――杜王グランドホテルの一室――
「ううっ……。うぐ……。ひ、ぃ、く、くるなぁっ……!」
「……。いつごろ終わりそうだい?」
ベッドに横たわり、苦しそうにうめく女性――”元通り魔”雨宮真知子を横目に、
頼りなさそうな黒髪の男は横に座る黒い長髪を無数の三つ編みに分けている女性に話しかける。
雨宮に意識はない。現在、雨宮はこの三つ編みの女性の「能力」を受けて昏睡状態にあるところだ。
三つ編みの女性は苦しそうにうめく雨宮を気の毒そうに見つめつつ、頼りなさそうな男に向き直る。
頼りなさそうな黒髪の男は横に座る黒い長髪を無数の三つ編みに分けている女性に話しかける。
雨宮に意識はない。現在、雨宮はこの三つ編みの女性の「能力」を受けて昏睡状態にあるところだ。
三つ編みの女性は苦しそうにうめく雨宮を気の毒そうに見つめつつ、頼りなさそうな男に向き直る。
「せいぜい、あと40分といったところでしょうか。湾太先輩も一緒に眠ってくれたら早いんですけどね」
「バカ言うなよ、『それ』をするには、おれはきみに殴られて気絶せにゃならないんだぜ?」
「バカ言うなよ、『それ』をするには、おれはきみに殴られて気絶せにゃならないんだぜ?」
まさか、おれに今すぐ眠れる特技があるわけでもあるまいし、と続ける男。
三つ編みの女性はそんなことを話す男にひとつ、ため息をもらし、
三つ編みの女性はそんなことを話す男にひとつ、ため息をもらし、
「あの通り魔さんだって、わざわざ痛い記憶を思い出してるんですから、そのくらいはしてくださいよ……」
「やだね、それに、あいつがああなってるのは自業自得じゃあないか。
こっちが穏便にしてるうちに吐いちゃえばいいのに、攻撃してくるんだぜ? そりゃあ、ああなって仕方がないさ」
「やだね、それに、あいつがああなってるのは自業自得じゃあないか。
こっちが穏便にしてるうちに吐いちゃえばいいのに、攻撃してくるんだぜ? そりゃあ、ああなって仕方がないさ」
湾太――と呼ばれた男の言い分に、三つ編みの女性は再度ため息を漏らす。
本当に腰抜けもいいところだ、と、そんな含みを持たせて。湾太もそこのところは自覚しているのだろう、
ため息をついた三つ編みの女性のことを咎めるような視線を送ってくる。
本当に腰抜けもいいところだ、と、そんな含みを持たせて。湾太もそこのところは自覚しているのだろう、
ため息をついた三つ編みの女性のことを咎めるような視線を送ってくる。
……彼女は、他人に対して「能力」を攻撃的に使うのはあまり好きではない。
面倒だとか、そういう話ではなく、単純に良心が痛むのだ。「とある作戦」の為に、しかたがなーくやっているが、
そうでなければたとえ学生時代からの友人である金髪の彼のお願いだろうと「いやだ」と断っていたことだろう。
現に、数日前、雨宮に「ある事実」を証言させるのにも、なかなか口を割らなかったから計4回、合計にして30時間、能力を使ったが、
そのときだって途中で思わず能力を解除しようとして、金髪の彼に必死に制止されたほどだった。
自分だって嫌な思いをしているのだから、目の前の湾太にも少しくらい嫌な役回りをやってもらいたい。
面倒だとか、そういう話ではなく、単純に良心が痛むのだ。「とある作戦」の為に、しかたがなーくやっているが、
そうでなければたとえ学生時代からの友人である金髪の彼のお願いだろうと「いやだ」と断っていたことだろう。
現に、数日前、雨宮に「ある事実」を証言させるのにも、なかなか口を割らなかったから計4回、合計にして30時間、能力を使ったが、
そのときだって途中で思わず能力を解除しようとして、金髪の彼に必死に制止されたほどだった。
自分だって嫌な思いをしているのだから、目の前の湾太にも少しくらい嫌な役回りをやってもらいたい。
何せ、直接彼も「この能力」を受けてくれれば、雨宮は苦しまずに済むし、情報の伝達は格段に明確になる。
「この能力」を使われた雨宮に虚偽の告白をする余裕はないだろうが、それだけに情報伝達の精度は下がるだろう。
「この能力」を使われた雨宮に虚偽の告白をする余裕はないだろうが、それだけに情報伝達の精度は下がるだろう。
そう考えたところで、雨宮の表情をもう一度見返し、やはりブルーな気分になる。
そこで、棚の上にビンがあることに気がついた。
そこで、棚の上にビンがあることに気がついた。
ラベルには、いまどき分かりやすすぎるだろ、と突っ込みが来そうなほど堂々と、『睡眠薬』の文字。
「……湾太先輩、わたしの能力、発動条件2つあったの覚えてますよね?」
そう彼女が呟いたのを耳に拾い、湾太は全てを理解し、青ざめた。
確かに、睡眠薬があるのならそれを行うのは可能だ。だが、それは湾太も「能力」に巻き込まれることを意味する。
「能力」による保護があるとはいえ、殺人鬼と二人きりで同じ空間にいることなど、耐えられない。
精神的な意味ではなく、肉体的な意味で。現実に存在している者同士でなら、傷つけ合うことはできてしまうのだから。
……いや、精神的な意味も、少なからずあるだろう。勿論、殺人鬼と一緒の空間がいやだから、というわけではない。
湾太は、『夢の中の彼女』の性格が大の苦手だった。
確かに、睡眠薬があるのならそれを行うのは可能だ。だが、それは湾太も「能力」に巻き込まれることを意味する。
「能力」による保護があるとはいえ、殺人鬼と二人きりで同じ空間にいることなど、耐えられない。
精神的な意味ではなく、肉体的な意味で。現実に存在している者同士でなら、傷つけ合うことはできてしまうのだから。
……いや、精神的な意味も、少なからずあるだろう。勿論、殺人鬼と一緒の空間がいやだから、というわけではない。
湾太は、『夢の中の彼女』の性格が大の苦手だった。
「発動条件1.殴って気絶させる」
指を一本立て、彼女は湾太に話しかける。
その表情は、どこか楽しそうな笑みさえ浮かべていた。
雨宮は駄目で、おれは大丈夫なのか、と湾太は心の中で毒づく。
. . . .. . .. . . . .. . ... .. . . ..
「発動条件2.煙状態のわたしのスタンドを吸って寝る」
その表情は、どこか楽しそうな笑みさえ浮かべていた。
雨宮は駄目で、おれは大丈夫なのか、と湾太は心の中で毒づく。
. . . .. . .. . . . .. . ... .. . . ..
「発動条件2.煙状態のわたしのスタンドを吸って寝る」
三つ編みの女性は――もとい、『有栖川アリス』は、そう言ってこれから「悪夢」を見ることになる湾太のことを見つめる。
彼は、まるで世界の終わりのような表情を浮かべながら、引きつった笑みを作ろうとしていた。
彼は、まるで世界の終わりのような表情を浮かべながら、引きつった笑みを作ろうとしていた。
しかし、それは仕方がないことだ。
何故なら、敵の情報を掴むための尊い犠牲なのだから。
何故なら、敵の情報を掴むための尊い犠牲なのだから。
6:「12年目の『矢』の主」の巻
ドンッ
不良「おォ? ニイチャン、どこ見てあるいてンだァ?」
金髪「……スマナイ、どうやら『ヨソ見』していたようだ……。悪気はなかったんだ、許してくれ」ペコ
スタスタ
ガシ イ
不良「おいおいおいおいおいおいィ……! そんなんで許してもらえると思ってンのかぁ?
知らねぇかなぁ……。おれ、この街じゃあ結構有名なんだぜぇ?」
知らねぇかなぁ……。おれ、この街じゃあ結構有名なんだぜぇ?」
金髪「………………」
金髪「申し訳ないが、わたしは最近この町に来たばかりで」
不良「ンなこたぁ――! おれの知ったこっちゃァねぇんだよぉぉ――ッ!」グバァッ
不良「ンなこたぁ――! おれの知ったこっちゃァねぇんだよぉぉ――ッ!」グバァッ
ガヤガヤ ガヤガヤ
通行人 ガヤガヤ
バカ
金髪「(まあ、当然、こんなガラの悪そうなヤツにつっかかる善人はいない、か)」
バカ
金髪「(まあ、当然、こんなガラの悪そうなヤツにつっかかる善人はいない、か)」
不良「面白そ~なメガネしやがって……。え? なんだァ? このメガネ光ってるじゃねーか、まぶしいだろ、コラ!」
不良「知らねぇなら教えてやるよッ! おれはぶどうヶ丘高校をシメてる『桜庭一樹』!
(まー、本当はぶどうヶ丘をシメてるってのァウソだが、夏休みが終わればそうなるのは当然の帰結!
なにせ、おれにはこの能力……『スタンド』があンだからよォォ―――ッ!!)」
(まー、本当はぶどうヶ丘をシメてるってのァウソだが、夏休みが終わればそうなるのは当然の帰結!
なにせ、おれにはこの能力……『スタンド』があンだからよォォ―――ッ!!)」
桜庭「てめェェ――にゃあおれの『スタンド』の拳を味わってもらうぜ―――ッ!」グヮオ!
??『ブルアアアアアアアアアア――ッ!』
??『ブルアアアアアアアアアア――ッ!』
金髪「体を縦断する五本の線に、小柄な体躯の人型スタンド……
.. .. . . . . .. .
『シェイク・ユア・ブーティ』……か……。おろかなことを」
.. .. . . . . .. .
『シェイク・ユア・ブーティ』……か……。おろかなことを」
桜庭「!? なぜ、おれの『スタンド』の名前を!?」
金髪「さてな……。何故だと思う?」 スゥ・・・
金髪「さてな……。何故だと思う?」 スゥ・・・
桜庭「質問に質問で返してンじゃあねぇぇぇ――ぞッ!
おれが『何故スタンドの名前を知っている』とッ! そう聞いているんだぜッ!
答えねーってことはつまりてめー……ボコボコにされるってことだからなァアア――ッ!」
おれが『何故スタンドの名前を知っている』とッ! そう聞いているんだぜッ!
答えねーってことはつまりてめー……ボコボコにされるってことだからなァアア――ッ!」
金髪「おろかなことだ……」
パシィ
ド ド ド ド
桜庭「……あ…………?」
SYB ・ ・ ・
桜庭「(止められた……!? いや! 今のは止められたんじゃあない……。
.. .. .
そらされたッ!! 殴りかかるおれのスタンドの拳に触れないように、腕を押して……!
.. .. .
そらされたッ!! 殴りかかるおれのスタンドの拳に触れないように、腕を押して……!
コイツのスタンド、おれの『シェイク・ユア・ブーティ』よりも完璧にノロマだったのにッ!)」
ド ド ド ド
?? ド ド ド ド
桜庭「てっ、てめーもッ!? スタンド使い…………」
金髪「やれやれ……。それよりも、気付くべきことがらがあるだろう?」
桜庭「アッ!」バッ
桜庭「こっこっ、このスタンドは……!
おれを『射抜いた』スタンドッ!!」
?? ド ド ド ド
??『「飼い犬に手を噛まれる」……というのはまさにこのことだな……。フッフフ、
わたしもまだまだ……ということか。この程度の者に反逆されてしまうとは……』
わたしもまだまだ……ということか。この程度の者に反逆されてしまうとは……』
ド ド ド ド
桜庭「ひっ、し、しまったあああ~~~~ッ! 申し訳ッ! 申し訳ありませんンンッ! あなたさまとは露知らず……」ビクビク
ドゲザァ
??『知らなければ、いいのかね? んん?』グィイ
桜庭「ひっひいいいい~~~~~ッ! 許してくださいッ! 命だけは~~~~~!」
桜庭「ひっひいいいい~~~~~ッ! 許してくださいッ! 命だけは~~~~~!」
金髪「まったく……。「物体の速度」を奪う能力だったっけか? 桜庭くん……。襲ってきたきみをいたぶり、
徹底的にわたしという存在に対する敗北感を植えつけて、忠誠を誓わせたと思ったんだがな……。
実はまだオシオキが足りていなかったか? ン? どうなんだ? わたしに攻撃するということは…………」ド ド
徹底的にわたしという存在に対する敗北感を植えつけて、忠誠を誓わせたと思ったんだがな……。
実はまだオシオキが足りていなかったか? ン? どうなんだ? わたしに攻撃するということは…………」ド ド
桜庭「ひいいいい~~~~~」ビクビク
金髪「(そろそろ頃合か……)」
金髪「反省は、しているな? 桜庭くん……」
桜庭「はいィ! はいぃぃ~~!」
桜庭「はいィ! はいぃぃ~~!」
金髪「……そうだなー……。『反省』を表すには「償い」が必要だと思わないかね?桜庭くん」
桜庭「へ? ええ……。はい」
ピラッ
金髪「じゃあ、コイツを始末するんだ……。始末。分かるね? わたしの言っていることは……」
桜庭 ・ ・ ・
金髪「殺 す …………んだよ……。コイツをな……。わたしの邪魔者を消すんだ」
桜庭「し、しかし……。コイツ、見るからに女の子ですが……」
バ
ン
ン
写真(譲華)
金髪「文句があるのか?」グィイ
桜庭「いいえ! 決して! そのようなことは……」
桜庭「いいえ! 決して! そのようなことは……」
金髪「言っておくが、コイツはスタンド使いだ。それも強力な……。すでに何人ものスタンド使いを倒している」
金髪「失敗してみろ……。そのときは、死ぬのが誰になるか、分かるな?」 ドドドド
桜庭 ・ ・ ・ ! コクコクコクコク
桜庭 ・ ・ ・ ! コクコクコクコク
金髪「では、さらばだ……。いい結果を期待しているよ、桜庭くん……」スッ
桜庭 ポカァーン
ド ド ド ド ド
――同時刻 ドゥ・マゴ――
譲華 ゾクッ!
那由多「どーしたの? 譲華」
那由多「どーしたの? 譲華」
譲華「い、いや……。特に……今何かちょっと『悪寒』がしただけで……」
慧「風邪でも引いてるんじゃねえの~~? なんにしても気を付けたほうがいいぜ」
慧「風邪でも引いてるんじゃねえの~~? なんにしても気を付けたほうがいいぜ」
寒月「ああ、確かに気を付けたほうがいいな」
ド ド
寒月「ただし『体調に』……じゃあない…………。『敵スタンド』に……だ」
ドドドド
桜庭 ド ド ド
那由多「靖成は言ってたわ……。『射抜かれたものは『矢の所持者』の都合のいいように動く』……」
譲華「『矢』を追うわたしたちは、『矢の所持者』にとっては『有害』な存在…………」
譲華「『矢』を追うわたしたちは、『矢の所持者』にとっては『有害』な存在…………」
桜庭 ド ド ド
慧「へい! そこのチビな不良! それ以上おれらに近づくんじゃあ~ね―――ぜッ!!」
桜庭 ピクッ
譲華「ちょっと慧、仮に相手が『新手のスタンド使い』だとしても、その言い方はあんまりじゃない?
たしかにあの不良は『チビ』だけれど、そーゆー風に人の身体的特徴のことを悪く言うのはよくないわ」
寒月「(こいつは髪型がカニだしな……)」
譲華「なんか言ったかカタツムリ」
たしかにあの不良は『チビ』だけれど、そーゆー風に人の身体的特徴のことを悪く言うのはよくないわ」
寒月「(こいつは髪型がカニだしな……)」
譲華「なんか言ったかカタツムリ」
寒月「大した地獄耳だ……。 (もう読心術だろコレ)」タラァー
桜庭 ザッ ザッ
慧 !
慧「動くんじゃあね――と言ってるだろうがッ! このドチビが!」
寒月 サッ
寒月「いいか……警告するぞチビ。そこから一歩でも動いたら、わたしのスタンドを打ち込む。いいな?」
桜庭 ド ド ド ド
桜庭「『シェイク・ユア・ブーティ』ッ!!」ズオォ!
那由多「スタンドを発現したあああ―――ッ!」
四人 ズォアッ!
寒月「『ダウンワード・スパイラル』ッ!!」
DS『マイイイイッ!!』ドシュゥウ!
DS『マイイイイッ!!』ドシュゥウ!
桜庭 ドズズッ
桜庭「…………『己を知りうる者は賢者なり』……」
寒月 ・ ・ ・ ?
桜庭「イギリスの詩人『G=チョーサー』の言葉だ……。自分の「適所」と「力量」を知る者こそが真に賢いってことさ」
ド ド ド ド
桜庭「この前までのおれは『愚者』だった……。だが、彼に会って、俺は「賢者」となった。
自分の「身の程」を知ったのさ…………。おれは、『あの方』には敵わない……。あの方は「頂点」に立たれるべき方だ」
自分の「身の程」を知ったのさ…………。おれは、『あの方』には敵わない……。あの方は「頂点」に立たれるべき方だ」
ド ド ド ド
譲華「ちょっと待ちなよ寒月……あいつ……『トゲ』刺さってないわよ……」ドドド
桜庭 ポロ ポロ
寒月「そんなことはとうに気づいている……。やつの『体』に触れた瞬間、『トゲ』のスピードが急停止した。慣性も無視してな」
那由多「フン! 『己を知りうる者は賢者なり』ィ? 自分は賢者になったって言ってるけど、
あんたはやっぱり愚者ね! わたしたち4人を相手に、勝てるとでも思っているの?
勝算ってのを立ててからかかってこいっての! 脳ミソまでドチビね!」
あんたはやっぱり愚者ね! わたしたち4人を相手に、勝てるとでも思っているの?
勝算ってのを立ててからかかってこいっての! 脳ミソまでドチビね!」
ド ド ド ド
桜庭 ・ ・ ・ ・ ・ ・
桜庭「(クキぃぃぃ~~~~~ッ!! それができればとうにやっておるわッ!! この馬鹿どもがっ!
こちとらてめーらを始末しなきゃあ命がマズイんだよ! しっかっもっ さっきからチビチビと……!)」
こちとらてめーらを始末しなきゃあ命がマズイんだよ! しっかっもっ さっきからチビチビと……!)」
桜庭「(女子高生だからっていい気になりやがって!! 何か!? 花の女子高生はチビな不良よりも立場が上なのか!?)」
桜庭 ムカムカムカムカ
桜庭「(まあああ―――いいッ!! いまの「トゲ」の『スピード』は全て『奪った』。いまのおれの素早さは銃弾以上よ!!)」
テッポウダマー
桜庭「(頭のどこかで『鉄砲玉』って言葉が聞こえたが『ノリにノッてる』このおれは気にしねえ――ッ!!)」ギュバッ
寒月「ハッ!」
桜庭 シュンッ
桜庭「おせえ――! スットロイぜてめー……」
STM『セリャアッ!』ドバギッ!
STM『セリャアッ!』ドバギッ!
桜庭「ぐっぱあ!?」ドパァ
ズザーッ
桜庭「な……! おれのこの速度についてこれるとは……!」
慧「遅いぜ、てめー」
ド ド ド ド
桜庭「だがこのおれの『素早さ』に敵うほどじゃあねェェ! てめえ自分がみえてねーぜッ!!」
SYB『ブルアアアア!!』シュバアッ
慧「なるほど……たしかにてめぇ、妙な自信を持ってるだけあって『素早い』スタンドだぜ。
おれの『スウィート・チン・ミュージック』も素早さには自信があるスタンドだが、正直速さ比べで敵う気はしないな」
おれの『スウィート・チン・ミュージック』も素早さには自信があるスタンドだが、正直速さ比べで敵う気はしないな」
慧「そこを補うのが『達人の技』だけどなッ!!」
STM『セリャリャリャリャリャアア!』
慧「(殴ってきた肘にけりを叩きこみ!)」
SYB メギメギ
桜庭「ぐおおおおおお―――ッ!」
STM『Tune up the band!』
ド ド ド ド
STM『セリャアアア――ッ!!』
桜庭 ドバギッ!
桜庭「…………なるほど確かに達人の技とスピード……あなどれねぇぜ」
.. .
桜庭「だがそれも奪った」
.. .
桜庭「だがそれも奪った」
慧 ? ハァーハァー
SYB『ブルアアアアアアアアア!!』ゴオアァ
慧「さっきより速く……!?」
STM『セリャア……!』 サッ
STM『セリャア……!』 サッ
ガシィイン!
桜庭「どうした? さっきより遅くなってるぞォ?」
ド ド ド ド
慧「うおおおお…………!」バッ
桜庭「むゥん遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅いィィィィ――ッ!!
おれの『シェイク・ユア・ブーティ』はァァァ~~! 既にきさまの『スピード』を超越しているのだァ!」
おれの『シェイク・ユア・ブーティ』はァァァ~~! 既にきさまの『スピード』を超越しているのだァ!」
桜庭「身の程を知れェェェエエエ――――いッ!! この雑魚どもがああああ――ッ!!」
桜庭 !
桜庭 シュンッ!
LMS『ダラアアア!』ブンッ
桜庭「そろそろ……きさまが来るころだと思っていたぞ……! てめーのその『両手』は何かイヤな感じがするからな……」
慧 ハァー ハァ ハー ガクッ
慧「(この……『疲労感』!?)」
那由多 ジィ
慧 ハァー ハァー
那由多 チラッ
桜庭 ヒュッ ヒュッ
ド ド ド ド
那由多「(……明らかに動きがよくなっている……。わたしの『ダウンワード・スパイラル』が攻撃する前と後で……)」
那由多「(『体力を奪う能力』? にしては、それではパワーアップの理由が説明できない。
体力には『100%』はあっても『120%』はないし、『トゲ』のあとに動きがよくなった理由が説明できない)」
体力には『100%』はあっても『120%』はないし、『トゲ』のあとに動きがよくなった理由が説明できない)」
那由多「(と、すると……。考えられるのは……『速度』を奪う? それなら『トゲ』が停止した理由も、
慧の動きが急に悪くなった理由も説明できる…………。仮説としては妥当なところね)」
. .. . .. . . .. .. . .. . . . .. ..
那由多「(『スピードを上げる能力』じゃなくて本当によかった)」
慧の動きが急に悪くなった理由も説明できる…………。仮説としては妥当なところね)」
. .. . .. . . .. .. . .. . . . .. ..
那由多「(『スピードを上げる能力』じゃなくて本当によかった)」
ド ド ド ド
那由多「(『速度』と『スピード』。混同されがちだが、微妙に違う。『速度』は単純に「速さ」だが、
『スピード』は『制御できる』「速さ」…………よ)」
『スピード』は『制御できる』「速さ」…………よ)」
桜庭「おっとっとォ」
那由多「(見たところあいつはイマイチ『速度』を調整しきれていないようね…………)」
慧「ぐ、うぐう……みんな! 気を付けろ! そいつは『速度』だッ! 『速度』を奪うんだァ!
やつに触れられたら、『速度』を奪われるッ! やつに「さわるのはマズイ!」」
やつに触れられたら、『速度』を奪われるッ! やつに「さわるのはマズイ!」」
那由多「いや、違うわ慧。『速度』は「与える」からいい…………」
寒月「…………」
ド ド ド
那由多「あえて『奪わせる』からこそ、いいのよ。「与えられるだけ与える」。速度はね」ドドド
桜庭「……! まさか! コイツ「あれ」に気がついたのか!?」
桜庭「……! まさか! コイツ「あれ」に気がついたのか!?」
那由多「寒月ッ! ありったけ『ダウンワード・スパイラル』をぶっ放しなさい!」オオオッ
DS『マイマイマイマイイイイ!』ドガガガガッ
寒月「放てィ!」バアッ
ドドドドドド―――!!
桜庭「うっ、うおおおおッ! 避けきれんッ!」ドドドッ
ド ド ド ド
那由多「さっ、今のうちにヤツに接近するわよ。近ければ近いほど『イイ』からね」
譲華「……………………」
譲華「……………………」
ダッダッダッ
桜庭 ニヤァ・・・
. . . . . . . .. . ..
桜庭「(馬鹿が……! 確かにおれの能力は『速度を奪うこと』! 『素早すぎては逆に動けない』!
だが、その弱点を俺が克服していないとでも思ったかッ!?)」
. . . . . . . .. . ..
桜庭「(馬鹿が……! 確かにおれの能力は『速度を奪うこと』! 『素早すぎては逆に動けない』!
だが、その弱点を俺が克服していないとでも思ったかッ!?)」
桜庭「てめぇぇ~~カタツムリ! おめーらはひとつ勘違いをしているぜッ!」
寒月 ・ ・ ・
. .. . . . .. .. .. . . .. . . . .. . . .. . . . . ..
桜庭「『己を知りうる者は賢者なり』だッ! 動くのは必ずしもおれじゃあなければいけないわけじゃあねーんだぜッ!!」
. .. . . . .. .. .. . . .. . . . .. . . .. . . . . ..
桜庭「『己を知りうる者は賢者なり』だッ! 動くのは必ずしもおれじゃあなければいけないわけじゃあねーんだぜッ!!」
ド ド ド ド
桜庭「たとえばこんなフーに石ころを持ってよおおおおおおおお」
寒月「ッ!!」
桜庭 ニヤ
桜庭「(勝ったッ! やっこさんこの攻撃は想定してなかったみてえだなあああッ!!
『おれ』の動きは制御できなくても、石ころの投げる向きは制御できる! つまり『速度の上がった投石』ッ!
野球ボールでも普通に頭に受ければ大打撃よォ! まして石がぶつかれば…………!)」
『おれ』の動きは制御できなくても、石ころの投げる向きは制御できる! つまり『速度の上がった投石』ッ!
野球ボールでも普通に頭に受ければ大打撃よォ! まして石がぶつかれば…………!)」
桜庭「(あっはははははは~~~! 見てますかァ! おれは上野譲華を始末しましたよォォ~~~~!)」
桜庭「どうだッ! 殺ったッ! ざまあ見ろ!」
譲華「『ざまあ見ろ』……そりゃああんたの台詞じゃあないわね」
SYB『ブルアアアアッ!』ブンッ
桜庭「なんだかよくわからんが上野譲華の脳天に直撃だアアアア――――ッ!!」
譲華 ズドォ!
譲華「…………!」
ド ド ド ド
譲華(映像) ジジッ
譲華 ・・・ズゥ
譲華「『ざまあ見ろ』…………これはあたしが言うべき言葉よ」バァーン
桜庭「なッ!? しゅ、瞬間移動!? どうなって……」
那由多「譲華、よくわたしの考えてることがわかったわね」
譲華「長い付き合いだもの。あんたの考えてることなんて大体分かるわ」
桜庭「な、何を……一体どうなって……」
那由多「あんたは、自分の意志でわたしたちを出し抜いて『速度を上げた投石』を行ったと思ってるみたいだけど、
そいつは間違い……ってことよ。わたしたちの狙いは最初から、そうやって投石をさせて、時間を稼ぐこと」
そいつは間違い……ってことよ。わたしたちの狙いは最初から、そうやって投石をさせて、時間を稼ぐこと」
桜庭 !!
那由多 ジジジ
寒月 ジジ
慧 ジジジジ
寒月 ジジ
慧 ジジジジ
ドドド
譲華「ほぉーら、みんなこんなに近く……」
譲華「『己を知りうる者は賢者なり』……ねェ~~……。まっ! 『勝負』に勝つには『敵』のことも知らないとダメってことね」
桜庭「(あ、マズイ、詰んだ)」
桜庭「ひっ、いッ! 逃げなくては! 逃げて体勢を整えなくてはァァァ~~ッ!!
決してビビって負けて逃げるわけじゃあなく、まだ全然勝ち目はあるけどとりあえずここは一旦退かなくては~~!!」
決してビビって負けて逃げるわけじゃあなく、まだ全然勝ち目はあるけどとりあえずここは一旦退かなくては~~!!」
CE サッ
桜庭 ズッテェ~~ン
桜庭「なっ、あっ! まただッ! また何もないところで転んだあああ~~!
うわああ! 助けてくださいい! まだおれは負けてません~~~~~~~ッ!!」
うわああ! 助けてくださいい! まだおれは負けてません~~~~~~~ッ!!」
寒月「(なんだこいつ……。さっきから態度が妙だぞ……。あれだけ自信マンマンだったのに、
敗色が濃厚になってきただけでこの焦り様……。そりゃあ痛い目見るのは嫌だろうが……)」
敗色が濃厚になってきただけでこの焦り様……。そりゃあ痛い目見るのは嫌だろうが……)」
那由多「『リトル・ミスサンシャイン』」
LMS『ダラァ!』ドシュゥ!
LMS『ダラァ!』ドシュゥ!
桜庭「うげあああ――ッ!?」
譲華「なッ!? 那由多何を!」
那由多「「リトル・ミス・サンシャインの小型太陽」を足に打ち込んだわ……。いかに素早くともこれじゃあ逃げられないわよ。
観念しなさい。あんた、『矢の所持者』のスタンド能力について何か秘密を知っているわね?」
観念しなさい。あんた、『矢の所持者』のスタンド能力について何か秘密を知っているわね?」
桜庭 ・ ・ ・
一同 !!
桜庭「し、しらねえよ」プイッ
慧「おいッ! この反応! 『めちゃくちゃ知ってるぜ』って顔してやがるぜッ!!」
譲華「別に良いわよ。靖成さんが前に『通り魔』にやってた「ちょっとした方法」とやらで聞き出せばいいじゃない」
寒月「そんな方法あるのか?」
桜庭「(まずい……非常にまずいぜ! この状況……。なんとかしてこいつらを出し抜かなくて……)」
桜庭 !!
譲華 ?
桜庭「あ、ああ……ちが、ちがう……。お、おおおおお、おれはッ! まだ何も話してない!」
桜庭「うわああああああああああああッ!! ゆるッゆ、許してぇえああああ」
那由多「ちょッ、ちょ、いきなりどうしたのよ! 落ち着きなさい!」
ヒュゥン!
慧 !!
慧「那由多ッ! 避けろ!」
STM『セリャア!』バギャア
STM『セリャア!』バギャア
那由多「ぐッ」ドザァ
ド ズ ウ !
ド ド ド ド ド ド
桜庭「…………。………………………………」
ド ド ド ド ド ド
桜庭 ド ド ド ド
譲華「えっ、ちょ……嘘…………」
譲華「……―――――ッ!!!」
- 桜庭一樹―― スタンド名『シェイク・ユア・ブーティ』 …死亡
譲華「(ひ、悲鳴を上げたら負け、悲鳴を上げたら負けよあたし……!)」ググ
譲華 バッ
譲華「(眉間に『小石』が埋め込まれている……! 死因はこれか……!)」
那由多「気を付けて! まだこいつをヤッた『犯人』がこのあたりにいるはず!」
オ オ オ オ オ
?? サッ
慧「!! 寒月!」
DS『マイイッ!』ドシュゥ!
DS『マイイッ!』ドシュゥ!
那由多「くッ……遅かった……もう敵スタンドは影に隠れちゃったわ」
寒月「いや……。問題ない……」
寒月「いや……。問題ない……」
ド ド ド ド
――side『??』――
??『(フン……。一瞬だけ見せたわたしの姿に対して即座に攻撃をしかけてくるとは、たいした警戒心だがさすがに遅かったな)』
ド ド ド
トゲ ズオオオ・・・
??『(!! このトゲは……!)』
寒月「打ち出した『トゲ』には既にさらにもう一つ『トゲ』をはやしてある」
トゲに生えたトゲ ドシュウウ!
??『うおおおおッ!! こいつ……! この野郎ッ!!』バアッ
トゲに生えたトゲ クンッ
ドズァ!
??『……危ない……危ないところだった…………。それにしてもこのスタンド能力……
あのとき『与えてやった』女のスタンドか……おろかなことを………………』
あのとき『与えてやった』女のスタンドか……おろかなことを………………』
??『「譲華」「那由多」「寒月」「慧」…………』
?? フワアアアア
ド ド ド ド ド ド ド
――side譲華――
寒月「この『トゲ』は……! 「殴られた」形跡もなく、ただ地面に落とされている!」
寒月「『力』で叩き落としたときにはこうはならない! 一体……」
那由多「……その男は……」
譲華「…………即死よ。脳天を打ち抜かれてるわ。小石でね」
慧「…………くそっ」
譲華「許せない……ッ! 『矢』だか『運命』だか知らないけどッ!!
何もしらない人間をテメーだけの都合で利用しッ!!
そして用が済んだらボロ雑巾みたいに捨てるッ!!!」
何もしらない人間をテメーだけの都合で利用しッ!!
そして用が済んだらボロ雑巾みたいに捨てるッ!!!」
ド ド ド・・・
??『きさまらはわたしを……』
譲華「あんたはあたしたちを……」
譲華・??「『敵に回した!!』」
⇒TO BE CONTINUED...
登場キャラ
上野譲華 『クリスタル・エンパイア』 |
( 考案者:ID:r1cdID/p0 絵:ID:9alOiiWg0 ) |
ぶどうヶ丘高校1年生の少女で、本作の主人公。『クリスタル・エンパイア』のスタンド使い。 はじめて目の前で人が死ぬ様を見て、少なからずショックを受けたが、それ以上に『矢の保持者』に対する怒りが湧き上がる。 他の三人と共に、『矢の保持者』に立ち向かう決意を固める。 |
虹村那由多 『リトル・ミス・サンシャイン』 |
( 考案者:ID:PrUXDreeO 絵:ID:wYLh1pVhO 絵:ID:CTBnC6SO 絵:ID:TAK6q120 . 絵:ID:bDXNIRYo 絵:ID:ZhaJ/eco 絵:ID:lj0aaGMAO 絵:ID:yvQnoWHE0 ) |
ぶどうヶ丘高校1年生の少女で『リトル・ミス・サンシャイン』のスタンド使い。 『桜庭の死』を見て、改めて自分たちの踏み込んでいる問題の恐ろしさを実感する。 「こんな怖い役回り勘弁だわ」と言いつつも、譲華や自分の周りの人間を守る決意を固める。 |
淡島寒月 『ダウンワード・スパイラル』 |
( 考案者:ID:kvK4Epn+O 絵:ID:lWwSYfaJ0 ) |
ぶどうヶ丘高校1年生の少女で『ダウンワード・スパイラル』のスタンド使い。 『二段階のトゲ』の手ごたえがなかったことに戦慄、敵の能力の底知れなさを肌で体感した。 同時に、本格的に『矢の保持者』と立ち向かい、打ち負かす『覚悟』を決める。 |
愛川慧 『スウィート・チン・ミュージック』 |
( 考案者:ID:uT5akwUb0 絵:ID:pvF5NNfwO 絵:ID:SKIolI5A0 ) |
ぶどうヶ丘高校高校1年生の少女で、『スウィート・チン・ミュージック』のスタンド使い。 人を人とも思わない残虐なやり口の『矢の保持者』に怒りと反抗心を湧き上がらせる。 同時に、『シェイク・ユア・ブーティ』にいっぱい食わされた経験から『成長』の可能性を見出した。 |
桜庭一樹 『シェイク・ユア・ブーティ』 |
( 考案者:ID:iM2xnn6k0 絵:ID:1JRmNFMo ) |
杜王区のどこかに住む不良で、『シェイク・ユア・ブーティ』のスタンド使い。 『矢の保持者のスタンド』の能力により、眉間を小石で打ちぬかれて死亡。 死体は靖成を通して警察に引き渡された。享年18歳。 |
金髪の男(?) 『??』 |
依然、杜王区に「潜伏」。 |
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