ーーー寒い・・・
ある町で首だけになった彼は呟いた。
細く、今にも消えてしまうのではないかと言うほどに弱々しい声で呟いた。
彼は戦いに負けた。勝てない戦いに無理に抵抗しその代償に首だけの身動きの取れない姿、そして視界が暗闇に閉ざされ、光は微量にしか感じられなくなった。
自分の能力ならあそこで勝てるはずだった、いや勝てると勘違いしていた。
相手の能力の正体を理解した時、恐らく最後にあの手を使って来ると予想した。そしてチャンスが到来した時、頭の中で立てた作戦通りに攻撃を走らせた。それがこの結果に至った。
恐らく、自分がどう足掻いても勝てない戦いだったのだ。
だからあの時は逃げる選択が正解だったかもしれない。
・・・・・あの瞬間を見られていないだろうか?
もし誰かに見られたのなら、それは自分が悪だと言う証明となり『彼ら』に捕まることになる。
それだけは、嫌だ。
彼が頭の中で後悔、反省をしている中、右側から強い光が見えた。
光をうまく感じれない彼にとってはそれが何かなぢは分からない。ただ、言えることは光がこっちにやって来たことだ。
彼にとって、それは希望なのか、絶望なのか分からない。
ただ、出来ることはただ一つだけだった。それ以外に出来ることはない。彼はその出来ることをした。
ーーー助けてくれ。
助けを求めた。
さっきと同じく、弱々しい声ではあるがはっきりと聞こえるように助けを求めた。
だが彼の小さく儚い願いは謎のざわめきが無惨に掻き消した。
もう一度、助けを求めようとした。
しかし今度は反対側の左から光が近づいてくる。
こっちは少しだけ人の形が見える。
謎の光に挟まれたこの状況に喉から出かけた言葉は消えていった。
二つの光は彼を挟んだ形で何か言葉を発し、コミュニケーションをとっていた。
その様子を聞きながら彼は思った。
ーーー自分は、捕まってしまうのか
コミュニケーションの内容は聞き取れなかったがそうに違いないと確信したのだった。
やがて二つの光のコミュニケーションは終了し、左側の光がこちらに近づいてくる。
次の瞬間、彼の頭に冷たい液体が降りかかる。
それから数分後、彼の首は見えなくなった。
ガタンッ
「炭酸ミカン飲料水、久しぶりだな・・・ん?」
『大当たり!君はなぜ運がいいんだ!もう一本出るよ!』ガタンッ
「・・・大当たりとかあるのか。こりゃラッキーだな」
自動販売機からもう一本のオランジーナを手に取り右手と左手で一本ずつ持って見比べた。
「・・・・両手に花ってところか。
今まで地道に金を貯めてコイツをまた再び一気に飲もうと思ってたが・・・まさかこういう日が来るとは夢にも思わなかったな・・・」
そう言って一つのペットボトルの蓋を空けた。
『無茶苦茶ーーーーーやった!今度はこっちーーだぜ!』
「・・・・なんの声だ?」
『ああ、ーーーやるぜ!」
「・・・・・?」
『ちょ、ちょっと待って!この穴ーーーたらーー保証はないよ!?』
「・・・上手く聞き取れないがこれは」
『決めたからには実行するぜ!』
「いや、あり得ない、聞き間違いだ・・・ここは外だぞ・・・?」
『俺が掴んでいるーーーい小さいーーーが通ったーーー筋だ』
『この軌道の先は穴に向ーーーいる・・・・』
『だがその途中には・・・ッ』
『お前さんがいるッ!!』
「・・・・確信はないが助けに行かないとッ!」
青年は駆け出した。
『手遅れだ!』
さらに青年の足は速くなった。
トーナメントの第一回戦目:小町の思考
小町(衝撃を抑える白色白色...!)
(トリモチ!・・・?)
小町は自分の服の色を綿のふわふわクッションだと頭の中でイメージしようとしたのだが、どういうわけかトリモチになった。
だがトリモチでも衝撃を抑えるには十分だった。
小町の記憶にあるトリモチに対しての先入観で捉えたイメージが人間を捕まえるほどの粘着力を持っていたのだ。
ベルトットのスタンドの拳は服がそれを包み込むようにくっつきネバネバしたしつこさが完全に捕らえたのだ。
ベルトット「なん・・・だとォ!?」
小町(ま、まあ問題ないよね?)
小町「すみませんがこの勝負、私の勝ちですね・・・
『カラー・オーケストラ』!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラ・・・オラァッ!」
服に捕らえたベルトットを尻尾全部使ってタコ殴りにした。
その圧倒的なラッシュにベルトットは気絶した。
小町(き、決まった!記念すべき第一回!
後は、決めゼリフをバシッ!と言ってやる!)
小町「・・・落ち着いて行動すればあなたは罠に引っかからずに勝てたのに・・・・・(これじゃないなぁ)」
小町「いや、これは違う・・・落ち着いて行動すれば餅に引っかからずに済んだのに・・・・(惜しい)」
小町「・・・・もっと餅ついて行動出来れば餅に引っかからずに済んだのに・・・フフ、これだね・・・・」
まるで最高の決めゼリフが決まったと言わんばかりのドヤ顔を見せてその後、息を吐いてリラックスした。
小町「ふぅー・・・・・・・・せーっの!
もっと餅ついtーーー」ズルッ
何かが、落ちる音がした。
小町は驚いて下を見る。そしてさらに驚く。
若者のベルトットがまさに穴へ落ちている途中だった!
小町は大穴、通称ブラックホールを消すことを忘れていた。
小町「!! 能力解除!」
大穴は消え、なんとかベルトットを落とさずに済んだ。
だが穴に半分以上、身体が潜っていたため、能力解除されたときに首から下が埋まった状態になってしまった。
ベルトット「うげェ!?」
引っ張られる慣性があったのか顎を強打したらしい。
そのせいで目が覚めてしまった。
小町「だだだ大丈夫ですか!?」
ベルトット「あ、ああ大丈・・・・」
小町「・・・?どうかしましたか?」
突然だがカラー・オーケストラの能力について説明しよう!
このスタンドは色を具現化する能力!
赤色に炎や血などと言った色からイメージされるものが具現化するのだ!
この能力で純粋なパワーが弱いということを補ってくれるぞ!
そしてこの能力は本体には何があっても効かないというセーフティシステムが用意されているのだ!
具現化したブラックホール上でも歩けるしトリモチの粘着効果を本体だけが受け付けない!そう!受け付けないのだ!
ベルトット「そ、その・・・服は何処に・・・」
小町「え?」
再び説明しよう!
本体が具現化したトリモチは多分説明したと思うが人間の力なら離さないほどくっつくのだ!
しかしブラックホールの穴付近の引力は凄かった!
ベルトットさんはその引力に引っ張られ一緒に服も引っ張られる!それも強烈に!
小町「・・・・」
彼女の服は自身の身体にくっつくことは絶対にない!
引力の凄さに服の背中から裂けるように開いていき、そのままズリ落ちたのだった!
小町「・・・・・・・・!!!!?」
その後の小町の対応は冷静だった。
まず、ベルトットの目に尻尾のインク(黒)を塗り付け視力を奪う。
そしてすぐさま、路地裏へ逃走。
その後ベルトットは首だけの状態となりその場に残された。
ベルトット(・・・とてつもないのを目撃してしまった)
地面に身体のほとんどが埋まっているベルトットはそうおもいました。
ベルトット(意識は薄れていたが覚えている・・・
穴に引っ張られてそれで彼女の服ごと剥ぎ取ってしまった。
・・・・・これって日本でよく言われる、わいせつ罪になるものなのか?もし、そうならば警察に捕まることに・・・・戦いに負けた上に捕まるなんてごめんだ!
早くここから脱出しなくては!)
ベルトットは考えた。
この身体のほとんどがコンクリートに埋まったこの状況を。
まず手は動かせない。足も動かせない。
じゃあどこを動かす?顔しかないが顔を動かしたところで何にもならなのでその内、ベルトットは考えるのをやめた。
一時間経過。深夜帯。
中年「おいおい」
ベルトット「・・・」
ギラギラとライトを照らす車に乗った中年は首だけを出した奇妙な顔を見た。
中年「路上で寝るとか自由な野郎だぜ!
ほらどいたどいた!」プァンプァン!
中年男はクラクションを鳴らし、首だけの彼にどくようにと促した。
だが当たり前だが動くはずがない。埋まってるから。
プァン!プァン!プァン!
ベルトット「たすk」プァン!プァン!
プァン!プァン!プァン!
中年「全く返事しねーな。そこを早く移動しろォ!
俺は左側通行をして安心した運転をしたいんだ!」
青年「おい・・・・」
青年が息を切らしながら向かって来て、ベルトットを挟むようにして大型トラックに乗った中年男と話す。
中年「なんだおめえ?道路の右側通行で来る奴は交通のルールに違反してるぜェ!」
青年「すぐ済むから待ってろ・・・・」
しゃがみ込み、青年はベルトットの顔を伺った。
青年「インクが顔いっぱいに付けられれいるな・・・
特に目が一番ついてるな。
仕方ない、使うしかないな。さらば、もう一本のオランジーナ・・・」
頭から炭酸飲料水がかけられる。
ベルトット「ぅぉ...?」
青年「徹底的に洗ってやる」
炭酸飲料水がベルトットの顔に引っ付いてわしゃわしゃと洗うように動く。
ベルトット「ぉぉ...!!?ぎゃあああああ目がああああッ!!」
その強引な洗いによってベルトットは光を取り戻し思考は再び始まる。
青年「どうだ、お目覚めか?ミカンは美味いか?」
ベルトット「やめろおおおおおおぉぉ!」(イタリア語)
青年「・・・訳分からん言葉だな・・・まだ黒いな、洗い直しだ」
ベルトット「ぎゃあああああああああ」
一分後。
ベルトット「痛え・・・」
青年「洗浄終わりだ」
中年「おい!早くその生首どかしな!安心して左側通行出来ねェ!」
青年「・・・・・」
ベルトット「・・・・・強引なやり方だがおかげで光が見えた。名前教えてくれないか?」
時生「時生だ」
ベルトット「時生とやら、助けてくれないか?」
時生「・・・・・・」
ベルトット「・・・・・?
時生「・・・ここに来る前に、ヤルだとか穴だとそんな言葉を聞いた」
ベルトット「お、おう?」
時生「そしてさっき、身ぐるみを剥がされた見知らぬ女の子とすれ違ったんだ」
ベルトット「」ビクッ
時生「そんまゲス野郎は裁かないといけない・・・
だから、誰がやったのか、調べている」
ベルトット(...ッ!通報する気だ!通報して奴ら、警察官を呼ぶ気だ!
通報されて俺の人生に闇が出来てしまう!誤魔化さなくては!)
時生「質問する。筆のようなセンスグンバツの髪型の女の子に会わなかったか?
ベルトット「・・・知らないな、筆みてェな髪型の女の子なんてな」
時生「・・・・・」
ベルトット「・・・・・・」
時生「汗を・・・かかないね。分かった、助けよう」
ベルトット「・・・助かる」
時生「相棒・・・引っ張りあげろ」
青年の背後からスリムな人型のスタンドが現れた。
そしてそのスタンドはまるでコルクを抜くかのように簡単にベルトットを引っ張り出した。
ベルトット「・・・ありがとう、おかげで全身自由に動かせるよ。
しかし驚いたな、あんたはスタンド使いなのか」
時生「その通りだ、スタンド使いだな。
・・・・なぁ、お前は知っているか?スタンド使いはスタンド使いが裁くんだぜ」
ベルトット「なんだ急に・・・」
時生「・・・・・・」
ベルトット(・・・・?俺の手に何か持ってる...これは!?)
ペロ...
時生「汗をかいたな・・・これはオランジーナの味だぜ!」
ベルトット「しまったァァァ!俺は服を持っていたァァァ!」
時生「お前のやった行為、『制裁に値する』・・・
だから直々に俺が裁く!」
ベルトット「ま、待ーーー」
時生「いくぜ相棒!
『オオオオオォォォォ・・・・・ッ!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!』」
ベルトットは裁きのラッシュに吹き飛ばされ、宙を舞った。
そして頭が下に向いた状態で落下していき、先ほど埋まっていた穴に頭から突っ込んだ。
彼の身体の自由は戻ってきた。だが、首の自由は失われた。
逆さの状態で埋まり、完全に首が見えなくなった。
ベルトットは思った。日本人は恐ろしい。
時生「オランジーナ!(炭酸ミカン飲料水)」
バァーーン!
中年「左側通行・・・」
一方、小町は白スプレーを壁に吹き付けそこから包帯を具現化し、それを自分の身体に巻きつけ、叫んだ。
小町「解決ゥーーーー!」(き、決まった!)
バァーーン!
出演トーナメントキャラ
No.6221 | |
【スタンド名】 | カラー・オーケストラ |
【本体】 | 小野乃木 小町(オノノギ コマチ) |
【能力】 | 色の持つイメージを現実化させる |
No.4054 | |
【スタンド名】 | ピクニック・バイ・ザ・モーターウェイ |
【本体】 | ビーヴィオ・ベルトット |
【能力】 | 物体の移動の軌跡を可視化し、移動等に扱う |
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