「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 我が願いに踊れ贄共・救世主候補-06

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だれでも歓迎! 編集
 関わらないようにすべきだ
 彼は、そう考えたのだ
 姿を見かけたら逃げるべきだ、と
 彼、山田はそう考えた

 されど
 運命を紡ぐ存在は、残酷な進路を提示する


 姿を見かけて、すぐに気づいた
 …いや、正確には、山田はそのインパクトありすぎる姿を記憶から完全忘却していた為、気づいたのはデビ田

『オイ、へたれ。サッサトココカラ離レルゾ』
「え?でも良子に頼まれてた買い物、この先のスーパーで…」
『遠回リシテ行ケ、ソンナモン………前方ニイル二人、「教会」ダ。片方ハ昨日まぞガ持ッテキタ資料デ見タダロウガ』

 え、と前方を歩いている二人を確認した

 片や、たくましい肉体をカソックで包んだ女性……女性……………否、悲しいかな、後姿でもわかる、オカマだ
 片や、やや小柄の、可愛らしい顔立ちをしているであろう中学生程度の美少女(後姿で美少女とわかる、というのもおかしな話だが)
 酷く、ミスマッチな組み合わせ
 だが、親しげに話している様子から、偶然隣を歩いているわけではない
 一方は、確かに、先日資料でマッシヴなポージングを取っている写真で姿を確認している(ただし、山田は記憶から忘却したが)
 ……どちらも、「教会」の一員なのだろう

 関わらない事を、遭遇したら逃げる事を選んだのだ、なるべく、関わらない方がいい
 デビ田の言う通りに、遠回りをすべきなのだ

 山田はそう考え、別の道へと入ろうとした
 ……その時


「そっか、だから、ヴァレンタインはニーナのお爺ちゃんを殺すのを手伝ったんだね」


 普通ならば、雑踏の騒がしさにかき消されるはずの、声
 だが、それは、相手を意識していたからだろうか
 はっきりと、山田の耳に入り込んできた



 ほんの少しだけ、時間は遡る

「ねーねー、ヴァレンタイン、どーして、ヴァレンタインは何か月も前から学校町にいるのに、ニーナを見つけられないの?」
「うっさいわね、ちみっこ。それを言ったら、カイン司祭だってそうでしょ?」
「だって、カインは優しくってお人好しで、でも、そのせいでちょっと容量悪いもん、仕方ないよ。でも、ヴァレンタインは非常で外道で最悪で、誰かの為になんて動くはずないのに、どうして見つけられないの?容量悪いから?」
「ぶん殴るわよ、ちみっこ」

 地味に酷いというか、嫌な会話をしている二人
 しかし、辺りは賑やかで騒がしく、二人の会話を聞きとめている者はいない

「誰かに、ニーナは保護されている。その保護してる奴の能力のせいで、感知すらできないのよ」
「めんどくさーい。どうせなら、さっさとのたれ死んでくれていれば、こっちも楽なのにな」

 むぅー、と、子供っぽく頬を膨らませるレティ
 が、すぐに何か思いついたように、にぃ、と笑顔を浮かべる

「じゃあさ、じゃあさっ、ニーナが見つかって、もし、もう利用価値がなかったら。レティが殺しちゃっていい?苦ぁいお水を飲ませて殺しちゃっていい??」
「いいんじゃないのぅ?本当に利用価値がないなら、ねぇ?」

 それは
 自分達の仲間の事について語っているには
 あまりにも、あまりにも、残酷な内容

「あの子は、エイブラハム様の探しものを見つける為の…探しものを追い詰める為の、餌なんだから。その為に、あの時生かしたんだからね?」
「わかってるよ。そうでもなきゃ、ニーナみたいな弱っちい子が、レティ達と同じ「13使徒」を名乗れるはずないもんね」

 と
 ヴァレンタインを見上げるレティが、ひどく楽しげに笑う

「……まぁ、それを言ったら、ヴァレンタインなんて、どうして「13使徒」に入れたのか不思議だけど」
「お黙り、ちみっこ。ヴァタァシはエイブラハム様に選ばれたのよ?」
「たまたま、「13使徒」に空きがあって、他に妥当な人がいなかったんでしょ?だって、ヴァレンタイン、弱いもん。模擬試合で、カインに体砕けれたんでしょ?」
「5年も前の話じゃない。今は、そうはならないわよ」

 どうかなー?とからかうように笑うレティ
 …レティの言う通り、ヴァレンタインは5年程前に、事故の鍛錬を兼ねて模擬試合の相手をカインに頼んだ
 それ自体は、「教会」内ではよくある事であり、珍しい事ではない
 ………ただ
 戦闘的な都市伝説とは契約していないはずのカインが、ガーゴイルと契約しているヴァレンタインの石の体を、見事に砕いて見せたのだ
 …その直後に、大急ぎで謝罪して、その体を治癒したのもまた、カインだったりするが

「そうかなぁ?」
「そうよぉ。ヴァタシは、真面目にエイブラハム様の為に、鍛練を続けてるもの」

 それに、と
 ……ヴァレンタインが浮かべたのは、醜悪で残酷な、笑み

「強くないと、殺せないでしょ?叩きのめして引きちぎって、許しを請う言葉もすべて嘲笑って、たっぷり痛めつけて苦しめて殺すには、強くなければできないわ」
「ざっんこくー。確かに、苦しみもだえる顔見てるのは楽しいけどね」

 くすくす、レティは笑う
 その笑顔は可愛らしい癖に、どこまでも残酷

「ヴァレンタイン、相手を痛めつけるの大好きだよね。自分より弱い相手を痛めつけるの」
「えぇ。虫けらを殺すがごとく、殺すのは好きよ。それが許されるから、ヴァタシはエイブラハム様の部下になる事を選んだんだから」

 くすくすと、残酷に笑うヴァレンタインの言葉に
 そっか、とレティは納得した

「そっか、だから、ヴァレンタインはニーナのお爺ちゃんを殺すのを手伝ったんだね」
「そうよぉ?楽しかったわ、あの時は」
「いいなー、レティも行きたかった」

 ぶー、と
 楽しそうなヴァレンタインの様子に、レティは羨ましそうに言う

 …そこで行われた残虐な行為を
 心の底から、羨ましがっている

「何とも契約していない、何の力もない人間を。いたぶっていたぶって。救いなんて一片も見せないで、殺す…………まぁ、止めを刺したのはヴァタシじゃないけどぉ」
「でも、痛めつけたんでしょ?死ぬか死なないか、ギリギリのラインで。いいなぁ、レティもそれ、やりたぁい」
「ヴァナタ、手加減苦手じゃない。いっつも、すぐに殺しちゃうんだから。今度、シモネッタから手加減の仕方を習いなさいな」
「ん~、それもいいかも、シモネッタは手加減得意だよね。拷問大好きだから」

 楽しげなレティ、心から、それを楽しみにしている
 誰かを、残虐にいたぶって殺すという行為
 それが長く続けられることを、楽しみにしている

 それは、まるで
 生まれながらにして、邪悪に生まれてしまったかのような
 そんな、存在
 「終末の火」 レティ・ルーニーとは、そんな少女なのだ

「あぁ、早くニーナが見つからないかなっ。そして、早く利用価値がなくならないかなっ。レティ達がニーナを殺そうとしたら、ニーナ、どんな顔するかな」
「そうねぇ。あのジジイを殺した時は、大分泣き叫んでたわよ?」
「じゃあ、ニーナを殺す時も泣き叫んでくれるかな?絶望してくれるかなっ?レティ、一杯一杯楽しみだなっ」

 うきうきした表情
 まるで、明日の遠足を楽しみにしている子供のように、彼女は残虐な願望を口にする

「メルセデスおにーちゃん達と一緒に、たっぷりたっぷり、たぁ~~~っぷりいたぶって殺してあげるの!レティの苦ぁいお水を飲ませて、おにーちゃんの力で体中に凍傷を作って!それが痛いって言ったら、その皮を生きたまま剥いであげればいいよねっ」
「そうして、じっくりじっくり叩きのめして、切り刻んで。肉片も残さずに殺すのね?」
「もー、違うよ!顔だけは無傷で取っておいてあげるの。そうして、どこかに飾るの!あ、カインがそれ見つけたら、どうするかな?あぁレティ、とっても楽しみ!!」
「そうね、ヴァタシも楽しみになってきたわ」

 どこまでも残虐で残酷な会話
 しかし、周囲を歩く人間達は、大半がその会話を聞きとめていない
 長く長く、異常な存在を保有し続けたこの街の人間は、無意識に異質な存在に耐性ができ、時には、彼らの非日常な会話に気づけないでいるのだ
 その癖して、怪奇的ではない、非日常ではない犯罪には敏感
 そのアンバランスな場所が、この学校町なのだ



 ……この二人の、残酷で残虐で、無慈悲で外道で鬼畜な会話を
 ただ、山田とデビ田だけが、はっきりと聞き届けてしまった




to be … ?





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