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  • 一章-この指とまれ

おはようセックス@小説まとめ

一章-この指とまれ

最終更新:2011年04月12日 23:57

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 一章 この指とまれ


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耳障りな、鈴の音は。
微睡みの中から私を引き摺り下ろし、現に至らしめた。
乱雑に散らかり、足の踏み場もない狭い部屋。
その真ん中に、敷布団と掛布団と、間に少女が一人。それが私であるはずだ。
自己暗示をかけつつ、それをかけないといけないような自身に若干の嫌悪を抱く。
鈍く、半覚醒の意識が、見飽きた天井を映した。
依然鳴り響く鈴の音を辿って、布団から手を出すと、枕元に積んであった漫画の山が崩れ落ちた。
ばさばさと音を立てて墜落する現実の音に、一層不快感を覚えながら、宙に絵を描くように舞った手は、鈴の音を止めるボタンに突き当たる。
そのまま、鈴の主──目覚まし時計を雑に引っ張り、寝ぼけ目を擦って時刻を見る。

「……午前、11時42分…………」

重く溜息を落として、時計を放り投げる。
ぐしゃりと墜落し、衝撃で僅かに鈴の音が部屋に反響した。

「何度目だろ、あの夢……」

雨の中に私が居て、何故かは分からないけど泣いている。
私がどれだけ喉を涸らして叫んでも、返事はノイズになって届かない。
そして最後に何か声がして──

そこで、ぷっつりと切れる。

「夢は夢だっての……んぁ…あぁあ……」

欠伸が漏れた。
まだ、眠かった。
猛烈な眠気は、私の脳味噌をくだらない夢から現に呼び戻す。
で?どうする。
今から学校に行ってもどうせ遅刻だ。
学校にさしたる思い出も無かったし、学び舎で感じる喜びもそう無かった。
それに何より、私は他人がキライだった。
興味を惹くものがあっても、それは相手の了承が無い限り成立しない。
特に、男は最悪である。
男性は理性とか論理とか道徳とか抜きにしてキライだ。
まあ、そんな事は、今はどうでもいいか。
別に絶望した訳ではないけれど、欠席した所で進級が危なくなるほど落第生でもない。まだ高校に入ったばかりだし。
故に、まだまだ私は、布団の中で夢想する。
二度寝の幻想を、夢に見る。
窓の外で、車が走る音が聞こえた。
春のふやっとした、どうにも形容しづらい心地よさが、正反対の印象を持った部屋に平等に降り注ぐ。
それに、規則正しい時計の秒針の刻む音が混ざって。
薄明るい光がカーテンの隙間から差す中、メトロノームの速度を落とすように、私は緩やかな二度目の眠りに落ちていった。






「やあ」

白塗りの本棚が、所狭しと並ぶ。
その空間は狭苦しくも、果てなく広いようにも見えた。
天井にはどこかで見たような、カーペットに縫われている模様のようなものが見えた。
螺旋?網目?それとも何かの繊維?モチーフは判然としない。
そもそも天井がないようにも、見えた。
上も下も左右も、どこか曖昧で、気が付けば消え失せてしまいそうな雰囲気だった。
幻想の本棚、無数の中のひとつ。その上から、唯一色彩を放った少女が私に問いかける。

「ひさしぶり。また会ったね」

「……?」

その問いかけは不可解だった。
何故なら、私には少女に見覚えが無かった。
『また』なんて言葉をかけられるのは、仮に夢の中だったとしても不本意だった。
まして、『ひさしぶり』だって?意味がわからない。
疑問符を出した私を尻目に、彼女は不敵に笑む。

「ああ、そうだった。『まだ』初めてだったね。
 自己紹介から始めましょ。
 はじめまして。
 わたしは鈍(にぶる)。ここに住んでる」

そこまで言って、白塗りの本棚に腰掛けた少女は、にやにやとこちらを見つめた。
なんであろう。奇妙だった。
不思議だった。奇怪であった。
けれど、居心地は悪くない。
彼女の言葉は所々胸に魚の小骨の如くつっかえていたが、そんな事は瑣末な事だった。
私の不都合な現実よりかは、この非現実的な夢の中の方に、私は住んでいたかった。

「さあ、君の名前を教えてよ」

まるでロールプレイングゲームのはじまりのように、名前を訊ねられる。
私が自身の、大して好きでもない名前を告げると、少女はまたしてもにやにや笑った。

「へぇ…変わってるといえば変わってるけど、ぱっとしない名前ね。
 まま、自己紹介も終わったし、いっちょ遊ぼうよ!」

「…遊ぶ?なに?本でも読むの?」

「かくれんぼ!」

少女は歯を出して笑い、白塗りの本棚の上に立ち上がった。
上げた手に立てた指は三本。

「それじゃ、わたしが三秒数える間に隠れてね。
 いくよー!三、二…」
「ちょ、ちょっと、三秒じゃどこにも……」
「一、ゼロー!はい、今度はあなたがオニね」

実に厄介な事に、少女は私の話を聞く耳は持たないらしかった。
しかし、とは言えど三秒ならば、彼女もそう遠くへは逃げられまい。
目を閉じて、三秒数える。

一、二、三。

目を、開く。
しかし、飛び込んできたのは、白塗りの本棚の群れだけだった。
私は唖然、口をぽっかり、泡でも吐き出すように。
何処へ行ったのだろう。
何処へ、消えたのだろう。
私は、独りでに開いた口を活用するべく、無意識に声を出した。


「もういいかい」


返事は、聞こえなかった。
そのまま、その世界には何も起こる事はなく、私は微睡みから滑り落ちた。
ぶつぶつと泡の弾けるように、白塗りの本棚はモノトーンに飲み込まれた。
黒とも白ともつかない、暗がりはただしじまに脳味噌を眠らせる。
深い、深い眠りに向かって、意識は飛んで行った。













「もういいかい────」














「………あー」

かちっ、こちっ。
時計の針の刻む音が、寝覚めの悪い私をゆっくりと起こしていった。
夢を見たような気がする。
しかし、思い出そうとするとどんどんと頭は冴え、記憶の糸はどこかへするすると、毛糸の束を回して手繰り寄せるように消えてしまった。
仕方なく身体を布団から起こして、朦朧とした視界の隅、目覚まし時計に手を伸ばして引き寄せると、時刻は11時43分だった。
一瞬、一日寝てしまったのか、と思いかけたが、窓から差す日差しは、今現在が夕方であることを示していた。
つまりは半々日ほど寝ていたか、そうでなかったら翌日の夕方まで寝ていたということである。
壊れた目覚まし時計に悪態をつきつつ、そういえば自業自得か、という事に気付き、ほとほと自分という生き物が醜く見える。
仮にいくら醜くとも、流石に翌日まで寝ていた、というのは信じたくないので、当面は夕方まで寝たということにして、布団からゾンビの如く這い出す。
散らかり果てた部屋の漫画やら雑誌やら菓子のゴミやらを足蹴にしながら、台所とこの部屋と風呂を除けば唯一の部屋である、トイレに向かう。
個室に入り、内鍵を閉める。一人住まいであるのにそんな事をするのは、防衛本能か何かだろうか。
便座に腰掛けて用を足していると、腹から唸り声が聞こえた。
トイレの中で食べ物の事を考えざるを得なくなったのは少しばかり憂鬱だったが、それに憂いを覚えるよりかはトイレから出た後の事を考えた方が明らかに建設的である。
トイレを後にすると、台所に向かう。
台所とは言っても、狭苦しい空間にテーブルとコンロと食器棚にミニ冷蔵庫などがまさに所狭しと置かれているだけの空間である。別に広く見えはしない。
どうでもいい事だが、ここのテーブルは勉強机代わりになっている。理由は推して知るべし。

「……………………」

流し台にうず高く積まれた食器と、棚に並ぶ大量のレトルト食品の独壇場。
私は男だろうか。いいや、女だ。ずぼらなだけである。むしろ男だったらもう自決しているに違いない。ああイヤだ。
雑菌の温床と化している台所を、不潔であるとは知りつつも、一人暮らしが災いしたのか片付ける気は起きない。
不摂生の象徴とも言えるレトルト棚から、適当なカップ麺を取り出し、ポットの前に置く。
蓋を剥がして内袋を取り出して、湯を注ぐ。慣れたものだ。誇れる事ではないが。
注がれる湯が、発泡スチロールのカップに刻まれた線のあたりに達する頃。


ぴんぽーん


と、インターホンが鳴った。
返事でも返すと愛想がいいのかもしれないが、生憎と訪問者を歓迎する気はさらさらない。
蓋の隙間から湯気を出しているカップ麺をテーブルに置いて、玄関まで歩いてゆく。
面倒臭いな、とか、そういう意味を含んだ溜息を漏らしながら。
大した距離ではない。もともと、狭いマンションの一室に過ぎないのだから。
鉄が錆び付いた重いドアの、ノブに手をかけ、少し思い直して、覗き穴を見る。
古びたマンションの一室、貧乏学生の部屋にはカメラどころか音声を送るインターホンすら付いていない。
故に、ドアの前の存在を警戒するのはごく自然だったのだ。
狭い覗き穴を、片目を閉じて凝視する。
ドアの前には、私の通っている学校の制服を着た少女が、不安げに、何かを待つように、鞄を体の前で抱きかかえるように持って立っていた。
何の用事だろうか。
学校から重要な知らせでも出たのだろうか?
そう思いつつ、まあ危険は無いだろう、男じゃなくて良かった、そう判断し、ドアノブに再び手を掛けた。
カップ麺が伸びたら嫌だし。
その時。
ドアの向こうから、うっすらと声が聞こえた。

「…………いない、のかな」

覗き穴を再び覗くと、先程の少女が、先刻より若干ながら弱々しい表情で、ドアを見上げていた。
ちなみに、私に友人らしい友人はいない。
知り合いも多くない。
そして、私を訪問したこの少女に、私は見覚えすらない。
このままドアをあっさりと開けても良かった。
鍵をひねりドアノブを回して、前に引けばこの錆び付いた重いドアは容易く開くのだ。
少女はどんな表情をするだろう。
私が家に居た事に安堵を覚えるだろうか?
それとも、扉を開くのが遅かった私に不満な顔をするかもしれない。
それをしなかったのは、私のつかの間の好奇心が働いたからだろうか。
私が扉をこのまま開かなかったら、顔も知らない彼女が、どんな反応をするのかが、少し気になった。一種の興味だ。
私はドアノブに手をかけたまま、覗き穴を凝視した。
彼女はドアの前をうんうん唸りながら右往左往していた。

「……日を改めた方が、いいかな」

そう言って彼女は立ち止まり、じっ、とドアの前から動かなくなった。
頭では帰ろうとしているけど、身体が言うことを聞かない、そんな感じの顔に見えた。
私はあんまり意地悪するのもどうかと思い始めた。
そもそもこんな事に構っている理由無いし。
人道と反するというか、このままだと特殊な趣味に目覚めそうだ、というか。
尤も、ドアをあっさりと開け放ってしまった一番の理由は、台所でそろそろ伸びているであろうラーメンの事を考えたからだった。
鍵をがちゃり、と気の抜けた音でひねり。
ドアノブに手を掛けて軽く押してやると、ぎぃぃ、という重くて鈍い錆びた金属音と共に、ドアは開け放たれた。

そこには、訪問者たる少女の姿があった。


不思議だった。


強烈な、既視感があった。


まるで、何年も、何十年も、ヘタしたらもっと前から、私はその少女を知ってい
た気がした。

そのつやつやしてる赤茶けた髪も。
黒目がちで丸くて、子供みたいな眼も。
私よりも控えめな胸も。
不安になるくらい細いけど力強く大地に立つ、その脚も。
はじめて私の前に現れたのに、まるで他人に見えなかった。
覗き穴からでは、分からなかったが。
胸の奥が熱くなった。
こみ上げて、吐き出してしまいそうになる何かを、必死で堪える。
気持ちが悪い。冷や汗が出る。なんだ。私が何をしたっていうんだ。
くらくらした。めまいがした。あたまがいたい。どうしたんだ。なにがあった?
私が奇妙極まりない感覚に惑乱しているのを尻目に、少女は心底安心した様子で言った。

「なんだぁ……ずぅっと出てこないから、てっきり、いらっしゃらないものかと……」

言葉を聞く。
一番大切な部分を呼び起こす。
私の根幹。私という人間の人格。私の考え。私の思考、嗜好、志向。
わけの分からぬ既視感などに構っていられるか。
ぐずぐずになっている頭の中のものを、全部端に追いやって、口を開く。
いつもと、変わらない声色で。

「何か、用?」
「あ、うん。これ、テスト。返って、きたから」

そう言って、彼女は採点の終わったテスト用紙の束を差し出す。
普通なら、それを受け取って、はいじゃあね、で終わりなのだが。
ひとつ疑問があった。
既視感もそうだが、第一に。気にするべき事があった。

「わざわざどうも……ところで、さあ」
「…なんですか?」
「どうして、私の家まで?生憎と私、あなたに見覚えがなくって。私が忘れてたんだったら謝るけど」
「…ああ、ごめんなさい。勝手に住所を友達に訊いてここまで、来たの」

彼女は申し訳無さそうに、けれどどこか不敵に言った。
しかし、論点はそこじゃない。
のらりくらりと命題を避けて、私を翻弄しようったって、そうはいかない。
たかが会話だ。おしゃべりだ。だが、私は一度求めると止まらないのだ。自覚している。本能だ。矯正するつもりはない。むしろ共生するつもりだ。無論他人と共生する気は決してないが。
しかしだからこそ私は口を開くのだ。

「話、逸らさないでよね。私はあなたがここに来た理由を訊いてるのよ。欠席者のテストなんてふつーはそいつの机の中にでも放り込んでおけばいいでしょう?
 それと、私はあなたに見覚えがないのよ。少なくとも私のクラスにはいなかった筈だわ。
 なぜ、あなたはわざわざ違うクラスの私のテストを家まで届けに来たのか。住所を暴いてまで。それを訊いてるの。
 そもそも私の住所なんか誰も知ってないはずよ。どうやって聞き出したのかしら。
 …というかさ、私が出なかった、つまりは留守かもしれないって思ったら、このドアに付いてるポストに突っ込んどけばいいでしょ?この溜まりに溜まったチラシみたいにさ。
 ドアの前であっちいったりこっちいったり、あなたバカじゃないの?それとも何?それもここに来たことと何か関係があるの?
 答えられないなら帰って頂戴。私に興味深くなろうとしない人はみんなキライなの。女の子でもね。」

思わず、弁舌が軽やかになった。
こんなに喋った事自体が、随分と久しかった。
だって私が喋り出すと、みんな不快そうな顔をするから。
私が真面目に話しても、まともに取り合ってはくれなかったから。
ああ、しまったな、この人にも不快に思われたろう。
そう思いながら、がっくりと肩を降ろした。

でも、返ってきたのは予想外の答えだった。



「…ドアは、開けるためにあるのよ?」



「…………………ほぇ?」

そう、予想外だったのだ。既視感とか無縁の。
なんだそれは。
質問を全く無視したどころか言ってる事が意味わからんぞなんだコイツは。
しかもあろうことか私の長文を聞いて平然としている。むしろにへらと笑い出しそうな気配すら醸している。
言ってる事のわりに目は真剣そのもので、真っ直ぐにこちらを見据えてくる。
キライを通り越して360度回って、怖いよ。こいつ。

「ドアは、開けないと。意味が無いのよ?」
「は、はぁ……」

気の抜けた返事しか返せない。
なんだこいつは。
最初に感じた既視感はまやかしだったのか?
私が今まで見てきた人間とは、確かに違う。
それだけが確かで、推測の上で私はこの少女を“バカ”と定義することにしかけた。

……しかけたのだが。

「…ごめんね。じゃあ順を追って説明するわ。いい?
 私は貴女の隣の一年七組の蒲公英楊梅(たんぽぽ まもも)。よく偽名とか言われるけど本名よ。
 貴女と話すのは今日が初めてだけれど、とても胸を躍らせたのよ?テストを持っていくという口実で貴女の家まで赴けるんだから。
 ああ、住所は友達に訊いたって言ったけれど、あれは嘘よ。貴女を知ってる人皆に訊いて回ったんだけれど、誰一人貴女の住所を知らなかったもの。
 苦労したわ。貴女の母校の中学まで行って、貴女の担任をした事のある先生に訊いてみたの。
 駄目元だったんだけれど、見事に教えてくださった先生がいらしてね。私はそうやってここまで来ました。
 ここまで来た理由は貴女に興味があったから。
 貴女は私を知らないでしょうけど、私は貴女をよく知ってるわ。」

男の人がキライなこともね、と、彼女──楊梅と名乗った──は、落ち着いた調子で言ってのけた。

──私は感激した!

感激したのだ!!

そうだ、言ってる内容の気持ち悪さや不可解さに眉を顰める前に、私はこの少女の言葉に感激したのだ!
先程“バカ”と定義しかけた私を時渡りでもして破壊してしまいたかった!
そう、彼女は私の今までの人生で初めて、私の質問に完答したのだ!
それだけで今までの全てを投げ出して自分だけの世界にランデブーしたくなったがまあ落ち着こうか私。
落ち着け。そう、しんこうきゅ。噛んだ。深呼吸。すーはー。
よし落ち着いた。よし喋ろう。よし話そう。春が来たぞ。春が来たんだぞ。
やっと話せる人間が、ここに────!

「解った!私の名前は──もう知ってるんでしょうけど、言うわ!言わせて!
 私は海嘯高等学校一年六組、樗枇杷(おうち びわ)。ひどい名字でしょう?」
「ええ、『樗』だなんて。樗って、あの木でしょう」
「そうよ、にがき科の落葉高木。用途が無い事から、転じて役にたたないものってこと」
「でも、あなたのは“楝(おうち)”って読むんでしょう?楝は栴檀(せんだん)の古名」
「即ち『栴檀は双葉より芳し』?」
「……でも、その諺は有名だけれど、その中に出てくる栴檀は実は白檀(びゃくだん)らしいわ」
「白檀というと……ああ、線香の原料ね。一番メジャーな」
「線香ねぇ。私が死んだら立ててくれるかしら」
「骨でも削って差し上げましょうか?樗(ちょ)が白檀になれるんならもうけもんよ」
「是非お願いしたいのだけれど……御生憎様、私も人間ですから、墓石くらいは自分のお金で買えるようになってから死にたいわ」
「『ダン=ド=リオン』なのに?」
「ふふふ、私が百獣の王に見える?」
「生命力は確かに強そうな名字なんだけど」
「あら、ありがとう。わたくし生きている事だけが取り柄なのよ」
「またまたご謙遜を。いっぱい種を飛ばすじゃあないの」
「やだ、卑猥」
「卑猥ねぇ。そもそも、種から子作りを連想するのは兎も角、それを“卑猥”なものとして扱うのは私どうかと思うの」
「仮にそれが教育衛生上良くなかったとしても、貪欲な子供達はそんなこと知ってますものねぇ」
「うん、それもあるし、そもそも、子供を作るっていう生命の神秘が下ネタ扱いされるのは我慢ならないのよね。馬鹿にしてんのかって感じで」
「きっと馬鹿にしてるのよ。私達はそれを見てほくそ笑んでいればいいわ」
「わー。可愛いナリして怖いね楊梅ちゃん」
「そんなものよ、人間なんて。しかも楊梅って、結構見た目がグロテスクなのよ。今度Googleで画像検索かけるといいわ」
「そうする。でも楊梅のお菓子はとても美味しいわ」
「それには同感ですわ」
「加工されちゃえば見た目も何も無いからねぇ。人間って都合がいいの」
「そうねぇ、ゴキブリだって見た目と動きの気持ち悪さだけで嫌われてるけど、中国じゃ漢方らしいし」
「肉の唐揚げみたいにして出てきたら躊躇なく食べられそうだわ」
「ゴキブリといえば知ってる?よく気味悪がられるアシダカグモは、その気持ち悪いゴキブリを食べてくれる益虫なんですって」
「まあ。でも知らないうちにつがいになっていたらどうする?如何に益虫と言えど蜘蛛は蜘蛛よ。しかもたーくさん卵を産むの!」
「考えただけで……ぞっとしないわね」
「そのこころは?」
「貴女、蜘蛛とかゴキブリが家に出たらどうしてる?」
「そりゃあきゃあきゃあ叫びながら殺虫剤ぶっかけるよ」
「だよねぇ」
「人間だもの。それもか弱い乙女なのよ」
「都合がいいわね。こういう時だけ」
「まあ、人間ですから」
「人間だものね」
「……っははははははははははははははははははははは!!」
「ふっ、ふふふふふふふふふ…………」

ああ、楽しいなあ!なんて楽しいんだ!なんて無意味な会話だ!
こっけいだ!ムダ!無為!
故に愉快だ!
私の我が儘に、どうしてこんなにも理想どおりについてきてくれるのか!!
そうだ、そう。最高だ。
こういう事なんだ。
私の興味を、好奇心を、関心を、感心を、刺激する!私の目を、輝かせるに足る人!

きっと、天文学的な確率に違いない。

そうして、私達は出会うべく出会ったのだ。
そうとしか思えない。
決められたものは好きじゃないし、そもそも信じてはいなかったけれど、使わせてもらおう。
言うなれば、『運命』だ。
運命的な出会いだったんだ。
他の人が見たらさぞおかしいに違いない。
気が狂った、とち狂った、酔狂な、変人だ変態だと言われるかもしれないがそれでも構わなかった。
私の世界を。
否。
私の世界に入って、溶け込んで、彼女は私に同化してしまいそうなくらいだった。
たった数十分の会話だったけれど、断じて過言ではない。そう思った。
唯一不安だとすれば彼女がどう思っているかだ。早速明日から彼女の身辺調査をしよう、そうしよう。もっと自分の事は良く知るべきだ。なあにあっちもやったことだ。
ああ、どうしてもっと早く彼女と出会わなかったのだろう。
この時間が続けばいいのに!
延々と、永久に、永遠に!!

「っはは、は。ねぇ、私達、きっと仲良くなれるわ」
「ふふ、ふ…そうね。私もそんな気がするわ」
「よろしくね、楊梅」
「ええ、こちらこそよろしくおねがいしますわ」

私が右手を出すと、楊梅も右手を出して、私の手を取った。
無言で、握手をした。
何も言わなかったというよりは、お互いに言葉を必要としていなかった。
しばらく顔を突き合わせて、手を離す。
私としては少し名残惜しかったが、彼女はあっさりと別れを告げた。
「また明日ね」と、笑顔でこちらに手を振った。
私もいつぶりかの笑顔で、「うん、また明日」と返した。
その場は、それでよかったのだ。
名残惜しい気持ちが無いと言えば嘘になるが、しかしここはこうして別れるものなのだ。
彼女をこのぐちゃぐちゃな部屋に招待するのも悪くはなかったが、それは私を失望させるだけだ。それは彼女が興味を失う事になりかねない。
リスクは取り除くものだ。背負うものじゃない。
明日に学校へ向かう事が私の中で当然になってしまっていた。
だが、それでいい。

四月の終わり。
それが、私にとって全てのはじまりになった。
そう、『全て』の。







唯一誤算であったのは、部屋の中のカップ麺が、完全に息をしていなかったことくらいである。




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