃありゃ!?」
「おっきいの!」
頭上のリカちゃんと共に言うとTさんは俺とリカちゃんを背後に庇うように前に歩き出た。
ビルの方を向いて一つ頷き、
「西洋竜……ドラゴンだな」
「んなもん見りゃわかる。けどアレは……いいのか!?」
あんなモノ町の皆様方に見られたら非常にまずいんじゃないのか!?
シャッターを切りつつ言うとTさんはもう一つ頷き、
「あまり堂々と現れると困るのだがな……まあ隠蔽作業等は≪組織≫が腐心してくれているだろう」
そう言って仔細にドラゴンを観察しだした。
「あんま驚いてねえのな、Tさん」
その様があまりにも落ち着いているので言ってやる。
Tさんはん? と俺に振り返り、
「まあ、初めて見るものでもないしな。それに黒服さんが言う朝比奈秀雄の三つ目の都市伝説は怪力に高い防御力、炎と毒のブレスを持っているという話だったから予想は付いていた……まさかとは思ったが現れてしまったものは仕方がない。
それにしても、よくあれほどのモノに呑まれずにいるものだ」
ドラゴンをじっと見据えて感心したように言って、俺に手をかざした。
「結界が張れれば幸せだ」
言葉と共にTさんの手から光が漏れ、俺とリカちゃんにまとわりついた。
「なんじゃこりゃ?」
「結界、とりあえず粉塵対策だな。戦闘時に張る急ごしらえのものよりは強固だ。ドラゴンは毒や炎を吐く。基本的には俺が護るが、自分達でも気をつけるように」
「おう」
「はいなの!」
Tさんの言葉に一も二もなく俺とリカちゃんは答える。
あんなもんに近付くんだ。瓦礫の一つでも当たったら相当痛そうだし、流石にTさんの言う事に逆らう気にはなれない。
「いい返事だ」
俺達の返事を確認してビルの方へと急ぎ気味に足を動かしだしたTさんにそういえば、と声をかける。
「Tさん、マドカ姐ちゃんに連絡連絡っ!」
「……ああ」
ここまで派手な動きがあれば気付きそうなものだが、と言いつつTさんは携帯を取り出す。耳に数秒携帯を当て、不審げに画面を覗き込んだ。
「……通じんな」
「え?」
「リカちゃん、どうだ?」
言われたリカちゃんも数秒「むむむ」と唸り、脱力した。
「だめなの」
首を振ってるのか、頭でリカちゃんが身動きする感触がする。
「そうか、お疲れ様」
リカちゃんを労いつつ携帯を畳んで険しい顔をすると、Tさんはドラゴンの方を向いた。その様子にまさか、と思い訊いてみる。
「マドカ姐ちゃんあそこに居る、とか?」
「今町で暴れている連中を見れば大体なにが起こっているのかは分かる。彼女がそこからあそこに辿りつく事も、何らかの方法で情報を得るだろう事も考えるとそれも無きにしも非ずだ」
うわあ、今あのビル大絶賛崩壊中なのにかよ……。
「大丈夫かな、姐ちゃん」
「もし彼女があの場に居るとしたら、彼女の≪フィラデルフィア計画≫は逃走用には向かないだろうし朝比奈マドカのあの性格で朝比奈秀雄の前から何もせずに逃げだすというのも考え難い。逃げはせずに朝比奈秀雄をどうにかして殴ろうとしているだろうな」
「うん、確かにそんな気がするな」
思わず笑いが漏れた。
マドカ姐ちゃんなら何も考えずに突っ込んでも不思議じゃねぇかもしれない。
「黒服さんもチャラい兄ちゃんもきっと先にあそこに行ってるよな」
俺達が≪ユニコーン≫とヘンリーの兄ちゃんに足止めされてた分早く着いてるはずだと思うし。
Tさんを窺うと肯定の返事が返ってきた。
「だろうな」
そうなると、
「あのドラゴンの派手な登場に巻き込まれちゃいないか?」
「おそらくは。だが黒服さんにはパワーストーンもある。大丈夫だとは思うが……どちらにしてもあれをほっとくのはよくないだろうな」
了解了解と答え、改めて崩壊しているビルとドラゴンを見た。ドラゴンはご大層なことに火を吐き出している。
深呼吸、頬を叩いて気合いを入れる。
「急ぐか!」
Tさんに気楽に言う。多少怖いけど、まあTさんが居るなら問題ないさ。
「ああ、急ごう」
Tさんは答え、走り出した。
それにしても、
「分かりやすくボスキャラだなあ……」
随分と近くなったドラゴンを見上げながら俺は独りごちた。
ドラゴンは羽を広げたり大口開けっ広げて吼えてやがる。その大音声の中、俺も指先をドラゴンに突きつけ、負けじと大声を張り上げて後方のTさんに叫んだ。
「なんじゃありゃ!?」
「おっきいの!」
頭上のリカちゃんと共に言うとTさんは俺とリカちゃんを背後に庇うように前に歩き出た。
ビルの方を向いて一つ頷き、
「西洋竜……ドラゴンだな」
「んなもん見りゃわかる。けどアレは……いいのか!?」
あんなモノ町の皆様方に見られたら非常にまずいんじゃないのか!?
シャッターを切りつつ言うとTさんはもう一つ頷き、
「あまり堂々と現れると困るのだがな……まあ隠蔽作業等は≪組織≫が腐心してくれているだろう」
そう言って仔細にドラゴンを観察しだした。
「あんま驚いてねえのな、Tさん」
その様があまりにも落ち着いているので言ってやる。
Tさんはん? と俺に振り返り、
「まあ、初めて見るものでもないしな。それに黒服さんが言う朝比奈秀雄の三つ目の都市伝説は怪力に高い防御力、炎と毒のブレスを持っているという話だったから予想は付いていた……まさかとは思ったが現れてしまったものは仕方がない。
それにしても、よくあれほどのモノに呑まれずにいるものだ」
ドラゴンをじっと見据えて感心したように言って、俺に手をかざした。
「結界が張れれば幸せだ」
言葉と共にTさんの手から光が漏れ、俺とリカちゃんにまとわりついた。
「なんじゃこりゃ?」
「結界、とりあえず粉塵対策だな。戦闘時に張る急ごしらえのものよりは強固だ。ドラゴンは毒や炎を吐く。基本的には俺が護るが、自分達でも気をつけるように」
「おう」
「はいなの!」
Tさんの言葉に一も二もなく俺とリカちゃんは答える。
あんなもんに近付くんだ。瓦礫の一つでも当たったら相当痛そうだし、流石にTさんの言う事に逆らう気にはなれない。
「いい返事だ」
俺達の返事を確認してビルの方へと急ぎ気味に足を動かしだしたTさんにそういえば、と声をかける。
「Tさん、マドカ姐ちゃんに連絡連絡っ!」
「……ああ」
ここまで派手な動きがあれば気付きそうなものだが、と言いつつTさんは携帯を取り出す。耳に数秒携帯を当て、不審げに画面を覗き込んだ。
「……通じんな」
「え?」
「リカちゃん、どうだ?」
言われたリカちゃんも数秒「むむむ」と唸り、脱力した。
「だめなの」
首を振ってるのか、頭でリカちゃんが身動きする感触がする。
「そうか、お疲れ様」
リカちゃんを労いつつ携帯を畳んで険しい顔をすると、Tさんはドラゴンの方を向いた。その様子にまさか、と思い訊いてみる。
「マドカ姐ちゃんあそこに居る、とか?」
「今町で暴れている連中を見れば大体なにが起こっているのかは分かる。彼女がそこからあそこに辿りつく事も、何らかの方法で情報を得るだろう事も考えるとそれも無きにしも非ずだ」
うわあ、今あのビル大絶賛崩壊中なのにかよ……。
「大丈夫かな、姐ちゃん」
「もし彼女があの場に居るとしたら、彼女の≪フィラデルフィア計画≫は逃走用には向かないだろうし朝比奈マドカのあの性格で朝比奈秀雄の前から何もせずに逃げだすというのも考え難い。逃げはせずに朝比奈秀雄をどうにかして殴ろうとしているだろうな」
「うん、確かにそんな気がするな」
思わず笑いが漏れた。
マドカ姐ちゃんなら何も考えずに突っ込んでも不思議じゃねぇかもしれない。
「黒服さんもチャラい兄ちゃんもきっと先にあそこに行ってるよな」
俺達が≪ユニコーン≫とヘンリーの兄ちゃんに足止めされてた分早く着いてるはずだと思うし。
Tさんを窺うと肯定の返事が返ってきた。
「だろうな」
そうなると、
「あのドラゴンの派手な登場に巻き込まれちゃいないか?」
「おそらくは。だが黒服さんにはパワーストーンもある。大丈夫だとは思うが……どちらにしてもあれをほっとくのはよくないだろうな」
了解了解と答え、改めて崩壊しているビルとドラゴンを見た。ドラゴンはご大層なことに火を吐き出している。
深呼吸、頬を叩いて気合いを入れる。
「急ぐか!」
Tさんに気楽に言う。多少怖いけど、まあTさんが居るなら問題ないさ。
「ああ、急ごう」
Tさんは答え、走り出した。
それにしても、
「分かりやすくボスキャラだなあ……」
随分と近くなったドラゴンを見上げながら俺は独りごちた。