【羅生門の鬼(らしょうもんのおに)】

平安京の羅生門に住んでいたとされる鬼。

漢詩文の才に秀でた貴族・都良香(みやこのよしか)が、月を見上げて歩きつつ詩作にふけり門前を通りかかった際、つぶやいていた漢詩の内容を門の楼上から誉めたたえた、それにつづく一句を朗々と詠んだなど、風流な鬼として知られる。

【玄象(げんじょう)の琵琶】

羅生門の鬼は、名器として知られる琵琶の「玄象」を弾きたくなり、内裏から持ち去って行ったことがある。その後、琵琶は無事に返却されたが、玄象のありかが羅生門であると判明した原因は、羅生門の鬼が弾いていた「玄象」そのものの音色であった。

玄象は、銘の通り玄象(くろい象)が面に描かれていた琵琶であるが、腕の拙い者が鳴らしても腹を立てて音を発しないという不思議な琵琶であった。琵琶の音色で玄象のありかが知れたということは、玄象が音を発していたという証拠でもあるので、羅生門の鬼が音楽に達者だったことがうかがえる。

風流な鬼たち

風流をたしなんでいた鬼としては朱雀門の鬼も、源博雅(みなもとのひろまさ)と明月の夜には笛を合奏していた話が語られており名高い。なお、羅生門から聴こえる琵琶の音が「玄象」の音色であることを判別したのも源博雅である。

【平安京の門】

平安京には大内裏の外郭正南に朱雀門があり、さらにそこから直線に正南へのびる朱雀大路を通じて、都の入り口となる羅生門(羅城門)につながっている。本来は羅城門であり、都の四方を囲っている城壁(羅城)の入り口であることを示している名称である。

最終更新:2023年12月14日 23:50