ウルトラマンギンガSの第1話

メキシコ、ユカタン半島。

前作の主人公・礼堂(らいどう)ヒカルが、広大な大自然に目を見張る。

ヒカル「すっげぇ~!」

美鈴。
俺は今、世界一の冒険家を目指して未知なる冒険の真っ最中だ!
この世界には、まだ俺たち人間の知らない謎が山ほど眠っている。
その謎を解き明かすのが、俺の目標だ!

突如、地面が揺れ、鳥たちが騒ぎ出す。
ヒカルが足場を踏み外し、崖下に転がり落ちる。

ヒカル「痛ぁ…… あ!?」

目の前に、水晶のような巨大な柱。

ヒカル「何だぁ、これ?」

脳裏に浮かぶ映像。
未知のウルトラマンのシルエット、青年、水晶のペンダント──
衝撃でヒカルがひっくり返る。

ヒカル「うわっ! ……今のは?」

懐のギンガスパークが、ぼんやりと光を放っている。

ヒカル「俺を呼んでいるのか? ギンガ……」


切り拓く力


地方都市、雫が丘。
丘の上に立つアンドロイド少女、ワンゼロ。
その視線の先に、工事現場がある。

ワンゼロ「こちらワンゼロ。ターゲットを発見」

どこかで、かつてのウルトラセブンの敵・チブル星人のエクセラーが応える。

エクセラー「グレイト! ゲームを開始する」
ワンゼロ「了解」

地面を突き破り、ヒカルの見たものと同じ水晶状の石柱が出現。
真上の虚空に穴が開き、石柱が次第に空へ昇ってゆく。

作業員「何なんだ、ありゃあ!?」


地上の人間そっくりの地底人、ビクトリアンたちが住む地底世界の空間。
その神殿の、女王のキサラ、側近のカムシンたち。

キサラ「またしてもビクトリウムが……!」

そこへもう1人の主人公、ビクトリアンの勇者・ショウが現れる。

ショウ「お呼びですか、キサラ女王!」
キサラ「ショウ! 我らビクトリアンの命の源、ビクトリウムが奪われようとしています。これより、あなたに使命を与えます。地上へ行き、ビクトリウムを奪おうとする者の正体を暴き、この世界を救うのです」

キサラが真紅のアイテム・ビクトリーランサーをショウに渡す。

キサラ「古来より受け継がれし力、ビクトリーランサー。これがあなたに力を授け、あなたを導いてくれるでしょう」
ショウ「必ず守ってみせます。古代の勇者の名に恥じぬよう」

キサラが手をかざすと、ショウの頭上に様々な映像が浮かび上がる。

ショウ「これは?」
キサラ「地上の世界。その知識をあなたに授けました。一つ、約束があります。くれぐれも、地上の生き物を傷つけてはなりません」
ショウ「心して……」


地上では、特捜チームUPGの隊員、杉田アリサと松本ゴウキが、特捜車両シュナウザーで異変の場に駆けつける。

ゴウキ「みんな、作業は中止だ!」
アリサ「UPGの者です。安全確認ができるまで、現場一帯を封鎖します」
ゴウキ「ひとまず有害物質はなし、っと」
アリサ「凄まじいエネルギーを秘めてる……」

ヒカルが顔を出す。

ヒカル「これ、メキシコで見たのと同じ奴だ」
アリサ「えっ?」
ヒカル「いや、あの……」
アリサ「あなた、誰よ? ここで何してるの? 何か知ってるわけ?」

突如、地面が激しく揺れる。

アリサ「地底から巨大な生命反応!?」

地面を突き破り、巨大な怪獣が現れる。

ヒカル「怪獣……!?」
ゴウキ「みんな逃げろ! 早く!」
アリサ「こちらアリサ! 隊長、怪獣です! 怪獣が出現しました!」

UPG基地で、隊長の陣野義昭が通信で応える。

陣野「ついに、訓練の成果が試されるときが来たか。UPG、攻撃開始!」
ゴウキ「ガレット(Got it)!」

アリサたちが怪獣を銃撃する。

ヒカル「ギンガはもういない…… どうすりゃいい?」

アリサたちの乗っていたシュナウザーにヒカルが気づき、乗り込む。

アリサ「ちょっと、あんた!?」
ゴウキ「おい!」
ヒカル「ついて来い、怪獣!」
アリサ「待ちなさい!」

ヒカルがシュナイザーで発車し、怪獣が追ってくる。

ヒカル「こっちだ! ついて来い!」

怪獣が熱線を吐くが、ヒカルは巧みにかわす。
やがて怪獣が足場を踏み外して山肌に激突し、気を失う。

ヒカル「よっしゃ!」
ゴウキ「おい!」
アリサ「あなた、素人が何勝手に……」
ヒカル「カッコいいじゃん、その制服」
ゴウキ「何?」
アリサ「バカにしてるでしょ…… こっちはプロなのよ、プロ」

しかし怪獣が息を吹き返し、再び向かって来る。

ゴウキ「おいおい、余計怒らせちまったじゃねぇか!」
アリサ「下がってて」

怪獣の放つ熱線で、ヒカルたちが吹っ飛ばされる。
水晶柱が空の穴へと消えてゆく。
そこへショウが現れる。

ショウ「ビクトリウムが……! シェパードン、地底へ帰れ!」

シェパードンと呼ばれた怪獣が地面を掘り、地中へ潜ってゆく。
丘の上に立つワンゼロを、ショウが見つける。

ワンゼロ「転送完了」
ショウ「あいつか!」

ワンゼロを追って駆け出すショウ。

ヒカル「おい…… 待てよぉ!」


陣野「誰なんだ? あの勇敢な青年は」
アリサ「例の水晶体について、何か知っているようでした」
陣野「アリサ、その青年の行方を追ってくれ」
アリサ「でも、怪獣は?」
陣野「大至急だ」
アリサ「……ガレット」

通信『陣野隊長。水晶体の解析結果が出ました』
陣野「ほぉ、さすが仕事が早いな」
通信『世界各地で発生している未知の水晶体の消失事件、それと同一のものです。放射性年代測定によると、数万年前にさかのぼることは間違いありません』

UPG基地の研究室で、若い研究員が陣野に通信を送っている。顔は見えない。

陣野「数万年前…… で、あの怪獣は?」
研究員「現在解析中ですが、水晶体を守るために出現した── 僕にはそんなふうに見えました」


ショウを追い、ヒカルは町外れまでやって来る。

ヒカル「あれ? どこ行った?」

背後からショウが現れる。

ショウ「なぜ、俺をつけ回す?」
ヒカル「おぉ! 何か捜してんのか?」
ショウ「お前には関係ない」

ショウの腹の虫が鳴る。
ヒカルが笑い、チョコ菓子を差し出す。

ヒカル「食えよ」
ショウ「……いらん」

またショウの腹の虫が鳴る。

ヒカル「ハハッ! だから食えって。ほら」

無言のままショウが菓子を受け取り、齧りつく。

ヒカル「あんた、この街は初めてなのか?」
ショウ「だったら?」
ヒカル「奇遇だな。俺も今日、来たばかりなんだ。雫が丘か、いい街だよなぁ。空気はうまいし、空はきれいだし」
ショウ「……」
ヒカル「俺は世界中を旅して、いろんな国のいろんな人と触れあってきた。遠く離れた地球の裏側だって、この空で繋がってる。すげぇと思わねぇか? みんな、同じ空の下で暮してる仲間なんだぜ」
ショウ「お前にはわかるまい! 空を知らずに生きてきた、俺たちの気持ちが」
ヒカル「えっ?」

ヒカルの懐にギンガスパークが見える。

ショウ「……お前、まさか!?」

地面が激しく揺れ、再びあの水晶柱が地上にせり出す。
ショウが駆けだす。

ヒカル「おい、待てって!」


アリサ「隊長、ポイントG7に新たな水晶体が!」
陣野「何かが起きているんだ」

草原に立つワンゼロのもとへ、ショウが駆けつける。

ショウ「ビクトリムを奪っているのはお前か」

たちまちワンゼロの指示で、アンドロイド兵・チブロイドが無数に出現する。

ワンゼロ「消去」

襲いかかるチブロイドを、ショウは巧みな体術で次々に蹴散らす。
そこへヒカルも駆けつける。

ヒカル「おい!」

ワンゼロが強烈な電撃を放ち、ヒカルとショウが吹っ飛ばされる。
大地を割り、怪獣シェパードンが再び出現する。

ショウ「シェパードン!? 地底へ帰れと言っただろう!」

シェパードンはショウの言葉に耳を貸さず、チブロイドたちを熱線で蹴散らす。

ショウ「怒りに我を忘れてる……」

ワンゼロが怪獣の人形を取り出す。

ヒカル「まさか、スパークドールズ!?」

音声『モンスライブ! EXレッドキング!

怪獣EXレッドキングが巨大な姿となって登場する。
ワンゼロはそれに一体化し、内部でEXレッドキングを操る。

ヒカル「そんな……!?」

シェパードンとEXレッドキング、怪獣同士の戦いが始まる。
巨体と巨体とのぶつかり合いの末、大地を伝って炎を放つレッドキングの必殺技・フレイムロードが炸裂する。

ショウ「シェパードン!?」

ショウがビクトリーランサーを構える。

ヒカル「それ……!?」
ショウ「お前は言ったな? みんな同じ空の下で暮す仲間だと」
ヒカル「……あぁ」
ショウ「だが、俺はお前たちとは違う!」

音声『ウルトライブ! ウルトラマンビクトリー!

ビクトリーランサーからウルトラマンの人形が出現して巨大化する。
ショウが一体化し、大地に降り立つ。

ワンゼロ「お前は?」
ショウ「ウルトラマンビクトリー!」
ヒカル「あいつも、ウルトラマン!?」

カムシン「伝説が甦った……」

神野「ウルトラマン……ビクトリー!?」

ショウ「来い、俺が相手だ」

ビクトリーと名乗ったウルトラマン、の強力なパンチ、キックが次々に怪獣に炸裂する。

ヒカル「強い……!」
ショウ「シェパードン、地底へ戻るんだ!」

ヒカルのもとへ、アリサとゴウキが駆けつける。

アリサ「あんた、こんなところにいたの!?」
ゴウキ「若造、邪魔だから引っ込んでな!」
アリサ「まずいわね、この先には民家がある」
神野「半径2キロ圏内に避難勧告を発令した。絶対に食い止めろ!」
アリサたち「ガレット!」

だがビクトリーたちの戦いで岩礫が飛び散り、アリサたちは大岩の下敷きになり、気を失ってしまう。
ヒカルが必死に岩をどかそうとするが、びくともしない。
降り注いだ岩でヒカルが吹っ飛ばされ、ギンガスパークが転がる。
ヒカルはとっさに、ギンガスパークに訴える。

ヒカル「ギンガ…… お前なんだろう? 俺をこの街へ呼んだのは。未来は変えられる、そう教えてくれたのはお前じゃないか!? 頼む…… もう一度、俺と戦ってくれ! 俺に…… 切り拓く力を!!」

ギンガスパークがその声に応えるように、眩い光を放ち始める。

音声『ウルトライブ! ウルトラマンギンガ!

ヒカル「ギンガ──っ!!」

ヒカルが数年ぶりにウルトラマンギンガとなり、巨大な姿となって大地に降り立つ。

神野「あれは、降星町に現れたという巨人!?」
研究員「そうです! 彼の名はウルトラマンギンガ!」

ヒカル「久しぶりだな、ギンガ! よっしゃ、行くぜ!」

ウルトラマンギンガが゙EXレッドキングに挑み、巨体同士がぶつかり合う。

アリサ「助けてくれたの……? あの巨人が」

EXレッドキングの必殺技、フレイムロードが炸裂する。
大地を伝う業火が、ギンガを襲う。

ヒカル「ギンガサンダーボルト!」「ギンガクロスシュート!!

フレイムロードを跳ね返して、ギンガの2大必殺光線が炸裂し、EXレッドキングが大爆発する。

ゴウキ「よし!」
アリサ「やった!」

ワンゼロは爆発の中から光球となって飛び出し、大地に降り立つ。
スパークドールズの姿に戻ったEXレッドキングに、ギンガが手を伸ばす。

ショウ「ビクトリウムスラッシュ!」

ビクトリーがギンガを牽制する。
その隙にスパークドールズはビクトリーに吸い込まれ、ショウの手に渡る。

音声『ウルトランス! EXレッドキング・ナックル!

ビクトリーの右腕がEXレッドキングと同じ剛腕と化す。

ヒカル「怪獣の腕を!?」

ビクトリーがEXレッドキングの剛腕を大地に叩きつけ、フレイムロードの業火がギンガを襲う──!


(続く)

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最終更新:2016年01月03日 16:49