【横禍(よこし)】

邪なる者、邪悪なる物。横曲とも書かれる。邪悪なる物を示す古語「まがつ」も「まがれる」つまり「曲がる」(横に移る)ことを意味しており、その真義に関連する。

「正」(ただし)という語に対する古語として「邪」(よこし)は存在しており、これは縦(タタシ)と横(ヨコシ)の関係であるという。これは太陽が東から立ち昇って西に沈む動きが不変であり、それが横向きに南から北へ動くことは決してないことから発生した考えだとされる。『日本書紀』(成務天皇5年)には、東西を日縦(ヒノタタシ)、南北を日横(ヒノヨコシ)と定めたことが記載されている。現在まで頭や手の動作の基本として縦(肯定・清め)、横(否定・祓い)の動きを見ることが出来る*1

直日(なおひ)と禍日(まがつひ)

邪を示す「禍」(マガツ)に対する正は「直」(ナオツ)である。これは、「曲がったもの」と「真っ直ぐなもの」をそれぞれ現わしている。これも基本は縦(タタシ)と横(ヨコシ)の考え方と同調しており、不変の太陽(日)の動きが基準となっている。

 正   タタシ   縦   日は東西に動く道理   直日・直霊 
 邪   ヨコシ   横   日は南北に動かない   禍日・禍霊 


悪事(まがごと)

禍事。人間にもたらされる災禍。「まがごとなす」などと使われていた。

麻賀礼(まがれ)

摩賀とも。邪悪なる力が抑え込まれて破られることも示す。

最終更新:2023年12月06日 18:02

*1 林兼明『神に関する古語の研究』、冨山房インターナショナル、2000年