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最終話『ライフ・ゴーズ・オン』

最終更新:

orisuta

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【杜王町:学校跡地】
┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛.....

???「『私タチ』は…『れくいえむ』と呼バレル、『けーぷよーくノ遺産』が生ミ出シタ『化ケ物』ダ」

???「『鎮魂歌』、そう名付けたのは『じゃん=ぴえーる・ぽるなれふ』!」

――パキパキパキ

バッジョ「(な……ッ!)」

バッジョの身体に、皹が現れ始めた

???「サァ、今一度、アナタハ試サレル」

バッジョ「うおおおおおッ!?」

残る四枚の『地図』が、次々とバッジョの身体に入っていく


【杜王町:住宅地】

ワイアット「なにィィィ……ッ?!」

重松「ジョジョが…」

静香「ジョジョさんが…」



「「「「「「「消えてしまったッ!!」」」」」」」



ビエーコ「んっん~、彼は『スタンド』が妙な変化をしていたからなァ
先ずは『孤立』させる。そして後からゆっくりと『地図』を回収するさ」

浦上「こいつの『スタンド能力』がワカラネー…ワカラネーが…」

ギャルルルルルルルルッ!

浦上「ビビッて立ち止まってる暇はねェーだろうがよッ!」

『トンガリ・コーン』を発現させ、拳銃を突きつける様に片手をビエーコに突き出す

ワイアット「ああ…!全くだぜ、『ワン・ショット・アット・グローリー』ッ!」

リボルバー拳銃を引き抜いた『スタンド』がビエーコに狙いを定める

浦上&ワイアット「「『先制攻撃』だッ!」」

ズガガガガン!
放たれた『トンガリ・コーン』と弾丸が、ビエーコ目掛けて猛進する

ビエーコ「『固定概念』…まぁ『固定観念』とも言うか」

それに対してビエーコは一歩も動かず
『スタンド』の腕と思われるものだけを発現する

ビエーコ「『弾丸は前に進む』?それは違うな、大きな間違いだ」
 
 
 




ワイアット「ぐうッ?!」

浦上「ぬあッ!?」

ビエーコに向かって進んでいた筈の『トンガリ・コーン』と弾丸が、急激に反転し、ワイアットと浦上の身体を貫いていく

ビエーコ「フフフ……不思議か?そうだよな、『常識が通じなかった』んだからな」

ビエーコが動く
『スタンド』は未だ全容を見せず、腕の部分のみが発現している

重松「来るぞッ、全員構えろッ!」

重松「『アンダー・プレッシャー』ッ!貴様を『重く』するッ!」

絨毯のような『スタンド』が重松の身体から飛び出し、ビエーコの頭上に浮かぶ

重松「全開だ『アンダー・プレッシャー』ッ!ヤツを押し潰す!」

ベゴォン!
ビエーコの周り、『アンダー・プレッシャー』の領域内に存在する地面が陥没していく
それなのに、ビエーコ自身は全く、顔色一つ変えていない

重松「ば、馬鹿な……ッ!」

ビエーコ「うん?『重い』……?そうかそうか」

信じられないことにビエーコは、『アンダー・プレッシャー』の能力を受けながら高く跳躍した

ビエーコ「まるでウサギのように跳ね回れる程軽いぞッ!月のウサギのようになッ!」

ビュオン!
『スタンド』の腕が『アンダー・プレッシャー』を殴り飛ばし、ビエーコはフワリとした挙動で着地する

重松「ヌグァッ!?」

『スタンド』のダメージがフィードバックし、重松の身体も吹き飛ばされる

ビエーコ「まぁ…こんなものだろう」

米沢「そこだッ!『サテライト・O』ッ!」

ビエーコ「む……?」

米沢の『スタンド』がビエーコを捕捉し、ビームを――発射しない
それどころか、衛星軌道に居る筈の『サテライト・O』が突如この場に現れた

米沢「なにィィィィ……ッ!?」

ビエーコ「お前の『スタンド』……『規格外』だな
何よりも『天に近い』と言うのが気に喰わん」

腕だけのビエーコの『スタンド』が、素早い動きで『サテライト・O』ごと米沢を殴り飛ばした

米沢「ガハッ…ッ!?」
 
 
 




静香「………!」

明美「こ、このままじゃみんなやられちゃうよ!静香、アンタの『スタンド』でアイツの動きを読めないの!?」

静香「………い」

明美「え?」

喉の中が乾いていくのがよく分かる
なんとか言葉を搾り出し、静香は答えた

静香「よ、読めないの……『未来』が読めない!」

明美「そんな…!なんで――」


二人が驚愕している時、智恵は焦っていた

智恵「――なんでッ!?なんで『抜き取れない』の!?」

負傷した浦上、ワイアット、重松、米沢の傷を抜き取る為に発現させた『マテリアル・ガール』が、その能力を使えないのだ

浦上「大丈夫だ…このくらいなんともねェ…」

ワイアット「ああ…蚊に刺されたようなもんさ。それよりも…」

重松「問題はヤツの『スタンド能力』……」

米沢「『前に進むべきもの』が『後ろに』進み、『重く』したはずが『軽く』なっていた…」

智恵は何とか手当てをしようとしている時に、ふと気が付いた
ワイアット、重松、米沢の身体が、異常に冷たいのだ
おまけに、出血も少なく感じる

智恵「(……!まるでこれは――ううん、今はそんなこと考えてはいけない)」

重松「ヤツは『固定観念』と言っていたか。…人が誰しも抱く、その『常識』…」

浦上「『概念』とも言ってたか?」

ワイアット「『弾丸は前へ進む』と言う俺達の『固定概念』……そうか!」

米沢「分かったのか、ヤツの能力が?」

ワイアット「ハッキリとは言えないが…」

ビエーコ「作戦会議は終わりかな?此処で君達の闘いも終幕の最後ってワケだ」

緩慢な動作で一歩前に進んだビエーコの身体が、突如瞬間移動でもしたような速さでワイアット達に肉薄する

ワイアット「(『遅い』のに…『速い』ッ!やはりコイツの能力はッ!)」
 
 
 




ビエーコ「貰ったぞッ!」

浦上「やらせるかよォォォォォォォオッ!」

『トンガリ・コーン』を撃ち出さず、そのまま殴りかかる
だが浦上の動きはビエーコに背を向けて、見当違いな方向へ攻撃をしてしまう

米沢「くッ……」

『サテライト・O』が、地上に居ながら真上にビームを放つ
当然、これもビエーコに当たる訳がない
『アンダー・プレッシャー』の能力では、ビエーコは止められない

ワイアット「『概念』を…『反転』させる能力ッ!」

ビエーコ「そらそらそらそらそらそらァッ!」

浦上「ぐッ!」

米沢「ぬあッ!」

重松「うおあッ!」

智恵「きゃ…ッ!」

明美「うわあッ!」

静香「う…ッ」

浦上が、米沢が、重松が、智恵が、明美が、静香が
次々に腕だけしか出ていない『スタンド』に圧倒され、倒れていく

ワイアット「(強すぎる……ッ!何か…何か対策はないのかッ!)」

静香「ハァ……ハァ…」

静香「(『反転』されていると言うのなら…私が見る事が出来るのは『過去』…)」

静香「(それを逆手に取ることが出来れば、必ず『未来』への活路は開ける筈だわ!)」

ビエーコ「まだ倒れてくれるなよ。君達には大分邪魔をされたのだ」

ビエーコの『スタンド』が、二本目の腕を出現させた

ビエーコ「タマゴを割らなければオムレツが作れないように、私は君達を倒さなければ気がすまないのだ」

浦上「くッそがァァァァアァァァァアッ!」

ビエーコが大地を蹴る
浦上がそれを迎え撃つ

アンジェロ「…………」ピク

その時、僅かにアンジェロの指先が動いた
 
 
 




【???】

―Phantom Blood―


気が付くと、俺は洋館のような場所に居た
何か騒がしい

「おれは人間をやめるぞ! ジョジョーーっ!! おれは人間を超越するッ!」

男の声だ、と思った
そして、驚愕の声が波のように広がっていく

「UREEYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」

周りの風景が反転する
首筋に「星型のアザ」を持った若い男が、まるで格闘ゲームのコマンド技のようなものを繰り出していた

「ふるえるぞハート! 燃えつきるほどヒート!! おおおおおっ 刻むぞ血液のビート! 山吹き色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)!!」




バッジョ「なんだこれは……?」


―Battle Tendency―



「カーズ!てめーの根性はッ!
 畑にすてられ カビがはえて ハエもたからねーカボチャみてえに
 くさりきってやがるぜーーッ!!」

別の男が立っていた
先程の男によく似てはいるが、微妙に違う
バッジョの頭の中には様々な単語が入り込んできていた

バッジョ「『波紋』…『吸血鬼』…?」
 
 
 




―Stardust Crusaders―


「「世界(ザ・ワールド)」 時よ止まれッ!」

金髪の男だ、学ランを来た男と対峙している
そして、彼らの傍らに居るのは

バッジョ「『スタンド』…!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーーーッ!」

凄まじい速度で二人の『スタンド』が拳打の応酬をする

「てめーの敗因は…たったひとつだぜ… …DIO… たったひとつの 単純(シンプル)な答えだ……… 『てめーは おれを怒らせた』」


―Diamond is not Crash―

「このヘアースタイルが サザエさんみてェーだとォ?」

学ランを来た、リーゼントの男だ
これもまた、今まで出てきた男達に顔が似ている気がする

バッジョ「此処は……『杜王町』!」

――殺人鬼――吉良吉影――

「激しい『喜び』はいらない…それでいて深い『絶望』もない…『植物の心』のような人生を…そんな『平穏な生活』こそわたしの目標だったのに…」
 
 
 




―VENTO AUREO―

「スマン ありゃ ウソだった」

今度は金髪の男だ
チョココロネのような髪型を持つその男の噂は聞いたことがある

バッジョ「コイツ…『ジョルノ・ジョバァーナ』か…?」

今までもそうだが、あっちに俺の姿は見えていないらしい
と言うよりも、元より俺は『此処』に存在していないのではないか?

バッジョ「俺は…『辿って』いるのか、何かの、俺の内に眠る何かへの道へ続くものを」

「「覚悟」とは………………… 犠牲の心ではないッ!」
「「覚悟」とは!! 暗闇の荒野に!! 進むべき道を切り開く事だッ!」

バッジョ「『黄金の精神』…コイツがパッショーネのボスか…」


―Stone Ocean―

次に立っていた場所は刑務所だった

なんとなく、地面に落ちていた新聞紙に眼を向ける

バッジョ「な……2011年だとッ!?」

バッジョ「今は2002年…今までの映像が『過去』の話だとするならば、これは『未来』…」

???「ソウ…コレハ『未来』ダ。『起コルベキ』事柄デアリ、『起キナケレバナラナイ』事デモアル」

何時の間にか、二人の女性が目の前に現れていた

「やれやれだわ… グェス あんた 何にでも名前はあるって言ったわよね あたしも名前を付けるわ 「ストーン・フリー」 あたしは…この「石の海」から自由になる… 聞こえた? 『ストーン・フリー』よ…… これが名前」

首筋に「星型のアザ」を持つ女性が、そう宣言していた

「安っぽい感情で動いてるんじゃあないッ! 『人』は天国に行かなくてはならないッ! 目指したものは全ての人々をそこへ導ける! おまえらはそれを邪魔しているんだ…… 少しばかりの人間が犠牲になったらといって…… 『どこへ行かれるのですか?(ドミネ・クオ・ヴァディス)』おまえは『磔刑(たっけい)』だーーーーッ!!」

次に現れたのは神父の男――まるでアンジェロを見ているようだった

「来いッ! プッチ神父」

「それこそ『幸福』であるッ! 独りではなく全員が未来を『覚悟』できるからだッ! 『覚悟した者』は『幸福』であるッ!悪い出来事の未来も知る事は『絶望』と思うだろうが 逆だッ! 明日『死ぬ』とわかっていても『覚悟』があるから幸福なんだ! 『覚悟』は『絶望』を吹き飛ばすからだッ!
 人類はこれで変わるッ! これがわたしの求めたものッ! 『メイド・イン・ヘブン』だッ!」




世界が加速する
やがてバッジョの意識は更に深い場所へと落ちていく
 
 
 




【杜王町:住宅地】

正攻法では勝てる訳もなかった
前へ進めば後ろへ、後ろへ進めば前へ
前後左右上下の感覚がおかしくなりそうだった

浦上「グハァッ!」

ビエーコ「『前進』すれば『後退』し、『後退』すれば『前進』する」

ビエーコ「自らの動きの全てを把握し、尚且つ反転した場合も考慮して思い通りに動けるか?
出来ないだろうな、ましてや戦闘中だ」

重松「クソッ!このままじゃあヤツのワンサイドゲームだぞ!」

静香「………」スゥ

静香は目を瞑り、一度深呼吸する

静香「時間を下さい……五分…いや三分でいい。集中する時間を下さい」

ワイアット「策があるのか?」

静香「………」コクリ

ワイアット「分かった、俺が時間を稼いでみよう」

ワイアット「通じるかどうかは分からないが…一応策を考えたんでね」

膝を突いた仲間達を庇うようにワイアット・アープは前へ出る
決闘を受けたガンマンのように、堂々と一歩を踏み出す

ワイアット「おい、反転野郎」

『ワン・ショット・アット・グローリー』がワイアットの傍らに現れ、片手を腰に当て、もう片方の手で拳銃を掴み取る

ワイアット「『西部劇』みたいにさァ~、決闘だぜ」

ビエーコ「『決闘』…だと?」

ビエーコ「笑わせるんじゃあない。『決闘』とは『同じ舞台』で闘うことだ」

ビエーコは二本しか発現していない『スタンド』の腕でワイアットを指差す

ビエーコ「それが、どうだ?君達は『同じ舞台』に立ってなどいない
絶対的な力量の差がありながら『決闘』だと?」
 
 
 




ワイアット「違うな。『決闘』ってのは『覚悟』の世界だ
『必ず相手をぶっ飛ばす』その心が勝っていればいいんだぜ」

ビエーコ「死にたがりだな…まぁいいや。死ぬ順番が早まるだけさ」

ジリジリと、彼我の差を詰めていく
円を描きながら歩く二人
ワイアットが先に攻勢をかけた

ワイアット「『ワン・ショット・アット・グローリー』ッ!」

ズガン!
放たれた弾丸が一直線にビエーコへ向かう

ビエーコ「猿が……なんども何度繰り返しても同じだッ!『シング・ライク・トーキング』!」

――ズォア!
ビエーコの『スタンド』がその全貌を露にする

ビエーコ「『前へ進む弾丸は後ろへ進む』ッ!」

ワイアット「…………」

ギュア!と、方向を変えた弾丸は、ワイアット――ではなくビエーコに向けて猛進する

ビエーコ「なにィィィ……ッ!?弾けッ、『シング・ライク・トーキング』ッ!」

『シング・ライク・トーキング』が弾丸を弾く
自分の『スタンド能力』が機能しなかった
その事実に驚愕を覚え、ビエーコの思考は一瞬フリーズする

ワイアット「『前』だ。いや『後ろ』かな」

ビエーコ「ハッ!?」

背後から、ワイアットが蹴りを、『スタンド』が銃をハンマーの様に振り下ろしてビエーコを襲う

ワイアット「『裏の裏は表』って言うよなァ。それはそうと100円玉ってどっちが『表』だっけ?」
 
 
 




ビエーコ「うぐおッ!?」

ズザザザザザ!

ビエーコ「(ば、馬鹿な、有り得ない!能力を…『逆手』に取られたとでも言うのかッ!)」

ビエーコ「だが……ッ!『速度』を『反転』させてしまえば思う様動くことは出来ないだろうッ!」

『シング・ライク・トーキング』は元々格闘能力は高くない
しかし、その『スタンド能力』を適用することで、『事実上最速』になることが出来る

ビエーコ「(これで終わった……)」

ビエーコ「避けられまいッ!死ねィッ!」

ビュン――スカッ

ビエーコ「……!」

ワイアット「………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ビエーコ「(“あ、当たらない”……ッ!)」

ワイアット「どうした、不思議か…?そうだよな…」

ビエーコ「貴様…何をした!」

ワイアット「教えてやるよ…フェアじゃあないもんな…?」

ワイアット「俺の『スタンド』、『ワン・ショット・アット・グローリー』の能力は『バッヂが付いたものへの絶対命中』」

そのバッヂは、ビエーコの手前の地面に張り付いていた

ワイアット「つまり、お前の『スタンド能力』によって『バッヂへは絶対当たらない』ワケだ……
ま、お前は所謂『流れ弾』ってヤツに当たったことになるな」

ビエーコ「(こ、コイツ……ッ!)」

ビエーコ「だが、何故私の攻撃を避けられるッ!」

ワイアット「『デメリット』が一つあってさァ~……『バッヂ』を二つ以上のものに付けると
逆に『相手の攻撃が全て当たっちまう』ようになるんだよなァ……」

ビエーコ「(そ、そうか…こいつ、『デメリット』を『メリット』にしたのか!
私の『スタンド能力』を利用してッ!)」
 
 
 




ワイアット「そら…これで『同じ舞台』だぜ。正々堂々、早撃ち勝負だ」

ビエーコ「…………」

ワイアット「どうした、降参でもするか?」

ビエーコ「クックック……」

ワイアット「……何がおかしい?」

ビエーコ「態々能力の説明をしてくれて助かったよ。いや危なかった」

ビエーコが懐から銀色の『ナイフ』を抜き出し、片手に構える

ワイアット「何をして――ハッ!」

静香「危ない!」

ワイアットが状況を理解したことと、静香の叫び声はほぼ同時だった
ワイアットは自らの胸に突き立ったナイフを不思議そうに眺め、その場に崩れ落ちる

ビエーコ「確かに、『裏の裏は表』だ。しかし、“それを更に裏返したら”どうなる?」

ワイアット「(クソッ……だが)」

ワイアット「『策』……成功したか」

静香「………」
 
 
 




ビエーコ「……?」

無い
懐に入れていた筈の『地図』が、消えている
そしてそれは、静香の手に握られていた

ビエーコ「(な、何ィィィィ~?)」

ビエーコ「お前ッ、何をしたッ!」

静香「『イメージ』……」

静香「知っていますか?筋トレをするときに、理想の体型を思い浮かべてトレーニングをするのと、そうでないのでは効果は全然違うそうですよ?」

ビエーコ「何が言いたい!」

静香「『思い込み』の力は凄いんですよ。『絶対出来ない』と思えば、貴方の能力を利用して『絶対出来る』」

静香「『近距離型』である私の『スタンド』では貴方に届かなくても、『遠距離型』になった『スタンド』なら届く」

ビエーコ「(口で言うのは簡単だが、そう易々と思いを固定させることなど出来るものではない…
この小娘…未来予知と関係無く厄介だ)」

ビエーコ「だが、奪ったところでどうする?その手ももう私の前では使えまい
詰まる所、君達は袋小路に嵌った鼠と言う訳だ」

静香「ふふっ、簡単ですよ。だって、私達は後は待つだけでいいんですから」

ビエーコ「何……?」

静香「貴方が唯一“恐れてこの場から離れさせた”ジョジョさんを、待つだけでいいんです」

ビエーコ「………ッ!」

ビエーコ「フン……ならばヤツが来る前に終わらせればいいだけのことよッ!」

ビエーコ「先ずは貴様からなァーーーッ!」

世界が反転する。『シング・ライク・トーキング』が凄まじい速度で静香へ迫る
M・Gの治癒を受けたワイアットが、重松が、米沢が、全員がその前に立ち塞がり、盾にならんとその身を差し出す
だが、到底間に合わない
 
 
 




ヒュン――ガィンッ!


ビエーコ「!?」

アンジェロ「…………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ......

『シング・ライク・トーキング』の一撃を、『シンギング・イン・ザ・レイン』が受け止めていた

静香「……何故?」


ビエーコ「貴様……ッ!」

アンジェロ「私は……騙されていた訳だな。貴様の『スタンド能力』で」

ビエーコ「フン、だが結局目指す所は同じだろう?ならば私に手を貸せ、目の前の障害を排除するんだ」

アンジェロ「……全く笑える話だよ」

ビエーコ「……?」

アンジェロ「『神になって全てを救う』?そんな大層なことを言って、私は本当に護るべき大切なものを忘れるところだった」

アンジェロ「私はな、『スタンド使い』である前に、『神父』である前に――」

アンジェロ「――『父親』だったのだ」
 
 
 




アンジェロの肌が、爬虫類のような鱗で埋め尽くされる

ビエーコ「所詮は人よ……変化に耐えられぬものが『進化』だと?」

アンジェロ「『シンギング・イン・ザ・レイン』ッ!」

アンジェロと『スタンド』が、互いに恐るべきスピードでビエーコへ肉薄したが

ビエーコ「残念だ…やはり神は一人で十分だな」

アンジェロ「………ッ!」

アンジェロの肉体が、消えていく
反転した世界では、『進化』は『退化』となり

ビエーコ「果ては――『無』だ」

バシュンッ!


ビエーコ「全く、余計な手間を取らせてくれたよ。さて、次は――」


その時、ビエーコの身体に戦慄が走った


ビエーコ「(な、なん………)」


蛇に睨まれた蛙の如く、身体は動かない



背後に、居る
振り返りたく無い気配が、満ちている

「アンジェロの行動は決して無駄では無かった。こうして、間に合ったんだからな」
 
 
 




┝゛ 
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「「「「「「「「――ハッ!?」」」」」」」」



ビエーコの背後
そこに立って居たのは見紛う事無きバッジョの姿
傍らに従える『ワム!』の姿は、黒ずみ皹が入っている
そしてその容姿は

ビエーコ「な、なんだそれはッ!」

バッジョ「ありがとう、『父さん』」

ビエーコ「それは何なのかと聞いているッ!」

バッジョの顔面には、最後の『地図』が減り込んでいた
それは徐々に沈み、一体化していく
『★』型のアザが、首筋に浮き出していく


バッジョ「終わりだビエーコ。人は神になんてなれない、組織のトップが関の山だ」

ビエーコ「(ま、マズイッ!)」
 
 
 




ビエーコ「『シング・ライク――』」

『FIREッ!』

突如現れた人型の『スタンド』が、ビエーコの両腕を殴り、消える

ビエーコ「うげえッ!?」

バッジョ「…『ヒートウェイヴ』、『川端 靖成』」

ビエーコ「畜生ッ!腕が…腕が粘土のように……ッ!」

ビエーコ「は、反転……」

『無駄ッ!』

ビエーコ「グハァッ!?」

またしても現れた人型の『スタンド』が、粘土のようになったビエーコの腕を手刀で切り落とす

ビエーコ「の、能力が使えない……!?」

バッジョ「『インハリット・スターズ』、『ジョルナータ・ジョイエッロ』」

ビエーコ「クソックソックソッ!」

『オラァッ!』

ビエーコ「ウグァ……ッ!」

流星のような拳が、ビエーコの腹部を捉える

バッジョ「『スター・ゲイザー』、『上城 遥』」

殴られた部分が赤く発光する
 
 
 




ビエーコ「に、逃げ……」

『ウラァ!』

ビエーコ「ガ……ッ」

続いて現れた深紅の『スタンド』の拳が、顔面を打ち据える

ビエーコ「(な、何だ…!?『逃げたいという気持ち』が…消えて…)」

バッジョ「『ガーネット・クロウ』、『ロッソ・アマランティーノ』」

ビエーコ「(『恐怖』が…消えた?ハハッ!闘える、私は闘え――)」

『ムヒィーーーッ!』

ビエーコ「ウッゲェェェェーーーッ!」

赤く発光する部分から、猿のような『スタンド』が飛び出し、猛烈なラッシュを放つ

バッジョ「そして…『アークティック・モンキーズ』、『城嶋 丈二』」

ビエーコ「なんなんだその能力はッ!『スタンド』は一人一能力ッ!今のは一体……」

バッジョ「『エッジ・オブ・ヘブン』だ」

ビエーコ「な、なに……?」

バッジョ「新しい『ワム!』の名前だよ。コイツは『ワム!:エッジ・オブ・ヘブン』だ」
 
 
 




黒い『ワム!』が、砕ける
中から現れたのは、ジグソーパズルのような顔を持つ、新たな『スタンド』だった

W!:T・E・O・H「……………」ピィン...パシッ

『エッジ・オブ・ヘブン』が、小さなピースを指で空中へ弾き、落下してくるそれを掌で受ける

ビエーコ「し、『進化』したとでも言うのかッ!ならばッ、『シング・ライク・トーキング』ッ!」

叫ぶも、『スタンド』は発現しない

ビエーコ「し、シング・ライク・トーキング!どうした私のスタンドよッ!」

バッジョ「………」

W!:T・E・O・H「無駄ダ……モウ、ソノ『すたんど』はオ前ノ元カラ離レタ」

ピースを弾き、受け止める

ビエーコ「(あ、あの『ピース』……ッ!まさかッ!)」

『SING LIKE TALKING』と書かれた『ピース』には、正しく、『シング・ライク・トーキング』のヴィジョンが閉じ込められていた

バッジョ「『時のピースを管理する』それが『エッジ・オブ・ヘブン』の能力だ
お前の『スタンド』は過去か、未来か、他の者の手に渡ることになる」

『エッジ・オブ・ヘブン』が、ピースを粉々に握り潰し、灰のようになった『ソレ』が虚空へ消えていく
 
 
 




ビエーコ「(ば、馬鹿な……ッ!)」

バッジョ「安心しろ、『スタンド』はこの世から消滅した訳じゃあない
だからお前にダメージがある訳ではない」

一歩、バッジョがビエーコへ迫る

ビエーコ「く、来るな……ッ!」

バッジョ「なぁ、ビエーコ。世界には『抑止力』ってもんがあるんだ」

バッジョ「「DIO」に対する「空条 承太郎」、「吉良 吉影」に対する「東方 仗助」、「ディアボロ」に対する「ジョルノ・ジョバァーナ」」

バッジョ「「柏 龍太郎」に対する「城嶋 丈二」、お前に対する、俺と言ったようにな」

バッジョ「次々に、『希望』は生まれている。俺やお前が動く必要なんて無いほどにな」

バッジョ「そしてこれから行うことは、唯の「復讐」だ。一人の人間の、ちっぽけな「復讐」さ」

バッジョ「お前は、「正義に裁かれる」訳じゃあない。単なる「憎しみ」に殺されるんだ」

『スタンド』が拳を握る
バッジョ自身の拳も、硬く握られる

ビエーコ「私の傍に近寄るなァーーーーーッ!!!」

バッジョ「フラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフ
ラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフ
フラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラ
フラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラ――」


岩のように握り締められた拳が、放たれる
建物解体用の鉄球の直撃でも受けたような衝撃が、連続してビエーコを襲った
一撃目で、もう何も考えられなくなった


バッジョ「――フラゴーレッ!!」

ビエーコの身体は、未完成のジグソーパズルのようにバラバラになって――消えた




闘いは、終わったのだ
 
 
 




~八年後~
 2010年
【杜王町:国岬峠霊園】
女性が一人、墓の前で手を合わせていた


「………」

「米沢さんの墓参りか?」

「…あ、浦上さん…。はい、ワイアットさんと、重松さんのお墓参りも兼ねてです」

「あの時は生き返ったもんかと思ったけど、実際はジョジョの『スタンド能力』で一時的にこの世に居ただけだったんだな」

「…終わらない命なんて、ないです。どんな『スタンド能力』でも、魂は戻せない…」

「そうだな…うん、そうだ」

「あれから八年も経っちまったんだな…ジョジョ達は今頃何やってんだろ」

「智恵ーーーッ!……と、浦上さん!静香達から連絡があったよ!」

「…どんな内容だったの…?」

「コレ、手紙が来たんだけど」

「噂をすればなんとやらってヤツだな。どれどれ……」

「……何?『必府町』に居る?」
 
 
 




【必府町:必府プリンスホテル】
黒髪の、美しい妙齢の女性が受付へ進む

「はい、「静香・バッジョ」様ですね」

キーを受け取り、部屋へ進む
部屋には、先客が居た

「……チェックインくらいしてから入って下さい」

「ん?ああ…すまん。どうせ君がするもんだと思ってな」

「全く……。そんなことより――『ディープ・フォレスト』が動き出しましたよ、どうするんです?」

「……この町には、『ヒートウェイヴ』が居る。俺達が手を出すまでもないさ」

「そうですか……」

「それに、「手を出す」と言っても今の君は『スタンド』を持っていないだろう」

「確かに、今の私は『ティアーズ・オブ・マグダレーナ』を所持していません。けれど、それは私が望んだことだから」

「「初めからそうであったように」……君の『スタンド』は他の者に渡った。本当に良かったのか?」

「いいんですよ、私は未来なんてもう見たくない。『自分の力』で、見て行きたいんです」

「『スタンド』が使えないのに『スタンド』が見える、なんて変な体質になっちゃいましたけどね」

「……『飛んでいる矢は動いていない』、か」

「何か言いましたか?」

「いや、何でもないよ」



人生は、まだ続いている
 
 
 




【杜王町:ぶどうが丘高校】
二人の生徒が、休み時間に話している
一人は眼鏡をかけた大人しそうな少女で
もう一人は女子用の制服を着ているが……

「でね、最近ここら辺で妙な事件が起きてるのよ。名付けて『頭蓋穿孔殺人事件』!どう?怖いっしょ?」

「…………」

「恵ちゃーん?聞いてる?もしもー」

ズドン!と、発砲音
眼鏡の少女の手に突如現れたサイバーな拳銃が、もう一人の少女(?)の眉間に直撃した
教室内の生徒は、誰も騒ぎ出さない
“見えていないのだ”、少女の持つ拳銃が

「……いてぇ。恵ちゃん、頼むから感情表現を『スタンド』でするの止めて…俺死んじゃう」

「……奈落へ落ちればいいわ」



眼鏡の少女、名は「上条 恵」
彼女の『スタンド』で眉間を撃たれた『彼』、名は「富山 望」通称トム。男である


少女の『スタンド』、名は『コミュニケーション・ブレイクダンス』

少年の『スタンド』、名は『セイリン・シューズ』


彼らもまた、次代を担う『スタンド使い』である











































【杜王町:路地裏】
ドシャリ....
地面は鮮血で染まる
頭に穴を空けられたその死体は、『彼女』のエネルギーとなった
ぎこちない動きで、『彼女』は次の獲物を探す



『私ノ……名前ハ…「まざー・ロボとみー」……』




【ワム!】オリジナルスタンドSSスレ【Wham!】 終わり


使用させていただいたスタンド


No.1431
【スタンド名】 ワム!:ザ・エッジ・オブ・ヘブン
【本体】 ロベルト・バッジョ
【能力】 あらゆるものの事象、現象を『ピース』として管理する




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