18 再び、東区中学へ
☞ 「罪深い赤薔薇の花子さんとかの人 ◆7JHcQOyXBMim」さんの連載「次世代の子供達」、
甲虫弾丸 から
然れど我は我が足躓くばかり我が歩滑るばかりにて在りき
「普通だな」
学校町東区
町内一の規模を誇る中学校を眺める
町内一の規模を誇る中学校を眺める
あのなんか変なの(「組織」の変なの)に追い回された一夜から
俺は夜中の徘徊もとい散策を控えていた
俺は夜中の徘徊もとい散策を控えていた
だが陽のある内なら散策し放題だ
というわけでこの日の放課後、あの因縁の場所である東区中学に来ていた
というわけでこの日の放課後、あの因縁の場所である東区中学に来ていた
夜中と違い、そこまで怖い雰囲気は無い
放課後の中学校は何というか普通だ
ただ、何なんだろうなこの空気は
放課後の中学校は何というか普通だ
ただ、何なんだろうなこの空気は
漫然と校舎の方を見やりながら、フェンスに沿って歩いていた
ようやく見つけた、俺がなんか変なのから逃げるときに乗り越えたあの場所だ
ようやく見つけた、俺がなんか変なのから逃げるときに乗り越えたあの場所だ
フェンスの一部が破れている
あの鎧武者の亡霊が槍をぶん投げて突き刺さった箇所だ
あの鎧武者の亡霊が槍をぶん投げて突き刺さった箇所だ
まあ修繕されることは無いだろう
不自然な破れ方とはいえ、別段目立つというわけでも無い
不自然な破れ方とはいえ、別段目立つというわけでも無い
ただね
こうして跡が残っているというのは、何やら不気味な物を感じなくもないね
こうして跡が残っているというのは、何やら不気味な物を感じなくもないね
そんなことをぼんやり考えながら、校舎の方を眺めていたときだった
「なぁ、あんた。ここに用あんの?」
「え?」
「え?」
突然、誰かに話し掛けられた
誰さんですか?
誰さんですか?
「用事あるんなら、俺逹と一緒に入るか?
俺、ここの卒業生だから、入るんだったら俺の用事にちょこっと付き合うなら入れるぜ」
俺、ここの卒業生だから、入るんだったら俺の用事にちょこっと付き合うなら入れるぜ」
花束を持った野郎だった
俺と同世代だ、大体分かる
そいつはニコニコしながら誘ってきた
俺と同世代だ、大体分かる
そいつはニコニコしながら誘ってきた
「『三年前』に死んだ彼女に花供えるのに、ちょっと付き合ってもらうだけだから、すぐに終わるよ?」
「えっ、いや」
「えっ、いや」
唐突だったもんだから、やや返答に困った
「別に用があるわけじゃないよ?」
「あ、そう」
「あ、そう」
思わずそんな言葉が口を衝いて出る
同時に彼の言葉を頭の中で反芻していた
同時に彼の言葉を頭の中で反芻していた
「三年前」に死んだ彼女に花を供えにきた
なるほど、手向けか。ひょっとして関係者かな?
なるほど、手向けか。ひょっとして関係者かな?
「あー、ただ。『三年前』に亡くなった子達に、手は合わせたいよ」
俺の口は既にそう答えていた
後ろからもう一人の男が近づいてきた
こいつの連れだろうか、俺より幾分か年上のようだ
こいつの連れだろうか、俺より幾分か年上のようだ
「あ?」
「おん?」
「おん?」
男と目が合った
率直に言うと、悪い意味で一般人ぽくない雰囲気だ
何というか、ずかずかと近づいてくる
率直に言うと、悪い意味で一般人ぽくない雰囲気だ
何というか、ずかずかと近づいてくる
「……前にどっかで会ったか?」
そんなことを尋ねてきた
覚えがあるような、無いような
覚えがあるような、無いような
別に野郎の顔は覚えない主義ってわけじゃ無いが
こんな特徴的な空気のお兄さんはそうそう忘れそうにないけどな
でも覚えは無い
こんな特徴的な空気のお兄さんはそうそう忘れそうにないけどな
でも覚えは無い
「知り合いか?」
「いや……」
「いや……」
花束野郎の質問に、雰囲気ワイルド(婉曲表現)野郎は俺から目を逸らさず首を傾げて答えた
怖いなあ、このワイルド野郎
怖いなあ、このワイルド野郎
何秒か視線が絡む
不意に、ワイルド野郎から特有の臭気を感じた
思わず舌打ちしたくなるのを堪えた
思わず舌打ちしたくなるのを堪えた
また「組織」関係者かよ!?
臭気はこのワイルド野郎からだ
なんてこった、考えなしに返答するんじゃなかった
なんてことは表に出さず、ワイルド野郎と花束野郎の様子を窺う
なんてこった、考えなしに返答するんじゃなかった
なんてことは表に出さず、ワイルド野郎と花束野郎の様子を窺う
「じゃあ、中に入るか」
花束野郎の提案に、取りあえず従うことにした
ここで急に断って逃げたら逆に不自然かもしれない
取りあえず二人に付き合ってそれからグッバイするとしよう
まだお天道様も空にあるわけだからな、何かしてくるってことは無いだろう
ここで急に断って逃げたら逆に不自然かもしれない
取りあえず二人に付き合ってそれからグッバイするとしよう
まだお天道様も空にあるわけだからな、何かしてくるってことは無いだろう
多分な
背中を見せる二人の後に従いながら、感覚を押し拡げた
うわ、間違いない
特有の臭気が一際強くなる
ワイルド野郎の方は確実に「組織」関係者だ
特有の臭気が一際強くなる
ワイルド野郎の方は確実に「組織」関係者だ
花束野郎はどうなんだ
こちらは全くニオイが無かった
こちらは全くニオイが無かった
ニオイの無い者が存在することは別段珍しいことでは無い
先天的な体質でニオイ ――いや、もうこの呼び方は止そう
先天的な体質で“波”を放出しない者はいるし、契約ANの特性で“波”を絶てる者もいる
更に言うと、“波”の隠蔽自体は専門的な技術の習得により誰であっても出来ることだし
“護符”の効果を利用して“波”を絶つことも可能だ
先天的な体質で“波”を放出しない者はいるし、契約ANの特性で“波”を絶てる者もいる
更に言うと、“波”の隠蔽自体は専門的な技術の習得により誰であっても出来ることだし
“護符”の効果を利用して“波”を絶つことも可能だ
実際、かつて俺が育った「七尾」の施設では、ANクラスの全員が“波”の隠蔽を教え込まれた
“波”を知覚できるかどうかは先天的な部分に多く依存するが
隠蔽は後天的に獲得可能な技術に属する
“波”を知覚できるかどうかは先天的な部分に多く依存するが
隠蔽は後天的に獲得可能な技術に属する
幾ら鼻が利くからって、それが大きなアドバンテージになるわけでは、無い
それに鼻が利く奴を騙して嵌める方法なら幾らでもあるからな
過信は出来ない才能という奴だ
それに鼻が利く奴を騙して嵌める方法なら幾らでもあるからな
過信は出来ない才能という奴だ
但し、「組織」所属の契約者も黒服も、何故か“波”の隠蔽が全く出来てない奴が多い
敢えて隠蔽していない、と見た方が適切かもしれない
まるで見つけてくださいとでも言わんばかりに
敢えて隠蔽していない、と見た方が適切かもしれない
まるで見つけてくださいとでも言わんばかりに
ワイルド野郎の背中を睨みながらそんなことを考える
もしかするとこの花束野郎も「組織」所属だが、技能的にはワイルド野郎よりも遥かに上なのかもしれない
“波”の隠蔽は難しい、ってわけでは無いもののそれでも俺はかなり下手くそな方だ
花束野郎にわずかな嫉妬を覚える、俺も「組織」の奴に敗けてらんねえな!
“波”の隠蔽は難しい、ってわけでは無いもののそれでも俺はかなり下手くそな方だ
花束野郎にわずかな嫉妬を覚える、俺も「組織」の奴に敗けてらんねえな!
取りあえず勝手にそう納得して感覚を閉じた
こいつらは要マークだ、気を付けないとな
こいつらは要マークだ、気を付けないとな
校門をくぐり、放課後を迎えた東区中学へと入る
独特の空気感は相変わらずだ
この静寂さと得体のしれない薄気味の悪さは昼とか夜とか関係ないらしい
この静寂さと得体のしれない薄気味の悪さは昼とか夜とか関係ないらしい
前を行く二人から、ふと校舎の方へ視線を移す
頭から血を流した女の子が虚ろな表情で笑いながらこちらを見ていた
感覚を開かずとも分かる、あれは人間では無い
頭から血を流した女の子が虚ろな表情で笑いながらこちらを見ていた
感覚を開かずとも分かる、あれは人間では無い
何気なくその子に向かって手を振った
びくりと肩を震わせた、こちらに気付いたようだ
校舎の物陰に隠れるように飛び込んで、――そっと窺うようにこちらを覗いている
校舎の物陰に隠れるように飛び込んで、――そっと窺うようにこちらを覗いている
前を行く野郎二人はあの可愛い女の子に気付いてるかな?
「どうかしたか?」
「ん?」
「ん?」
花束野郎が立ち止まり、こちらをじっと見詰めていた
「あ、いや。可愛い子がさ、さっきニコニコしながらこっち見てて」
そう答えつつ、校舎の物陰へ再度目を向ける
もうあの子はいなかった
もうあの子はいなかった
恥ずかしがり屋さんだなあ
心の中で笑いながら、俺は二人に続いた
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