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ホテル6F、従業員用通路にロケットを操るスタンド使い……藤島六郎の姿があった。
襟元には従業員室から持ってきたインカムのマイクを留めていた。
片方の耳にだけつけたイヤホンから、男の声が聞こえる。
襟元には従業員室から持ってきたインカムのマイクを留めていた。
片方の耳にだけつけたイヤホンから、男の声が聞こえる。
ジャン<六郎、あの女は監守室に現れた。>
六郎と共にこのホテルに閉じ込められた脚蛮醤だった。
彼らはこのホテルで『加賀を倒すため』行動をとっていた。
彼らはこのホテルで『加賀を倒すため』行動をとっていた。
六郎「そーか、すべておまえさんの目論見どおりだ。問題は想定外のもうひとりの男だが……どうする? 倒すか?」
ジャン<……そうだな、彼にはちょっと動けなくなってもらおう>
六郎「よし、まかせとけ」
ジャン<……申し訳ないな>
六郎「そりゃ『彼に』か? それとも俺にか」
ジャン<…………彼はエレベーターに入ったぞ>
加賀の制止も届かず、桐生はエレベーターホールに入ってロケット弾をとばしてきた人間を探した。
しかしエレベーターの動く音が示したように、そこには誰もいない。
エレベーターの上部のエレベーターの停止した階を示す表示板は最上階である「6」を示していた。
しかしエレベーターの動く音が示したように、そこには誰もいない。
エレベーターの上部のエレベーターの停止した階を示す表示板は最上階である「6」を示していた。
無関係の自分に向けられた攻撃に腹を立てていた桐生はすぐさまエレベーターのボタンを押す。
エレベーターは2つ並べられており、右側のエレベーターの扉がすぐに開いた。
エレベーターは2つ並べられており、右側のエレベーターの扉がすぐに開いた。
エレベーターに駆け込み、「6」を押した後すぐさま閉ボタンを押した。
……エレベーターが動き出した直後、桐生は自分の行動を後悔した。
……エレベーターが動き出した直後、桐生は自分の行動を後悔した。
桐生(ちょっと待て……もし、敵が俺達をエレベーターに誘い込むのが目的だったら?
加賀はついてこなかったが、もしここでエレベーターを非常停止させられて、閉じ込められたらどうすればいいんだ?)
だが、桐生の後悔は杞憂に終わる。エレベーターは順調に昇り、6階に到着した。
桐生はふうとため息をつき、扉が開くのを待つ。
だが扉が開いた先に待っていたのは、危険に変わりなかった。
桐生はふうとため息をつき、扉が開くのを待つ。
だが扉が開いた先に待っていたのは、危険に変わりなかった。
バシュウウウウウウウウ!!!
桐生「うぉああああああっっ!!!」
扉が開くと同時に、十数機のロケット弾がエレベーターの中へ向かって入ってきた。
大きさはエントランスで見たものと同じ、人の腕ほどのものだった。
大きさはエントランスで見たものと同じ、人の腕ほどのものだった。
桐生(スタンドのロケット……同時に何発も撃つことも出来るのかッ!)
桐生「『コスモ・スピード』!!」
桐生の背からスタンドのヴィジョンが姿を現す。
コスモ・スピードは桐生の身体を覆うように腕を広げた。
コスモ・スピードは桐生の身体を覆うように腕を広げた。
桐生「俺の能力をもってすれば、この程度の数のロケットなんかすべてかわすことなんて容易いことだッッ!!」
猛然と襲い掛かるロケットの群れのすきまを縫うようにしてかわしていく。
もはや人の限界を超えた速度であるが桐生の身体にはさほど負担がかからない。
自分ひとりだけの時が早くなったような、もしくは自分以外の時だけが遅れているような感覚で桐生はロケットをかわし、エレベーターを出る。
もはや人の限界を超えた速度であるが桐生の身体にはさほど負担がかからない。
自分ひとりだけの時が早くなったような、もしくは自分以外の時だけが遅れているような感覚で桐生はロケットをかわし、エレベーターを出る。
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ロケットがエレベーター内で着弾し、誘爆する時にはすでに6階のエレベーターホールから出ていた。
エレベーター内の爆風で押し出された空気の圧力を背中で感じながらロケットの飛んできた方向に目を向けた。
エレベーター内の爆風で押し出された空気の圧力を背中で感じながらロケットの飛んできた方向に目を向けた。
バタン!
目を向けたと同時に、廊下の奥の扉が閉まった。
客間のドアが並んでいる側の反対側、従業員用通路に敵は逃げ込んだと桐生は考えた。
このまま逃がしてはならない、距離をつめなければ……敵を追おうとしたそのときだった。
客間のドアが並んでいる側の反対側、従業員用通路に敵は逃げ込んだと桐生は考えた。
このまま逃がしてはならない、距離をつめなければ……敵を追おうとしたそのときだった。
ピリリリリリリリリリ!!
突然桐生のズボンのポケットから携帯の着信音が鳴る。
桐生の携帯に電話をかけてくるのは、レースの誘いか女性だけ。桐生は反射で電話に出た。
桐生の携帯に電話をかけてくるのは、レースの誘いか女性だけ。桐生は反射で電話に出た。
桐生「俺だが……って、こんなことしてる場合じゃないんだけどな」
加賀<別に構わないわ、私だもの>
桐生「うおぉおおおっ!! なんでオマエが!!」
加賀<ここに来るまでの旅行中にこっそりあなたの携帯を調べさせてもらったのよ。
あなたスゴいわねぇ、登録数の9割が女性だったわよ>
桐生「てめ、犯罪だろうが!」
加賀<2、3人ほどのコにわざと電話かけて痴話喧嘩の種落としてきたわ。あー楽しかった>
桐生「ふざけんな! つーか今どこにいるんだよ!」
加賀<監守室よ。ここの固定電話からあなたに電話をかけてるの。私の携帯、日本じゃ使えないし。
ここのモニターからあなたの背中が見えるわ。そしてたった今……敵と思われる男が5Fの廊下に現れたのもね>
桐生「……マジか?」
加賀<この電話は切らずにスピーカーホンにしておきなさい。モニターを見てあなたに指示をするから>
桐生「って、なんで俺がおまえの言うとおり動かなきゃならないんだ。戦うべきはおまえだろ?」
加賀<……私のいうとおりにしてくれれば、電話した女の子たちの誤解を解いてあげるわよ?>
桐生「…………まったく、交渉上手だなてめえは」
加賀<わかったらすぐに追いなさい。ぐずぐずしてると何をしてくるかわからないわよ>
桐生「はいはい、わかりましたよ!」
桐生は走り出し、従業員通路の扉を開けて中へ入った。
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それから十数分が経った。
監守室にいた加賀は電話を片手にモニターを見つめながら桐生に指示を出していた。
桐生が敵のロケットの攻撃を避け、加賀が監守室から敵の逃げる先を見て桐生に指示を出していく。
敵の現れた階に桐生が行くと、すぐさまロケットの攻撃を仕掛けられる……。
そんないたちごっこが続いていた。
監守室にいた加賀は電話を片手にモニターを見つめながら桐生に指示を出していた。
桐生が敵のロケットの攻撃を避け、加賀が監守室から敵の逃げる先を見て桐生に指示を出していく。
敵の現れた階に桐生が行くと、すぐさまロケットの攻撃を仕掛けられる……。
そんないたちごっこが続いていた。
加賀「桐生助手、敵はエレベーターで6Fまで上がったわ。すぐに階段で追いなさい」
桐生<あぁ!? ここは3Fだぞ、エレベーターでいったほうが早いだろうが!>
加賀「2つあったエレベーターの片方は最初にロケットで壊されちゃったでしょ。敵の使ったエレベーターに乗ったら、降りたときにまた待ち伏せされちゃうじゃない」
桐生<くそ……しかたねえなあ……>
モニターの中の桐生は従業員通路の扉を開けて中に入った。
監視カメラが設置されているのは1Fのエントランス、レストラン、ラウンジシペースと、2F以上の客室フロアはエレベーターホールと廊下だけだった。
2F以上は廊下はすみずみまで見ることができたが、従業員通路は当然のこと、客も使う階段にもカメラは設置されていなかった。
監視カメラが設置されているのは1Fのエントランス、レストラン、ラウンジシペースと、2F以上の客室フロアはエレベーターホールと廊下だけだった。
2F以上は廊下はすみずみまで見ることができたが、従業員通路は当然のこと、客も使う階段にもカメラは設置されていなかった。
6Fの従業員通路の扉をあけて桐生が中に入ると同時に、ツンツン頭の男は床を殴ってロケット弾を生み出し、放った。
ロケットはエレベーターホールから1度、2度曲がり桐生のいるほうへ向かっていった。
ロケットはエレベーターホールから1度、2度曲がり桐生のいるほうへ向かっていった。
加賀「…………」
加賀は黙ってその様子を見つめていた。
向かってくるロケットの群れに対し桐生はスタンド能力を発現させてロケットをするりとかわしていく。
桐生がロケットをかわした直後、敵は今度は反対側の廊下へ走り出し、従業員通路へ出て行った。
このホテルは廊下がゆるやかなV字状になっており、桐生と敵は互いの姿は見えないようになっていた。
桐生がロケットをかわした直後、敵は今度は反対側の廊下へ走り出し、従業員通路へ出て行った。
このホテルは廊下がゆるやかなV字状になっており、桐生と敵は互いの姿は見えないようになっていた。
加賀「……おかしいわね」
加賀は目をしかめてモニターをにらみつけた。
耳元の受話器から桐生の大きな声が耳を刺す。
耳元の受話器から桐生の大きな声が耳を刺す。
桐生<おい! 敵はまだいんのか!?>
加賀「うるさいわね、そう大きな声出さなくたって聞こえるわよ」
桐生<さっきからずっと向こうの攻撃を喰らうだけじゃねえか、このままじゃ俺ももたないぞ>
加賀「…………」
桐生<おい!>
加賀「今考えているのよ。疲れたならエレベーターホールで少し休んでなさい。そこなら敵がどこから出てきても対処できるから」
そう言うと桐生は無言のままエレベーターホールへ向かい、ソファに腰掛けた。
モニターごしではよく見えないが、一方的に攻撃され続けて精神的にも疲れがあるに違いなかった。
モニターごしではよく見えないが、一方的に攻撃され続けて精神的にも疲れがあるに違いなかった。
加賀(ここまでの攻防で……といっても防戦一方だけど、敵のロケットは遠隔操作できる……それは間違いない。
まるでロケットに目がついているかのように正確に曲がり、桐生に向かっていった……)
しかし、エントランスで加賀が『ニール・コドリング』のインクで監視カメラの目を潰したとき、ロケットは確かに針路を失い、あらぬ場所で爆発した。
その監視カメラのモニターの映像は今も黒く塗りつぶされたままだった。
その監視カメラのモニターの映像は今も黒く塗りつぶされたままだった。
加賀(そう……だから私はロケットに目がついている可能性を消して、この監守室へ向かった。ここに敵がいるはずだったから……)
だが、加賀がこの監守室に入ったときには中に誰もいなかった。出入り口は加賀が入ってきた扉しかなく、窓もついていない。
加賀(いったい、どういうことなの?)
加賀はモニターから目を離し、椅子の背もたれに頭をのせた。
加賀「…………あっ」
<ドガァァン!!>
加賀「!」
突然、受話器から爆発音のようなものが聞こえた。
桐生<おい、敵はどこにいる!?>
受話器から桐生の声が轟く。
加賀が起き上がりモニターを見ると、エレベーターホールに煙が立ち込めていた。
加賀が起き上がりモニターを見ると、エレベーターホールに煙が立ち込めていた。
桐生<何やってるんだ! 敵が出たらすぐに言うんだっただろうが!>
加賀「……ごめんなさい。……また従業員通路の扉が閉まったわ。あなたが追わないのを見て、またこの階に現れたみたいね」
桐生<くそ、だんだんイラついてきたな……クールにならねぇと>
加賀「5Fに姿を現したわ。すぐに行って頂戴」
桐生は応えずに廊下を走り出していった。彼の苛立ちは敵だけでなく、加賀にも向けられている。加賀自身もそれをわかっていた。
加賀「……敵もなかなか狡いことするわね」
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暗闇の中、ジャンの顔だけがぼんやりと照らされている。インカムのマイクを口元に近づけ、桐生に対峙する六郎に指示を出していた。
ジャン「……エレベーターホールの男には直接的なダメージは与えられなかったようだが、かなり苛立ちを感じているようだ。
冷静さを失い、体力を消耗すればあとはこっちのものだ。」
六郎<ちぇっ、簡単には倒せないか。あの女のほうはほっといていいのか?>
ジャン「問題ない。まだ監守室から動く様子はないからな。またモニターから目をはなすようなことがあれば、また攻撃できるだろう」
六郎<よし、頼んだぜ>
ジャン「…………」
ジャンは六郎へ指示を送りながら桐生と加賀の行動まで把握していた。
しかしジャンにとって想定外だったことは桐生の辛抱強さ……もとい、そのスタンド能力だった。
しかしジャンにとって想定外だったことは桐生の辛抱強さ……もとい、そのスタンド能力だった。
ジャン(せめて、不意打ちさえ仕掛けられたらな……あの女が六郎の居場所を伝え続ける限りそれはほぼ不可能だ。
あの男がカメラの下にいる限り、ロケットはどうやってもカメラに映るし、あの男が従業員通路を通るときには六郎のロケットを誘導させられない……)
ジャン「……仕方ない、電話線を切るしかないな。万が一の脱出のために電話線はのこしておいたが……利用されてしまう以上、勝利は遠い」
しかし、桐生の行動を制限するためには六郎についてもらうほかなかった。
電話線を切るにはジャン自身が動く必要があった。
電話線を切るにはジャン自身が動く必要があった。
ジャンはこっそりと動き出し、暗闇の部屋から出た。
音をたてないように歩き、電話線の通っている壁のある場所……1Fの従業員通路、監守室付近に向かった。
音をたてないように歩き、電話線の通っている壁のある場所……1Fの従業員通路、監守室付近に向かった。
桐生<ロケットはどこからだ? どこから来る!?>
加賀「今度はエレベーターは使っていない、廊下の奥から……ん?」
桐生<なんだ、どうした?>
加賀「……おかしいわね、ロケットを撃たなかった。あなたが廊下に出た直後、また従業員通路に引っ込んだわ」
桐生<え?>
加賀「……とりあえず、エレベーターホールにいて頂戴。もしかしたらあなたのいる扉から攻撃がくるかもしれない」
モニターの中で桐生は周囲に注意を払いながらエレベーターホールへと向かった。
加賀(やはりおかしい……敵は桐生の行動も把握して動いているとしか思えない)
加賀「やっぱり……『コレ』が答えなのかもしれないわね」
加賀は桐生の映っているモニターから目を移し、端のモニターを見た。
そこに映っているのは……加賀自身の背中だった。
先ほど椅子からふと上を見上げたとき、加賀は監守室の天井のスミに監視カメラがつけられていることに気がついた。
いや、正確にはこの部屋に入ったときに目には入っていたが今の今まで何も疑問をもたなかったのだ。
モニターに映っているのはどれも「客が入ることのできる場所」であり、この監守室のカメラだけが異質だった。
いや、正確にはこの部屋に入ったときに目には入っていたが今の今まで何も疑問をもたなかったのだ。
モニターに映っているのはどれも「客が入ることのできる場所」であり、この監守室のカメラだけが異質だった。
加賀(そもそも冷静に考えてみればおかしな話なのよ。館内を監視する部屋を監視する必要がどこにある?)
加賀「桐生助手、聞きなさい。敵は、監守室に取り付けたカメラから監守室のモニターを見て、ロケットを誘導したり、あなたの行動を把握していたのよ」
加賀は監守室のカメラを睨みつけた。
天井から提げられたカメラはエントランスにあるような半円ドーム型のカメラではなく、一般的なカメラに似た型だった。
そして、その側面には、『黒い星』が描かれていた。
天井から提げられたカメラはエントランスにあるような半円ドーム型のカメラではなく、一般的なカメラに似た型だった。
そして、その側面には、『黒い星』が描かれていた。
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ジャン「!!」
1Fの従業員通路を駆けていたジャンは、加賀と目が合い、ぎょっとした。
ジャンは手にハンディカメラを持ちながら移動し、六郎に指示も送っていた。
ハンディカメラには監守室のカメラと同様、「黒い星」が描かれている。
ジャンは自身のスタンド『ドッグ・マン・スター』の能力により2つのカメラを『同期』していたのだ。
ジャンは手にハンディカメラを持ちながら移動し、六郎に指示も送っていた。
ハンディカメラには監守室のカメラと同様、「黒い星」が描かれている。
ジャンは自身のスタンド『ドッグ・マン・スター』の能力により2つのカメラを『同期』していたのだ。
ジャンは常に監守室の監視カメラを通して監守室を、監守室のモニターを見ていたのである。
ファインダーを覗いてズームすれば、監守室に並べられたモニターをチェックすることが出来る。
これによってジャンは六郎と桐生の位置を知り、六郎に指示を出していたのだ。そのための訓練はこの1週間のうちにみっちりと行った。
ファインダーを覗いてズームすれば、監守室に並べられたモニターをチェックすることが出来る。
これによってジャンは六郎と桐生の位置を知り、六郎に指示を出していたのだ。そのための訓練はこの1週間のうちにみっちりと行った。
ジャン「く……気づかれたか!? 急がなければ……」
電話線の通っている場所まではもうすぐだった。
加賀「『ニール・コドリング』!!」
加賀の万年筆からインクがあふれ出し、人の形を象ってゆく。
N・C「久シブリダナァ、オイ!」
加賀「あのカメラを通して状況を把握していたこと……ほぼ間違いなく、『スタンド能力』によるものね」
もし、監守室のカメラがただのカメラだったなら、敵が無線通信によりその映像を見ていた可能性を加賀は捨てられなかっただろう。
ただし、そのカメラには『ドッグ・マン・スター』の能力の演出……仕様のために『黒い星』が描かれていた。
監視カメラにデザイン性を求める意味はない。この黒い星こそが、スタンド能力によるものと思わせるには加賀にとって十分だった。
ただし、そのカメラには『ドッグ・マン・スター』の能力の演出……仕様のために『黒い星』が描かれていた。
監視カメラにデザイン性を求める意味はない。この黒い星こそが、スタンド能力によるものと思わせるには加賀にとって十分だった。
加賀「もしこれがデザインだったとしたら……安っぽすぎるデザインじゃない?」
N・C「違ェネェナァ」
加賀「カメラを破壊しなさい、『ニール・コドリング』!!」
ガシャァアアアアアン!!
映像が途切れる、と同時にアスファルトの床に置かれたハンディカメラは破壊された。
ジャンは壊れたカメラを尻目に、壁に向かって立っていた。壁は一部分が砕かれ、中にめぐらされたコードが露出している。
ジャンは壊れたカメラを尻目に、壁に向かって立っていた。壁は一部分が砕かれ、中にめぐらされたコードが露出している。
ジャン「くそ……あの男が介入しなかったら、カメラはバレなかったかもしれないのに……だが、これでヤツらの連絡手段も断つ!」
バヂィッ!!
ジャンはスタンド攻撃によって壁の中のコードを遮断した。
ジャン「だが……まだ策は残されている! ……六郎っ!」
ジャンはインカムで六郎に指示を送りながら従業員通路を駆けていった。
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加賀「……もしもし、桐生助手? もしもし?」
N・C「ドウシタ」
加賀「…………助手がいきなりツー、ツーって電子音の声マネをしはじめたのよ。ドッピオじゃあるまいし」
N・C「イヤ、ソレタダ単ニ電話ガ切レタダケダロ」
加賀「電話線を切られたのかしら、今更」
N・C「コレジャ指示ヲ送レネェゼ、ドースンダ」
加賀「…………」
N・C「オーイ、ドーシタンダッテ?」
加賀「今、電話線を切ったのは誰だと思う?」
N・C「エ?」
加賀「カメラにスタンド能力を仕込んだのは誰?」
N・C「……」
加賀「いまだモニターにあのツンツン頭の敵の姿は映ってるわ。彼に電話線を切ることは不可能よ。そして桐生助手にも不可能」
N・C「ソモソモ電話線ノ場所ナンテワカンネーダロ、アイツハ……ッテコトハ」
加賀「敵は……1人じゃない」
N・C「マジカヨ」
加賀「大マジよ。……事実上桐生助手を味方にしている現状では負けはないと思っていたけれど……かなり厳しい状況ね」
N・C「……ドウシテダ? 数ノ上デハ2タイ2ジャナイカ」
加賀「……もうひとりの敵、ツンツン頭じゃないほうは一度もカメラの下に姿を現してないわ。居場所が全く分からないの。
スタンド能力もハッキリ言ってまだよくわからないし、そのポテンシャルだって不明なのよ」
N・C「ナンダ、イツニナク弱気ジャネエカ?」
加賀「もしもう一人の敵が近距離パワー型のスタンド使いで、今この監守室の扉の外で待ち伏せていたとしたら……あなたは打ち勝つ自信ある?」
N・C「ナイデス」
加賀「即答するところがさすが私の精神体ってところだわ」
N・C「ジャア俺タチハ……」
加賀「ここから動くことはできないのよ」
N・C「モシヨ、モシダゼ? 桐生ノトコニ現レタラ、アイツハドウナルンダ? 勝テルノカ、一人デ?」
加賀「……難しいんじゃないかしら。現れたところを確認してから私が助けに行ったところで、間に合うかどうかもわからないし」
N・C「…………ナルホド、確カニ不利ダナ」
加賀「…………でもね」
加賀は口元をわずかに歪ませ、不敵な笑みを浮かべた……。
5F、エレベーターホール前で桐生の前に六郎が姿を現した。
今までで一番距離が近い対峙となった。もちろん、互いにとって顔を見るのは初めてである。
今までで一番距離が近い対峙となった。もちろん、互いにとって顔を見るのは初めてである。
桐生「おまえが……ロケットのスタンド使いか。どういうつもりだ、姿を現すなんてよ」
六郎「…………おまえに、頼みがあるんだ」
桐生「……頼みだと!?」
六郎の言葉に桐生は拍子抜けする。いままでさんざん一方的に攻撃を仕掛けてきた相手に、頼みを請われるとは……
何の頼みか聞く気にもなれず、一喝しようとしたとき、六郎はさらに続けて言った。
何の頼みか聞く気にもなれず、一喝しようとしたとき、六郎はさらに続けて言った。
六郎「あの女を倒すため、俺たちに協力して欲しいんだ!」
桐生「ハアァ!?」
六郎「いいか……おまえは、おまえは……あの女に……」
六郎「『騙されているんだぞ』!!」
ジャンは足音で敵に居場所を悟られぬよう音をたてずに急ぎ足で従業員通路を移動していた。
ジャン(監守室のカメラさえバレなければ、六郎と私だけであの女に勝つことはできた……だが、バレてしまった以上、『状況は1週間前と変わらない』!
我々が勝つためには、今となってはあの男と協力するほかない……ここから脱出するためには……『あの女を倒さなければならない』からだ!!)
加賀は監守室の椅子に腰を下ろし、脚を机の上に投げ出して桐生と六郎が映るモニターを見つめた。
そして、ボソリと一言呟いた。
そして、ボソリと一言呟いた。
加賀「……でもね、私が桐生助手を助ける義務なんてないのよ……」
to be continued