【十二支と時刻】

寅の刻を平明(へいめい)あるいは平旦(へいたん)と呼んでおり。古代はこれが時刻の始点とされ、卯の刻に日が昇り、酉の刻に日が沈むとされていた。丑の時刻が過ぎて寅の時刻に移る時帯が、夜から日の出(曙、あけぼの)へ移り替わる時刻、さらにそれに付け加えて、丑は十二月、寅は一月にあたり冬が春に移る「節分」(端境)であることに由来するとされる。*1*2丑満時・漆密時(うしみつどき)は闇が世を蔽う事で端境が無効化される時帯。王莽時・王摩時(おうまがとき)は昼と夜に移り替わる事で端境が曖昧化する時帯である。「丑満時は軒下三寸魔がさす」と民間では言い伝えられて来た。

卯は「朝」と「東」、酉は「夕」と「西」を象徴するとされており、卯は此岸(この世・明界)、酉は彼岸(あの世・幽界)と近づくともされる。

昼  夕  日没  夜  深夜  夜  暁前  曙  朝 
午  酉  おうまが時  うしみつ時 うしとら  寅  卯 
端境 (端境の無効の頂点) 端境
幽界・あの世 明界・この世 

太陽と時刻の動きを十の区切りとしており、十二支と連動している。

  • 夜半(やはん) 子丑。うしみつ時。
  • 鶏鳴(けいめい) 丑寅。うしとらの端境にあたる。
  • 平旦(へいたん) 寅卯。
  • 日出(にっしゅつ) 卯辰。
  • 食時(しょくじ) 辰巳。
  • 隅中(ぐうちゅう) 巳午。
  • 日中(にっちゅう) 午未。真昼の時刻。
  • 日昳(にってつ) 未申。
  • 晡時(ほじ) 申酉。おうまが時の端境にあたる。
  • 日入(にっにゅう) 酉戌。
  • 黄昏(こうこん) 戌亥。
  • 人定(にんじょう) 亥子。

東  南  西  北 
日出  日中  日入  夜半 
卯  午  酉  子 
春  夏  秋  冬 
寅、卯、辰  巳、午、未  申、酉、戌  亥、子、丑 

十二支(地支)ではすべてにおいて寅(とら)が始点だとされるため、十二ヶ月などでも正月が寅に充てられる。時刻では太陽の動きそのものが基準となるとめ、太陽が動きをはじめる「平旦」が寅とされ、地上に日の出が起こる「日出」が卯に対応することになる。

夏至・冬至のときは天地のかたむきによって時刻がかわる。夏は日の出は「丑寅」に日の入りは「戌亥」に近づいて昼が長くなり、冬は日の出は「辰巳」に日の入りが「未申」に近づいて夜が長くなる。「地は東南に傾き天は西北に高し」と言われており、地は東南にかたむいており地上の水や塵は東南に向かって流れ込んで行く*3とされている。この点からうかがうと、無底海は東南の海にあると言える。天地が傾いたのは共工が不周山を打ち砕いたためで、その結果、太陽の動きにもかたむきが生じて夏と冬の差が発生した。

【日の動き】

太陽の動きを中心とした時刻の考え方もあり、十五の区切りが存在している。
十五の区切りが存在するものの「正中」以後は割り方が不均等になっている。また「晡時」が申酉であることから、「餔時」と「大遷」の位置は逆な可能性があると考えられている*4

  • 晨明 子丑。うしみつ時。
  • 朏明 丑寅。うしとらの端境にあたる。
  • 旦明 寅卯。
  • 早食 卯辰。
  • 晏食 辰巳。
  • 隅中 巳午。
  • 正中 午未。真昼の時刻。
  • 小遷 未申。
  • 餔時 未申。(本来はこちらが「大遷」か)
  • 大遷 申酉。(本来はこちらが「餔時」か)おうまが時にあたる。
  • 高舂 酉。
  • 下舂 酉戌。
  • 縣車 酉戌。
  • 黄昏 戌亥。
  • 定昏 亥子。


最終更新:2025年02月04日 16:42

*1 『十二支之訓傳』

*2 『大雑書』

*3 『淮南子』天文訓

*4 飯島忠夫『支那古代史論』、東洋文庫、1925年