【ヒダルガミ】

山道や峠などで人間に取り憑いて、空腹感を覚えさせ、その場で倒れさせてしまう妖怪。人間はそのまま動けなくなってしまい、死んでしまう。

何か食べ物を少しでも口に含めばヒダルガミは離れて行き、意識を立ち戻らせる事が出来ると語られており、これを防ぐために峠などを越える際は、弁当などを少し残してたずさえて行くものだと言われていた。

ヒダリガミ

山で人間を空腹にさせて動けなくさせる妖怪。(高知県)

ヒダルゴ

山で人間を空腹にさせて動けなくさせる妖怪。(長崎県)

【餓鬼(ガキ)】

ヒダルガミと同様の要素が東北地方や近畿地方など各地で語られている。人間の後をついて来ると言い、山越えや旅から帰った時は、残っていた弁当や飲み物を家に入る前に戸外に捨てて与え、餓鬼が立ち去るようにしたと言う。

「餓鬼」という言葉そのものは、仏教で語られていた単語*1から借用されたものである。生前に貪欲だった者が堕ちて飢えと渇きの苦しみを受ける世界として「餓鬼道」が存在するが、ここで言う「ガキ」たちとは性質は全く異なるものであると言ってよい。「ヒダルガミ」や「ガキ」は概念としては「無縁仏」などと同様のもので、この世に存在したままの状態のタマシイたち(魂魄)である。

餓鬼仏(ガキボトケ)

山道や峠などで人間に取り憑いて、空腹感を覚えさせ、その場で倒れさせてしまう妖怪。(栃木県、茨城県)

餓鬼憑(ガキツキ)

山道や峠などで人間に取り憑いて、空腹感を覚えさせ、その場で倒れさせてしまう妖怪。(兵庫県)

【ヒダルガミや餓鬼たち】

空腹から行き倒れて死んでしまった人間のタマシイ(霊)が、これになると言われている。つまり「幽霊」のようなものとも言えるが、ヒダルガミやガキたちは特に「怨みのある関係者」を対象とした存在では無く、一般の通行人たちに悪さをする存在であり「妖怪と幽霊」の分類を用いるのであれば、非常に妖怪的な特性を持った存在であると言える。食べ物を口に含んだり、投げ捨てて与えたりすれば難を逃れられるという対処方法が共通して各地に言い伝えられている点も、同様に妖怪的な特徴である。



最終更新:2021年05月20日 00:12

*1 六道(天、人、地獄、畜生、阿修羅、餓鬼、地獄)のうちの一つ